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41話 リュドミナの優しさと、アルムブルムの愛

紅夜前日の夜。俺はアルムブルムさんの部屋を訪れていた。
いや、心情的には帰って来たと行ったほうが正しいかな。「おかえりなさい」と微笑みで迎えてくれた彼女を見ると、それだけで幸せな気分になってしまう。

「明日の準備、だよね?」

ソファに腰を下ろすと、自然と俺の隣に座ったアルムブルムさんが紅茶を淹れながら聞いてきた。
前回の紅夜で、事前準備として彼女の身体をお借りしたことは記憶に新しい。というか記憶に焼き付いている。可能なら外付けHDDに保存しておきたいくらいの思い出だ。

だからそう聞いてきたのだろうけど、そういうわけではない。どうしても、アルムブルムさんと話をしておかなければならなかったのだ。
もちろんリュドミナさんにされた、警告にも似たお小言についてである。

「あ~、それならわたしも言われちゃったよ。お怒りになられてるってほどじゃなかったから懲罰室行きにはならなかったけどね」

俺が話し終えると、アルムブルムさんは肩を竦ませながらそう言った。どうやらリュドミナさんは俺だけじゃなく、アルムブルムさんにも同じような忠告をしたらしい。

「そっか……。ごめんな。俺のせいで」

「誠くんのせいじゃないでしょ? こういう関係になりたいって最初に言ったのはわたしなんだから」

「それでも……やっぱりごめん……」

もしここが、俺の住んでいた世界だったなら。
この世界にも、他にたくさん男がいたのなら。
俺とアルムブルムさんは、誰憚る事無く恋人ごっこを続けられたのだろうか?

いや……そんな世界だったら、そもそも彼女は俺なんか相手にしてくれないか。
こういう特殊な世界だったからこそ、俺はアルムブルムさんみたいに優しくて可愛らしい女性とお近づきになれたのだから。

そう考えれば、仕方ないと諦めもつく。
サキュバスらしく、一時の間だけ幸せな夢を見せてもらったと思えばいい。

……だからここまでだ。
これ以上、彼女と一緒にいるわけにはいかないだろう。

「じゃあ、自分の部屋に帰るよ……。短い間だったけど、アルムブルムさんと恋人になれて嬉しかった」

そう言って立ち上がろうとした俺は、しかし突然腕を掴まれ、アルムブルムさんの胸にダイブしてしまっていた。
ふにゅんと顔を受け止めてくれる大きなおっぱい。彼女の甘い匂い。なにより、優しく抱き締めてくれた彼女の温かさに涙が零れそうになってしまう。

「アルムブルムさん……駄目だよ。これ以上は、本当にリュドミナさんを怒らせてしまうから……」

そうなった時、罰を受けるのは俺だけではない。
ならばどれだけ悲しくても、ここは身を引くべきなのだ。

けれど……。

「大丈夫だよ?」

「……え?」

「主様には、ちゃんと許可を貰ったから」

「……えぇっ!?」

本当にっ!?
あまりに信じられなくてガバッと顔を上げると、アルムブルムさんは照れ臭そうに笑っていた。

「うん。……ふふ。初めて主様に歯向かっちゃった」

それ大丈夫なのか?
心配になる俺に彼女は事の経緯を説明してくれたのだが、その話を聞いてますます顔を青褪めさせてしまう俺である。

だって彼女、真っ向からリュドミナさんに反抗したらしいのだ。

『いくら主様のご命令でも聞けません。お叱りは受けます。罰も受けます。出て行けと仰るなら従います。でも、誠くんとのことだけはお許し下さい!』

と。

そんな話を聞かされてしまったら、彼女のことを抱き締めるしかないじゃないか。
怖かっただろうに……。俺との関係をそこまで大切にしてくれているなんて……。

もっとも、どうやら完全な勝利というわけでもなかったらしい。
この部屋限定の恋人ごっこを続けるにあたって、いくらか条件を出されたそうだ。

「誠くんがこの部屋に来ていいのは、多くても週に一回までだって」

週に一回までとなると寂しい気持ちはあるが、アルムブルムさんはそれを受け入れたらしい。

「まぁ仕方ないよね。わたしだけで誠くんを独占しちゃうわけにはいかないもん。それに、会えない時間が愛を育むこともあるんでしょ? 今ならその気持ち、ちょっと分かる気がする」

アルムブルムさんは強いな。
ひょっとしたらリュドミナさんも、それを恐れたのかもしれない。
きっぱり禁止にしてしまうことで、逆に燃え上がってはマズい、と。
ロミオとジュリエットしかり、禁断の恋というのは激しく燃え上がってしまうものなのだから。

なら、ある程度好きにさせた方が上手くコントロール出来る可能性が高い。そう考えて、リュドミナさんは週に一回という妥協案を受け入れたんじゃないだろうか。

それに、確かに彼女の言う通りなのだ。忘れてはいけないが、この恋人ごっこはアルムブルムさんが「愛」を知るための擬似恋愛だから。毎日一緒にいてはそれが当たり前になってしまい、逆に良く無いということもある。

「あと、誠くんがわたしにのめり込み過ぎないように気をつけること、って言われちゃった」

「それ手遅れかも……」

「ふふ。それは嬉しいけど、でもダメだよ? わたしはわる~いサキュバスのお姉さんなんだから。魂まで吸い取られちゃうぞ?」

それでも構わない……と思い掛けてるあたり、本当にヤバイのだろうと自覚する。
こちらの世界に来たばかりの俺だったら、間違いなく「吸い殺して欲しい」と思ってただろうから。ギリギリで踏み留まれるあたり、相当サキュバス耐性が出来ているのかもしれない。

「主様はね……たぶん、本当は止めさせたいんだと思う」

「……だろうな。でも、なんでなんだ?」

彼女が何かに俺を利用しようとしているのは分かる。
そのために、俺のサキュバス耐性を強化しようとしていることも。

けど、だったらどうして俺が誰かにのめり込むことを止めようとするのか?
例えばの話、リュドミナさんが俺を利用しようとした時に、俺にはそれが嫌ならば逃げ出すという選択肢がある。もちろんこの世界で彼女の庇護を離れ生きていくのは困難だろうが、だからって「誰かを殺せ」みたいな命令をされてしまったら受け入れることは出来ないから。

けれどその時、俺がアルムブルムさんに心の底から惚れてしまっていたら、彼女を人質にして俺に命令を強制するという方法もあるのだ。
誰かのことを本気で好きになるってことは、守るべき者が増えるってことでもあるんだから。そしてそのことに気付かないリュドミナさんではないだろう。

居住まいを正して俺が考え込み始めていると、アルムブルムさんは心を落ち着けるように紅茶を啜り、そして静かに呟いた。

「主様はね、本当にお優しい方なんだよ。だから主様はわたしに……ううん。わたしたちに、「愛」を知って欲しくないんじゃないかな……」

「え……?」

「だってサキュバスにとって、それを知ってしまうときっと辛いことの方が多いから。だから主様のこと、誤解しないであげて?」

そっか……。
そういう考え方もあるのか。
俺がどうこうではなく、アルムブルムさんたちの心を守るために……。

でも、それっておかしくないか?
それじゃあまるで、リュドミナさん自身、知っているみたいじゃないか。
誰かを愛する感情を。そしてそれが、幸せなだけで終らない場合があるってことを。

湧き上がった疑問は、けれど答えの出るものではなかった。
例えリュドミナさん本人に聞いてみても、はぐらかされてしまう類の質問だろうし、もし本当に彼女が恋愛の痛みを知っているのであれば、それは無闇に掘り起こしていいものではないから。

もう冷えてしまった紅茶を飲み干し、俺は頭を切り替える。

とにかく、俺とアルムブルムさんがこれまで通りの関係を続けられるのは間違いなく良いことだ。
例え週に一度だけだとしても、その日だけは彼女を愛することが出来るのだから。

……しかし、週に一度か。
週に一度といえば、ルク……。

「あ~。今他の子のこと考えてたでしょ」

と、藍色の髪が頭に浮かびそうになったところで、ぷくぅっと頬を膨らませたアルムブルムさんが下から覗き込んできていた。
なんという洞察力だろう。まだ彼女は本当に「愛」を知ったわけではないと言っていたけど、この鋭さは恋する女の勘そのものじゃないかと末恐ろしくなってしまう俺である。

「もう……っ。お外にいる時のことは見ないフリしてあげるけど、この部屋にいる時は…………この部屋にいる時だけは…………わたしのことだけ見てて欲しいんだよ?」

あ、ヤバイわ……。
俺の死因、萌え死かもしれない。

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