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22話 四面楚歌とはこのことだろうか

「断固撤回を求めます!」

俺は珍しくリュドミナさんに抗議していた。
場所は彼女の私室だ。
猫足のソファに寝そべりながらムーンシャインを口内で弄ぶリュドミナさんは、にこにこと微笑みながら俺に真意を聞き返してくる。

「あらあ~? どうしてかしらあ?」

「昨日ノルンの部屋で大変なことになったからですよっ! 俺マゾになっちゃうっ!」

俺が抗議しているのは、ノルンに見せられたリュドミナさんからの通達について。つまりメイドたちに宛てられた「誠さん誘惑許可証」のことだ。

概要だけ聞けば、なるほど。納得出来る理由もあるし、美女美少女たちから積極的なお誘いがあると思えば、男として嬉しく思ってしまう面もある。
けれど全員サキュバスとなると、想像通りのハーレム状態と掛け離れた結果になるのは、昨日気持ち良いほど思い知らされた。

これはアレ。
猛獣たちに「味見までならOK」って言うのと同義。
しかも彼女たち、味見のために味付けまで変えようとしてくる始末だ。
生肉の俺は、いつの間にかハンバーグに変えられてしまいかねない事態だった。

「でもこうして無事に済んだのでしょお~? わたくしだって、無理なことはさせないわよお~。誠さんなら大丈夫。そう思ったから許可を出したんですものお~」

「買いかぶりですっ! 本当に……本当にギリギリだったんですよ……。あんなのが続いたら、オレ、ミンナニ、マルカジリ……」

次にノルンに捕まったら、もう昨日のように逃げることは出来ないだろう。
どれだけ俺が必死に頼んでもきっとあの少女は許してくれない。トークの通じないタイプになってしまったのだ。

しかも広いとはいえ狭いお屋敷の中だ。エンカウントが避けられない以上、戦闘を避けるしかないじゃないか。

必死というかいっそ涙目で抗議を続けていると、リュドミナさんの視線がスッと横にずれた。

「ルクレイア。貴女も同じ意見なのお~?」

「当然です」

俺の横にはルクレイアが付き添ってくれていたのだ。
彼女は俺をノルンから守る為、そして一緒に抗議してくれるために、こうしてリュドミナさんの部屋まで付いて来てくれた。

なんて友達思いのヤツなんだろうか。
これほど心強いことはない。
ありがとうルクレイア!

「他のメイドたちにまで搾られたらわたしの分がなくなるではないですか。誠のザーメンはわたし専用であるべきです」

敵の敵も敵だった。

「ふふ。誠さんとはあの後も?」

「いえ。誠は一度抱いた女に興味がないようです」

「人聞き悪いなおいっ!」

だいたいあの時は紅夜っていう特別な事情もあったし、精液枯渇症でルクレイアが苦しんでいることを知ってしまったから、そういうことになっただけだ。
日常的に「ルクレイアー! セックスしようぜ!」なんて、野球じゃないんだから簡単に誘えるわけもない。

「あらあらあ~。夢渡りの方はどうなのお~?」

「それもダメみたいです。誰の夢とも繋がりません」

え、そうなのか?
それは初耳だ。
てことは、放っておいたらまた精液枯渇症になっちゃうんじゃ……。

「けれどわたしには誠が居ますから。毎朝ザーメンを一搾りすればこと足ります。そうですよね、誠」

「俺は青汁か」

白汁だった。

とはいえ、そうと聞かされたら心配してしまうのも事実。
なんだかんだあれからも逃げ回っていたが、彼女が苦しんでいるなら逃げるわけにいかないだろう。
自分から言うのは恥ずかしいが、さっそく後でルクレイアを誘わなきゃな。

と、俺は考えていたのだが……。

「欲張りさんなのねえ~ルクレイア。生精液なんて、一回で夢渡り百夜分に相当するでしょうに」

「そ、そうなの?」

「……」

コイツ目を逸らしやがった。

「ですが主様。いずれまた枯渇するのも事実です」

「そうねえ~……。ならこうしましょう。メイドたちへの通達は撤回しない。その代わり、誠さんは週に一回ルクレイアを抱かなければならない。これならどうかしらあ~?」

「素晴らしいアイディアです。さすが主様。わたしは主様にお仕え出来ることを常々喜ばしく思っておりました。これからもどうぞよろしくお願い致します」

ルクレイアの手の平がぐるんぐるん回転してやがる……。
くそっ。周りに敵しかいないじゃないか。

「えっと……義務で女性を抱くのはちょっと……」

「人助けですよ誠。だいたい、誠は言っていたではないですか。『こんな美人抱いて死ねるなら本望だ』『こんな良い女から逃げるわけないだろ』『毎日空っぽになるまで俺のザーメンを捧げるからな』とかなんとか」

「最後のは言ってないよなっ!? 脚色すんのやめて!? てかベッドの上の戯言を素面で言うのやめろマジでっ!」

「では?」

「分かったっ! 分かったよっ! 週一回なっ! ……けど、ルクレイアはそれでいいのか? 栄養補給みたいな意味だけで俺に抱かれ続けることになっても」

まぁサキュバスにとって男の価値なんてそれしかないのかもしれないけどさ。
だから彼女からの返事も「当然です」くらいの軽いものを予想していたんだけれど、ルクレイアはスッと顔を横に逸らし、無言でコクリと頷いていた。心なし、頬も少し赤くなってる気がする。

え? なにその反応。
なんかこっちまで恥ずかしくなってくるんだけど……。

そんな俺たちをにこにこと見守りながら、リュドミナさんはパンッと手を叩いた。

「はぁい。じゃあお話も纏まったみたいだからあ~解散ねえ~」

「終ってないっ! メイドたちはっ!? 他のメイドさんたちへの通達もこのままなんですかっ!?」

「諦めましょう誠。往生際が悪いですよ」

「お前なに一人でミッションコンプリートみたいな顔してんだよっ! 裏切り者めっ!」

メイドたちへの通達を撤回出来ないどころかルクレイアまで参戦してしまったら本末転倒も良いとこじゃんね。そんなの俺の身体が保つハズないもの。

「ふぅ~。まぁ、ノルンは確かにちょっとやり過ぎよねえ~。良い子なのだけれど、少しわたくしの若い頃に似てる節があるからあ~。今も若いけれど」

「で、でしょうっ!? 次に会うのがめちゃめちゃ怖いんですって!」

「以前お話した親戚の子もそろそろ来るでしょうしぃ~、その子の相手もするとなると大変なのは間違いないわねえ~……」

あ。
そういえばそうだった。
俺の本分は家庭教師をすることだったのだ。

「わたくしも誠さんを苦しめるようなことは本意ではないわあ~。何か良い方法を考えておくからあ~、今のところはそれで納得してもらえないかしらあ~?」

「う……は、はい……」

不安の残る結果ではあるが、リュドミナさんにそう言われたらこれ以上引き下がるのは無理だった。彼女にも、何か深い考えがあるような気がしていたから。

なので仕方なく諦めた俺は不承不承ながら頷き、裏切り者を連れて帰ろうとしたのだが、ちょうどその時である。

――バーンッ!

勢い良く部屋の扉が開いたのだ。

「アタシが来たぜっ!!」

開口一番。声を張ったのは、見たことない金髪の少女だった。
毛先をツンツンと元気いっぱい跳ねさせたヘアスタイルは、なんとなくクリスマスツリーの天辺にある星型を思い出してしまう。

年齢は中学生くらいだろうか?
メイドと違ってタンクトップにジーンズというラフな格好で現れた少女は、腰に手をあて仁王立ちだ。
いったい誰なのか聞こうとリュドミナさんを振り返ると、女主はにこにこと笑みを深めていた。

う~ん……。
怖い……。

「はぁ……。エルルシーには行儀作法も教える必要がありそうねえ~」

エルルシー?
それに「行儀作法も」と言ったってことは、メインは他にあるわけで……あっ!

「じゃあこの子が?」

この金髪少女が預かる予定という親戚の子であり、俺が家庭教師をする生徒さんってことなのか。
そう思って訊ねたところ、答えたのはエルルシーだった。

「お前だな! アタシに色々教えてくれる男ってのはっ! アタシはエルルシーだ! よろしくだぜっ!」

あー、うん。
確かにサキュバスっぽくないわ、この子。

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