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63話 一日の終わりに

夜になった。
今は食後のティータイム中。ルクレイアと二人、今日一日の感想なんかを話し合っている。

「予想はしてたけど凄く広いな、お城って」

「それはそうでしょう。それでも誠が立ち入れる場所などたかが知れていますし、王宮の外にはメイドたちの宿舎、兵舎、議事堂、東院、西院。さらに北には広大な狩猟地もあり、それら全てを含めて『お城』なのですから」

つまり一日使っても周り切れず、なんなら六回ほど迷子になった広大な王宮ですら、お城全体のほんの一部ってことか。

うへぇ……。
一般人の俺には想像も及ばない。

「掃除とか大変そうだなぁ……」

「そのためにメイドが数百人単位で働いておりますし、調理場担当者だけでも主様のお屋敷のメイドよりも多いそうです」

「一流メイドとしては腕が鳴る?」

「あくせく働くメイドたちを横目にムーンシャインを食む快感に目覚めました」

メイドの誇りを投げ捨てたルクレイアだった。
俺と別れた後何をしていたのかと問えば、惰眠を貪り、果実を食べ尽くし、優雅な一時を満喫していたそうである。

う~ん……この駄メイド。

「何か?」

「いやいいんだけどさ…………太らない?」

「――ッ!?」

かつてないほど眉を跳ね上げたルクレイアは、無意識に自分のお腹を摘まもうとして、慌てて手を引っ込めていた。

「太るわけありません。サキュバスですから。搾精に支障をきたすほど体型が変化することなどありえないのです」

その割に焦っているような……。
あ、なるほど。
搾精に支障をきたさない程度なら体型が変化することもありえるってことか。

などと一人納得していると、いつの間にか突き刺さるような視線を向けられていることに気づいた。
これはいけない。
早く話題を変えなければ。

「そ、そういえば城内でよく見かける模様があるんだけど、あれって何か分かる?」

さすがにわざとらし過ぎたかな? ルクレイアはプイッとそっぽを向いてしまっていた。
けれどぼそりと呟くように、渋々答えが返ってくる。

「それは、扉の紋様のことでしょうか?」

「そうそうっ! それっ!」

今日一日お城の中を散策して、俺はその紋様をたくさん見ていたのだ。
行く先々の壁で、天井で、旗の中で。その紋様は、お城の至る所で散見された。

黄金で縁取られた赤い扉の紋様。

きっと意味のあるものなのだろうと、俺は気になっていたのである。

「わたしも詳しくは知りません。王家に代々伝わる紋様だということくらいしか」

「国旗みたいなもんか?」

「国旗……? あぁ、人間の世界はいくつもの国で成り立っているのでしたね。生憎サキュバスの世界には国が一つしかありませんので、国旗というものは存在しません。強いて言うなら貴族の家ごとに家紋がありますので、王家の家紋が国旗ということになるかもしれませんが」

そういやリュドミナさんの屋敷に突入してきた兵士の鎧を見て、リュドミナさんは家名を言い当てていたっけ。
じゃあ扉の紋様が鎧に刻まれていれば、それはハートランド家の兵士。つまりローレンシア女王の兵士ってことになるのかな?

「あれ? でも戦争があったとかなんとか言ってた気がするんだけど、一国しかないなら、どこと戦争したんだ?」

「それは簡単です。女王様の下には四大淫魔貴族様がいらっしゃり、さらに無数の貴族がいるわけですが、必ずしも女王様に忠誠を誓う者ばかりというわけではありませんから」

「ってことは内紛か」

クーデター、下克上、内戦。言い方は色々あるが、配下が突然反旗を翻すなんてことは俺の世界でも枚挙に暇がない。
精液のことばっかり考えてるように思えるが、サキュバスにはサキュバスの生活があり主義主張があるってことを俺はこの二か月ちょっとで学んでいる。なんの不思議もないことだった。

そんな感じで話が一段落し、そろそろ寝ようかと準備を始めた頃である。
――コンコンコン。不意に部屋の扉が鳴ったのだ。

「夜分遅くに失礼しまーっす」

扉を開けたのは、お城のメイドさんだった。
こんな夜更けになんの用だろうか?
対応するため立ち上がりかけると、先んじて立ち上がったルクレイアが素早く応対を始めていた。

「誠はもう就寝するところですが、どのようなご用件でしょうか」

ぐーたらしているようで、側付きという役割はちゃんとやるつもりらしい。
もっとも、わざとメイドさんから俺の姿が見えないように立っているあたり、何か他の思惑を感じないでもないけれど。

仕方ないので、俺はそのまま二人の話が終わるのを待つことにする。するとメイドさんと話していたルクレイアが、振り返りながら手を差し出してきた。

「誠。スタンプカードの提出を」

あ……。
そういえば、あのカードは夜に回収するって言ってたっけ。

今更ながらに思い出した俺はポケットからそれを取り出し、ルクレイアに手渡す。すると藍色髪のメイドは、露骨に眉を顰めてしまった。

「スタンプが一つ……」

ジロッと見つめてくるルクレイアに俺はしどろもどろだ。
言うなれば、財布に入っていたキャバクラの名刺を妻に見られた気分だろうか。凄く胃がキリキリする。

「あっ、そ、それは、なんか急にそういう雰囲気になっちゃってさ! そんなつもりなかったんだけど、流れっていうか、そういうのあるじゃん? あるよな?」

いや、なんで浮気がバレた旦那みたいな言い訳をしなきゃいけないんだ?
搾精されるのは俺の義務なんだからそんな必要ないハズなのに。

するとルクレイアの影になっていたメイドさんが、ヌッと横から覗き込んできた。

「あー、ダメじゃん。スタンプが一つ足りてないし」

メイドさんは残念そうに首を振っているが、しかしその目に喜悦の色が浮かんでいることを俺は見逃さなかった。なんとなく猛禽類を思わせる肉食の笑みを浮かべながら、メイドさんがずかずか室内に入ってきてしまう。

「仕方ないので強制徴収しまーっす。異論ないよねー?」

「ちょ、ちょっと待って! 強制徴収って何をっ!?」

「そんなの精液に決まってんじゃん」

確かに搾精は一日二回って話だったけど、まさか足りないと強制徴収されるとは思ってもいなかった。税金かな?
とはいえ、約束は約束だ。この世界の役に立ちたいと望んだのは俺なのだから、ここは素直に精液を提供するべきだろう。

「わかりました。じゃあ出してくるんで、採取用のコンドーム貸してもらっていいっすか?」

「はぁ?」

「え? いやだから自分で精液出してくるので……」

「いやいや、聞いてるっしょ? 射精はお城の誰かにシてもらうことって。自分で出しちゃ意味ないじゃん。もちろんそこの側付きに手伝ってもらうってのもナシだから」

え……。
ってことは、今からここでこのメイドさんにヌかれなきゃいけないってこと?
ルクレイアの目の前で?

それはマズい。
なんだか知らんが、凄くマズい気がする。
というか、すでにルクレイアからドス黒いオーラが噴出しているのを幻視だろうか。

「ル、ルクレイア……っ」

思わずルクレイアに助けを求めたが、しかし伸ばした手はメイドさんが掴まれてしまう。

「ってことでー、さっそく始めよっか」

「待ちなさい。側付きメイドとして、誠が嫌がっているのを見て見ぬフリは出来かねます」

おっ!
そうだっ!
ルクレイア良いこと言った!

「んー? あ、なるほどー。あーしが王宮メイドのテクでアヘアへさせちゃったら、側付きメイドのテクが大したことないってバレるもんね。だから焦っちゃってんだ」

なんてあからさまな挑発なのだろうか。
メイドさんはズイッとルクレイアに近寄ると、勝ち誇ったような視線をぶつけていた。

まさに一触即発の空気である。だがさすがのルクレイアだって、そんな安い挑発に引っかかるほど――

「……そこまで言うならじっくり見せて頂きましょうか。王宮メイドのテクとやらを」

うぉいっ!?
挑発されるの得意過ぎねぇっ!?

ともあれ傍観を決めたルクレイアは、脚を組んでソファに腰を下ろしていた。俺に向けられる冷ややかな視線には「分かってますよね?」と無言の圧力がビンビンである。
想定しうる限り最悪の事態に、頭を抱えたい俺なのであった……。

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