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4話 やはり魔物は魔物ってことで

ルクレイアの言う「お屋敷」とやらまではあっという間だった。
かの逆レイプメイドさん、なんと俺を肩に担いだうえに縛りあげたゾンビッチを脇に抱えて普通に走りやがったのだ。

正直ちょっと引く。
見た目は俺より全然華奢なのに、いったいどこにそんな力があるのか。
改めて、彼女が自分とは違う生物――魔物だということを認識させられた。

そのまま草原を駆け抜けたルクレイアは、やがて街と思われる区域に入り、裏通りを突っ切った。
肩の上でぐわんぐわん揺らされながら訊ねたところ、裏通りを進むのはあまり目立ちたくないという理由らしい。手慣れた様子に「こいつ実は人攫いなんじゃないか」と不安が過ぎらざるを得ない。

そうして到着したお屋敷は、お城かと見紛うばかりの立派な建物だった。

広い庭園。
なんか良く分からない彫像。
威圧感と風格を兼ね備えた年代ものの大きな屋敷。

辺りが暗いので全景は覗えないけど、鹿鳴館とかそんな感じだろうか。

一般的平民の俺としては、その建て構えだけで萎縮してしまう。ほれ見ろ。曝け出されたままのおちんぽ様も、縮こまっていらっしゃるじゃないか。

「……それがお客様の正装なのかもしれませんが、お屋敷の中では相応しくありませんね。主にお目通りする前に着替えて頂いてもよろしいでしょうか?」

「あれ? 俺、裸族か何かだと思われてる?」

「いえ。お早いタイプの型だとは認識しておりますが」

何が? とは聞かないでおこう。
挿入即射を決めてしまった俺の心が防衛機能を展開していた。

ともあれ屋敷に着いた俺たちは、その足で小さな客間へと入室を果たす。

「こちらに替えの衣服をお持ち致しましたので、お好きなものにお召し替え下さいませ。その間、わたしは主に報告して参りますので」

「あ、ルクレイアさん」

「はい?」

「見たところ女物しかないみたいなんだけど……」

「申し訳ございません。当屋敷には……というより、この世界には女性しかおりませんので」

なん……だと……?

い、いや、待て、落ち着け。
そうだ。あのエレベーターガールが言ってたじゃないか。
この世界は「サキュバスたちが住む世界」だと。それに目の前のメイドも自分をサキュバスだと名乗っていた。
つまりはそういうことなのだろう。

「ご理解頂けたようですので、一度席を外させて頂きます」

ルクレイアはそう言って恭しく頭を下げると、音も立てずに部屋を出て行ってしまった。
一人取り残される心細さを感じながら、俺は彼女が用意してくれた服を物色する。

やっぱり女物ばかりのようだ。けど中には執事服のようなものもある。とりあえずこれに着替えることにするか。
てかスケスケのスカートとか紐みたいな服も用意してあるんだけど、まさか俺がこれを選ぶとでも?

まったく考えの読めないメイドである……。

……。

着替えを終えてしばらく。俺はルクレイアの案内で食堂に通されることになった。食堂といってもとてつもなく広い部屋で、ちょっとしたダンスホールくらいの広さだ。

床には金糸をあしらった青い絨毯が敷かれ、天井にはシャンデリア。等間隔で壁に掛けられたキャンドルがゆらゆらと室内を照らし、なんかもう「ザ・貴族」って感じ。

その雰囲気に俺が尻込みしていると、椅子を引いたルクレイアに座るよう誘導された。
一度に三十人くらい食事出来そうな長テーブルだ。
けれど座っているのは俺以外に一人だけで、他のメイドたちは全員が壁の花になっている。

つまり俺の正面に座っている女性がこの屋敷の主なのだろう。

「よくおいでくださいましたわねぇ~お客様。わたくしが当家の主、リュドミナ・ヘリセウスですわあ~。突然の招待にも関わらず、応じて下さり誠にありがとうございます」

たおやかな微笑みと共に名乗ったリュドミナさんは、思わず見蕩れるほど妖艶な女性だった。

腰まで伸びた柔らかそうな髪はアメジストを思わせる紫色で、普通の人がこんな髪をしていたら下品に見えるかもしれないけど、彼女にはとても良く似合っている。
なだらかな眉。整った鼻筋。深青のルージュを乗せた唇は、ぷるんと瑞々しい。
全体的におっとりして気怠い雰囲気を纏っているのに、どことなく威厳を感じさせる女性だ。

というか「お招き」なのだろうか?
俺の記憶が確かなら、肩に担がれ拉致されたような気がするんだけれど……。

まぁしかし、害意があるわけじゃなさそうだってのは、ここまでの扱いから理解している。
こっちとしてもアポイントメントなしの異世界訪問だし、なにぶん分からないことだらけなので、今は色々話を聞いておきたいという思惑がある。機嫌を損なわないよう、なるべくTPOに沿った返答を心掛けなきゃな。
貴族相手のTPOとか全然分からんけど。

「ご丁寧にありがとうございます。自分は涼井誠という者で、お察しかと思いますが人間の男。つまりあなたたちから見れば異世界人ということになります」

瞬間――ざわり……。
室内の空気が揺らいだ気がした。
ルクレイアから聞いていたであろうリュドミナさんは俺の自己紹介を聞いてもにこにこ愛想を崩さなかったが、壁の花と化しているメイドたちから熱の篭った視線を感じたのだ。

「ごめんなさいねえ~お客様。みんな生の男と聞いて落ち着かないのよお~」

異世界人ってとこより男ってとこに食いつくのか。
さすがサキュバス。全力でサキュバスってる。

「そ、そうっすか。まぁ種族が違うみたいだし、価値観は人それぞれですから」

「あらぁ~? その辺はルクレイアから聞いたのかしらあ~?」

「えぇ。皆さんがサキュバスってこととか、この世界には女性しかいないこととか」

俺が答えると、リュドミナさんがすっと視線をルクレイアに流した。

「ルクレイア」

「はい主様」

「あなた、食べたのお~?」

「いえ」

「……摘まんだのねえ~?」

「いえ。ただ、お客様がお困りだったご様子ですので、それをお助けしただけでございます」

「あ~……そぉ~。つまり、対価として手を付けたのねぇ……?」

「さすが主様。ご明察です」

話の流れ的に俺を襲ったことを咎められてるんだと思うんだけど、恥じ入るどころかルクレイアは胸を張って答えていた。なんというか面の皮が厚すぎない?
まぁリュドミナさんもその辺を分かっているらしく、「はぁ~……」と艶かしい溜息を吐いただけで、それ以上追求することは諦めたようだ。

「当家のメイドが失礼を働いたようで申し訳ございませんわあ~」

「あ、いえ、まぁ……助けてもらったのは本当のことですから」

言いよどんでしまうのも仕方ない。だってある意味「逆レイプされたんですね」って言われてるようなものだもの。まぁ逆レイプされたんですけどね。

「ですが、これで説明の手間が省けましたわあ~。わたくしたちサキュバスは~、男性の精を欲しています。今この部屋には当家のメイドが二十名ほどおりますけれど、その全員がお客様の精を得たくて仕方ないのですよお~?」

思わずギョッとして周囲に目を配った。
だが佇むメイドさんたちは静かに目を伏せ、壁の花に戻っている。今はそんな気配、微塵も感じられない。

「信じられないかしらあ~? ふふ。当家のメイドは躾が行き届いておりますからねえ~。……若干、行き届いていない者もおりますけれどぉ~」

そっと視線を向けられたのが誰かは言うまでもないだろう。
お前だよお前。

素知らぬ顔をするルクレイアに苦笑し、リュドミナさんは俺に視線を戻した。

「メイドたちがお客様に襲い掛からないのは、わたくしがそう命じているからですわあ~。ただしぃ~、お客様自身が望まれたなら構わないとも言い含めてありますけれどお~」

「……つまり?」

「信じられなければ、試しに『僕を犯して下さい』とでも言ってみるといいですわあ~。天国に行けると思いますわよお~?」

そんなこと言われても、さすがに言えるはずないじゃんね。
当然恥ずかしさもあるし、ルクレイアとのセックスでサキュバスの力の片鱗も体験してしまったし、何よりそんなことを言う必要性がないもの。

なのに俺は、その台詞を言いたくて言いたくて仕方なくなっていた。
リュドミナさんに「さぁ?」と促されると、逆らう気がまったく起きないのだ。

だから俺の口は無意識的に開いてしまい、そして……

「俺を犯し――」

……言えなかった。
最後まで言い切ることが出来なかった。

何故なら言い切ろうとした瞬間、室内の空気が一変したのだ。
まるで唐突にライオンの檻に放り込まれたような切迫感。ゾワリと背筋を駆け抜けたのは、明確な命の危機だ。全身の毛穴がぶわっと開き、汗が噴出すのを感じた。

「ふふ。天国まであと一歩……いえ、あと一文字でしたのに残念ですわねえ~。でも、今のでご理解いただけましたあ~?」

「は…………はい…………」

言葉が上手く喉から出て来ない。
理解した。理解させられた。
周囲にいるのは美しいメイドさんばかりだけど、今この場所は間違いなく死地なのだと。

「ではご理解いただいたところで今後の話を致しましょうかあ~」

そうして恐怖を刷り込んでから、屋敷の主人は妖艶に唇を歪めたのだった。

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