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50話 ただ一人の男だから

ルクレイアの話を聞いた俺は、遣り切れない怒りに胸をむかつかせていた。

なんだよそれ……。
それじゃあ致死率百パーセントの最悪な病気ってことじゃないか。
しかも原因が分からない?
ある日突然死ぬことが決まっちまうなんて、そんなふざけた話があってたまるかよっ! と。

けれどいくら俺がここで憤っても、どうにもならないことなのだろう。
だって当事者である彼女たちが、一番それに対して真摯に取り組んできたはずなのだから。
なのに有効な治療方法を確立出来ていないのであれば、ここで俺が身勝手に「なんとかしろよ」と言ったって、それは彼女たちの努力に対する冒涜でしかないのだ。

と……。

そこまで考えて、俺の背中に嫌な汗が流れ落ちた。

ルクレイアは、最初になんて言った?
彼女は確かにこう言ったはずだ。

『メイドの一人がホロウ化致しました』

と。

「……誰だ?」

もうこの屋敷の中に、顔を知らないメイドはいない。
だからそれが誰であろうと俺は悲しむし、運命を恨むし、何とかしようともがくだろう。

でも……それでも……。残酷なようだけれど、個人差ってのは確かにある。
例えば目の前のルクレイアがホロウ化したなんて聞かされたら、俺は何が何でも彼女を助けようと足掻くだろうし、リュドミナさんが「月に帰すしかない」と言っても絶対それを認めるわけにはいかないもの。

たぶん、ルクレイアもそんな俺の気持ちに気付いているのだろう。
はっきりと沈痛な表情を浮かべ……けれど静かに、その名を口にしてくれた。

「……アルムブルムです」

「ざっけんなっ!!!」

聞いた瞬間、俺の身体は弾かれたように部屋を飛び出していたのだった。

……。

向かうのは地下室だ。
だってリュドミナさんが対処中……つまり「月に帰そうとしている」のだ。そんなの絶対止めさせなきゃいけないっ!

しかし廊下を走り地下室へ下りる扉の前まで来ると、そこには案の定見張り役のメイドさんが立っていた。

「通してくれっ!」

「申し訳ございませんお客様。ここより先へは誰も通すなと主様より仰せつかっております」

「いいから退けよっ!!」

メイドを押し退けようと伸ばした腕は、しかし逆にガッと掴まれ動けなくなってしまう。

「多少淫らな……失礼。手荒な方法でも構わないと言われておりますが、出来れば今のお客様にそのような方法はとりたくないです。なのでどうか……」

くそっ!
分かっていたことだけど、とても力で叶うような相手じゃない。本気で取り押さえに掛かられたら、俺なんか簡単に制圧されてしまうのだ。

でもだからって、このままアルムブルムが月に帰されるのを指を咥えて待ってる? 出来るわけねぇだろっ!!

「リュドミナさんっ!! 聞こえるかっ!?」

三枚も連なる鉄の扉越しでは届かなくても、ここと地下室は伝声管で繋がっている。強行突破を諦めた俺はすぐさま伝声管にしがみ付き、ありったけの声を地下室に送り込んでいた。

「聞こえてるよなっ!! ここを開けてくれっ!!」

するとやや間があって、静かな声が返ってくる。

「それは出来ないわ」

それは平素のリュドミナさんからは想像出来ないほど、冷たく、感情のない声だった。
こちらの心臓まで凍てつかせるような声音に尻込みしそうになったが、しかしこちらも引くわけにはいかない。
伝声管を掴む腕に力を込め、俺は声を届け続ける。

「許さないからなっ!! アルムブルムに何かしたら、俺は絶対アンタを許さないっ!!」

「……初めから赦されるなんて思ってないわ。それでも、これはわたくしがしなければならないことなのよ」

「ふざけんなっ!!」

ダメだっ!!
これじゃあリュドミナさんを止められないっ。アルムブルムが月に帰されちまうっ!!

何かないかっ!?
例えば地下牢にある秘密の通路から……ダメだっ。あっちの出口もメイドが押さえてやがるっ。
かといって強硬突破は無理。となると何とかリュドミナさんを説得して扉を開けさせるしかないんだけど……。

どこかにリュドミナさんを説得する方法がないかと頭を回転させていた俺は、ふと、あることを思い出した。それは、俺の懐に入っている物のことだ。

メンヘラみたいであまりやりたくはないけど、この際手段なんて選んでいられない。
卑怯かもしれないが、俺は覚悟を決めてその手段を取ることにした。

「……死ぬぞ?」

「……何を言っているのかしら?」

「扉を開けてくれないなら今から自殺するって言ってんだよっ!!」

「何を馬鹿なことを。貴女たち。誠さんを拘束しなさい」

リュドミナさんの言葉に従い、周囲のメイドたちが俺に迫ろうとする。だがそれより早く懐からナイフを取り出した俺は、自分の喉にそれを突きつけて見せた。

「お、お止め下さいお客様っ!!」

俄かに慌てだすメイドたち。その喧騒は、伝声管を通してリュドミナさんにも届いているはずだ。

すると――カチャッ。
ややあってから金属音が鳴り、地下への扉が内側から開かれた。
もちろんそれをしたのは、アメジストを思わせる紫色の髪の女主人だ。俺の凶行を目の当たりにしたリュドミナさんは、疲れたように息を吐き出していた。

「つくづく……愛というのは厄介なものねえ~……」

……。

リュドミナさんに伴われ地下室に下りると、ベッドの上に愛しい女性の姿を発見した。
全裸にされたアルムブルムが、ベッドに拘束されているのだ。

「アルムブルム――っ!!」

ひとまず、息があることに胸を撫で下ろす俺である。
しかし急いでベッド脇へ駆け寄った俺は、そのあまりの変貌ぶりに言葉を失ってしまった。

「ちんぽおぉぉぉ……っ!!」

くしゅっと柔らかな桃色の髪を振り乱す彼女が、正気を失ったように身体を捩っているのだ。
慈愛の篭った瞳は光を失っており、虚ろに虚空を彷徨うばかり。目の前にいる俺のことも、まるで目に入っていない様子だった。
いつも微笑みを浮かべていた柔らかい唇も、今は「ちんぽ」と動くばかりで、口端が涎で泡立ってしまっている。

思わず目を逸らしたくなる惨状。
呆然としていると、背後からリュドミナさんが沈痛な声を掛けてきた。

「見ないほうが良かったでしょう?」

振り返れば、彼女の顔には疲労が色濃く現れていた。
悲しみ、怒り、慟哭……。降り出す前の空模様を思わせる表情からは、アルムブルムに対するリュドミナさんの悲痛なまでの想いが伝わってくるようだ。

「可愛いわたくしのメイドですもの。いつまでも苦しませてはおけないわ」

「何か方法はないんですかっ!? 俺の精液で元に戻る可能性とか――」

「もう試したもの」

リュドミナさんはそう言って、ベッド脇に転がる空き瓶を指差した。

「昨日誠さんから搾り出したものを少し保管しておいたのよ。こんな事態を想定していたわけではないのだけれどね。……でも、結局無駄だったわ」

大量に漏らされた精液を、彼女は密かに瓶詰めしていたらしい。
そしてそれをアルムブルムに摂取させたのだが、やはり何の効果もなかったとのことだった。

「そもそもホロウ化は精液が足りなくて発症するわけではないのよ。だから、いくら精液を注いだところで……」

でも…………それでも俺は、その可能性に縋りたい。
だって俺に差し出せるものなんて、ちんぽしかないのだから。

「ひょっとしたら、出したてじゃないと効果がないのかもしれません! 量が足りないって可能性だって――」

「そういう問題ではないわ。だいいち、どうやってそれを試すのかしら?」

「そんなの決まってるじゃないですか! 俺が直接アルムブルムに注ぎ込みます!」

「一度でダメだったら? 二度、三度でダメだったら?」

「何度でもっ! 彼女が元に戻るまで、何度だって俺は――」

「だからダメなのよ」

「……え?」

「誠さんがさっき自分の命を取引き材料に出来たのは何故? この世界でたった一人の男だからでしょう?」

「はい……」

卑怯だったことは認める。
俺は自分の命の希少性を取引きの材料にしたのだから。
けれどだからこそ、リュドミナさんは俺の試みを許可出来ないのだと言った。

「危険過ぎるのよ。ホロウ化した者とセックスをした男なんていないのだから、どうなるか予想も出来ないわ。下手をすれば一度の交わりで根こそぎ搾り取られ、死んでしまうかもしれないのよ?」

ただでさえ、サキュバスとのセックスは疲労が半端ない。とくに淫乱化したサキュバスとの交わりは、命を吸い取られていると実感出来るほどだ。
それがホロウ化した相手ともなれば、どれだけの危険か分からないというリュドミナさんの言葉には説得力がある。

けれど

「それでも俺はヤります。愛した女一人助けられないで、なんのために俺はちんぽぶら下げてんすかっ!」

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