39話 イかせ合い #
俺が二人に連行された場所は、どうやらルクレイアの部屋らしかった。
メイドたちに割り当てられている私室はどこも同じような作りだが、アルムブルムさんの部屋と比べると殺風景に思える内装。スーッと鼻腔をくすぐる爽やかな香りが、とてもルクレイアらしい。
どうせなら、もっと普通に招いて欲しかったな……。
初めてルクレイアの部屋に足を踏み入れるのが、まさか両側から腕を掴まれての拉致的ご訪問になるなんて、ちょっと悲しくなる俺である。
「と、とりあえず二人とも落ち着こ? な? いったい全体なんだっていうんだ?」
なんの説明もなしにここまで引き摺られて来た俺の姿は、傍から見るとロズウェルったとでも言おうか。ネットでググると出てくる、二人の男に連行される宇宙人のようなアレである。
まさに有無を言わせずといった有様であり、俺が説明を求めるのは当然のことだろう。
もっとも、事の経緯はざっくりエルルシーから聞いている。これは確認であると共に、なんとか止めさせようという儚い抵抗なのだ。
ちなみに物理的な抵抗は無理っぽい。
さっきから俺を掴んでいる彼女たちの力が凄いもの。
それだけに本気度が伝わり、人知れず玉ヒュンしている俺である。
「心配しなくていいよ、お兄さん。今日はお兄さんを気持ち良くしてアゲルだけだから。なぁんにも心配しないで、ノルンにイかされちゃえばいいだけ。簡単でしょ?」
俺の服を脱がしながら言ってきたのはアンバランスな魅力を持った少女。ノルンは手際よく俺を剥きながら、にやにや口元を歪めていた。
「恐れる必要はありません。誠は自分の本心に従い、わたしを選べば良いだけですから。嘘を吐く必要などないのです」
今度は藍色髪のメイドが俺をベッドに押し倒し、万歳した格好で腕を拘束しながら言ってくる。
二人とも、言ってることとやってることが矛盾してて怖い。
こんなの絶対気持ち良く終らないやつじゃん!
ボロボロにレイプされ、ゴミ置き場に捨てられる未来を幻視だろうか。
なんて悲嘆に暮れている間に、準備が整ってしまったらしい。
全裸に剥かれ、大の字でベッドに両手両足を拘束された姿は、正しくまな板の上の鯉状態だった。あとは美味しく捌かれるのを待つ運命である。助けて。
「さて、と。じゃあ今回のルールを説明するね?」
寝ている俺の右側にノルン、左側にルクレイアが寝そべり、三人仲良く川の字になった。真ん中の俺だけ全裸なので、仲良し三人組みというより拷問官と罪人みたいな状態だけど……。
「今からわたしとノルンが、交互に誠を気持ち良くして差し上げます」
美味しい話だな。
ここまでなら……。
「お兄さんは、イきたくなったら「射精させて下さい~」って情けなくおねだりしてね? そしたら、その時お兄さんを気持ち良くしてあげてた方の勝ちっていうルールだから」
「誠は勝者のモノになります。敗者には二度と手を出させませんので、報復など恐れず素直になれば良いだけです。分かりましたか?」
分かりません。
勝者のモノになるってなんだよ。
強く物申したい俺だったが、しかし二人の手が滑らかに俺の身体を滑り始めると、喋る余裕が一瞬で奪い去られてしまう。
「うく……っ!」
両側からさわさわと。脇腹や脇をなぞられ、焦らすような指先に胸板をくすぐられ、そのまま這い上がってきたメイドたちの手に頬を撫でられる。ゾワゾワする気持ち良さが俺の中にある欲情のスイッチを的確に刺激し、すぐに発情させられてしまったのだ。
改めて、サキュバスの恐ろしさを垣間見る手技だった。
簡単に肉棒を硬くさせたメイドたちは、互いの指を絡ませ合うように一緒に竿を握ってくる。すべすべした二人の手が複雑な凹凸を作り出し、ただ握られているだけでも十分な気持ち良さだった。
「じゃあ最初はノルンからね。すぐに降参しちゃっていいからね? いくよ」
宣言したノルンは一度だけ上目使いで俺を見ると、そのまま手コキを開始していた。ルクレイアの手もろともにシコシコと肉棒をシゴき始めたサディスティックな少女は、ニヤリと目元を歪めながら乳首に吸い付いてくる。
「うぅ……っ!」
窄めた口に乳首がちゅっと吸われ、口内で先端をれろれろ嬲られる快感は、身体を捩ってしまうほどだ。
こんなのすぐイッちゃうっ!
男の弱点を知り尽くしたノルンの乳首舐め手コキに、俺は早くも白旗を上げそうになっていた。
だが……
「なに気持ち良くなってるんですか誠。我慢して下さい。が・ま・ん。出来ますよね?」
反対側から、ルクレイアに咎められてしまうのだ。
乳首を舐められ、正確な手コキで弱点を責められている俺に、彼女は我慢を強いてきた。
「それともやはり誠はマゾだったのですか? 違いますよね? ノルンのような少女にイジメられて感じるわけありませんよね?」
「ぐ……っ、あ、あぁ……っ! 感じてなんか――くひぃっ!?」
突然の刺激に言葉が遮られた。ノルンが乳首を甘噛みしてきたのだ。
前歯で乳首を挟み、ギリギリ磨り潰すように動かす様を見せ付けられる。
我慢なんてさせると思う? そう言いたそうな瞳が、俺の中の被虐心をジクジク刺激してしまう。
「なんですか今の声。まさか乳首を噛まれて気持ち良かったのですか?」
「ち、ちが…………んくぅ……っ!」
「ではその声を止めてください。不愉快です」
そう言われても、声を止めることが出来ない。
だってどれだけ身構えていても、時に舐め癒し、かと思えば突然噛み付き、ノルンは俺の心を見透かしたように予測不能の責めで翻弄してくるのだから。
――ぢゅぅ……れろぉ…………かぷっ!
手コキされながら乳首を責められると、思わず「うっ」と声が漏れだす。そんな俺の様子を覗うルクレイアの声には、だんだん怒りが篭り始めてしまっていた。
「もしかして、他のメイドによがらされる様をわたしに見せつけ、嫉妬させようとしているのですか? ふふ。でしたらそれは成功と言って差し上げましょう。嫉妬のあまり、誠を壊してしまいたくなってきましたから」
なんでっ!?
そんなことこれっぽっちも思ってないんだけどっ!?
「この前のお風呂では物足りなかった、ということですね。かしこまりました。誠がわたしのモノになったあかつきには、もう他のメイドでは何も感じないようにして差し上げますから覚悟しておいてください」
ゾクッと寒気が走り抜け、命の危機を感じる声音だった。
それに気を取られていると、今度は反対側から間の抜けたノルンの声が聞こえてきた。
「あ~あ、時間切れ~」
どうやらノルンの番が終ったらしい。
あれ?
ならルクレイアの番を耐え切ればこの窮地を乗り切れるんじゃないのか?
「ま、最初の手番で終っちゃったらつまらないしね。そのくらいの反抗心があった方が、あとで躾ける時も楽しめるし。いいよ? お楽しみは取っておいてアゲル」
どうやらそれほど甘くはないようだ。
この二人は、白黒着けるまで俺を甚振るつもりなのだろう。
絶望感に目の前が真っ暗になりかけている俺の耳に、突然ルクレイアが吐息を吹きかけてきた。
「次はわたしの番です。もちろん分かっていますよね? すぐに降参するんですよ?」
そしてルクレイアの手コキが始まった。
ただしその動きはノルンと同じ程度のスピードで、決して速い動きではない。
射精に追い詰めるだけならもっと速くシゴけばいいのでは? そんなことを思ってしまうのは性感が高められ、もどかしくなってきたからだろう。
「あはっ♪ ゆっくりなのが不思議? それはね、速く動かせないようにノルンが邪魔してるからなんだよ」
あぁ、なるほど。
どうして対決してる二人が一緒に竿を握っているのかと思ったら、そういう理由だったのか。なんとも上手く考えられているなと妙なところで感心してしまう。
けれどそれは、決して俺を楽にする方法ではないことに気付いた。
だってこのままじゃもどかしいのがずっと続き、終わりのない快感を溜め込まされ続けてしまうのだから。
「ん~いい顔。自分の置かれた立場にやっと気付いたんだね。で~も…………ノルンの番じゃないのに降参なんて許さないから」
耳元で囁いたノルンの声音は殺意すら感じるほどで、ガチガチだったちんぽが萎えてしまいそうだ。
「この前も言ったと思うけど、ノルン、負けるの大嫌いだから。まさかお兄さん、ノルンを負かせたりしないでしょ?」
ぐ……っ。
ルクレイアにシコシコとちんぽをシゴかれ、耳元でノルンに脅され……。頭がおかしくなりそうだ。
でも、どうせいつかは我慢の限界が訪れる。
だったらルクレイアを勝たせた方がマシなんじゃないか?
いや、それしかない。
俺がそう決断しようとした時、再びノルンが耳元で囁いた。
「言っておくけど、敗者は手を出せない~なんてルール、ノルン守らないから」
「……はっ!?」
「当たり前じゃん。わたしに敗北の屈辱を与えたらどうなるか……。相応の仕返しがあると思っててね? お・に・い・さ・ん♪」
ひ、卑怯だぞっ!
それじゃあルクレイアを選べないじゃないかっ!
しかし、今それを糾弾したところでどうにもならないことは分かっている。
ノルンはやると言ったらやる。俺がどれだけ逃げようと確実に俺を追い詰め、そして身の毛もよだつ相応の仕返し
・・・・・・
とやらを実行するのだ。
「そうそう。それでいいの。お兄さんが「イかせてぇ~」ってお願いするのはノルンがシゴいてあげてる時だからね? 分かった?」
頷くことはできなかった。けれど否定も出来なかったことにノルンは口元を歪め、自分の番になるのを静かに待っていた。
「……はぁ。なぜ降参しなかったのですか誠」
と、丁度ルクレイアの番が終ったらしい。
再び耳元に顔を寄せてきた藍色髪のメイドは、不満を隠そうともしていなかった。
「まったく。大方ノルンに脅されでもしましたか」
そうなんだ!
そう首肯したかったが、それはノルンが乳首に噛み付いてきたことで防がれてしまう。
くぐもった喘ぎを漏らし、俺は何も言えなくさせられたのだ。
「だいたい、誠が悪いのです。わたしというものがありながら、他のメイドに誘惑されてザーメンを無駄打ちするから」
「そんなこと、言われても……んくぅっ!」
「ほらまた。ちょっと乳首を責められた程度で泣き言など情けないと思いませんか?」
「お、思い……ま、すんっ!」
乳首に走った強烈な痛み。
ノルンが乳首を噛んだまま引っ張りあげていたのだ。
おかげで言葉が中途半端になってしまい、ますますルクレイアの声に怒りが篭る。
「明日から特訓ですね……。乳首を噛まれる痛みなど大したことなかったと分からせて差し上げますから……」
ひぃ……っ。
これ、どっちが勝ってもヤバイことにしかならないじゃん……。
何だよ俺が絶対損するルールって! 糞ゲーにも程があるぞっ!
そんな事を考えていると、視界の端で起き上がるノルンの姿が見えた。
何をするのかと身構えていると、少女の顔がゆっくり肉棒に近づいていく。
まさかフェラチオっ!?
男を虐げて楽しむノルンからは想像出来ないが、それほど勝ちたいのかもしれない。
と、思ったのだが……。
「ん~~~っぺっ!」
予想に反し、亀頭にびちゃっと温かい液体が降りかけられた。ノルンが唾を吐きかけてきたのだ。
「ノルン。わたしの手にも掛かるのですが?」
「い~じゃんちょっとくらい。別にルール違反じゃないでしょ?」
悪びれもせず言ったノルンは、そのまま手コキを再開していた。
しかしその快感は、さっきまでと比べ物にならないほど強い。
「んあぁぁっ!!」
ぬるぬるの唾液がローションの役割を果たし、凄まじく気持ち良いのだ。
しかもそれが美少女の唾だと思うと、一層興奮してしまう。
「どう? ノルンの唾、気持ち良い?」
「んぐぅぅ……っ」
「あはっ♪ 良いみたいだね。じゃあ、お口にもアゲル。ほぉら。口、開いて?」
ノルンの言葉はまるで催眠術だった。俺の意思に関係なく、口が自然と開いてしまう。
そこに近付いて来る黒髪の美少女メイド。にやにやとサディスティックに目元を緩めたノルンは、色っぽく髪をかき上げると口を窄め……
「んぇ~~……」
俺の口に唾を垂らしてきた。
少し泡立った、温かい雫。ぬるっと舌の上を滑ったそれからノルンの淫靡な香りが口内に広がり、脳がふわりと犯されるようだ。
「嬉しいでしょ? こぉんなご褒美滅多にあげないんだからね? だからぁ…………さっさと降参しろマゾ豚」
少女の言葉が脳内に響いた瞬間、肉棒がビクンと大きく跳ね上がってしまったのを自覚する。俺の意思に反して、ちんぽが勝手にノルンに屈服してしまったかのようだ。
しかも悪いことに、その脈動は肉竿を握っているもう一人。ルクレイアにもしっかり伝わってしまっていた。
「……そうですか。唾を飲まされ、耳元で罵られると興奮するのですか」
「ち、ちがう……っ」
「言い訳はいりません。耐えなさい。耐えて、わたしの番になったらすぐ降参しなさい。そしたら、誠の望みをたっぷり叶えて差し上げますから」
だから死ぬ気で耐えろと脅してくるルクレイア。
しかし反対の耳からはノルンが同じく囁いてくる。
「ほら早く。早く降参して。イかせてくださいノルン様ぁ~って言うの。言っておくけど、これ以上ノルンを怒らせないほうがいいよ? オスの壊し方なんていくらでも知ってるんだからね?」
「我慢しなさい。命令です。イくな。今すぐザーメンを睾丸に戻して下さい」
「まだ降参しないつもり? その意味分かってる? 今ならまだギリギリ許してアゲル。もちろんオシオキはするけど、せいぜい一週間の舐め奴隷刑で許してアゲルよ。優しいでしょ?」
「何故ノルンの言葉にちんぽを反応させるのですか。わたしは我慢しろと言っているんです。わたしの言うことが聞けませんか? それともわざと逆らってオシオキされたいのですか?」
「これ以上言わないなら本当に許さないからね? もう人として扱わない。一生ノルンの家畜だよ? 射精の権利も取り上げられて、そのおちんちん、毎日ひっど~いことされちゃうよ?」
頭がパンクどうにかなりそうだった。
相反する命令を両側から流し込まれ、けれど手コキは止まってくれない。溜まり続けた快感は、ずっと甘イキさせられてるような状態だ。射精よりも強い快感が、終りなくずーっと続いてしまっている。
責められ続ける肉棒はノルンの唾とだらだら零れる我慢汁でぐちゃぐちゃ音を立て、あまりの快感に壊れてしまいそうなほどなのだ。
「限界なんでしょ? ほら。気持ち良いぴゅっぴゅしたいよね? なら言えるよね? 言え。言えって言ってんの」
「絶対言ってはダメです。誠はわたしのモノなのですよ? 我慢です、がまん。出来ないなんて言いませんよね? 言わせませんけど」
彼女たちはイかせてくれない。
これほど苛烈に責め立て続けているのに、どちらかの勝利が決まるまで俺をイかせるつもりがないから。
無理だった。
永遠に続きそうな快楽地獄が、俺の心をひび割れさせたのだ。
「もうムリぃぃっ!! イぐっ! イぎだいぃっ! 壊れる゛ぅ゛ぅ゛ぅぅッッ!!」
気付けば俺は暴れていた。拘束具をガチャガチャと鳴らし、癇癪を起こした子供のように喚き散らす。
「あはっ♪ 頭壊れちゃいそう? 早く言わないと本当に壊れちゃうよ?」
「泣いてもダメです。頭が壊れても耐えてください」
「やだぁっ! イぐっ! お願いっ! イぐぅぅっ!!」
だが、どれだけ懇願しても最後の一押しはやって来ない。
彼女たちはサキュバス。男の射精など、やる気になればいくらでもコントロール出来る存在なのだ。
二人が望めばこのまま一時間でも、一日でも、一週間でも……。
「ほらほらぁ~。言って。懇願して。イかせてくださいノルン様、だよ? ほらっ。言えっ」
「我慢ですよ? 何イきそうになってるんですか。我慢しなさいと言っているのです。わたしの命令、聞けませんか?」
ダメだダメだダメだっ!
もうムリっ! もう限界っ!
「ねぇ~言わないの? 気持ち良いぴゅっぴゅシたくないの? ……あっそ。じゃあもっともっと苦しめば?」
――ぢゅるぅっ、かぷっ!
「ん゛い゛い゛ぃ゛ぃ゛ッッ!? ぢぐびヤだあぁぁぁッッ!!」
「自業自得だし。てか本当は、ずっとこうしてイジメられたいんじゃない?」
「そうなのですか誠? わたしたちが真剣勝負しているというのに、誠は一人で楽しんでいたのですか?」
「ぢがう゛ッ!! ぢがうがらあ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ッッ!!」
「では何故おちんぽをビクつかせて悦んでいるのです? よがっている場合ではないでしょう?」
「ノルンにイジメられて嬉しいんだよね~?」
「イジメてくれるなら誰でも良いのですか? 言ってくれればいくらでも泣かせて差し上げますよ?」
二人の言葉が脳内でグルグルと渦巻き、肉欲塗れの未来を無理やり想像させられる。
なのに一番欲しい射精が寸前で堰き止められ続け、頭も体も破裂寸前だ。
「あはっ♪ ノルンの方がいっぱい泣かせてあげられるよ? だから~、早くなっちゃいなよ。ノルンのマゾ奴隷。ノルンの足、無理やりお口に突っ込んで欲しいでしょ? 舌が麻痺するまでおまんこ舐めさせられたいでしょ? なら、ほら。……さっさと負けろ、マゾ豚」
「わたしだってたくさん泣かせてあげられますよ。この前の潮噴き、気持ち良かったですよね? 誠が望むなら毎日気絶するまでシてあげます。わたしのおまんこにずっとおちんぽを入れたまま、永遠に射精と潮噴きを繰り返させてあげましょう。素敵ですよね?」
柔らかな身体を両側から押し付けられ、二人のメイドが「自分のモノになれ」と迫ってくる。妄想を掻きたてられる言葉責めは剥き出しの快楽神経を直接嬲られているかのようで、射精に向かう俺の身体が勝手に跳ね上がった。
しかし……。
「あはっ♪ 自分から腰を動かしてどうしたの~? 前みたいにイけると思った~? だめだめ。お兄さんがノルンに屈服したって認めるまで、ぜえぇったいイかせてあげないから」
みっともなく腰を振っても、二人は決して絶頂に届かせてくれない。射精まであと一歩。いや爪先まで触れているのに、どうやってもイくことが出来ないのだ。
「我慢汁どころか本気汁までだらだら零れちゃってるね~。早く屈服しないと射精する前に精液全部出尽くしちゃうんじゃない? あはっ♪ それもいいかも♪」
無理だっ!!
もう本当に無理だっ!!
頭もちんぽも馬鹿になっちまうっ!!
ギリギリの快感を与えられ続け、強制的に射精寸前の状態をキープさせられていると、頭の中でぶちぶちと脳神経が焼き切れていく。行き場のない快感が出口を求めて体内を駆け巡り、全身が性感帯になったかのようにビクンビクンと跳ね回ってしまう。
壊れる……っ!
壊される……っ!
助けてっ!!
助けてくれっ!!
――ルクレイアっ!!!
と、その時だった。
突然、どうしても届かなかった最後の一押しがやって来たのだ。
「あ……イ゛……あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッッ!!!」
長く焦らされたちんぽは、一瞬限界を超えたことすら気付かない。
けれど確かに超えたという実感が遅れてやって来て、思い出したかのように精液が尿道を昇ってくる。
「イ゛グう゛ぅぅぅぅぅぅッッ!!!」
二人は慌てて手を離したがもう遅い。
ベッドから浮き上がるほど腰が跳ね上がり、濁流のような凄まじい絶頂感が一気に放出されたのだ。
――どびゅうぅっ! びゅぅっ、どびゅるぅぅ……っ!
何がなんだか分からないうちに始まった射精は頭の中で激しくスパークを起こし、泡を吹きながら俺は絶頂の快感に晒されていた。
強烈すぎる気持ち良さが全身を痺れさせ、視界は真っ白なのか真っ黒なのか分からないほど明滅している。
意識が宇宙へ飛んで行ってしまったんじゃないか?
そう思うほどの浮遊感と、どこまでも鮮明に脳を焼く凄まじい快感は、射精の脈動が収まってもまだ身体を震えさせ続けていた。
射精の残滓が、ぴゅっぴゅっと、零れるように鈴口から溢れ出す。
ただそれだけのことが、普段の射精と同じくらい気持ち良い。
いったいどれだけの快感だったのか。あと少し強ければ、そのまま廃人になっていたかもしれない……。
「なんでイかせてんの……?」
「ノルンの調整ミスではないですか?」
「はぁ!? ノルンがそんなヘマするわけないでしょ! アンタのミスじゃないのっ!?」
「自分のミスを人のせいにするとは……。メイドとして情けないですね」
浮上していた意識がようやく戻りかけてくると、俺を挟んでメイドたちが激しく言い合いをしているところだった。どうやらイかせる気がなかったのにイかせてしまい、どちらが悪いのか相手になすりつけ合ってるらしい。
けど、俺は気付いていた。
あの寸前、確かに耳元で聞こえたのだ。
『……まったく。仕方ないですね』
と。
見かねたルクレイアが俺を助けてくれたのだろう。
なのにそうとは認めず、今にも取っ組み合いのケンカをしそうになっている二人。
その喧騒がだんだん遠くなっていき、俺の意識は真っ暗な闇に飲み込まれていくのだった……。