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51話 想いを乗せて精子よ届け #

一回だけという条件付きで、リュドミナさんは俺がアルムブルムに精液を注ぐことを認めてくれた。折れた、と言ったほうが正確かもしれないが。

「でも二人きりにはさせられないわ。申し訳ないけれど」

それは仕方ないことだろう。というか、彼女は俺を危険から守るために居てくれるのだ。リュドミナさんに見られながらアルムブルムを抱くのは抵抗があるけど、俺は静々と頷き、ゆっくりベッドに近付いていく。

「ちんぽおぉぉ……っ」

横たわるのは、変わり果てた姿のアルムブルムだ。
片目を覆う桃色の髪も、仰向けでも崩れないほど存在を主張する大きな胸も、むっちり肉付きの良い太ももも、そういったところに変化はない。

変わってしまったのは中身。
うわ言のように「ちんぽ」と繰り返すアルムブルムの姿は、直視し続けることが辛くなるほどだった。

「勃つの?」

背後からリュドミナさんが心配そうに声を掛けてきたが、俺は応えず衣服を脱ぎ捨てる。
しかし彼女の言う通り、目の前にこれだけエロい身体があっても、肉棒は芯が抜けてしまったようにへにゃりと力なくうな垂れてしまっていた。

でも……。
それでもリュドミナさんの手を借りて勃起し、それをアルムブルムに挿入するのは嫌なのだ。
彼女を助けるためとはいえ、それってなんか違うだろ。自我を失ったアルムブルムの身体をオナホール代わりにしてるようなものだもの。

そうじゃなくて、俺はちゃんと彼女を愛したい。
例えどんな状態にあっても、アルムブルムで勃起して、アルムブルムで射精したいのだ。
そうしないと、彼女の奥の奥にまで俺の想いが届かない気がするから。

「アルムブルムの部屋じゃないけど、今日だけは出張彼氏ってことでいいよな?」

彼女に覆い被さり出来る限り笑顔を作ってみたけど、正直ちゃんと笑顔を作れているか不安だった。
あっちの世界で働いている時は、一度着けたら家に帰るまで剥がれることのなかった笑顔の仮面が、上手く貼り付けられなくなってしまっている気がする。

「ちんぽっ! ぽぉっ!」

俺の下。四肢を拘束されたアルムブルムは頭を振って身体を捩り、髪を振り乱していた。少し興奮状態にあるのかもしれないと思い、落ち着けるために彼女の頭を優しく抱き締める。

「大丈夫だ。俺はちゃんとここに居る。アルムブルムの隣にいるから」

頬を寄せると、いつもの甘い匂いが鼻腔をくすぐった。アルムブルムの匂いだ。普段よりも汗の匂いとメスの匂いが多い気がするが、それでも嗅ぎ慣れた彼女の匂いが、少しだけ俺の心に余裕を持たせてくれる。

「愛してるよアルムブルム。だから、戻ってこい」

彼女の大きな胸を押し潰すように、俺はぴたりと身体を重ねた。
柔らかくて、温かくて、抱き心地の良いアルムブルムの身体。これほど密着しているのに、焦点の合わない彼女を見るととてつもない距離を感じて悲しくなってしまうが、挫けている場合じゃない。
暴れるアルムブルムを宥めるように優しく抱き締めつつ、俺はゆっくり身体を擦り合わせ始める。

「こうしてると出会ったばかりの頃を思い出すな。俺のベッドで寝てるアルムブルムの身体、勝手に使わせてもらってたっけ」

考え始めたら、次々に彼女との思い出が沸き出してきてしまった。それがまるで走馬灯のようで、俺は慌てて頭を振る。

違うっ!
これは別れなんかじゃないからっ!

嫌な想像を振り払うため、俺はアルムブルムの唇に自分の唇を強引に押し付けた。
いつもより弛緩した彼女の唇は、俺と唇が触れ合った途端にぬちゅっと吸い付いてくる。

「あぅ、んっ、ちゅぅっ、ちん、ぽぉ……っ」

だらしなく伸ばした舌で俺の口周りを舐めしゃぶり、はぁはぁと息を荒げる様子に平素の優しさが見当たらないのは、こちらをただのオスとしか認識してないからなのだろう。
そんな態度にどうしようもなく胸を締め付けられてしまうが、それでも俺は愛撫を続けた。

「アルムブルム……っ」

抱き締め、唇を重ね、素肌を擦り合う。
大きな胸が俺に押し潰されてむにゅむにゅ形を変える感触が、少しずつ俺の肉欲にも火を灯し始めた。
彼女の股の間に膝を差し込み、そのまま股間に押し付けると、すでに溢れている愛液がぬちょっと湿った音を立てたのが分かる。

「んあぁ……っ、もっとぉ……っ、ひあぁ……っ」

性感を刺激する俺の動きに、アルムブルムは恥ずかしげもなくおねだりを始めていた。
望まれるがまま胸を揉みしだき、ヴァギナに膝を擦り付けてやれば、彼女の瞳がどんどん快楽に蕩けていく。

完全に発情しきったメスの顔だ。

そこにアルムブルムの意思が含まれていないのだとしても、そんな表情を見せられてオスが無反応でいられるはずもない。
肉感的な彼女の身体にぴたりと密着すれば、二人の間に挟まれた肉棒がアルムブルムのお腹に擦りつけられていた。

「くひぃ……っ! ひんぽっ! ひんぽっ、ほひぃのっ!」

目聡くそれに気付いた彼女は、ガシャガシャと手枷を鳴らしながらソレを求めてくる。
大きく身体を捩るごとに、俺の下でむにゅんむにゅんとおっぱいが揺れ、勃起した彼女の乳首に身体をくすぐられてしまった。

「分かってる……っ。今、やるから……っ」

だから……。
だから戻って来てくれ……。

そう願いながら、いよいよ俺はアルムブルムの膣口に肉棒を押し付けていた。
今か今かと挿入を待ちわびるアルムブルム。ハートマークが浮かんでそうな瞳と目を合わせ、俺は一気に彼女を貫く。

――にゅちゅぅぅ……っ

挿入は、想像よりも遥かにスムーズだった。まるで吸い込まれるように、肉棒が彼女の中に埋没したのだ。
発情しきり、とろとろに蕩けたアルムブルムのヴァギナ。硬く張り詰めたちんぽを飲み込んだそこは、すぐさま精を搾り出そうと媚肉をくにゅくにゅ絡みつかせてきていた。

「くぁ……っ」

その感触は、凄まじい気持ち良さだ。
手加減など一切なく、ただただ男を射精に導く純然たる搾精器官。
サキュバスとの経験がなければ一瞬で射精させられ、そのまま根こそぎ搾り取られていたことだろう。

「はやくぅっ! はやく、ほひぃの……っ! だひてぇ……っ!」

追い討ちを掛けるように、アルムブルムが甘えきった声で精液をねだってくる。
その淫乱な声音だけでも、容易く虜になってしまいそうだ。

けれど俺は知っているから。
アルムブルムの優しさを。可愛さを。愛おしさを。

だから簡単に射精などしない。
それでは十分彼女に想いを届けられないから。

「愛してるっ! 愛してるんだっ! アルムブルムっ!」

――ぱちゅんっ!

快感で痺れそうな腰を無理やり引き、勢いをつけて彼女のお尻に叩きつけると、溢れるほどの愛液が二人の間で弾けた。
ズンッと、奥の奥まで響かせる強いストローク。ただでさえ気持ち良すぎる彼女とのセックスでは諸刃の剣だが、それでも俺は強引に腰を動かし続ける。

「あひゅぅ……っ、ふぅん……っ、イイ……っ、ちんぽぉ……っ、きもちひぃ……っ!」

「違うっ、だろっ! 誠だっ! ちんぽじゃないっ! 誠だっ!」

「ひゃあぁんっ! まこっ、と……っ? くふぅぁあん……っ」

「そうっ、だっ! 俺をっ、見ろっ! 誠、だっ! お前を愛してっ、お前が愛してくれたっ、誠だっ!」

肉棒と一緒に、言葉を彼女に叩きつける。
ぱちゅんっ、ぱちゅん……っ!
肉の弾ける音に、俺の想いを混ぜ込むのだ。

「んあぁあっ! まこっ、とっ! きもひっ、いいのぉっ! まことっ!」

「あぁっ! 俺もっ! 気持ち良いぞっ! アルムブルムっ!」

だらしなく舌を出し、呂律が回らないほど発情している彼女は、言葉を理解出来ているかも怪しい。
それでもアルムブルムが自我を取り戻すと信じて、俺は彼女を貫き続ける。

「んひいぃっ! まことっ! イッひゃぅっ! イッひゃぅよぉっ!」

すると、先に達しそうになったのは彼女の方だった。
細い喉を晒し、背中を弓なりに曲げ、肉感的な身体がガクガクと小刻みに痙攣を始めたのだ。

「んやあぁぁっ! イッ、ひゅっ、! イッ、ひゃううぅぅぅぅ……っ!!」

膣壁を抉るようにズンッと腰を突き入れた瞬間、アルムブルムの身体がビクビクッと大きく跳ねあがった。どうやら絶頂したらしい。
ホロウ化し、ずっと発情状態にあった彼女の絶頂は凄まじく、アルムブルムは口から涎を、結合部からはぴゅぴゅぅっと愛液を飛び散らせながら身体を硬直させていた。

それに合わせてぎゅぅぅっと収縮する膣内が、強烈な快感を肉棒に与えてくる。
気を抜けばすぐにでも射精させられてしまいそうな快感は、もはや暴力と言っても過言ではない。
それでも下っ腹に力を込め、俺はなんとか絶頂の波をやり過ごしていた。

「んふうぅぅ……っ」

しばらく待つと、身体から力の抜けたアルムブルムがベッドの上に力なく倒れこんだ。
けれどその瞳には今だ情欲の炎が激しく燃え盛り、元に戻っていないことは明らかである。

やはり……。
イかせた程度では戻って来てくれないのか……っ。

「もっとぉ……っ。まことぉ……っ。もっとシてぇ……っ」

再び行為をねだり始めたアルムブルムの姿に、俺は心を絶望で塗り潰される思いだった。
だって、俺も限界が近いのだ。
次にピストンを始めたら、一分と保たずに射精してしまうだろう。

そしてそれが、最後のチャンスになる。
そこで彼女が正気を取り戻してくれなければ俺は無理やり引き剥がされ、リュドミナさんがアルムブルムを月に帰してしまうのだから。

ダメだ……っ!
そんなこと絶対させられない……っ!

「はやくぅ……っ! まこと、はやくシてよぉ……っ」

なのに俺の気など知らぬ彼女は、ゆらゆらと腰を揺らし、行為の続きを催促してきていた。
結合部が擦れ合い、緩慢な快感が俺を絶頂へ追い詰めていく。

もうこれ以上、耐えることは不可能だった。

「アルムブルムっ!」

肉棒を挿入したまま、俺はがばっと彼女に覆い被さる。汗塗れになった体を密着させ、強く強くアルムブルムを抱き締めるのだ。

「まことぉ……っ」

「アルムブルムっ! 愛してるっ! 愛してるからっ!」

もう擬似恋愛だとか恋人ごっこだとか、そんな軽い気持ちじゃなかった。
本気だ。この気持ちは本気の愛情だ。泣きたくなるほどに、俺は彼女を愛してしまっているのだ。

だから愛を叫び、愛を伝え、愛で貫く。

ぬちゅん、ぬちゅんと抽挿を始めた肉棒が、アルムブルムの奥を何度もノックしていた。
彼女も嬌声をあげて悦びながら、俺の腰に動きを合わせてくれている。

「あぁあっ、イイッ、まことっ、まことぉっ!」

「愛してるっ! 愛してるっ! 愛してるっ!」

馬鹿の一つ覚えみたいにそれだけを繰り返し、覚えたての猿みたいに激しく腰を振った。
肉棒に絡みつくとろとろの媚肉。その快感に脳を焼かれながら近付いて来る絶頂に怯え、けれどどうしようもなくピストンが早まっていってしまう。

「アルムブルムっ! くぁっ! もうっ! イくっ! イッちまうっ!」

「きてっ! 出してっ! 誠でわたしを満たしてっ!」

「イッ――くぅ……ッッ!!」

彼女のお尻に叩きつけた腰がブルッと大きく震え、アルムブルムの一番奥を目指してびゅくぅっ、びゅるぅぅっと精液が噴き出した。
頭がどうにかなりそうな絶頂感に強く強く彼女を抱き締め、揺れる大きなおっぱいを身体で押し潰す。その感触が射精を長引かせる中、俺はまだ腰を振り続けていた。

「アルムブルムっ! 愛してるっ! 愛してるから戻って来てくれっ!!」

叫びながら、俺はまだ射精し続けていた。
通常より遥かに多い精液が、びゅるぅ、びゅるるぅっと彼女の膣に飲み込まれていくのが分かる。

それは至上の快楽で、至福の時間で、何もかも飲み込まれたくなるほどの気持ち良さで……。
まるで命そのものを吐き出しているような、そんな感覚なのだ。

けれど腰が止まらない。
射精が止まらない。
全てを吐き出すまで、もう自分で止めることは出来ないのだろう。

でも、それもいいかもしれない……。
アルムブルムが元に戻らないなら……。
いっそ彼女と一つに溶け合って……。

「誠っ!!」

ガンッと後ろに強く引かれ、その衝撃に俺は正気を取り戻した。
結合部からにゅるんと糸を引いて抜け落ちるペニス。瞬間、全身が悪寒に襲われる。

――さ……さむい……っ。

この感覚には覚えがあった。
初めて迎えた紅夜でルクレイアとセックスした時もこんな感覚だったのだ。

つまり今、俺は死に掛けていたのかもしれない。

「あ……ごめん……。ありがとうございます。助かりました」

だから死に掛けていた俺を、約束通りリュドミナさんが止めてくれたのだろう。
そう思って振り返った俺は、しかしそこにいた人物に言葉を失った。
だって俺を止めてくれたのはリュドミナさんではなく……。

「ルク……レイア……?」

「死ぬつもりですか!?」

しかもルクレイアは怒っていた。
無表情な彼女とは思えないほど、その顔には怒りが滲み出していたのだ。
美しい彼女に本気で睨まれると凄まじく恐ろしい。

「い、いや……そうは思ってないけどさ……。でも、助けたいんだ……。命を賭けてでも、俺はアルムブルムを元に戻してあげたいんだよ……っ」

ってそうだ!
アルムブルムだっ!
彼女はどうなった!?

ふらつく身体に鞭を打ち慌てて起き上がると、すでにリュドミナさんがアルムブルムの顔を覗きこんでいるところだった。

そして彼女は……。

リュドミナさんは…………悲しそうに首を横に振る…………。

「ダメ、みたいね……。残念だけれど……」

「そんなっ! だってさっき、アルムブルムが一瞬だけ正気に戻った気がするんですっ!」

そうだ。俺は確かに感じていた。セックスの最中、少しだけ彼女に知性の光が戻ったことを。

「それはわたくしも感じたけれど……」

「だったらもう一度セックスすれば――っ!」

「させられないわ。貴方、ルクレイアが止めなければ死んでいたのよ?」

「俺の命でアルムブルムが戻るなら――」

――パンッ!

突然響いた乾いた音に、俺は目を見開いた。
じんわりと、しかし確実に熱を持ち始めた俺の頬。
叩かれたのだ。
そう気付いて顔を上げると、そこには俺を睨みつける藍色の髪のメイド。
ルクレイアは俺を睨みつけ……睨みつけながら、目に涙を浮かべていた。

「馬鹿ですか? 馬鹿なのですか誠は? 貴方が死んでアルムブルムが喜ぶとでも?」

「ルクレイア……」

彼女が見せる初めての激情に、俺は言葉を続けることが出来なかった。
そんな俺を引き摺り、ルクレイアはアルムブルムさんに近付いていく。

「貴女もですアルムブルム。愛だなんだと言っておきながらその体たらく。男を殺すのが貴女の愛だと言うなら、わたしだっていくらでも愛を語れますよ? けれど違うのでしょう? 違うのだと貴女は嬉しそうに語ったではないですか。それとも、所詮サキュバスには愛など分かりませんでしたか?」

一気に捲くし立てるルクレイアの声には怒りや悲しみが渦巻き、いつも感情を表に出さないのが不思議なほど複雑な感情に彩られていた。聞いているこちらの胸が張り裂けそうなほどだ。

「これだけ言われて言い返しもしないとは。貴女は口と胸だけでしたね。だったらもう大人しく月に帰りなさい。貴女がいなくなったら、わたしが誠を貰いますから」

キッとアルムブルムを睨み付けたルクレイアは、返す刀で俺を睨み、そして――ちゅっ。強引に唇を重ねてきた。

「んむぅ……っ、ルク……んん……っ」

抗議したくても、ルクレイアのキスが熱烈すぎて喋ることすら出来ない。
そんな情熱的な口付けをたっぷり続けてから唇を離し、彼女はもう一度ベッドに横たわるアルムブルムを睨みつける。

「残念でしたねアルムブルム。これで誠はわたしのモノです。返してと言っても返してあげません」

悲しげに眉を顰めながらも勝ち誇ったようにルクレイアが宣言した。

すると……。

するとその時だ…………っ!

「や……だよぉ……」

弱々しく。
けれどはっきりと、アルムブルムの口が動いたのだ。

「いやだよぉ……っ。誠はわたしの恋人だもん……っ。誰にも渡さないんだからぁ……っ」

気付いた時、俺は我を忘れてアルムブルムを抱き締めていた。
さっきまで激しく交わっていたというのに、それでも決して得られなかった温かさ。それを確かに腕の中に感じ

「おかえり……っ! おかえりっ、アルムブルム……っ!」

そう言った俺の声は、情けない鼻声になってしまっていたのだった。

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