生命の海、生命のダンス(1)
白い砂浜。青い海。
南の島のプライベートビーチは、絶好の海水浴日和。
見目麗しい美人ばかり、海に入ってキャッキャッと遊ぶ姿は、見ている分には眼福である。
「なあ静香。俺が、海水浴を楽しむタイプに見えるか?」
「いいえ、ぜんぜん。でも、ふふっ、別のお楽しみはあるでしょう?」
水着姿の美女をガン見しながら、黒宮はため息を吐く。お見通しだな、という思いを込めて。
「まったく、ご想像の通りだよ」
時間は巻き戻り4月の末。
静香に呼び出された黒宮は、意外な提案に目を丸くした。
「旅行?」
「ええ。夫の遺産に、プライベートビーチと、コテージがあるの。沢山人を呼んで、パーティーをするのに使っていたのよ。どうかしら、行ってみない?」
「プライベートビーチねえ……」
黒宮恭一は、根暗な男である。当然、夏に海水浴に行く、などという発想はなかった。
「もちろん、その……女友達も、連れてきてくれて構わないわ」
「そりゃまた、羽目を外した旅行になりそうだな」
「それでいいの。いえ、それがいいのよ」
唇を吊り上げ、妖艶に微笑む静香。ここ最近の彼女は、匂い立つ色香が凄まじかった。綺麗どころの愛人を囲っている黒宮が、見とれてしまうほどだ。
パーマのかかったブルネットの髪。艶やかな赤い唇。どろりとした情欲を湛えた、得体の知れない瞳。
危険な雰囲気を纏わせた、魔性の美女。
結局、我慢出来なかった黒宮は、ベッドの上で旅の算段をすることになる。
「えー、海水浴っ!? らしくなーい!」
「れ、恋さん。黒宮さまだって、海で泳ぐこともありますよ」
恋の反応は、まあ、案の定。京子が取りなすところまで、お約束と言ったところだが。
「でも、黒宮さま、覚えていて下さったんですね。嬉しいです」
花が綻ぶように微笑む京子。
そして覚えていない黒宮であった。
「……そ、そうだな。うん」
「……忘れていらっしゃったんですね。ふたりで温泉に行ったとき、みなさんで旅行に行きたいです、ってお話ししたんですよ。そうしたら、南の島でもどうだ、って」
「ああ、あの時か」
それは他愛もない思いつき。そのまま日々の中に埋没してしまう、小さなアイディアだったのだが。
こうして現実になるのだから、世の中は分からない。
「ふふっ、いいんですよ、黒宮さま。わたくし、一番に誘って頂けて、喜んでいるんです。恋さん、今度水着を買いに行きましょう?」
「うん、そうだね。黒宮さんは、あたしたちの水着姿を妄想して、楽しみにしてねっ! あたしも京子ちゃんも、脱いだら凄いんだから!」
「……それは知ってる」
というか、割と頻繁に脱がして、抱いている。京子も最近は床慣れしてきて、大胆な下着などを着るようになっていた。
しかし水着姿というのは、それはそれで楽しみなものである。
「わたし、サイズの合う水着を探すのが大変で……でも、頑張りますっ」
「私も新しい水着を用意しますね」
香織と水樹、大人の美女たちも、同行することになった。Hカップを誇る香織の水着姿を想像し、ビーチセックスまで考えてしまった黒宮を、誰が責められるだろう。
そんな感じで、いつもの面子に声をかけて回った黒宮であるが。
意外だったのは、
「あら、それなら私も行こうかしら。貴方の乱行を見張る女が、一人くらいいてもいいでしょう」
「え、イリスさんも行くの……!? せ、センセ! わたしも、わたしも行くっ!」
そんな調子で、学園組のふたりが参加を決めたり。
「アドバイザーさん、あたしたちも行っていい?」
「もう、加奈は遠慮がないんだから……でも、わたしも、迷惑でなければ行ってみたいです」
「私も、行ってみたいなあ。ね、いいでしょ? く・ろ・み・や・さん♪」
夏桜シスターズには色仕掛けで押し切られたりした。
結果。
「これは、少し集まり過ぎではありませんか?」
水樹がそう心配するくらい、集まってしまった。
香織に水樹、京子に恋。それに加えて、女子学園の生徒であるイリスと奈々。そして夏桜シスターズの3人。
言い出した静香と黒宮自身を含めれば、11人の大所帯だ。
流石にバツが悪くなり、静香に謝りに行った黒宮だが、彼女はまるで動じることなく。むしろ、都合がいいとばかりに、
「多ければ多いほど、楽しいことになるでしょう?」
そう、艶やかに微笑むのだった。
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