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甘城奈々と青春の味(1)

黒宮恭一は二足のわらじを履いている。
テレビ局の特別アドバイザーという職と、女子学園の特別職という、怪しげな仕事だ。
どちらも定時はおろか、出勤日すら決まっていないので、気が向いた日に気が向いた方へ行く、というのが流れになっていた。
その日は学園に足を向けることにした。
珍しく女子寮に直行せず、校舎の方に顔を出したのだが。

「あ、黒宮先生っ! お疲れ様ですっ」
「先生、もっと学校に来て下さいよ。来てくれないと寂しいです」

昼休みの廊下を歩けば、それだけで女子生徒たちが黄色い声を上げて集まってくる。
その反応に、黒宮は首を傾げていた。
女子寮の生徒たちは、確かに美味しく頂いて、モノにしている。
しかし、それ以外の生徒たちとの接点と言えば、たまに恋と一緒に行う怪しげな授業と、こうしてぶらついて雑談するくらい。

(なんだこりゃ。俺、何かしたか……?)

確かに、男性の少ない……というか、ほぼ皆無の学園である。
年頃の、思春期の少女たちが、突然現れた男性にキャーキャーいうのも、まあ、あり得るのかも知れない。
それにしたってこの反応はないだろう、と黒宮は首を傾げる。

首を傾げながら、生返事を返していると、いつの間にか生徒たちと昼食を取ることになっていて。
きゃあきゃあと黄色い声に囲まれながら、まるで不思議な夢の中に迷い込んだような気持ちになる。

(まるで青春時代……ってことは、ないな。俺の青春は、こんな良いもんじゃなかった)

灰色の青春時代を思い出し、苦い気持ちになって頭を振る。
まあ、もし華やかな青春を送っていれば、きっとこんな力を得ることも無かったのだろう。
結果だけ見れば、収支は大きなプラスなのだ。
女子学園の食堂で、女子に囲まれてお昼ご飯なんて、当時の自分が見たら舌打ちにしたに違いがない。

「センセって、イリスさんとも仲がいいの?」

いきなり飛んできた質問に、思わずお茶を吹き出しそうになる。

「ま、まあ、相談に乗ることはあるぞ。あいつも難儀な性格をしてるからな……」

まさか、事あるごとにセックスする間柄だ、とは言えない。
話題を振ってきた女子生徒は、イリスのことを思い出してだろう、うっとりしたように呟いた。

「イリスさん、神秘的だよね……同性のわたしが見ても、見とれちゃう」

神秘的。
確かに、初対面でイリスに抱く印象としては、間違っていない。
だが、実際に長時間話してみれば、大分違った印象を抱くだろう。

「神秘的、ねえ……あいつ、結構口が悪いんだよな……やたら喧嘩っ早いし、神秘的というよりは面倒くさ」
「あら。人がいないところで、結構なことを言ってくれるじゃない、黒宮先生?」

後ろから響く、冷たくも綺麗な声。
ものすごく聞き覚えのある声に、黒宮は嫌々後ろを向いた。

「噂をすれば何とやら、だな。ようイリス」
「学園内よ。そういう挨拶はやめて頂戴……まあ、貴方に言っても無駄かも知れないけど」
「へいへい、気を付けますよ……ああ、そうだ」
「なに?」
「お前は面倒な奴だが、そこが面白い。喧嘩っ早くて獰猛だが、その度胸は大したもんだよ」
「……不思議ね。全然褒められてる気がしないわ。
そこ、ちょっとどいて。私が座るから」
「おっと」

イリスはさも当然のように黒宮を押しのけ、椅子を持ってきてテーブルに付いた。
そして、自分の話題を出した少女を見て、クスクス笑う。

「甘城さん、だったかしら。ご覧のとおり、私は口の悪い面倒な女よ。そう神秘的でもないでしょう?」
「う、うう……確かに、ちょっと身近になったけど。
やっぱり、センセとすごく仲いいなあ、イリスさん……」
「この男と、私が? 困ったわ、甘城さんとは仲良くしたかったのだけれど……そんな侮辱をされたら、私何を言い出すか分からないわよ?」
「えー! そんなぁ!」

いつもの調子のイリスに、黒宮は声を上げて笑う。
つられて、昼食を囲んでいた少女たちも花が綻ぶように笑っていた。

ひょっとすると。
イリスも、ひとりで悪霊と向き合っていた間は、自分の殻に篭って、軽口を叩くことも無かったのかもしれない。
銀髪の、妖精じみた容姿の美少女だ。
それが苛酷な運命と、超然として向き合っていれば、それはさぞ神秘的だろう。
だが黒宮としては、こうして軽口を叩くイリスの方がずっと魅力的だし、健全だとも思う。

こうして、同年代の生徒たちと、普通の友達付き合いが出来るようになったのなら。
自分も少しは、教師っぽいことをしているのかもと、柄にもないことを考えていた。

そんなことがあった昼休みの終わり。
三々五々、授業を前に食堂を後にする生徒たちの、流れに隠れるようにして。

「(センセ……あとで、これ、読んで……)」

甘城、と呼ばれた生徒が、黒宮のスーツのポケットに白い封筒を忍ばせると。
さっと耳打ちをして、すぐに生徒たちのグループに紛れ込んでしまう。

ひとり食堂に残った黒宮は、封筒を見て固まっていた。
ハートマークのシールで封がされた、白い封筒。
誰がどう見ても、それはラブレターと呼ばれるもの。

「……これが、青春ってやつなのか?」

遅れ馳せにやってきた、青春の甘酸っぱさというモノを前にして、黒宮はどう反応していいか分からず、呆けたように立ち竦むのだった。

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