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間話 敏腕アドバイザーとアイドル

その日は歌番組の収録があった。
夏桜シスターズの出番もある、というので、進展はあったかな、と顔を出した黒宮だったが。

その光景は、黒宮をして、言葉を失わせる。

それは他愛もないラブソングだ。年に何百、何千と作られて、流れては消えていく、ありきたりな曲。
それを加奈が歌うだけで、本物の感情が込められた、胸の詰まるような生々しい愛の歌へ変わる。
何の化学反応か、他のふたり、リズと七海も普段以上のパフォーマンスを発揮していた。
互いのことを知り尽くした、完璧に息の合った3人が、始めは振り付けをなぞりながら、徐々にそれを変えてゆく。

その切っ掛けはやはり加奈で、それはとても自然な、いつもの3人のやり取りのように見えた。見えただけで、黒宮の横にいたマネージャーは目を白黒させている。
全く台本にない即興だと、嫌でも分かってしまった。

愛の歌に合わせながら、リズを見つめ、七海の手を取り、陳腐な歌詞に命を吹き込む。
ずっと一緒だと、飽きるほど繰り返されたフレーズに合わせて、3人、手をつなぐ姿は強烈な印象を残した。

「……マジかよ」

ありきたりのラブソングは、この3人の繋がりを歌うように変容する。
終いには歌詞も変わって、字幕と合わなくなっていた。
色々吹っ切れた加奈に振り回されながら、ふたりはそれをとても楽しそうに受け入れて。
どきりとする、ありのままの笑みを浮かべ、即興で変わる歌詞に即興で応えていく。

曲が終わると、大歓声が会場に響き渡った。

(効果ありすぎだろ……なんだあれ)

すっかり一皮むけた3人を見て、黒宮は頭を掻いた。
そこへ、出番を終えた彼女たちがやって来る。
先頭を歩くのは、案の定加奈で、ハイテンションのまま手をぶんぶん振っていた。

「アドバイザーさーんっ! どうどうっ、今日のは良かったでしょっ!」
「お、おう……見違えたな」
「へっへー、あたしちょっと思い違いしてたっ! あたしたちの強みなんて、最初っから決まってたのにねっ!」

ぐいっと、両脇のリズと七海を抱き寄せ、こんなに幸せなことはない、という満面の笑み。
その場に居合わせた、誰もが見惚れてしまうような、魅力的な笑顔。

「ふふっ、加奈ったら元気だね。今日の主役」
「後半アドリブばっかりだもの、わたし、びっくりしちゃった」

それに引っ張られながら、七海もリズも、ひどく嬉しそうに笑う。
特に「あれ」の加護や祝福があったわけではない。なのに常以上の魅力を放っているのは、それが素の表情だからか。

「なんだか、随分な悟り体験をしたみたいだな」

自分たちにはこれという強みがない。
そう呟いた時からは、想像もできない確信が、彼女にはあった。

「あたしたち、3人でいることが強みなんだって、思い出したんだっ!
アドバイザーに相談した後から、なんだか頭がスッキリして。何をしたいのか、はっきり分かったよ。ありがとっ!」

そうして3人は、姦しくお喋りに興じながら、控室へと消えていった。
半ば呆然としたマネージャーが、ぽつりと言う。

「さ、流石ですね、黒宮特別アドバイザー。
評判はお耳にしていましたが、これほどとは……」

俺は何もしてない、という魂の叫びを飲み込んで、黒宮は訳ありげに頷くのだった。

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