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私、分かっちゃいました。この世界って逆転してます

男女の価値観が逆転してることを知ったのは、恥ずかしいことにニュースを見ていたら女性が男性を痴漢したとか、ネット小説であるあるの手垢だらけのきっかけだった。

「『通勤途中の女性が、男子学生の身体を触るなどしたとして、逮捕されました』」

初めて聞いた時は、頭が勝手に女性と男性を入れ替えてるのかとびっくりしてテレビを二度見した。
けれどテレビを見ると、ピンクの人形になった女性がブルーの人形の男性にピッタリ張り付いて触っていることを丁寧に話していて、勘違いじゃないことが分かった。
エロ漫画みたいなことがあるもんだとその時は深く考えなかったが、その後に続く女性プロ野球選手の活躍とかを取り上げているのをみるうちに、自分が知らない世界に来たことを知った。

「ふむ」

ふむふむ。
マジか、と歯を磨いて泡を口内に作りながら思った。
そしたら俺が通っている学校とかも多分色々違ってくるのだろうから、休もうかとも思ったが、しかしネット小説あるあるの女性がエロに寛大な世界を考えるとチンコが膨らんだ。

――よし、ビッチになろう。

俺はその決意を胸に、口内に溜まった泡を捨てに洗面所に向かった。

♀♂

俺は電車通学だ。がたんごとんと、乗車率180%という限界突破を迎えている中で、いつも立ちながら世界の滅びを期待している。
電車に乗る前に周囲を確認したら、女性に対しての『痴女、ダメ、絶対!』というポスターを見かけたり、俺のことをチラチラと見てくるOLの視線を感じたり、男性専用車両の存在を確認したりした。
思案して、俺はあえて男性専用車両の横の、男女共用車両に乗り込んだ。

痴女されたかったのだ。
お尻やチンコを触って欲しかった。

考えると、俺が元の世界で見かけたわざわざすぐ隣にある女性専用車両に乗らない人は、この世界からやってきていて痴漢されたかったのかもしれない。

気持ちは分かる。
俺も女性に触られたい。

ぎゅうぎゅうと、何時ものように肩と腕に人の体重を感じながら、人ごみの気持ち悪さで嫌になる。クソが。世界滅べ。

「ハァハァ……」
「む……」

お尻に手の平を感じた。まさか初日から痴漢(まだいちいち女に言い換えるのに慣れていない)されるとは思わなかった。
いやしかしけれど、これは本当に痴女なのか? 触られているといえば触られているが、さりげなくさりげなくで分からない。事故と言えば事故だし、痴女と言えばきっと痴女だ。
怖くて声を上げれないということはない、分からないのだ。痴女ならもっとがっつり触って欲しい。俺のこっそり買っていたエロゲだと電車の中でも構わずパンツをズリ下ろして挿入までしていたものだが、現実の痴女だとこんなものなのだろうか。
やれやれ。俺はため息を吐いた。
そういえば肝心なことを確認し忘れていたと思い、俺は痴女であろう人の様子をこっそり確認した(痴女が痴女だとバレないようにこっそりという俺の配慮だ)。果たして、手を伸ばしているであろう人物は――

――化粧の分厚い40代くらいのババアだった。

「ぁ……」

俺はまたゆっくり前を向いた。尻に手の平の体温を感じながら。
俺は。
俺がいったい、何をしたと言うのだろう。
怒りと悔しさが心の底から湧いてきた。世の女性たちはこんな非道を恐怖で告発できず、黙って受け入れていたというのだろうか。そう考えると俺は泣けてきて、チンコもしなしなだ。悔しすぎて我慢汁という涙もチンコの先から出ない。
悔しかった。
ただ悔しかった。
俺はそれでも黙って女性に性的興奮を覚えられることにある種の興奮と、女性に尻を触られているという快感を覚えながら、悔しさで肩を震わせた。

悔しい……! でも感じちゃう……!

「おい」

俺が悔しさに震えていると、突然その呼びかけと共に手を取られた。
前に座っていた、俺と同じ制服を着た女子高生だった。

天王寺
てんのうじ
玲央
れお

吊り目ぎみの男顔負けの目力と、整った顔立ちは女性のファンも多い。俺より多い。俺は0人だから一人でもいたら勝ちだが、この天王寺という女性は冗談ではなくファンクラブがあるくらいに多い。
勉強ができて運動もできる、唯一苦手なのが家庭科というのもチャームポイントで、欠点があるが故の完全有欠の抱かれたい女子高生ランキング一位(俺調べ)のイケメン女子高生だ。

「お前、替われよ」

乗車率180%の電車で、それでも席に座れていたはずの天王寺は俺の手を引っ張って、俺と入れ替わるように無理やり座席に座らされる。

「……えっ」

どうしてこんなことをしたのか、その答えには苦労しない。
も、もしかして天王寺さん……俺が痴女されてることに気が付いて……?

「勘違いするなよ。目の前で震えててうぜえから座らせただけだ」

キュンキュン♡
金玉に精子が製造される音が聞こえた。

♀♂

けどよく考えると、別に助けてもらわなくても大丈夫だった気がする。
むしろ俺は痴女の行動を期待していた節さえあって、それを考えると痴女から助けてくれたのは余計なお世話だと文句を述べるべきなのかもしれない。
天王寺様はそんな俺の思惑を知ってか知らずか、「じゃあな」と同じ降車駅で一人先にすたすたと学校に向かっていってしまった。

ふーん、おもしれー女。別に最後にわざわざ別れの言葉を言ってくれたことに嬉しさなんて覚えない。

嘘だ、ちょっと嬉しい。
この世界だと俺はメス堕ちしてしまうかもしれない。しかし男女の価値観が逆転しているので、オス堕ちという言い方が正しい気がする。

「やれやれ……」

俺はため息を吐いた。
あの天王寺も、俺が「エッチしたい」と言ったらエッチするのだろうか。悪くない。今日にでも言いたい。天王寺さんに会いたい。胸がドキドキする、股間が期待で膨らむ、これを恋と言わずなんと言おう。それはきっと――性欲。

止められない、止まらない。
その日の授業など手につかない。
織田信長が織田信奈とか女性に変わっているせいで社会の小テスト0点取ったことなんて知らない。
俺の友達が「女子ってマジ馬鹿」とか言っていて変なオス堕ち気持ち悪いとか思う暇なんてない。
俺の友達が「女子ってマジ変態」とか言っていてエロサイトを教えあえる友達を失ったことを悲しむ暇なんてない。
俺の友達が「男同士ってどう思う」とか俺の胸を見ながら言っていて、友達を失ったことを確信したことを悲しむ暇はあった気がする。

ともあれ。
ともあれ、天王寺だ。
天王寺はそのスポーツ万能の才能を持ちながら、帰宅部という選択を取っている天王寺だ。俺も帰宅部でお揃いだ。

「天王寺さん」

夕焼けを背中に浴びながら階段を下る彼女に、俺は声をかける。
イケメン女子高生であるがゆえに、彼女と一緒に帰るのは恐れ多いとされ、またファンクラブの牽制が故に一緒に帰る友達がいない彼女に声をかけるのはあまりに容易だった。

「……なに? 朝のことだったら別にどうでもいいけど」

振り向きながら、夕焼けで彼女の顔はオレンジ色に染まっていた。
その強い目で、俺を見つめるその姿にたじろぎそうになるが負けない。

「俺と」

緊張する。
興奮する。
彼女の顔を見れない。外と中で部活動に励む学生たちの喧騒がこの静かな俺と彼女だけしかいない空間によく響く。
言い淀む。
彼女の顔を見る。
「俺と」と、もう一度言う。

「俺と――エッチしてくださいっ!」
「…………は?」

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