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70話 アルムブルムとルクレイア

ある日の朝。
部屋の扉がノックされ、いつものようにルクレイアが応対しようとしたのだが、聞こえてきた声に俺は思わず駆け出していた。

だって……っ。

「アルムブルムさんっ!!」

聞こえてきた声は、待ち望んでいた愛しい人の声だったのだ。
数日に及ぶ検査を終え、ようやくアルムブルムさんが解放されたのである。

半ばルクレイアを押し退けるようにすると、目に飛び込んできたのはくしゅっと柔らかそうな桃色の髪と、それよりもさらに柔らかそうな大きな胸の膨らみ。
ふわっとはにかむような笑みを見せたアルムブルムさんは、大胆にもそのまま俺に抱き着いてきた。

「誠くんっ。ただいまっ!」

「うんっ! おかえり、アルムブルムさんっ!」

ここはお屋敷の部屋ではないけど、久しぶりの再会だもの。恋人ごっこの番外編でも構わないだろう。
彼女も同じ想いなのか、俺の胸に顔を埋めたアルムブルムさんは「う~ん」と鼻を擦り付けてきていた。

「誠くんの匂いだ~っ。すっごく安心する~っ」

あぁ。
そういや彼女、ちょっと匂いフェチの気があるんだったな。
くんくん鼻を鳴らして嬉しそうにしている様が、なんだか子犬のようで愛らしい。

「とりあえず二人とも、扉を閉めて中に入ってはいかがですか? さっきから好奇の視線で見られていますよ?」

っと。
ルクレイアに指摘され、俺は初めて城のメイドさんたちに見られていることに気づいた。
朝っぱらからいちゃつきやがって。リア充爆発しろ。そんなところだろうか?
まぁさすがにそんなこと思われてないと思うが、逆の立場だったら俺は間違いなくそう念を飛ばしているだろうしな。

恥ずかしさを誤魔化すようにアルムブルムさんの肩を抱き寄せ、ソファにエスコートする俺なのであった。

……。

「もう大丈夫なんですよね?」

アルムブルムさんの正面に座った俺は、さっそく彼女に聞いてみた。
今回の検査はホロウ化と、ホロウ化から元に戻った後にどのような変化があるのかっていう経過観察のようなものだったハズだ。それが終わって解放されたのだから、アルムブルムさんはもう完全に元通り。危険は去ったと考えられるのである。

「うん。お城のお医者様が言うには、どこにも異常は見当たらないって」

「良かった……。本当に良かったですっ。……でも、だったらなんでこんなに日数が掛かったんですか?」

異常がないならもっと早く解放されても良さそうなものなのに。俺はそう思ったのだが、アルムブルムさんは「仕方ないんだよ」と肩を竦めて苦笑した。

「サキュバスにとってホロウ化は本当に怖いことだから。わたしに異常がなくても、わたしから感染しちゃう可能性とかもあるかもしれないでしょ?」

「あぁ、なるほど。だからしばらく隔離する必要があったんですね」

「うん。それに、色々聞かれたよ。ホロウ化する前の日に何をしていたのかとか、ホロウ化しちゃった日に何を食べたのかとか」

話を聞けば納得だった。どうやらアルムブルムさん自身の体調を考えてというより、ホロウ化の原因究明だったり、感染予防策的な意味合いで彼女は隔離されていたらしい。
なんだよそれっ! とは思うものの、サキュバス全体という視点で考えれば納得せざるを得ない処置だ。

「けど、こうして解放されたんですから、もうそういう心配もないってことで良いんですよね?」

「ん~、どうなんだろう。結局原因も何も分からなかったみたいだから、本当のところは誰にも分からないのかもしれないね」

そう考えると、サキュバスたちにとってホロウ化ってのは本当に深刻な問題なんだなと思い知らされる。
俺の精液からホロウ化特効薬でも作れれば良いのだけれど。

と、話が一段落したところで、テーブルの上にコトッとカップが置かれた。ルクレイアが紅茶を淹れてくれたのだ。
それを柔らかい微笑みで受け取ったアルムブルムさんはカップを口に運ぶと、ほぅっと息を吐いていた。

「ありがとう、ルクレイアさん」

「いえ。お客様を持て成すのがメイドの仕事ですので」

しかしルクレイアの返答にアルムブルムさんが口をもごもごさせ、何か困っていることに俺は気づいた。

「どうしたんですか?」

「あ、うん……。えっとね…………二人にお願いがあるんだけど……」

「もちろん俺は構いません」

内容を聞く前に俺が頷いたのを見て少し驚いたアルムブルムさんだったが、すぐにへにゃぁっと頬を緩めていた。

「えへへ……。誠くん、ありがと。でも、これはルクレイアさんにも許可を貰わないとダメだから」

そう言ったアルムブルムさんの視線を受け、ルクレイアは静かに口を開く。

「内容を聞かなければ判断致しかねます」

「うん……。あのね? わたしもこのお部屋で一緒に住みたいんだけど……ダメ?」

んぇっ!?
思わぬ言葉に、思わず変な声が出た俺である。

いやもちろん、俺としては大歓迎だ。
けどあまりに唐突だし、そもそも検査から解放されたのだからアルムブルムさんはお屋敷に戻るんじゃないかなって思ってたし、なにより……。

「……」

ルクレイアの反応が怖かった。

だって最近は、独占欲を隠さなくなってきた彼女だもの。快く思うハズがない。つまり今、一触即発かもしれない状況なのだ。

しかし警戒する俺をよそに、夜空を思わせる藍色の髪をかきあげたルクレイアは、思いもよらない言葉をアルムブルムさんに返した。

「もちろん歓迎しますよ、アルムブルム」

「んぇっ!?」

「……なんですかさっきから。おかしな声ばかりだして。新手の喘ぎ声ですか?」

そんな喘ぎ声ねぇよっ!

ってか良いのかっ!?
まさかルクレイアがアルムブルムさんの同居を歓迎するなんて想像すらしてなかったんだけどっ!?

驚きに目を見張る俺と同様、どうやら言い出しっぺのアルムブルムさんも意外だったようで、思いがけない返答にルクレイアを凝視していた。

「えっと……本当に? いいの?」

「アルムブルムが言い出したのではないですか」

「それはそうなんだけど……」

俺とアルムブルムさんの視線が交差する。困惑しているのだ。

――ねぇ。ルクレイアさん、何かあった?
――分からないです。変な物は食べてないはずだけど……。

口を開かなくても、お互い相手の言いたいことが分かる。以心伝心というやつだ。
そんな俺とアルムブルムさんの態度に、ルクレイアは今度こそ不満そうに眉を顰めた。

「なんですか? わたしが友人を追い出すほど狭量で恥知らずだとでも思っていたのですか? それは侮辱という――」

まだまだ続きそうなルクレイアの不満は、しかし途中で止まらざるを得なかった。

「ルクレイアさんっ! 友達って思ってくれてたんだねっ! ありがとうっ!」

アルムブルムさんが、突然ルクレイアに抱き着いていたのだ。
だからまぁルクレイアの言葉が止まったのは、ある意味物理的に止められたとも言う。だってルクレイアの顔、アルムブルムさんのおっぱいに埋もれちゃってるもの。

「むぐ……っ! くるし……っ、離れ……っ!!」

ルクレイアはばたばたもがいているが、感極まったアルムブルムさんを止めることが出来ない。大きな胸にルクレイアを抱え込みながら、アルムブルムさんは薄っすら涙を浮かべていた。

「疑ってごめんねルクレイアさんっ! わたし、ルクレイアさんに友達って言ってもらって本当に嬉しいっ!」

「わかっ! 分かりましたからっ! だから離れ――むぎゅぅ……っ!!」

「それなのに、何か裏があるんじゃないかなんて思っちゃって……。友達の善意を疑うなんて最低だよね……。本当にごめんねっ!」

するとルクレイアの動きがぴたっと止まっていた。
まさかご臨終っ!?
月へ見送るなんてことになる前に、俺は慌ててアルムブルムさんを引き剝がす。

しかし解放されたルクレイアは、何故だか視線を泳がせていた。

「ルクレイア……?」

「あの……裏は……少しあります」

「え……? な、なんだ? 何を企んでるんだ?」

屈託のないアルムブルムさんの感謝にバツが悪くなったのだろう。
ルクレイアは、指先をモジモジさせながら話始めた。

「企んでる、というほどのことではないのですが…………確認したくなったのです」

「何を?」

「アルムブルムが、どのように誠を愛しているのかを……」

少し頬を赤らめながら言ったルクレイアの姿が、恋に恋する乙女に見えた俺なのであった。

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