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青い光

「おまえ……誰だ……?」

呆然として、絞り出すように問いを放つ。
夜闇に浮かび上がる、人ならぬ者は、からかうように嗤った。

「はて、誰であろうかの。
こうして人の子に、神託を下していたのも、あまりにーーあまりに、遠い彼方のこと。
ここがどこで、今が何時なのか。聞きたいのは妾の方よ」

どこか寂しげに言われて、黒宮は何とか気を取り直す。
今まで、不気味でしかなかった、神のごとき何か。
人の夢に入り込み、ノイズ混じりの観念を届けてきたもの。

それとて、全能ではないのだと。
そう知って、ひどくほっとするのだ。

「ここは、おまえからすれば、地の果ての島国。
今は、人の言う神の子、ナザレのイエスの生誕から2000年以上経った後だ」
「神の子とな?暦に名を残すとは、どの神の子であろうか。
妾の祭司よ、神とて数多く、種をまく者も多い。どの神の……」

「自分以外には神はいないと、そう宣言した神の子だ」

沈黙がふたりの間に降りてきた。
居を突かれたように、神の如き何かが、言葉を詰まらせる。

「……妾を呑み込み、不敬にも己が糧とした魔術師がおった。
神殺しを為した彼奴は、確かにそんなことを言っておったわ。
とんだ戯言もあったものと、そう、思っておった……」
「その魔術師は、俺の夢に出てきたぞ。気に入らなかったんで、殴り倒した。
それで手に入れたのが……」

「妾の力、というわけよ。そこから先は知っておる。
人を惑わす青き光も、娘に与える加護の力も、妾の力の残滓ゆえな。
目覚めてみれば、妾に祭司がおるから驚いたわ。戯れに神託を降らせたが、言う通り励んでおったな。褒めてやろう」

やっぱりか。
黒宮は納得がいった。棚ぼたで手に入れた、奇妙な力。
その出処が、「それ」なのだと、とうとう確証されたわけだ。

「俺はおまえの祭司になったつもりも、なった覚えもなかったけどな。
それで、どうする?おまえの祭司になれば、今のまま、この力を借りることが出来るのか?」

それが、最も重要なこと。
知らず黒宮は、唾を飲み込む。すると、何がおかしいのか、「それ」はからからと笑った。

「そう怯えるでない。そなたは既に妾が祭司よ。
信徒なき時代に、祭儀を行うには、青き光も役に立とう。祭儀を行い、妾の力を地に広めよ。
それこそがそなたの……む?」
「おい、どうした? 大丈夫か?」
「ほ、人の子に心配されるとはの。なに、この器に宿るも、もう時間切れよ。
神降ろしは巫女を消耗させるゆえ、長くは続けられぬ」

そうだった。
得体の知れない存在が、静香の肉体を操っているのだ。
いくら黒宮でも、抱いた女のことは心配になる。

「なら、静香を労ってやってくれ。今日は乱暴にしたんだ、あんまり無理はさせたくない」
「情が移ったか。ふふ、良きかな、良きかな。
では妾はしばし去るとするが……そなたが励んだお陰でな、少しは力も戻ってきておる。
褒美じゃ、そなたとこの女には、贈り物をしてやろう」

そのとき。
何故か、黒宮は背筋が怖気立つのを感じた。
目の前の、「それ」が微笑むさまは、ひどく不吉で、恐ろしく。
気まぐれで、恵みも災厄も振り撒く、古き神々の片鱗が見えたのだ。

「おまえ、一体何を……」
「……朝を楽しみにするがいい。種を芽吹かせるには、花が散らねばな」

そして黒宮の意識は闇に落ちた。

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ぶー、ぶーっと振動音がする。
携帯電話の音だ。

「……朝、か? おい、起きろよ、携帯が鳴ってるぞ」
「んん……もう、少しだけ寝かせて……ああん……」

しどけない格好で、静香が起き上がる。
そこには、昨夜の神降ろしの痕跡など、どこにも残っていない。
それに黒宮は安堵していた。

なのに、どうして、こんなにも胸がざわめくのか。
なぜ、朝の光が、こんなにも不吉に感じられるのか。

「はい、香月です……え、テレビを見ろ? 死んだ? あの人が?」

どくりと、心臓が高鳴った。
滅多に使わないテレビのリモコンを見つけて、スイッチを入れる。

映っているのは、海外のホテルの映像。
日本人の富豪が、愛人と密会中に、発作で突然死したという知らせだった。
名字を、香月、という。

「……あいつ……」

脳裏に、あの存在の微笑みが浮かぶ。
資本と科学の支配する時代に、場違いにも現れた「それ」。
古き神々の一柱が、こうして、確かに蘇ったのだった。

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