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18話 変わらぬ日常と、少しだけ変わった…

紅夜を乗り越えてから数日が経ち、屋敷内にはすっかり平穏が戻っていた。
あれ以降、何が変わったか?
少なくとも、目に見える分かりやすい変化はどこにも表れていない。
精液を得て満足したのか、ルクレイアの態度も紅夜以前と変わらないように見える。

もっとも、俺の方はそういうワケにいかなかった。
予想していた通り、あの日以降すげぇルクレイアのことを意識しちゃってるのだ。
顔を見るだけであの夜を思い出し、ちょっとソワソワしてしまうほどに。

だというのに、なんら変わらないルクレイアを見ていると「私のザーメンだけが目的だったのねっ!」とヒステリックに叫んじゃいそうだ。
遊び捨てられた女の心境だろうか。

と、ルクレイアのことを考えながら廊下を歩いていたからだろうか。廊下の向こうに、人目を避けるように小包を抱えたメイドの姿を発見した。
夜空を思わせる藍色の髪を揺らしながら左右を確認し、物置として使ってる小部屋に入ろうとしている彼女。……とてつもなく怪しい。

「なにしてるんだ?」

なので声を掛けてみると、ルクレイアはビクッと肩を震わせてから恐る恐ると振り向いた。

「誠ではありませんか。驚かさないで下さい」

「なんか怪しい素振りだったぞ? 友人としては、犯罪に走ったんじゃないかと心配になるくらいに」

「失敬ですね。完全完璧なメイドのわたしが犯罪など犯すはずがありません。わたしは自分に課せられた仕事を全うしようとしていただけです」

「あ~、贈り物の検分?」

「……はい」

返答に間があったような気がするけど、そこは気にせず俺は視線を小包に向ける。

「で、これがその贈り物か」

そう訊ねると、ルクレイアは思い出したかのように再び周囲に視線を巡らせ、誰もいないことを確認すると俺の腕を掴んでいた。

「お、おい?」

「いいからこちらへ」

そして物置部屋に俺を連れ込んだのだ。

部屋の中は、掃除道具やら何やらが詰め込まれていて非常に狭い。二人で入ると、意図せず身体が密着してしまうほどだ。
俄かに緊張し出してしまった俺をよそに、ルクレイアは平然と小包の包装を破り始めていた。

「なんでこんな隠れるような真似……」

「危険ですから」

「その中身が?」

無言で頷き、ルクレイアが小包の中身を取り出す。
危険と言われたので警戒したが、なんのことはない。ただの果物のようだ。

「どこかで見たことあるな……。あ、アレだ。リュドミナさんがいつも部屋で食べてるやつ」

「ムーンシャインという品種です。誠の世界で言うとブドウというフルーツに近いかもしれません」

「あー、確かに見た目は似てるな」

エメラルドグリーンの瑞々しい楕円形が房になっている様は、まさにブドウを思わせるフォルムだ。
ルクレイアはそれを一つもぎ取り、パクッと口に運んでしまう。

「毒見か?」

きっとそういうことなのだろうと聞いてみたが、彼女はムーンシャインを咀嚼したまま無言になっていた。
まさか本当に毒でも入っていたのだろうか?
心配になり顔を覗き込むと、突然ぷにっとした柔らかい感触が俺の唇に押し付けられた。

――キスされたっ!?

一瞬舞い上がりそうになったが、しかし違ったらしい。
口に押し付けられたのはエメラルドグリーンの楕円形。つまりムーンシャインの果実だったのだ。
内心ガッカリした俺は、八つ当たりのようにその果実を奥歯で噛み潰す。

と……

「うんまっ!」

ちょっと高級なブドウを予想していたが、それどころではない美味しさに、思わず声が出てしまっていた。

歯に潰され、ぷしゅっと弾けたムーンシャインの果実。
中から飛び出たのは蜂蜜のように濃厚な果汁で、甘味と酸味が口の中一杯に広がったのだ。
しかもグレープフルーツを思わせる爽やかな香りが鼻から抜け、とろりと舌の上で蕩ける果肉の甘さが、爽やかな香りのおかげでちっともくどくない。
蕩けた果肉と溢れた果汁。複雑に混ざり合った甘味をコクッと嚥下すれば、カスタードのような余韻が後を引いた。

「美味しかったですか?」

ルクレイアが、ぱくっ、ぱくっとムーンシャインを口に運びながら「どうだ」と言わんばかりに聞いてくる。

「あぁ。ちょっとビックリするくらいに」

「そうですか。では、もうお一つ」

そして再び口に幸せを押し込んできた。
少しだけ唇に触れた彼女の指が幸せを倍増させたのは、俺だけの秘密である。

うん。
美味い。
何個でも食べられちゃいそうだ。

実際、横目で見るルクレイアは、ぱくぱくと食べ続けていた。
ぱくぱく、ぱくぱく。箱にぎっしり入っていたムーンシャインはみるみるルクレイアの口内に消えていき…………って、おい?

「ル、ルクレイア!? 全部食べちゃって良かったのか!?」

彼女は指先についた果汁までちゅぱっと舐めとると、満足気に答えた。

「良いワケありません。これは主様の大好物で、しかもわたしのお給金では手が出ないほどの高級品ですから」

「な……っ!? じゃ、じゃあどうすんだよっ! お前、めちゃめちゃ怒られるんじゃ――」

ルクレイアの未来を心配したつもりだったのに、何故か彼女はこちらを指差していた。
いったいなんだと言うのか。今は俺に構ってる場合じゃ――

「共犯です」

「……え?」

「誠も食べたのですから同罪なのです」

「え……? えぇ……っ!?」

ま、まさか俺を道連れにするために連れ込んだのかっ!?

「大丈夫です。真実を知るのはわたしと誠だけですから。誠が誰にも言わなければ何も問題ありません」

……マジかよこのメイド。

「二人だけの秘密、ですね」

けどそう言われたら許してしまいそうになるのが男の弱みである。
完全に嵌められた格好だが、こうなっては仕方ない。
ルクレイアの言う通り、俺が言わなければ発覚することもないだろうからな。

「……ったく。分かったよ。俺たちは共犯で、このことは二人だけの秘密な」

「はい」

満足そうに頷いたルクレイアは、食べ終わったムーンシャインの枝と箱を器用に畳み、物置の隅っこに置いてあるゴミの中へと突っ込んだ。証拠隠滅の手際を見るに、最初からここまで見越していたに違いない。

その周到さに舌を巻いているうちに彼女は物置部屋の扉を開け、犯行現場を立ち去ろうとする。

だが、直後。
部屋を出ようとしていたルクレイアの動きはピタッと止まっていた。

なぜなら……。

「あらあ? こぉんなところで逢引かしらあ?」

物置部屋の外に、何故かリュドミナさんが居たのだ。
さすがのルクレイアも、予期せぬ被害者との遭遇に慌てているらしい。

「こ、ここ、これは主様。お、お散歩ですか?」

「散歩というより~……探し物かしらねえ~?」

ふふっ、と笑うリュドミナさんの笑顔はいつもより深かった。当社比五割増しだ。
なのに目の奥は全然笑ってなくて、心臓まで凍てつきそうな笑顔である。

もうね。
これはアレ。
完全にバレてる。
お遊戯会まっしぐら。

「ふふ。ねぇ誠さん? 今日あたり、わたくしの大好物がお屋敷に届く手筈だったのですけれど……何かご存知ありませんかあ~?」

しかも話がこちらに振られてしまった。
頬に手をあて「困ったわあ」みたいな仕草をしてるが、リュドミナさんの視線は確実に物置の隅っこをロックオンしている。

これはいけない。
紅夜よりデンジャー。

け、けどな?
俺はさっきルクレイアと約束したんだ。
このことは二人だけの秘密だって。
例え悪事がばれるとしても、それは俺の口からじゃない!

「先ほど誠が隠れて何かを食べてました」

そう!
ルクレイアの口からだ!

馬鹿かっ!

「っざっけんなお前っ! 違いますからっ! コイツですっ! コイツがヤりましたっ!!」

「なっ!? 誠っ!? 友人を売るのですかっ!?」

どの口がそれを言うっ!
先に俺を売ったのはお前だろっ!

「あらあらあ~。これではどちらが悪いか分からないわねえ~。仕方ないからぁ、二人にはゆっくりお話を聞かせてもらうことにしましょ~か。もちろん、下でね?」

「ち、違います。違うのです主様っ! ……どうしたら良いですか誠。あなたの計画が露見してしまいましたよ?」

「なにシレッと主犯にしようとしてんのっ!?」

「ふふ。仲が良いわねえ~。じゃあ、行きましょうかあ~。大勢だからいつもより楽しめそうだわあ~」

「いやあああああああぁぁぁぁぁっ!!!!」

俺とルクレイアの関係は何も変わってないのかもしれない。
けどチラッと横目で見た彼女の顔が、なんとなく楽しそうに見えて……。

――まぁいっか。

そう思う俺なのだった。

ちなみに言うまでもないことだが、地下へはルクレイア一人で行ってもらうことにした。
当然だ。命は大事なのだ。
ルクレイアはほとんど無表情なのに凄まじく恨みがましい目を向けてきたが、まぁ、うん。強く生きろよ……。

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