巨乳キャラあつめました

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35話 誠争奪戦

最近、「ゾクッ」と突然背筋が冷えることがある。
誰かが後ろにいるような、どこかから見られているような……。言うなれば、シャンプーしてる時に背後が気になるアノ感覚に近い。

けれどその頻度が異常だった。
食堂にいる時。廊下を歩いている時。自室に戻る時。
とにかく一日中「ゾクッ」と頻繁に背筋が寒くなり、変な病気なんじゃないかと疑うほどである。

なんだろう……。
死期が近いとでも言うのだろうか……?

非常に不快というか不気味な感じがしているけど、しかし悪いことばかりでもないというのが如何ともしがたいところだ。

例えば、ついさっきのことである。
急にもよおしてしまった俺は、近くのトイレを借りることにした。
普段はなるべく自室のトイレを使用しているのだけど、なにぶん広い屋敷なので、自室に戻るにはちょっと遠いという場合が往々にしてあるのだ。

もちろん屋敷内のトイレは自室以外全て女性用なので、入るに際しては細心の注意を払っているし、使用する時はしっかり施錠している。
……だったのだが、同時入室という可能性については抜け落ちてしまっていた。

「あ、お客様もトイレっすか? あーしも我慢できないんで一緒に入っちゃお。こーゆーの何て言うんだっけ? 連れション?」

トイレに入ろうとした刹那、そんなことを捲くし立てながらメイドが近付いて来たのである。
ちなみにトイレ内には便器が一つしかないから、一緒に入ったところで意味ないんですけどねっ。

「でもでもー。あーし、もう漏れちゃうっすよぉ……。お客様は、ここでメイドにお漏らしさせる気っすか?」

「い、いや、だったら俺が待ってるし」

「屋敷のお客様にそんなことさせるわけにはいかないっす! なんで、一緒に入りましょ?」

「いやだから一緒に入ったところで一緒になんて出来ないだろ?」

「出来るっすよ。あーしが便器に座って、お客様が対面座位みたいな格好であーしの上に座ればいいんす。多少はあーしに掛かっちゃうかもしれないっすけどあーしは気にしないし、おちんちん下に向けてくれてれば大体おっけーっすね」

なんという画期的な排尿方法だろうか。まさかそんな方法があったとは目から鱗が落ちる思いである。アホかと。

なのに「ね?」と身体を寄せられてしまっては、理性が大きくグラついてしまう。
だって想像してしまったから。今押し付けられているこの柔らかい身体と正面から抱き合い、一緒に排尿するところを。

二人の間からチョロチョロ聞こえる排尿音。
下向きに固定するため、メイドさんの下腹部に押し付けられたちんぽ。
混ざり合う二人のおしっこ。
間近で見る彼女の恍惚とした排尿顔。

彼女が示す未来には、禁断の扉が稲荷大社の鳥居並みにズラッと並んで待ち構えているのだ。

「ほらー。いいから行こ?」

そしてメイドさんが俺の腕を掴んできた。
……いや正確には、掴もうとした、だ。
だって掴まれる寸前、俺はあの「ゾクッ」を感じて正気を取り戻したのだから。

「ご、ごめん! なんか尿意引っ込んじゃったからまた今度な!」

「え、あ、待ってよーっ!」

追い縋ろうとする彼女の腕を振り払い、一目散にその場を逃げ出す俺である。
あのまま一緒にトイレインしていたらどうなってたのか? 興味は尽きないが、それでも俺が逃げ出すことを選択したのは、先に命が尽きかねないと思ったからだ。そう思ってしまうほど、さっき感じた「ゾクッ」は命の危険を感じる大きな「ゾクッ」だった。

……。

「とまぁそんなことがありまして、先生はちょっと気分がよろしくないです」

「それは風邪だな。うん、間違いない。お大事になんだぜ」

エルルシーの部屋である。
授業を始める前に近況を報告したところ「なら今日の授業はお休みだ」と言わんばかりに金髪少女は俺を部屋から追い出そうとし始めていた。

これが、普通の学校の教師であれば分からなくもない。
勉強を嫌い、教師を嫌い、少しでもそれらから遠ざかる可能性を模索するのは、ある意味学生らしいと言えるから。

けれど性技授業の家庭教師を始めてから今日まで、これほど露骨に授業をボイコットしようとするエルルシーを見るのは初めてだった。
少女はいつもやる気まんまんだったし、この間の授業の手応えも悪くなかったし。突然の心変わりに先生は困惑である。

「エルルシー? なんか先生に隠し事してないか?」

「な、なな、なんのことだぜっ!? 何言い出したんだぜっ!? ア、アタシがセンセーに隠し事!? するわけねぇぜ!」

やべぇ。
すっげぇ分かりやすい。

「い、イタいイタいイタいぃっ! 頬っぺ抓るの止めろぜっ! 体罰なんだぜっ!」

「正直にお話してくれたら離してあげよう。……で、いけない生徒さんはいったい何をしたのかな?」

「だ、だからアタシは何もしてないんだぜっ! ちょっとメイドに話を聞こうと思っただけなんだぜ。なのにいつの間にかメイドたちがセンセーを襲うことになっちゃって……」

「……え? 俺襲われんの?」

「は――っ!? な、なんでもないっ! なんでもないぜっ! アタシはかんけーないからなっ!」

「いやいやいやいや。そこまで言っておいて関係ないはないよな? じっくり聞かせてもらおうか」

「ひいぃぃぃ……っ」

……。

ということでエルルシーとじっくりお話した結果、俺はアルムブルムさんの部屋を訪れていた。

「すいません! 今夜はここで寝させてもらっていいですか?」

つまるところ緊急避難である。
そりゃそうだろ。ルクレイアとノルンに狙われてると聞かされて、ノコノコ自室で惰眠を貪れるほど俺は図太くないもの。
今なら分かる。あの「ゾクッ」は、俺を狙ってるどちらかの視線だったのだ。知ってみればなるほど。蛇に睨まれた蛙ってのは、あんな心地なのかもしれない。死期が近づいてるという直感もあながち間違いではなかったようだ。

「誠くんも大変だねー」

俺を部屋に招きいれ、話を聞いてくれたアルムブルムさんは、苦笑しながら紅茶を注いでくれた。部屋に満ちていく茶葉の香りがアルムブルムさんの甘い香りと混ざり、なんだか気持ちがホッとする。

ちなみに、逃げ込み先の候補はここ以外にもいくつかあった。
一番確実と思われるのはやはり地下室だろうか。戦時中の避難先として作られている頑強なあの部屋なら、二人から俺を守ってくれること請け合いである。

けれどあそこは、リュドミナさんが使用することがあるから。
いったいどんな懲罰が行われているのか興味はあるけど、まさか目の前でそれを見守るわけにもいくまい。

次に安全と思われるのはエルルシーの部屋だが、それはエルルシーが嫌がった。「アタシは巻き込まれたくないっ!」と涙目だった金髪少女を思い返せば無理強いもできない。お前のせいだろと言いたい部分もあるけど、元を正せば「俺とルクレイアを仲直りさせたい」っていう純粋な思いからの行動だったらしいので、そこは否定したくなかったのだ。

もちろん自室に篭って鍵を掛けるという選択肢もないではなかったが、部屋の前にノルンの姿を見かけてしまっては、それを突破するのは不可能に思えたのだ。

とまぁそういうことで、俺はアルムブルムさんのご厄介になろうと決めたのである。

「で、誠くんはどっちを選ぶの?」

自分の分の紅茶も用意した彼女は俺の対面に座り、にまにまと口元を緩めながら覗ってきていた。
サキュバスは「愛」を知らないとのことだったが、その様子は恋バナを楽しむJDのようで、根っ子は変わらないのかもしれないなと思う俺である。

「いや選ぶって……」

正直なところ、俺は現実世界でモテた試しがない。
誰にでも一度はモテ期というものが訪れるらしいのだが、そんなものを経験したことがない俺としては、エレベーターで異世界に行くことよりもずっと信憑性の低い都市伝説である。

だから二人の女性に迫られて「どっちを選ぶ?」なんて言われても、畏れ多すぎて困惑してしまうのだ。

「あれ? てっきりルクレイアさんって即答すると思ってたんだけどなぁ」

「えぇ……? やっぱりアルムブルムさんから見ても、そんな風に見えます?」

「そりゃねぇ。あれだけ一緒にいれば誰だってそう思うんじゃない?」

あれほど綺麗な女性と噂になって嫌な気になる男はいないだろう。実際俺だって、ルクレイアに魅了されているといっても過言ではないのだから。
けど「愛」を知らない彼女が俺を好きになることはないだろうし、一応友人っていう関係は互いに認めているところではあるが、ルクレイアの場合「友人(非常食)」くらいの注釈が付いていてもおかしくないからなぁ。素直に喜べないのが難しいサキュバス事情である。

「じゃあノルンちゃんは?」

「それはないっす……」

あのアンバランスな魅力は心を落ち着かなくさせてしまうほどだが、サディスティックな本性を知っていれば、ちょっとお近づきになるのが怖い少女である。

「んー、確かにノルンちゃんは怖いかもしれないけど、自分を慕う男の子には優しい面もあるみたいだよ? なぁんにも考えずノルンちゃんだけを見ていれば、いっぱい可愛がってもらえるんだってさ」

それはノルン以外のことを考えられないようにされた後の話しではないだろうか?
いやまぁ確かにそこまで完堕ちさせられたら、ある意味幸せな人生を送ることが出来るのかもしれないけど。

と二人のことを改めて考えてみたが、やはり俺にはどちらも選べそうになかった。
というか、そもそも選ぶ選ばない以前の問題なのだ。相手がサキュバスである以上「誰と付き合いたい?」というフランクな話しではなく、「誰に食べられたい?」というフランクフルトな話しなのだから。

やはりほとぼりが冷めるまで避難しておくのが良いだろう。
そんな結論を出しかけていると、ぽふっと隣のソファが沈み込んだ。正面にいたアルムブルムさんが、いつの間にか隣に座っていたのだ。

「ふっふ~ん。悩んでる誠くんに、お姉ちゃんから第三の選択肢を提案しま~す!」

それはどういう……?
聞こうとして隣を向いた途端、唇に柔らかなものを押し付けられる感触がした。

――ちゅっ

「お姉ちゃんじゃ、ダメ、かな?」

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