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65話 事情聴取

ルクレイアはご機嫌斜めだった。
シャロリィが部屋を出て行った後も、ほとんど口をきいてくれない有様だ。
もちろん怒りに任せて搾り取られる方が身体的には辛いのだけど、こうも不機嫌オーラを出し続けられるくらいなら、いっそそっちの方がまだマシなくらいである。

しかもこれだけ「ツーン」としているのに、布団の中ではしっかり俺の手を握ってきているのがマジ辛い。滑らかな手の感触が嬉しい反面、この美しいメイドを怒らせてしまったのだと思うと、心がズーンと重くなるのである。

……うん。
ルクレイアの前で他の女性にヌかれるなんてことは、もう二度としてはいけないな。
空気が悪くてしんどいということもあるけど、それ以上に彼女を傷つけてしまうことだから。

だから俺は、翌日から積極的に搾精されることにした。
そんなにムラムラしてなくてもメイドさんに頼んで搾精してもらい、スタンプを貰うのだ。じゃないと、また強制徴収されてしまうから。

ちゃんとスタンプさえ集めておけば、ここまでルクレイアの機嫌が悪くなる事態にはならないだろう。

そう思っていたのだけれど……。

……。

「では報告を」

翌日の夜である。
スタンプカードに搾精の証が二つ押印されていることを確認したルクレイアは、どういうわけか「どこでどんな人からどのように搾精されたのか」のレポート提出を求めてきやがったのだ。意味が分からない。

「い、いや、まぁほら。普通だよ。その辺のメイドさんに頼んで、普通にシてもらいました」

嘘である。
このお城には様々な性癖に特化した方が多いようで、あまり普通の性行為にはならなかったのだ。

けどな?
そんなこと事細かに話せるわけないじゃん。お尻の大きなメイドさんに壁際まで追い詰められ、無理やり尻コキで射精させられましたなんて、どの面下げて報告しろって言うんだよ。

だというのに、ソファに座ったルクレイアは静かにこちらを見つめ続けてきている。

「それでは分かりません。詳細に。具体的に。その時の感情も添えてお願いします」

とんでもない羞恥プレイである。
許してつかぁさい……。

「……なるほど。わたしには言えないような激しいぐちょぐちょセックスで無様にアへ顔晒しながら射精させられた、ということですね?」

「ち、違うぞっ!? 断じて違うからなっ!?」

「では報告を」

ぐぬぅ……っ。
困ったことに、ルクレイアが逃がしてくれない。
俺に経験はないけど、浮気がバレて問い詰められる時ってこんな感じなのだろうか?
そりゃ旦那も土下座するわ。土下座で済むなら安いものだもの。

っていうかそもそも、俺の場合は浮気とかじゃないからな?
搾精されるのは俺に課せられた義務であり仕事みたいなもんだし、なんならサキュバスたちを救う可能性だってある大事業なのだ。そこらのだらしないちんぽと一緒にされちゃ困るわけよ。だいいち俺は、ルクレイアと付き合ってるわけでも結婚してるわけでもないしな? 例え他の女性と良い感じになったところで、なんら後ろめたいことなんてないハズなんだぞ? その辺を良く理解したうえですいません勘弁して下さいませんか……。

しかしどれだけ俺が憐れみを乞う視線を向けても、ルクレイアの態度が変わることはなかった。
ただただ静かに「報告を」と繰り返す藍色髪のメイドが怖い。実はポケットに包丁がスタンバってるんじゃないかと、そう思ってしまうほどの圧を感じるのである。

「あ、あのな……?」

「報告を」

「あ、うん……。それは分かったけど、そもそもなんで報告する必要があるのかなぁって……。い、いやいやっ! 報告しないって言ってるわけじゃないぞっ!? するっ! 報告はするっ! する……が、その理由くらい教えて頂けたら大変ありがたいなとそう思っているわけでございますよ……」

すると俺の必死さがようやく伝わったのか「はぁ」と息を吐きだし、ルクレイアは静かに紅茶を啜っていた。

「何を勘違いされているのか分かりませんが、わたしはただ、誠の体調を管理するために聞いているに過ぎません」

「え……? 体調管理のため……?」

「当然です。わたしは誠の側付きなのですから。本来であれば城内の散策にも同行し、誠の行動や飲食物もチェックしたいところなのです。ですがどうしても同行はしないで欲しいと誠が言うので、仕方なくこのような方法をとっているのですよ? せめてどのような搾精をされたのか把握しておかなければ、どの程度疲労が溜まっているのか予想できませんから」

そ、そうか……。
そういうことだったのか……。

俺はホッと息を吐き出しながら、確かにその通りかもしれないと思い至っていた。
単純に搾精と言っても、そのやり方は十人十色だ。先にも述べた通りこのお城にいるサキュバスたちは様々な性癖に特化してる人が多いから、思いがけず体力を消耗してしまう場合ってのは十分考えられるのである。

「なら……側付きメイドさんに心配を掛けないためにも、ちゃんと報告するべきなんだろうな」

「ご理解頂けたようでなによりです。ではお願いします」

真剣な彼女の瞳に促された俺は今日の出来事を思い出し、渋々とだが話始めることにした。

確か一射目は、お尻の大きなメイドさんだった。
歩いてるだけでぷりんぷりん揺れ誘うお尻がマリーエルさんを思い出させ、ついつい話しかけてしまったのだ。

「けどマリーエルさんと違って、そのメイドさんはS寄りだったんだよ……」

俺が欲情していることに気づいたメイドさんは、俺の股間にお尻を擦り付け始めたのだ。
すりすり、すりすりと。スカート越しでもはっきり感じる肉感的なお尻は、今思い出しても素晴らしいエロ尻だった。

「そのまま壁際まで追い詰められちまって……」

手足をばたつかせても、お尻の圧迫から抜け出すことは出来なかった。お尻だけで、俺の身体は完全に拘束されてしまったのだ。
そのまま尻圧で股間を押し潰され、体が持ち上がるほど強くズリズリ尻コキされた俺は、あっけなくイかされてしまったというわけである。
あのメイドさんがその気になれば、尻で拘束したまま何度も搾り取ることすら可能だっただろう。お尻だけで弄ばれることに、ちょっと興奮してしまったのは内緒だ。

「なるほど。大変興奮した、と。……では、二人目の報告もお願いします」

二人目は一風変わった出で立ちの兵士さんだった。水着と変わらないほど露出の激しい装いは、いわゆるビキニアーマーというやつだろう。
綺麗な鎖骨も盛り上がった胸も、薄く割れた腹筋や鼠径部のきわどいところまで平然と露出してるものだから、目のやり場に困るなんてもんじゃない。
それが許されるのは女王親衛隊だけだそうで、ビキニアーマーを着用出来る兵士さんは凄く誇りを持っているのだけれど、代わりに防御力をどこかに置き忘れてしまったようだった。

生ビキニアーマー。
対男なら絶大な威力を誇りそうだが、男のいないこの世界で何の役に立つのか甚だ疑問である。

「それで欲情してしまったと」

もちろん、唯一の男である俺にはクリティカルヒットした。

そりゃそうだろ。
ただでさえ美人のお姉さんが、ほとんど裸同然の恰好でうろついてるんだもの。
身体が勝手に反応するのは仕方のないことなのだ。

その結果いつの間にか俺はビキニアーマーの兵士さんと抱き合い、そのまま太ももでちんぽを挟まれてしまい、太ももコキされてしまった。立った状態でぱんぱん腰を振られ、あっけなく発射となったわけである。感無量。

「顔がだらしなくなっておりますが?」

おっといけない。
フラッシュバックした太ももコキの快感に、思い出し勃起するところだった。
そんなところをルクレイアに見られたら大変である。俺はこっそり深呼吸し、なんでもない風を装うことにした。

しかし改めて考えると、この世界に来た当初に比べて俺の自制心と性行為に対する耐性はかなり強くなったんじゃないだろうか? 今日の尻コキも太ももコキも、快楽で男を溺れさせるには十分すぎるほど魅力的だったのだ。なのに俺はこうして平静を装えているのだから、慣れとは恐ろしいものである。

ひょっとしたら、リュドミナさんはこうなることも予想して俺を鍛えてくれていたのかもしれない。
いつ、どこで、誰と、どんな行為をしても、俺が俺であり続けられるように。
メイドたちを想う女主人を思い起こせば、あながち間違ってはいない気がした。ありがたいことである。

なんてことを考えていると、ルクレイアがソファから立ち上がっていた。

「さて。詳細な報告を聞けましたので、次は追体験を致しましょう」

「……はい?」

どういうこと?
追体験ってなに?
訳の分からないまま立ち上がらされた俺は、あれよあれよと言う間に壁際へ追い詰められてしまい混乱の極致だ。

ただ一つ分かることは、これから酷い目に遭わされるんだろうなって予感。
俺の体調を考えた事情聴取じゃなかったのかよっ!
そんな心の叫びは、どこにも届くことはなかったのだった。

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