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01 淫紋

「はぁっ!」

凛とした気合の声が岩壁にこだますると金糸のような髪と銀色の剣が閃き、一瞬でコボルト3匹の首が飛ぶ。
さらには自分を取り囲んでいる他の魔物がたたらを踏んでいるのを確認すると、まるで作業をするかのように懐へ入って次々に両断していく。
そうして十数匹はいた魔物の群れは、女の手によって20も数えないうちに殲滅してしまった。

「終わったぞ。早く出て来い」
「はいはいっと」

それだけ言うと、後ろで待機していた俺に一瞥もくれず、さっさと先へ行ってしまう。
彼女の名はフィリア。
王国から派遣された女騎士だ。
背中まで伸びた艶やかなプラチナロングの髪にマリンブルーの双眸。色の白い顔立ちには、整った鼻梁と色素の薄い唇が艶めいてる。
上半身をライトアーマーで包み、やや短めのスカートからは肉付きの良い太ももがすらりと伸びて、ひるがえるたびに腰回りのラインを強調する。

一見すると、どこかの役者が騎士の真似事をしていると思われてもおかしくないほどの容姿を持つ彼女だが、強さはご覧の通り一級品。
非の打ちどころなどどこにも無さそうに見えるが、あえて欠点があるとするならば。

「軽口を叩くな、返事は1回でいい。もっとしゃきっとしろ。まったく」

……この勝ち気でキツめな性格だ。
顔合わせの時からずっとつんけんしていて、雑談の1つさえ交わす暇がない。
冒険者なんて荒くれ者ばかりだから口が悪いくらい気にはしないが、多少は意志の疎通に努めてほしい。
何しろ約1ヶ月もの間、俺達はパーティーを組まなけりゃいけないのだから。

(いくら報酬がウマいからって、ぎすぎすしてんのは御免だぜまったく)

もっとも俺はしがない荷物持ち
ポーター

こうやって裏で戦闘を眺めているだけでいいのは事実なのだが。

どうして一介の冒険者である俺が国仕えの騎士サマとパーティになったのかというと、現在俺達が足を踏み込んでいるダンジョンの最奥に眠るレア鉱石を回収するためだ。
今までは面倒な場所にある割に使い道が見当たらず放置されていたが、いわく宮廷賢者が進めている研究に欠かせない素材だったらしい(その辺のことは極秘事項らしくほとんど教えてもらえなかった)。
その素材を回収する任務を与えられたのが彼女で、そのサポートをするのが俺への依頼だった。
どうして回復職でも火力職でもなく荷物持ちの俺が選ばれたのか。
実はこのダンジョン、生息する魔物はそれほど強くないのだが、1つのフロアがべらぼうに広い。
おまけにかなり入り組んでいて、それこそ入口から出口まで移動するのに丸一日かかるという、数あるダンジョンの中でも屈指の面倒臭さを誇ると評判の場所だった。
しかも最深部までは30階層もあり、奥までたどりつくには1ヶ月近くかかるという徹底ぶり。まともに攻略していては時間がかかるどころではない。
そこで俺の出番。
Aランクポーターの俺は、ダンジョン内に中間ポイントを設置しパーティーを転送する《ワープスキル》を持っている。
本来は極秘任務ということもあって彼女だけで探索したかったらしいのだが、さすがにポーターの同行は必須という結論に達し、やむ無く俺に声が掛かったというわけだった。

「はぁ、まだ3階層か。退屈だ。早く終わらせて王都に帰りたい」
「だったらもっと人手を増やしましょうよ」
「駄目だ。人員が増えれば経費も増える。最近は不景気だから王都も国庫を引き締めているのだ」
「節約にしたって2人だけってのは程があるっすよ。そうだ、他に冒険者を雇うのは?」
「情報漏えいのリスクがあるから却下だ」
「じゃあ、どうしようもないっすね。あ、この辺から魔物やトラップが増えるから油断しないでくださいよ」
「フン。私は王国騎士だぞ。こんな序盤の敵や罠など物の数ではない」

そんなちゃっかりフラグを立てなくても。
いや、実際強いのは認める。
剣一本で魔物を苦もなく蹴散らしているし、こうやって隠れているだけで3階層まで突破できたのだ。文句のつけようなどあるはずがない。
だが、どうにも不安だ。
ダンジョンで待ち受けているのは魔物ばかりではない。
今言ったように罠だって――

「ん? ここだけやけに道が狭くなってるな」
「あ、待――」

俺が止めようとした時には、遅かった。
踏み出した先に隠されていた魔法陣が発動し、淡い桃色の発光が彼女を包む。

「っ!? うぐっ!」

どうやら時間ごとにランダム配置されるトラップのようだ。
物理的な危害を加えるものではないようだが、何らかの状態異常を受けた可能性が高い。

「大丈夫ですかい?」

膝をついたまま固まっているフィリア女史に駆け寄ると、彼女は自分の体を抱きかかえるように腕を回していた。
そして震えた声で。

「お、お……おなかが……」
「へ、腹……?」
「おなかの下が、下腹部が熱い……っ!」

――――――

「ご愁傷様です」

急遽、教会へと帰還した俺達に、シスターが発した一言がソレだった。

「なっ。私は死ぬのか……!」
「命の心配はありませんが、まずはおへその下をご覧になってください」

フィリアが上着をたくしあげると、綺麗な曲線を描くくびれと共に、縦筋のへそが露わになる。

「おい、のぞくな――って何だ、この紋様は……!?」

問題はその下。
そこにはまるで彫り物のような紋様が浮き出ていた。
ハートを模した型で、左右にツタが伸びたようなシンメトリーかつ淫靡なデザイン。
スカートに隠れて全部は見えないが、鼠径部あたりにまで及んでいるだろうそのデザインには見覚えがあった。

女が胎児を育む場所――“子宮”だ。

「いつの間にこんなものが……! くうう、熱い!」
「なんだか光ってないすか、それ?」

紋様からは薄紅色の淡い光が発せられていた。
ただの彫り物ならこんな現象は起きないはずだ。

「それは『淫紋』です。あなたは“定期的に発情してしまう呪い”にかけられてしまいました」
「は……はああああっ!?」

心の底から同情するようにシスターは告げる。

「淫紋は女を発情させ、全身の感度を高める催淫作用をもたらします。体の火照りはその影響です」

そう言って本棚から取り出した資料をフィリアに手渡す。

「……“本来は円滑な子作りを促進するための魔法印だったが、いつの間にかトラップの1つに組み込まれるようになった”だと!?」

いわく女冒険者がもっとも忌避するトラップだと聞いていたが、これがそうなのか。
男が踏んでも影響はなく、基本的に野郎としか組んでいなかったため、目の当たりにしたのはこれが初めてだった。

「うぅっ、どんどん熱くなってくる……っ!」
「なんか輝きも強くなってません?」
「淫紋の力が増しているのでしょう。このまま我慢していては最悪の場合、精神に重篤な危険が及びます」
「か、解呪はできないのか?」
「呪いを解く方法は見つかっていませんが、放っておけば自然に消滅します。ただし持続時間が長く、完全に解けるまで20日前後はかかるでしょう」
「は、20日だと!?」

熱っぽい表情のまま愕然とするフィリア。

「呪いを抑える方法は1つだけ。殿方と性交して精を注いでもらえば、一時的に淫紋の効果を沈静化できるのですが」
「なん……だと……」

赤らんでいた彼女の顔が、今度は一気に青褪める。

「言っておきますが、ご自分で慰めても意味はありません。子宮が精で満たされることが条件です」
「――! そんな恐ろしい罠があるならなんで教えてくれなか……あひぃっ」
「注意してるそばから先へ行ったのは、あんたでしょうよ」

また呪いが進行したのか、一段と艶に染まった声をあげる。
自業自得といえばそうなんだが、額に玉のような汗を浮かべている姿を見ると何だか同情してしまう。

「ちなみに、恋人か婚約者はいらっしゃいますか」
「い、いない……ずっと騎士として出世を目指してきたから……」
「……でしたらこれを」

そう言って棚から小瓶を持ってくるシスター。
中には小さな丸薬が数十粒ほど入っている。

「な、なんだそれは?」

「“避妊薬”です。こうなってはもう、どなたか気心の知れた殿方に御身を託すしか……」

そう言ってちらちらと俺の顔をうかがうシスター。
って、俺!?

「待て待て! 俺達まだ顔を合わせて数日だぞ! 気心も何もねえよ!」
「ここは“治療”と割り切ってお願いできませんか。勿論、ご結婚なさっていたり想い人がいらっしゃるのであれば無理にとは申せませんが」
「いや、女日照りの独り者だけどさぁ……」

目を下ろせば、椅子の上でふるふると震えるフィリアの姿。
当初の凛々しく自信に満ち溢れた態度からは想像もつかない狼狽振りだ。

(そりゃあ、こんな美女を抱けるなら役得だけどよ)

きれいな髪や端正な顔立ちもさることながら、しなやかな体にきめ細かな柔肌は、そんじょそこらの貴族の娘にだって劣らない。
しかも鎧を外したお陰でわかったが、胸もなかなかのサイズだ。衣服を押し上げて形の良さが丸分かりになっている。

「ま、まあ、他に方法が無いなら――」

喉がごくりと鳴る。
まあ、人助けじゃあ仕方ない。
できるだけ優しくシテやろう。そうしよう。
俺の覚悟は決まった。
だがしかし。

「ふざけるな! お、男の助けなどいらん!」

フィリアは汗を浮かべながらきっぱりと拒絶する。

「こんなことで男に抱かれるなど良い笑い者だ! 20日我慢すればいいだけだろう? 私の精神力を舐めるなよ。絶対に耐え切ってやる!」
「お待ちください。いまだかつて淫紋の呪いに耐え切れたものはおりません。ここは犬に咬まれたと思ってこの方を頼るのです」
「俺は犬かよ」
「だったら私が歴史に名を刻んでやる……あふっ……!」

シスターが説得を試みるものの、彼女も意地になっているようだ。
話は終わりだとばかりに立ち上がり、内股でよたよたと部屋を出て行ってしまう。
その後姿はなんとも頼りないものだった。

「ちょっと、ダンジョン探索はどうするんすか」
「行くに決まってるだろ! こんなもの明日になれば……ひうっ……克服しているはずだ!」

色めいた喘ぎを漏らしながら、説得力のない様子で教会を去って行く。
窓からそれとなく様子をうかがうと、案の定、通行人から奇異の目で見られていた。

「お労しや。もはや神の試練と受け止めるしかないでしょう」
「だがそこまで堪えられないものなのか? 20日くらいならなんとかなりそうな気がするが」
「あなたはゲリを20日間我慢できると申されるのですか?」
「……聖職者のくせに汚ねえ例え方すんなよ」

下手したら探索は中断になるかもしれないと思いつつ、することのなくなった俺は町の宿へ戻ることにした。

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