巨乳キャラあつめました

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57話 サキュバスの女王

俺が連れて来られたのは王城の最奥。つまり女王様の私室だった。
文字通りロイヤルでスイートな空間に、身体がガチガチになってしまうのは無理のないことだろう。

ちなみにルクレイアの同伴は許されず、連れて来られたのは俺一人だ。
それが緊張に拍車を掛けていたのだが、室内に見知った顔を見つけ、ホッと安堵の息が零れる。

「うちにようこそだぜ! センセー!」

元気に俺を出迎えてくれたのはエルルシーである。
もっとも金髪少女はドレスなんか着ちゃってるため普段とは雰囲気が異なり、お姫様っぽさ全開だ。馬子にも衣装ってこういうことかと一人実感する俺である。

「おぅっ!? ケンカのオーラを感じたぜ! ここがアタシのホームだってこと忘れんなよ!?」

「馬鹿め! ホームだろうとアウェーだろうと先生に負けはないのだ!」

「ぐぬぅ……っ!」

いつもの師弟漫才で緊張がほぐれた俺は、改めて室内に視線を巡らせた。
その行き着く先は、当然ながらソファに座っている人物である。

エルルシーの隣に座る美しい女性。エルルシーと同じブロンドヘアが、照明よりも光り輝いていた。
それに加え、純白のドレスに清楚な顔立ち。爪先を揃えて座る所作には気品が漂い、思わず頭を垂れたくなるほどだ。

見た目の年齢は俺と同じか少し若いようにも見えるので、パっと見ではエルルシーのお姉さんって感じだけれど、彼女がエルルシーの母親なのだろう。そして同時にこの女性がサキュバスたちの女王であることが、彼女が纏う高貴な空気から否応なく察せられた。

「話しには聞いていたけれど、娘は本当に良くしていただいていたみたいですね。まずは母として感謝を述べさせて頂きます」

頭を下げるわけでもなく、僅かに微笑みを浮かべただけの礼。なのにこちらが恐縮してしまいそうになり、住んでる世界の違いをまざまざと見せ付けられた気分である。

しどろもどろになってしまった俺は勧められるがまま席に着き、彼女と正対した。

大胆に肩を出した純白のドレスは無垢な花嫁を思わせるほど清楚で美しい。
けれど抱き寄せたくなるほど華奢な撫で肩や、魅惑の谷間を作りだしている盛り上がった胸が、その豪華なドレスでさえも中身の豪華さに比べれば添え物に過ぎないのだと言ってるようである。

なるほど。
サキュバスの女王か。
鞭を振るうタイプではなさそうだが、見る者全てを一瞬で虜にしてしまいそうな美しさは、まさしく女王の貫禄だった。

「初めまして異界の方。わたしはローレンシア・ハートランド。非才の身ながら、女王などやらせていただいております。しかし本当に男とは……。疑っていたわけではありませんけど、この目で見てもまだ信じられないですね」

俺の頭から爪先まで不躾な視線を何度も往復させ、女王は息を吐き出していた。まぁ彼女はそれをしても咎められないだけの権力を持っているのだけど、見られている方としては落ち着かない。じっくり見られるだけでゾワゾワしてしまうのだ。主に股間が。

「それに、随分とこちらの世界に慣れているようですね」

「そう、ですか?」

「えぇ。わたしと正対しているのに襲い掛かって来ないのが何よりの証拠かと」

つまり普通の男なら彼女と正対しただけで理性を失い、襲い掛かってしまうってことか。
いや実際凄まじく魅力的な女性だし、分からなくもないけど。

「センセーはアタシの魅力も全然効かねーからな! すげーんだぜ!」

それは全然分からない。
月が紅く染まってから出直しな。

そんな俺の気配を敏感に読み取ったエルルシーは今にも飛び掛ろうとしてきていたが、その金髪を優しく撫でながら女王が話を続ける。

「お姉さ……ヘリセウスから、ある程度の事情は聞いていますね?」

ここからが、俺を呼んだ本題なのだろう。
俺は無言で頷き、居住まいを正した。

すると美しい柳眉を顰め、険しい表情で女王が語り始める。

「いつからか、民の中に夢渡りが上手く出来ないという者が現れ始めました。無論、夢渡りを経て得る精液はサキュバスの存在に欠かせないものですから、由々しき問題です。ゆえに我々は原因究明と解決方法を模索し続けているのですが、そういった者が現れるペースは増加傾向にあるものの非常に緩やか。問題が表面化するのはまだ先のことだと考えられていました」

俺が知る中にも、一人当てはまるサキュバスがいる。
ルクレイアだ。
彼女は夢渡りが出来ない原因を自分の中に求めていたけれど、実際はサキュバス界全体に広がり始めている問題らしい。

「けれど……」

女王はそこで一度言葉を切り、長い睫毛を静かに伏せた。
清楚な雰囲気の彼女が見せるその仕草は非常に儚げで、無条件で力になりたくなってしまう。

「――問題は、我々の予想を遥かに超えるスピードで表面化してしまったのです」

「ホロウ化……ですね」

「はい。突発的に発症するホロウ化を止める術は今のところ存在せず、しかも月に三桁近い者が発症している現状は、正しく世界の危機と言える状況なのです」

そして女王は真っ直ぐこちらを見てくる。
有無を言わせない気配は威圧感を覚えるほどで、俺はゴクッと唾を飲み込んだ。

「ヘリセウス邸でホロウ化したメイドを元に戻してみせたそうですね?」

「はい」

「その力、この国に住まう民のために使わせて頂けますか?」

「分かりました」

すんなり頷いたことが意外だったのか、女王の表情が初めて崩れた。
ぽかんと開いてしまった口を慌てて閉め、彼女は顔を引き締める。

「よろしいので? 分かっているとは思いますが貴方はこの世界で唯一の男であり、ホロウ化した者を救えるたった一つの希望かもしれないのですよ? 協力する対価に金銭を求めるなり、身分を求めるなり。如何様にも値を吊り上げることが出来ると思うのですが」

「だから、ですよ」

「……どういうことですか?」

「俺はもうこの世界で生きていくしかないんです。この世界が危機に瀕しているというなら、この世界にいる唯一の男として、喜んで協力したいと思っています」

正直なところ、馬車の中にいる時からこうなる可能性はずっと考えていた。
それに対し、俺が出した答えがこれだったのだ。

だって俺は、夢渡りが出来ないのは感情を表に出せない自分のせいだと苦しんでいたルクレイアを見ている。
優しく、柔らかく、慈愛に満ちた表情で俺を蕩けさせてくれるアルムブルムさんが、我を忘れて狂う姿を見ている。

この世界であんな悲しみが広がっているというのなら。
俺の知ってる人たちに、あんな不幸が訪れるかもしれないというのなら。

俺はなんだってするつもりでいるのだ。

「なっ! だから言っただろ! アタシのセンセーはすげぇセンセーなんだぜ!」

と、今まで黙って聞いていたうちの生徒が、興奮を露に女王様の腕を掴んでいた。
そんなにベタ褒めされると、先生だってちょっと照れるんだぞ? まったく愛い奴め。

女王様はそんなエルルシーを呆れたように窘めてから、再びこちらに意識を戻していた。
覗うような視線は半信半疑といったところかもしれないが、俺の確固たる意思を感じたのか、彼女はフッと相好を崩す。美しすぎてちょっと見惚れてしまいそうな微笑みだ。

「……感謝します」

「まぁ断ったところで、強制されてしまったら逆らえないですしね」

「包み隠さず言えば、そうしたいとも思っておりました。鎖で繋ぎ、毎日気を失うまで精液を搾り取るべきだと」

うぇ……マジっすか……。
そういやこちらのご家庭、エルルシーの言葉を信じれば、そこそこ脳筋ファミリーだった気がする。受け答えを間違っていたら精液家畜の運命だったのかもしれないと思うと、息子さんがひゅんっと縮みあがる思いだ。

「あぁもちろん、本当にそんなことをするつもりはありませんからご安心ください。とても怖い方に止められておりますので」

それが誰かは聞けなかったが想像はつく。リュドミナさんのことだろう。
エルルシーが地下牢から脱出する秘密の抜け穴を知っていたのは、母親もあの地下室に行ったことがあるからだとリュドミナさんは言っていたからな。彼女もリュドミナさんにトラウマを植え付けられた一人なのだ。まさかそれがサキュバス界のトップだとは思いもよらなかったけれど。

女王様を拷問するって何やってんすか……。
改めて、屋敷の女主人に戦々恐々の俺である。

「ところで、俺はどんな風に協力すればいいですか?」

「日に二度ほど搾精させて頂くつもりでおります。その程度であれば、それほど負担にならないと思うのですがいかがでしょう」

「分かりました。精液はどうやって提供しましょうか? 自分で出して持って行くって方法でも構わないですけど」

「それには及びません。お忘れですか? この城にいる者は全員サキュバスなのですよ? ご自分でされるより効率的に素早く搾精させますからご安心を」

その後細かい取り決めを終えたところで、話題は世間話へと移行した。
といっても女王様との会話だ。話のネタなんてエルルシーのことしかないけれど。

「娘にはどのような教育を?」

女王様……名前をローレンシア・ハートランドというらしいので今はローレンシア様と呼んでいるけれど、美しいブロンドをかきあげた彼女は好奇の視線を俺とエルルシーの間で彷徨わせていた。

教育ママというより、娘の成長を黙って見守るタイプなのかもしれない。エルルシーに向ける視線は、とても柔らかいものである。

「技術的なことも教えましたが、一番習得して欲しいのは色気ですね」

「やはりそうですか。どうにもエルルシーは元気すぎて、城でも手を焼いていましたから……」

「こ、子供は元気が一番なんだぜ!? だよな、センセー!」

う~ん……。
まぁそれも一理あるのだけど、サキュバスって種族の視点で見たらそれはマズいだろう。元気があれば何でも出来るとはいかないのだ。特に搾精に関しては。

「それで先生はどのようにしてそれを教えようと?」

「言って分かるようなものではないですからねぇ……。とりあえず見て感じてもらおうと、実際に行為中のメイドさんの様子を観察してもらいました」

「つまりエルルシーの前でサキュバスに犯されてみせた、と。随分教育熱心な方なのですね」

そう言いながら、ほぅ、っと吐き出したローレンシア様の吐息には、だんだん艶めかしい熱が込められ始めていたのだった。

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