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神様、とりあえず隕石を落としてください

昨日天王寺とエッチして。
今日天王寺と付き合って。
そして今日、俺は援助交際をする。

……言い訳をさせて欲しい。

誰に向けてと言うか、俺に向けてだ。
だってこれじゃあまるで、俺がスケベな節操なしのクソ野郎みたいじゃないか!

俺はただ、男性がエッチしつつお金儲けできるって実感がわいて、天王寺と付き合った今日この日にでもやってみたくなっただけなんだ!
……うん。
言ってて気づいたけど、単にスケベで節操無しなのかもしれない。
天王寺に申し訳なさは――まあ、あんまり湧かない。
これで別れられたら、その程度なんだなって話だ。天王寺に特別好きになってもらおうなんて清純な思いは、俺たちの付き合い始めから間違っているから。
俺は息を吐いて、電灯と店の明かりで照らされているだけの夜道を歩く。横の道路では、仕事帰りなのかライトをつけた車たちが次々と通っていく。
……今8時半なんだけど。日本の労働時間は8時間だから、この時間で普通に帰ってる人たちは10時出勤とかなんだろうなあ(遠い目)。
働きたくねえ……マジでパンツ売って暮らしていこうかな。株式会社パンティーの設立だ。

「うーん」

歩きながら唸る。どうしようかなあと組んだ手を頭の後ろにやりながら悩む。
当たり前だが、俺は援助交際が初めてだ。
当初はSNSで相手を探してみようかとも考えたが、相手の選別にどれだけの時間がかかるか分からないし、そもそも金儲けだけが目的じゃないから止めた。
俺は、いいなって思う女性とエッチしたいんだ。そしてあわよくば、お金も欲しいんだ。
強欲に次ぐ強欲。あまりの自分の欲深さにチンコが膨らむ。くくく、夜道を欲深く歩くその姿はさながらインキュバス。人々の精と金を搾り取るのだ。
元の世界でそうであったように、男子高校生には一定の需要があるはず。そこを突く。需要と供給を叶えてみせる。
株式会社パンティは従業員一人からなる、ホワイト会社ならぬホワイト放出会社だ。

そしてどこかで曲がって、明るい公道から離れた道を歩く。店と住宅と、時々マンションが入り乱れてる少し暗い道を歩いてみる。
8時半だからまだ人は普通に歩いてたりするけど、丁度いいなって思う人は案外少ない。
お金が持ってそうで、可愛い人で、俺と援助交際してくれそうな人。……難しくない? そもそも、見知らぬ女性に『俺とセックスしない? アーハン』とか声かけるハードルが高い。
それで断られたら精神的にもキツすぎる。第一、俺は特別カッコいいわけじゃないから、金まで払ってセックスしたくなるかと言われると、微妙な気がする。高校生の価値が俺の需要を高めてくれることを願うしかない。

「ぁ、そ、そこのおねーさ……」
「?」

試しに声をかけてみたら自分に声をかけられたと思ってないのか、そのままスタスタとどこかに行ってしまった。
……見知らぬ年上の女性への声かけ、ムズイかも。
まず、それなりの人がいるところから離れるべきだ。自分に声をかけられてるって、気づかせる必要がある。
うーん……。

「よし」

ピーンと来た俺は、コンビニに行った。
コンビニに行った、と言っても、中には入らずに店の外だ。車が突っ込むのを防止するアーチ形のポールに腰を掛ける。
歩くのも疲れたので、待ち伏せだ。ここで良い感じの人を待とう。待っている途中で、援助交際の用語である『ホ別(ホテルは別で代金を貰うこと)』や、『いちご(一万五千円の隠語)』を調べたりする。
待っているだけなら、心の準備もできた。
そして時々来る女性の視線に、首をかしげて返して慌てて目を逸らされたりを楽しんでいた。
ほっほっほ。
これだこれ。
逆転世界の醍醐味。女性に意識される俺っ!
夜だし肌寒いから、服装的には肌は見えないやつだけど、今度は肌が見えるタイプで試してみたいな。

「あ」

客を物色して、このコンビニの客層分析というマーケティングが終わりかけてたところで、コンビニを通り過ぎて夜道を歩く良い感じの女性を見つけた。
黒色のボブカットで、肩に掛けるカバンを心底重そうにしてる、せっかくの可愛い顔を見るからに疲れてそうにどんよりとした雰囲気で台無しにしている、この世界に希望なんてないと信じて疑わない目をした女性だ。
優しそう。
働いてそう。
断らなさそう。
よしっ、と決心して、心の中で何度も練習したエッチな声かけを披露する。

「そこのおねーさん」

♀♂

周囲で彼氏を作ってセックスをしている事実に興奮と羨ましさを覚えていた学生時代、宿題を忘れた日にはよく、学校に隕石が落ちてきて、宿題どころじゃなくしてくれないかなあなんて馬鹿みたいなことを考えていたものだ。
そして、社会人になって帰路につく私――栗原
くりはら
玲奈
れいな
は思う。

――会社に隕石落ちてこねえかなあ。

何も変わらない私が居た。
いや、何も変わらないというのは違うか、働き始めた。
高校を卒業し、大学を出て、普通に就活して普通に就職した。それで働いて働いて、会社では女の上司からのパワハラ、同期からは手柄を奪われ、私の評価は地の底。『使えない奴』なんて言葉を吐かれた日には、手柄を奪うことと上司のご機嫌取りしか能のない同僚と先輩たちのゴミさ加減を懇切丁寧に説明してやろうかと思った。
でも、よく考えたら上司も普通に、人を殴ったり蹴ったりのパワハラしつつ部下からの手柄も奪うゴミだった。
仕事に追われて、仕事を終わらせて、なぜか仕事が増える。
さながらハムスターの回し車のように、仕事が来る。そのくせ評価だけは減っていく。
唯一良かったと思う点は、今週は土日が休みだということ。毎週土日休日なんて紹介は嘘だった、年間休日120日以上なんて嘘だった、みなし残業なんてあってもそれ以上に残業するから意味はない。
そしてせっかくの休日も、寝て終わるだろう。
寝て、起きて、疲れ果てた私はせいぜい一週間分溜めた洗濯物をどうにかして寝るだけ。寝たら明日が休みだという幸せと、もう休みの一日が終わる絶望を噛み締める。
死にたい。
普通に死にたい。
最近、よく死ぬことを考える。
死んだら楽になれる――とか、馬鹿にしてた考えだけど普通に考える。
死んだら全部忘れられる。
死んだら全部押し付けられる。
死んだらもう――何もしなくていい。
洗濯も、風呂も、仕事も、買い物も、何もしなくていい。
何もしないことが幸せだ。何も気にしないことが幸せだ。

「死にたい……」

最近は、口にも出るようになった。
一人、賃貸の部屋で日曜の昼くらいに、明日の仕事が始まるまでに24時間きったことを意識したところで不意に出てくる。
死にたい。
死にたい。
マジで死にたい。
時々何もないのに涙が出てくる。
友達と遊ぶ暇なんてない。
彼氏を作る暇なんてない。
彼氏を作れる気もしない。
彼氏を作ったところで、セックスまで行ける気はしない。私はセックスがしたいだけだった。
風俗に行く元気もなければ勇気もない。お金はあってしたい気持ちはあっても、行動するというのはひどく面倒だ。
そんなことだけを考えながら歩いていると、不意に横から声が聞こえた。

「おねーさん、俺と遊ばない?」
「……え? え?」

黒く濁りきった意識の中で、突然男性から声をかけられて我に返る『え』と、いきなりの提案に驚く『え』だった。

「ホ別、2万でいいよ」

そうピースサインと共に笑いかける男は見るからに若かった。
若すぎた、と言ってもいい。
見て、高校生くらいだなと思うくらい。
で、なんだ? ほべつ? にまん? 何を言っているのか理解できない。

「えと、じゃあ、ホ別いちご……」

何も言わないでいると男は、指を一本畳んで『にまん』の部分を変えて言い直す。ひどく可笑しいことだが、その時の私は二万という日本語よりも、一万五千円を表すいちごという隠語の方で「ああ」と納得した。

――援助交際だ。

「……えーっと」

我に返った私は、不安げに見てくるその男を見る。
4月後半の時期だからか、黒のシャツの上に白のカーディガンを羽織った長ズボン。顔は、スッキリとしていて明るそう。援助交際なんてする見た目にはとてもだが見えない――学生時代にクラスに一人はいた、友達もいて普通に勉強もできる育ちの良さそうな優等生っぽい子。

「ね、いいじゃん。あそぼっ」

男は私の腕に抱き着いてきた。
……うん?
男性の温かみと、おっぱいが腕に当たってる。
…………うん?(脳死)

「おねーさんの家でもいいから。時間制限とかも、ないよ?」
「あ、はい」
「ん? いいの?」
「あ、はい」
「やったー」

腕から離れて万歳する男。可愛い。
……ん? 私、今から人生初のエッチするの?

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