巨乳キャラあつめました

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40話 二度目の紅夜を明日に控えて

目が醒めた俺は、違和感を覚えていた。
いつもと少し違う天井。爽やかさを感じる良い匂い。なによりベッドの中の半身が温もりに包まれていて……。

――ルクレイアっ!?

温もりの正体を確認しようと顔を向けると、目の前に美しすぎるメイドの寝顔があり、口から心臓が飛び出そうになってしまった。

な、なんでっ!?
なんでルクレイアと一緒に寝てんだっ!?

混乱する頭を必死に落ち着かせる。

あ、そうか。
昨日ルクレイアとノルンに激しく責められ、そのまま気絶してしまったのか……。

なんとも情けない有り様だが、となると部屋の違和感も納得だ。
俺はあのままルクレイアのベッドで寝かされていたのだろう。

しかし昨日は危ないところだった……。
もう少しで、本当に廃人になるところだったのだ。
もしルクレイアが助けてくれなかったらと思うとゾッとする。

改めて、俺はルクレイアの寝顔を見詰めた。

頬に掛かる藍色の髪。長い睫毛。整った鼻筋。形の良い唇。
作り物のように美しく、けれど今なら分かる。いや、前から分かっていた。彼女の中には、優しい心が宿っているのだと。

「……ありがとうな。助かったよ」

「そう思うならさっさとわたしに降参すれば良かったではないですか」

「お、起きてたのかっ!?」

横になったままパチッと目だけ開いたルクレイアは、綺麗すぎてちょっとホラー。
彼女は俺を咎めるように、眼球だけをギョロッと動かす。

「一流のメイドが誰よりも早く起きるのは当然です」

「寝てるじゃん」

「起きてます。起き上がってないだけで」

酷い屁理屈もあったものだ。
昨日までの俺だったら、そう思うだけで流していただろう。
けど今は違う。昨日ルクレイアが助けてくれたことを切っ掛けに、俺は今までの彼女の行動を少し深く考察してみたのだ。

――ルクレイアは、俺の精液だけを求めている。

実にサキュバスらしい行動理念だし、「愛」を知らないという彼女たちなのだから、それを当然のように俺は納得していた。

けれど実は違うんじゃないだろうか?

だって昨日、ルクレイアは助けてくれた。
ノルンの奴隷になるわけにはいかず、かといってルクレイアの番に敗北を認めてしまえばノルンから相応の仕返しとやらをされてしまうので、結局どちらも選べなくなっていた俺だが、それでもギリギリまで追い詰められた時、俺が最後に選ぶのは間違いなくルクレイアだし、恐らく彼女もそれは分かっていただろう。
つまりルクレイアからしてみれば、あそこで俺をイかせるメリットはなかったのだ。

それでも「助けたい」と思ってくれたのなら……。
それは精液だけじゃなく、一定以上の好意を持ってくれているからだと思いたいし、そう思えば納得出来ることは多々あった。

まぁ、さすがに「愛してくれている」なんて大それた考えは、それこそ自分勝手な妄想だろうけど。
でもアルムブルムさんがそうであるように、彼女の中にも「愛」があるのであれば、それに近い感情くらいは抱いてくれているのかもしれない。

だって今も……。
今もルクレイアは、布団の中で俺の裾を握っているのだから。

「まだ眠いや……。もう少しこのままでもいい?」

けどそれに気付かないフリをして、俺は彼女に訊ねた。
すると無表情ながらフッと顔を和らげ、ルクレイアは静かな息を吐く。

「仕方ありませんね。あの程度で疲労困憊とは情けないですが、わたしにも責任はあります。ノルンに対抗意識を燃やしてしまい、無理をさせてしまったようですから。責任をとって、このままもう少しだけ見守って差し上げましょう」

――素直じゃないな。
思わず言葉にしかけて、俺は慌てて口を噤んだ。

ルクレイアは俺の様子に一瞬だけ柳眉を顰めたが、しかし気にするほどではなかったのか、穏やかに長い睫毛を伏せる。その様子を見て、俺は口元が緩むのを自覚した。

……たぶん、今までもそうだったのだ。

感情を表に出すのが苦手なうえに、そもそもそんな感情が自分にあるとも思っていなかっただけで、ルクレイアはずっと俺を求めてくれていたのだ。
もっとも、それはまだ芽生え始めた淡い恋心のようなもの。小学生くらいの子が「好きー」って言うのと大差ない程度かもしれない。
だから彼女に指摘してもきっと分かってもらえないし、ルクレイア自身も持て余しているんじゃないだろうか。

けれど一度気付いてしまえば、彼女の態度には確かに好意が含まれていたように思える。
なら、俺がやるべきことはひとつだ。

彼女を悲しませないように。
感情表現を苦手としているぶん、俺がルクレイアの気持ちを汲み取ってあげられるように。

夜空を思わせる美しい藍色の髪をそっと撫でてやると、もう寝入っていたのか、ルクレイアはくすぐったそうに頬を緩めていた。
そんな彼女が愛おしくて、布団の中で身を寄せた俺もまた、もう少しだけ眠ることにしたのだった。

……。

「いよいよ明日なんだぜ!」

それから数日後。
エルルシーの部屋で授業を行っていると、金髪少女はフッと窓の外の蒼い月に目を移していた。

「みたいだな」

俺もさっきリュドミナさんに聞いたので知っている。
この世界に来て二度目の紅夜が、明日に迫っているのだと。

「ちなみにエルルシーは今までどうやって過ごしてきたんだ?」

「紅夜か? 危ない日だってのは分かってるからな。子供は早く寝なさいって言われて、紅夜用の部屋で寝させられるんだぜ」

なるほど。
まぁ男の俺と違って襲われる心配は少ないだろうが、中には理性を失ってしまうサキュバスも多いので、念のため隔離されるわけか。

「センセーはどうだったんだぜ? 一度体験してんだろ?」

「ありゃやべぇな。死にかけた」

「お、おぅ……。やっぱ危ない日なんだな……」

俺の言葉に実感が込められているのに気付いたのか、エルルシーはピクッと頬を引き攣らせながら頷いていた。
こんな少女もあと数年すれば「ちんぽぉ」と叫びながら彷徨うのだろうか? そんな姿がまったく想像出来ない。俺なら笑ってしまいそうだ。

「おぅっ!? 今ケンカのオーラを感じたぞっ!?」

「なんかだんだん敏感になってね?」

「それだけ付き合いが長くなってきた証拠だぜ……って、やっぱりケンカ売ってたんじゃねぇかっ!」

おぅおぅ迫る少女の頭を押さえつけながら、俺は明日のスケジュールを頭に思い描く。

基本的には前回と同じだ。
昼前には地下へ降り、そのまま翌朝まで大人しくしている。
当然ながら、今回は夜前五時くらいじゃ油断しない。たっぷり余裕を持って、七時くらいになったら迎えに来てくれとルクレイアには伝えてあった。

それと前回との違いと言えば、猛牛のように突進してきているこの金髪も一緒ということか。
いまだ夢渡りバージンを貫いているエルルシーは、今回の紅夜でも影響を受けないというのが大方の予想だ。

んー。
フラグかな?

なんて思ってしまうけれど、もちろん「万が一」って可能性は俺もリュドミナさんも考えている。
なので夜後九時くらいになったら、エルルシーには地下室にある鉄格子の中へ入ってもらう予定になっていた。

高貴な家柄の娘さんを檻に閉じ込めるのはどうかとも思うが、この案には何故かエルルシー本人が乗り気だったりする。

『檻かっ! 一度入ってみたかったんだぜっ!』

とは、大人になる片鱗すら見せない金髪少女の御言葉だ。
まぁ俺が代わりに檻に入ったところで、檻の外のエルルシーが淫乱化してしまったら鍵を開けられかねないしな。
リュドミナさんはさすがに渋い顔をしていたが、これが一番安全だろうと溜息を吐いていた。

「なーなーセンセー! 明日何持ってく? やっぱお菓子は欠かせないよな! あーダメダメっ! どんなお菓子を持っていくかまだ言うなよっ!? 明日見せ合いっこしたほうが楽しいんだぜ!」

遠足かと。
今にも「バナナはオヤツに入りますか」と言い出しかねない雰囲気だ。
ちなみにセンセーのバナナはオヤツに含まれません。

とまぁそんな感じで準備しながら、楽しく明日に備える俺とエルルシーなのだった。

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