巨乳キャラあつめました

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ゴドーを待ちぼうけて(2)

「すみません、相席、いいですか……」
「お、おう?」

古き神の率いる行列が、夜の中に消えていった後。
喫茶店の中に、一人の少女が辛そうな顔で入ってくると、幽鬼のような有様で、黒宮の横に腰掛けてきた。
店内は大分混んできているので、相席も仕方がないが。その様子はあまりに尋常ではなく、3人とも、何とも言えない顔になる。

「(……貴方、ひょっとして、この子も知り合いではないでしょうね?)」

イリスが頬を引き攣らせて言う。
『生徒の10人や20人は毒牙にかけていても驚かない』とは言ったが、それはものの言い方というもので。目の前に次から次へと登場させられては、たまったものではないのだ。

「(少なくとも、この子は違うぞ。誓ってもいいが、初対面だ。面識はない)」
「(そう。まあ、そういうことで嘘を吐くような男ではないわね)」

散々罵倒したり、皮肉を言ったりの間柄ではあるが。
イリスはイリスなりに、黒宮の性格というものを、理解している。
3人がアイコンタクトを取りながら、さてどう対応したものか、頭を悩ましているうちに。
少女はふらふらした様子で、注文を済ませると、濃いコーヒーと甘いデザートを貪るように味わっていた。
それはもう、カフェインと砂糖を頭に送り込んで、無理矢理に活力を絞り出そうとするようで。

「ねえ貴方、何かあったの?」
「なあおまえ、何かあったのか?」

黒宮とイリスは、殆ど同じタイミング、同じような問いかけを口にして。
互いを見合わせ、ぎょっとした表情を作る。

「ほんと仲いいよね、黒宮さんとイリスちゃん」

恋が茶化すように言うと、イリスも黒宮も、妙にあたふたとして。

「そんなことはないだろう」
「有り得ないわ」

これまた似たような切り返しをするものだから、恋は余計に面白がって、にやにやと笑う。
そうして口をへの字にした二人を置いて、恋は少女へ、いつになく優しい口調で語りかけた。

「まあ、ご覧の通り。この二人は、そんなに悪い人じゃないよ。
イリスちゃんは、まあ、ちょっと喧嘩っ早いし、時々変な信念で暴走しちゃうけど、根はいい子だよ。
その男の人、黒宮さんって言うんだけど、これがすごいプレイボーイで、もう、あなたみたいな女の子を近付けるのは、うーん……正直、すごくどうかと思うんだけど……」

じとっとした視線を向けるイリス。頭を抱える黒宮。苦笑いしたまま言葉を切る恋。

「ま、まあ、困った子を見て、見過ごすタイプじゃないんだよね。どう? ちょっとお姉さんたちに、相談してみない?」

デザートを食べ終わった少女は、ぽかんとした様子で恋を見つめていた。
たまたま相席になった相手が、いきなりそんなことを言ってくるのだ。しかも、そのうち二人は、とんでもない美人。
銀髪の浮世離れした美少女に、モデルでもやっていそうな美人だ。

「相談っていうか……相談してどうなることなんかじゃ、ないっていうか」
「そうかな。たぶん、“どうにか”なっちゃうよ。きっとね」

ひどくはっきりと言い切る恋に、今度は少女が目を丸くする番。
根拠もなく確信に満ち、あまりにも堂々とした顔を見て、疲れ果てた少女の心に年相応の反抗心が芽生える。

「簡単に言いますね。じゃあ、わたしが待ってる人、見つけてくれますか」
「おや、誰かと待ち合わせなの?」
「ええ。“神様”とですけど」

それなら、さっき通り過ぎたばっかだぞ。
黒宮はそう言いたくなる気持ちを抑えるのに、必死だった。

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綺麗な女の子だ。
というのが、黒宮の、身も蓋もない感想である。
肩にかかるくらいの、パーマをかけた髪。ファーのついたジャケットに柄つきのシャツ。下は短めのタイトスカート。
耳元に光るピアスと、鮮やかなネイル。今どきの、お洒落好きな女の子、という感じだった。
整った、クールな美貌には、ひどく厭世的な色合いが浮かんでいて、それが少女を大人びて見せている。

「神様、ねえ……」

さてどうしたものか。
黒宮は頭の中で、「あれ」は呼べば来るんだろうか、などと思っていたが。
ふと、こんな話をされて、文字通りに受け取るのは、今この場にいる3人だけではないかと気が付いた。
この年頃の少女が、夜の街を徘徊して、喫茶店で休むのだから。
待っている「神様」というのは。

「ひょっとして神待ち、してるのか?」
「……はい。わたし、一週間、ずっと“売り”やってホテルに泊まってたんですけど。さっき、チンピラを連れた女の人に捕まったんです。
すごく脅されました。勝手に商売するな、先に話を通せって」

神待ちから、援交、そしてヤクザに捕まった話に飛んで、黒宮は思わず顔をしかめる。
少女の、淡々とした話しぶりが、かえって真実味を増していた。

「やっと解放してもらえた時、女の人が言うんです。
今夜は、本当に神様が来るかも知れないから。もし神様が来て、許してもらえれば、好きに商売していいって。
……変な話ですよね。神様って、この街の隠語か何かなんですか?」

(何だその女。まるで、今夜、『あれ』が来るって、知ってたような……)

黒宮は奇妙な引っ掛かりを覚える。
援交少女に、ヤクザが縄張りの話をするのは、分からないではない。
だが、神様の話のくだりは、あまりにも変だ。ヤクザというよりは同類の、それも「あれ」を知る者の言い草に聞こえる。

「どう言ったもんだかな……ま、ひとまず乱暴な解決策があるぞ」

そう切り出すと、恋とイリスが揃って口を挟む。

「あ、なんだか嫌な予感」
「ロクな解決策ではないわね」

「はいはい、おまえらの想像通りだよ。どうせ神待ちしてるんだ、俺の家に来ればいい。部屋は沢山余ってるからな」

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