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Ather1-1 地元ヤクザの場合

―― 地元ヤクザの場合 ――

歓楽街というのは、暴力団、またはそれに準ずる組織と密接に関係している場合が多い。サキュバスタウンが居を構える歓楽街もまた御多分に漏れず、そうした組織の影響下にあった。
歓楽街で起きる多種多様な揉め事を仲介し、そこで働く女の子を斡旋する代わりに幾何かの上納金を顧問料という形で受け取る昔ながらのヤクザ組織。この町は『たんぽぽ組』の縄張りだったのだ。

しかし反社会勢力に対する締め付けが厳しい昨今。地域密着型で細々やってきたたんぽぽ組もその煽りを受け、今では組長を含めてわずか三名という小さな組織になってしまっている。
そこにきて主な収入源となる歓楽街の風俗店で発生した問題は、たんぽぽ組にとって死活問題足り得た。最近出来たサキュバスタウンなる風俗店に、周辺店舗の客が根こそぎ取られてしまったのである。しかもたんぽぽ組に挨拶も無しとあっては、放置することなど出来るはずもない。

金曜の夜。
色とりどりのネオンひしめく歓楽街は多くの人で賑わっているはずだが、今はその喧騒も遠い。人出はあるのだがその大半が同じ方向に流れていくため、それ以外の場所に閑古鳥が鳴いてしまっているのだ。

――話にゃ聞いてたがこいつぁ事だぜ……

たんぽぽ組のナンバー2。若頭の高佐山茂太郎
たかさやましげたろう
は、人の流れの異様さに眉を顰めた。その背中に、陽気とも暢気ともとれる声で若頭補佐が声を掛ける。

「のぅ兄
あに
ぃっ! サキュバスタウンっちゅーのはどんなとこなんじゃろかのぉっ!」

たんぽぽ組若頭補佐のサブだ。もっとも、構成員が三人しかいないたんぽぽ組。一番下っ端のサブは自動的に役付きになってしまっているだけであり、金髪に派手なアロハシャツという姿は、どう見てもただのチンピラだった。

「それを今から見に行くんだろうが」

「楽しみじゃのぉ兄ぃっ!」

「ちっ……。遊びに行くんじゃねぇんだぞ」

事の重大さが分かっていないサブに苛立ちながら、高佐山は肩で風を切る。
彼がわざわざ出張って来たのは、当然サキュバスタウンとかいう新興風俗店のオーナーにちょっとカマす
・・・
ためだ。

――うちに挨拶も無しとはいい度胸しとるやんけワレぇっ!

そんな感じ。

とはいえ、潰すつもりはない。周囲の店から根こそぎ客が流れている現状は宜しくないが、聞けば遠方からも客が流入しているらしく、歓楽街全体で見れば以前より客が増えている計算になるのだ。
ならば割高の上納金を納めさせ、周囲の店にも客を横流しするようなシステムが作れれば、この町はとんでもなく潤うのではないか? ピンチをチャンスに変え、この波を乗り越えれば、この町にバブルが訪れるかもしれない。そうなれば当然たんぽぽ組も潤い、かつての勢いを取り戻すことだって可能である。

ダブルのスーツでビシッと決めた高佐山は、オールバックの髪を撫でつけ、気合を入れ直した。
そして到着した雑居ビルの二階。蹴破るように店のドアを開け、彼は受付カウンターにドンッと足を乗せる。

「おぅ。てめぇ誰の許可取って営業して――」
「おいコラぁっ! 兄ぃの言葉が聞こえねぇのかコラぁっ! シャキシャキ答えんかいコラぁっ!」

サブがうるさい。

まぁこれはこれで、自分の引き立て役としては丁度良かったりする。ある程度騒がせたところでぶん殴って大人しくさせれば、相手側も怯んでくれるという寸法だ。

そろそろか?

タイミングを見計らい、高佐山は思いっきりサブの頭を引っ叩いた。

「うるせぇぞサブ。俺が話してんだろうが」

「す、すいやせん兄ぃ……」

この辺り、サブも心得たものである。阿吽の呼吸とでも言おうか。スッと後ろへ引っ込みつつ、サブは自分の役割を無事こなせたことにホッと息を吐いていた。
それを確認し、高佐山は受付に視線を戻したのだが……おや? 顔には出さないものの、普段と勝手が違うことに彼は首を傾げそうになってしまった。

「いらっしゃいませー。二名様でよろしかったですかー?」

怯んでいないのだ。
受付カウンターの中にいるのは、ちょっとそこらじゃお目に掛かれないレベルの美女二人組み。彼女たちは明らかにヤクザと分かる男たちに恫喝されているのに、ほのぼのした笑顔のままだったのである。

「ナメてんのかてめぇ? 女だからって手を出さ――」
「ナメとんのかワレぇっ! 兄ぃが怖くないんかコラぁっ! 兄ぃはなぁっ、渡るつもりもないのに押しボタン式信号のボタン押すくらい悪なんやぞコラぁっ!」

サブがうるさい。

その顔面に無言で裏拳をカマし、高佐山はカウンターに身を乗り出した。しかし間近で見た受付嬢の美しさに、ちょっと気勢が削がれてしまう。

――くそっ! とんでもなく良い女じゃねぇかっ! 殴るのは勘弁してやるっ!

かといって引くわけにはいかない立場だ。殴りはしないものの「殴るぞ」くらいの態度を示さなければと、高佐山は受付嬢の胸倉をグイッと引き寄せた。

「客じゃねぇんだよ。分かんだろ? あぁ?」

高佐山は、一段低くした声で、巻き舌気味に下から睨みつける。普通なら、これで相手は「ひぃ」となるハズなのだ。

しかしそれでも、受付嬢の態度は変わらない。そればかりか胸襟を掴んだ手にそっと手を重ね「ではどのようなご用件でしょうかー」と、ほがらかに微笑む始末である。

実際のところ、サキュバスである受付嬢が人間である高佐山に負けるはずがないのだ。誘惑
チャーム
を掛けてもいいし、なんならこのまま力で押し返すことも容易いのだから。

もちろんそんなこととは知らない高佐山が「これだけの美人だから男に傅かれるばかりで男の怖さを知らないのではないか?」と考えるのも無理はなかった。
であれば、これ以上の恫喝は暖簾に腕押し。殴るという選択肢を封印した今、彼に出来るのは暴力を背景とした恫喝が通用しそうな相手を呼ばせることである。

「店長呼べや。ちっと話があるからよぉ」

「店長を、ですか?」

女の声が少し低くなっていたが、それに気づかず高佐山は「さっさとしろ」とさらに恫喝を繰り返してしまった。

「……かしこまりました。ですがこの時間ですと店長は手が離せませんので、応接室にてお待ち頂いてもよろしいでしょうか?」

ふざけるな。ナメてんのか?
そう言いかけた高佐山だったが、それを遮り受付嬢が更に言葉を重ねた。

「もちろんお待たせする間、当店の女の子がサービスさせて頂きますので」

その言葉に、二つ返事で了承してしまったのがサブだ。「えぇ心がけじゃのぉ! 兄ぃっ! まさか断ったりせんですよねぇ!」と、早くも胸元を開け始めている始末である。
結局サブに乗せられる形で了承した高佐山は、受付嬢に店内へと案内されることになった。しかし店内への扉をくぐったところで思わず絶句してしまう。

「サキュバスタウンへようこそっ!」

宝石のごとき女たちに出迎えられてしまったのだ。
胸の大きい女、ギャル風の女、まだ学生なのではと訝しむ女。嗜好は違えど、どの女も一級品であることが分かる。いや、決してこのような店で春をひさいでいるとは思えない特急品ばかりだ。

――どんなエゲつねぇ方法で集めやがった?

商売柄、高佐山はこの女たちの出所に想いを馳せる。
いかに高給といえど、自ら風俗店で働こうとする女が上玉ばかりなはずはない。もちろん中には「何故!?」と思うような女もいるが、大抵はまぁお察しである。
それでも上玉を集めたい場合、一番てっとり早い方法は借金漬けにすることだろう。息の掛かったホストクラブで借金を作ってしまった女をカタに嵌める。古くからある常套手段だ。

ここの女たちも似たような道を歩まされたことは予想出来るが、この規模でこれだけ上玉ばかり集めるとなると、相当に大掛かりな組織がバックに付いていないと不可能である。

――ただの新興風俗店ってわけじゃなく、他の組織がシマを荒らしに来たってことか?

後ろで鼻の下を伸ばしまくっているサブを尻目に、高佐山は警戒心をぐぐっと引き上げていた。
こうなってくると、かなり話が変わってしまう。下手をすれば抗争だ。

――ちっ。面倒なことになって来やがったぜ……。

とはいえ、ここまで来て引き下がるなんて選択肢があるわけもない。この歓楽街はたんぽぽ組のシマなのだ。例え相手のバックにどれだけデカい組がいようと、おめおめ引き下がってはメンツが立たない。

見渡す限りの美女美少女に囲まれたまま応接室へ案内された高佐山は、どっかりソファに腰を下ろすと、横でチンポジを直し始めているサブに囁いた。

「おいサブ。道具は持ってきてるか?」

「ナメてもらっちゃ困りますのぉ兄ぃ!」

高佐山の言う道具とは拳銃のことである。
たかだか風俗店を脅すのに大げさ過ぎると彼は持って来なかったのだが、サブは自信満々にズボンのポケットを叩いていた。

「よし。いざとなりゃ問答無用でぶっ放せ。ケツは俺が持ってやる」

「さすが兄ぃ! 前から後ろからってことじゃのぉ!? でも兄ぃ……。自分もケツがええんじゃが……」

「おめぇ何言ってんだ?」

なんだか話が嚙み合わない。しかし噛み合わないなりに、サブはやる気まんまんだ。
そんな部下を頼もしく思いソファに背中を預けると、覚悟が決まったのか高佐山は身体から力が抜け始めるのを感じた。

……というか、抜け過ぎて眠くなってきている。

「それにしても良い匂いじゃのぉ兄ぃ……。甘くて、ふわふわして……ふわぁ……眠ってしまいそうじゃ…………ぐ~……」

――おいサブっ!?
いきなり眠りこけたサブをぶん殴ろうとして、しかし高佐山はそれが出来ないことに気づいた。どういうわけか、自分も身体に力が入らず、意識が遠のき始めていたのだ。

「んだよ……これ……」

……。

「良く眠ってるみたいだね~」

二人がソファで眠りこけてから数分後。部屋に入って来た少女が、ニヤニヤとサディスティックに目を緩めていた。その後ろで控えている女たちは、男たちを軽々持ち上げながら少女に指示を仰ぐ。

「ノルン様。コイツ等はどう処分いたしますか?」

問われ、アンバランスな魅力を持った少女――ノルンは、ペロリと舌舐めずりした。

「処分なんてしたら主のお兄さんに嫌われちゃうでしょ? この町ではどんな理由であろうと命を奪っちゃダメ」

「ですけどコイツ等、サキュバスタウンを脅かそうとしている敵ですよ?」

するとサディスティックな少女は、花開くように満面の笑みを見せる。

「それに、これはチャンスだから。これを上手く処理出来たら主のお兄さんが褒めてくれるのは間違いないもん」

「……諦めてなかったのですか」

「ん~? なぁに?」

「あ、い、いえ! なんでもありません!」

誠がルクレイアとアルムブルムに指輪を渡したという話は、サキュバス界で知らない者がいないほどに広まっている。というのも、ルクレイアがこれ見よがしに見せびらかせているからだ。まぁ浮かれているというより「わたしと誠は結婚したのですから手を出したら許しません」という威嚇行動に近いのだが。

そしてそんなことをされたら、ますます燃えてしまうのが負けず嫌いのこの少女である。

「ってことで~、この二人には従順になってもらおっか。うんうん。これなら貴女たちの訓練にも丁度良いね!」

現在ノルンに率いられてサキュバスタウンの見回りをしているのは、ヘリセウス邸で新たに雇用したメイド見習いたちである。ヘリセウス領の安定した運営やサキュバスタウンで貢献するために急遽増員した人材だが、それを教育するのもノルンたち先輩メイドの役目だ。特にこの少女は前領主であるリュドミナの薫陶を受けており、彼女流の教育に余念がない。

「やり方は教えるから、貴女たちでこの二人をきっちり堕としてみて?」

「……失敗してしまったら?」

「ノルンが遊戯室に招待してアゲル♪」

ゾクッと背筋を震わせたメイドは「必ずや!」と背筋を正し、男たちを担いで部屋を出て行った。その後ろ姿を満足そうに眺めてから、ノルンはトンッと軽くステップを踏む。

「全部上手くいったらお兄さんに褒めてもらって~、甘えるついでに~……あはっ♪ あの二人が指輪を貰ったんだから、お兄さんにはノルンからプレゼントしてあげなきゃね。指輪じゃなくて首輪だけど♪」

ともあれ軽率にもサキュバスタウンに手を出してしまった二人の男たちは、その罪を自らの身で贖うことになってしまったのだった。

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