巨乳キャラあつめました

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90話 未来

一触即発の戦場に颯爽と現れた救世主……なんて気分で意気揚々と宣言したのに、俺に向けられたのは「何言ってんだこのちんぽ」みたいな視線だった。
現実は非情である。

「誠さん。ご助勢嬉しくは思いますが、今は……」

――空気読め。
チラッとコルネリアーナに視線を流したローレンシア様は、言外にそう言っていた。

いや俺だって空気読めるんだぞ? むしろ読んだからこそ爆音鳴らしながら登場したわけだしな。そうじゃなければ、俺が到着する前に二人が戦い始めかねなかったもの。念のため持ってきたスピーカーが役に立って良かったぜ。

「加勢じゃない。言っただろ? 俺は戦争を止めに来たんだ」

「今さら和平など――っ!」

俺の言葉にローレンシア様が目を吊り上げた。
たぶんそれは「今さら遅い」という怒りより、せっかく決めた覚悟が揺らがぬようにっていう自分への鼓舞でもあるのだろう。争いを好まないであろう彼女がここに来るまで、並々ならぬ葛藤があったのは俺にも分かる。

しかし一方、コルネリアーナは指で顎を摘まみながら、俺が跨っている物を注視していた。
目敏く賢い彼女は気づいたのかもしれない。糸のように細い目を見開くと、コルネリアーナは感極まったように口を開いた。

「見つけたんだねぇ?」

「あぁ」

俺は自慢気に、跨っている物――スーパーカブのハンドルをブオォンと吹かしてみせた。
だがローレンシア様はいまいち状況が分かっていないようで「何を言っているのです?」とか「それは馬ではないのですか?」と混乱のご様子だ。
ならば説明して差し上げる必要があるだろう。

「これは馬ではありませんローレンシア様。俺の世界にあるバイクという乗り物です」

「え……? え……? 誠さんの世界の? そ、それがどうしてここに……?」

「行って来たんですよ。お城にある異世界への通路……まぁ扉でしたが、それを見つけて俺の世界へ」

はしたなくも、あんぐり大口を開けてしまう女王様だ。こんな状況じゃなければおちんぽぶち込んで差し上げたくなってしまう。

「ふぅん? その様子を見るに、女王は本当に知らなかったみたいだねぇ」

「だ、だって失われたと……っ! だいいちどこにもそんな場所…………あ……。待ってくださいっ! 扉っ! 扉と言いましたかっ!? まさか……っ!」

「えぇそうです。城内に描かれている無数の家紋。そのうちの一つが、異世界へ通じる本物の扉でした」

木を隠すなら森の中。そういうわけである。
もっとも、これが今まで発見されなかったのには他にも理由がある。

まず第一に、あの扉を開けるには条件があるのだ。どうやらあの扉は生命エネルギーに反応するらしく、開けることが出来たのは俺以外だとルクレイアとアルムブルムさんだけだった。つまり地球から来た者か、精液を摂取しまくって生命エネルギーを蓄えた者にしか開けられないということである。
コルネリアーナたちが俺を必要としたのも同じ理由だろう。
そして恐らく、リュドミナさんも知っていた。場所までは分からないが確かに異世界へ行く方法が存在し、俺なら開けられるということを。だからきっと、彼女は俺に託してくれたのだ。

『娘たちを愛してくれたから』

俺にメダルを託す時、リュドミナさんはそう言っていたから。それは単純にルクレイアやアルムブルムさんのことを指しているのではなく、サキュバス全体に対してのことなのだ。
――サキュバスという種族を愛せる貴方なら、異世界への扉を使って、彼女たちをより良い未来へ導いてくれるわよねえ~?
あのメダルには、そんな願いが込められていたんだと思う。

それと、扉が発見されなかった理由はもう一つある。それは異世界へ通じる扉があった場所だ。
異世界への扉、なんと天井にあったのである。あんな場所なら間違って触れるということもない。

そう説明すると、コルネリアーナは訳知り顔で頷いていた。

「なるほどねぇ。だから先々代の女王は翼を出すことを禁じたってわけかい」

もともとサキュバスには翼があり、空を飛ぶことも可能だったのだ。となれば天井に張り付いている扉であっても誰かが触れてしまいかねない。先々代の女王は、その事故を防ぐために翼を禁止したのである。

ちなみにだが「翼と尻尾の禁止」という無理な方針が通ったのは、当時の情勢が関係している。王宮図書室で調べたのだが、どうやら当時も夢渡り不能者が続出していたらしいのだ。そして時の女王はその原因が「翼と尻尾」にあることを突き止めた。というのも、当時の地球では魔女狩りが全盛期だったのだ。男たちは夢の中でも魔女や魔物と接触することを恐れ、結果として夢渡り不能者が続出したというわけである。

この施策により夢渡り不能者は激減し、同時に扉の存在は人知れず抹消されたというわけなのだ。

「それでどうするんだい?」

そこまで話を聞いたところで、コルネリアーナは再び剣を構えていた。

「異世界へ行く扉の在りかが分かった以上あたしは民を連れて異世界へ行くつもりだけど、女王はそれを認めてくれるのかねぇ?」

彼女の目的は地球上にサキュバスの国を作り、安定的に精液を得られるようにすることだ。ローレンシア様が即決出来ないのは、そうなった場合この世界が無くなる恐れがあるからである。
それはそうだろう。誰でも生精液を得られるようになるのに好き好んでこの世界に留まる理由はない。そしてそうなると紅月が淫気を集められず、新たなサキュバスが産まれなくなるのだ。

「ですが……向こうの世界には太陽が……」

「日の当たらない地下に住めばいいだけさね」

「け、けれど人間は数も多いですし、国を作れても取り返される危険がありますっ」

「数だけだろう? 力はサキュバスの方が上だし誘惑
チャーム
だってある。負けることはないさね」

コルネリアーナは自信満々に言ったが――これなのだ。
これこそが、彼女の最大の勘違いなのだ。

ここからは俺の推測だ。
先々代の女王が異世界への扉を隠蔽する以前、地球へ渡ったサキュバスは何人もいた。彼女たちは地球の文化や文明を持ち帰り、この世界を豊かにしていく。建築様式や生活習慣が似ているのもそのためだろう。

しかし扉が隠蔽されて以降、地球の様子を知ることが出来るのは夢の中だけになってしまった。しかも夢の中の風景はサキュバス側の心象が反映されるので、今の文明を表すものはない。
つまりサキュバスたちの中で、地球の文明は何百年も前で止まってしまっているのである。

「二人とも。ほんの少しでいいから俺に時間をくれないか? 見て欲しいものがあるんだ」

「……この状況で言い出すってことは、よほど面白いものなんだろうねぇ?」

「もちろんだ」

そう言いながら俺がバイクから取り出したのは、ポータブルDVDプレイヤー。中には第二次世界大戦の記録映像や、現在の地球の様子が入っていた。

……。

戦場の中心地。陣幕を張り開催されたDVD鑑賞会が、ようやく終わった。
ちなみに両軍には一時停戦が言い渡され、外にはどこか弛緩した空気が流れている。もっとも陣幕の中には、恐ろしいほど絶望した空気が流れているが。

「たった一度で何万人も殺す兵器……? 人間は馬鹿じゃないのかい……?」

呆然と月を見上げていたコルネリアーナが、ようやくそれだけ口にした。ローレンシア様に至っては、蒼褪めた顔を両手で覆っている。それほど地球の映像がカルチャーショックを与えたのだろう。

気持ちは分かる。
精通したばかりの子をSMスカトロ大乱交にぶち込むようなものだ。あまりのショックで再起不能に陥ってもおかしくない。

だがそれでこそ効果がある。
ショック療法にも近いこの映像は、二人の心にトラウマ染みた絶望を植え込んだことだろう。

「俺が言いたいことを分かってくれたか?」

個人の力が強かろうと誘惑
チャーム
があろうと、地球への侵略など絶対に不可能なのだ。
そもそも二人はポータブルDVDにすら驚愕していたからな。笑ってしまうくらい文明に差があるのである。

「だけど……」

しかしそれでも、コルネリアーナは前を向いた。

「だからって諦めろって言うのかいっ!? 失われていく命をっ! これから失われる途方もないサキュバスたちの存在をっ!!」

向けられた怒りは、俺に対してではないだろう。
理不尽への。どうにもならない運命への。何も出来ない無力な自分への。
そんな悲しい怒りなのだ。

そしてそれは、ローレンシア様も同じだった。
高貴な雰囲気は鳴りを潜め、ただ一人の女に戻った彼女は、縋るように俺を見て来る。

「誠さん……。わたしたちは……サキュバスはこのまま滅びるしかないのでしょうか……?」

ホロウ化がなくても、夢渡り不能者が増加している現状に変わりはない。今は俺という精液タンクがいるから良いが、俺だっていずれ死ぬ。そうなれば、いずれどうにもならなくなる時が来るのだ。

この原因について、正確なことは言えない。ただ「こうじゃないかな?」っていう推測はある。
たぶんだけど、人間の文明が発達しすぎたのだ。科学の発達に伴い、世界からはどんどんオカルトが消えていっている。オカルトの一種と思われていたサキュバスという存在もまた、人々の中から消えていっているのだ。まぁ二次元やらでサキュバスは大活躍してたりするんだけど、それが逆に本物のサキュバスを遠ざけているのかもしれない。

そしてこの流れは、もうどうにもならないだろう。
一人二人連れ帰って「サキュバスは実在するぞ」と宣伝してもいいが、十中八九捕えられて碌なことにならないのは目に見えているもの。

「誠さん……」

だがこの美しい女王に頼られて、否と言える男がいるだろうか?
いやいない。
だいいち俺は……

「リュドミナさんに託されましたから。より良い未来を、と」

この小さなメダルにかけて……。
ルクレイアやアルムブルムさんや他の皆の命に賭けて、俺には示す義務があるのだ。

彼女たちに、未来を――っ。

そうして俺は、二人に俺の考えを聞かせた。
上手くいく保証はない。問題は山積みだ。難題など数えきれない。

それでも……。
それでもこれは、俺にしか出来ないことだから……。

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