巨乳キャラあつめました

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五日目~永遠:末路

いつの間にか気を失っていたらしい。
気付いた時、すでに日付が変わっていた。

改めて、昨日の事を思い出してみる。

「……最悪だ」

感想は、それしか出て来なかった。
逆らえないのは仕方ない。よく考えるまでもなく俺はただの人間で、サキュバスは魔物だ。とても太刀打ち出来る存在ではないのだから。

問題は、逆らおうという気すらも削がれてしまったこと。
はっきり分かる。俺は、二度と彼女たちに反抗できない。どちらが上でどちらが下か。身体と心にしっかり刻み込まれてしまったから。

きっとこのまま、来る日も来る日も精を搾り取られるのだろう。俺は逆らうどころか逃げる気すら失っていき、最後はただの奴隷だ。
媚を売り、少しでも心地良く搾ってもらえるように……少しでも快楽を得られるように、自分からチンポを差し出す憐れな存在に成り果てる。

「それは……嫌だ……」

そうなってしまう日は近い。今も、彼女たちのことを考えるだけで股間が固くなり始めているから。
刻み込まれた人外の快楽は、麻薬中毒のようにフラッシュバックしては俺の身体を疼かせるのだ。

だから、ここが分水嶺。

「まだ殺せないって言ってた……。今殺すと、魂までは食えないからって……」

逆に言うと、条件さえ整ったら魂ごと食い殺される。待っているのはサキュバスに魂を囚われ、精を捧げるためだけの家畜人生だ。生も死も超越した世界で、文字通り永遠に搾られ続ける。

ほんの数日前なら天国のように思えたかもしれないが、今の俺にはどんな地獄よりも地獄に感じられた。
人権などなく、なんの意思も考慮されず、ただ射精することを強要される日々。魂だけの存在がどんなものか分からないが、下手をしたら昼夜の概念すらない。一時の休みもなく与え続けられる人外の快楽は、拷問と変わりないだろう。死ですら生温い待遇だ。

けど今なら……。条件が整う前だったら、俺の魂は輪廻に戻り、新たな生を得られるんじゃないか?
もちろん、今の記憶なんて残らない。今ある「俺」という自我は消え失せる。
それは怖いことだ。誰だって、死ぬことは怖い。

でも永遠の快楽地獄よりはマシ。
人だから。人間として死ねるから。

だから……。

「高いな……」

気が付けば、俺は高層ビルの屋上に来ていた。
都会の夜空。星は見えないが、少しだけ空気が美味しくなった気がする。

半ば無意識に、俺は柵を乗り越えた。眼下に流れる車のヘッドライトたちが、光の川のようだ。
あと半歩踏み出せば、もう助かる術はないだろう。あの川に飲み込まれ、俺という人生は終る。

「怖ぇよ……」

怖い。半端なく怖い。
手が震える。足が怖気づく。腰が抜けそうになっている。

でも行かなきゃ……。
終れるうちに終らないと、終ることすら出来なくなるから……。

「くそ……くそ……っ! くっそがああぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!」

吼えた。
星の見えない夜空に吼えて、上を見たまま身体を少しだけ前のめりに。

倒れそうな身体。
生にしがみ付こうとする本能が、勝手にバランスを取ろうとする。

涙が出てきた。
嫌だ嫌だと喚きだしたいほどの恐怖。

今死なないと酷い目に合うから。
今しか死ぬことが出来ないから。

そんな理論、死にたくないって本能の前では何の役にも立たない。
腕が勝手にぶるんぶるん周り、体勢を立て直そうと……死の淵から生還しようともがいてしまう。

でも…………でも…………っ!!

――トン

俺は地面を蹴って一歩踏み出した。
軽く。ほんのちょっとだけ。でも決して戻れない最後の一歩を。

途端、全身が理解する。
空中に投げ出されたことを。死から逃れられないことを。

身体が硬直し、奥歯が砕けるほど歯が食い縛られた。
もうそれは、本能としか言いようのない現象だった。自分の意思ではなく、身体が勝手に動いている感じだ。

だがどれだけ身体が防御反応を取ろうと、絶対に助からない。

落ちていく自分。失われる平衡感覚。
強烈な重力に引っ張られているのに、どこか無重力のようで、上下左右が分からない。

景色が高速で過ぎ去っていく。
あと数秒もせず、俺の人生は終る。

そんな時だった――。

「……あ?」

落ちていく途中。空中で、女と目があったのだ。

一瞬の交錯。時間にして、ほんのコンマ数秒。
けど俺は、そいつの表情も、ヤツが囁いた言葉も、はっきりと分かった。

女は……サキュバスは、ニヤリと邪悪に歪んだ唇でこう言っていた。

――イタダキマス

どういう意味だ……?
いただきます……?

ゾワリと寒気が走った。
俺は何か、とんでもない思い違いをしているのか……?

極限まで長く引き伸ばされた意識の中、色々な出来事や思い出が過ぎっていく。
走馬灯。これがそうなのだろう。

『優しさ設定が6だから』

俺を殺さない理由について、サキュバスたちはそう説明していた。
くどく感じるほど、そこを強調していた。
だからこそ、今更になって違和感を覚える。

……嘘、なのか……?

そもそも何故、優しさ設定が6だと殺せない?
契約に違反するからだ。それは間違いない。
けど優しさ設定は、数日後にマイナスになる。俺がそう設定してしまったから。バグっただけだと言っても、たぶん認めてくれないだろう。

そうなったら、奴らは躊躇なく俺を搾り殺す。搾り殺して、魂まで貪り喰らう。
俺はそう思っていた。だからそんな未来から逃れるため、自ら命を断つ決断を強いられたのだ。

けど……。
けれど、だ……。

優しさ設定が「6」だから殺せないのではなく、今殺してしまうと翌日の契約を履行出来なくなるから殺せないのだとしたら……?

俺を殺してしまえば、サキュバス自らの手で契約を反故したことになる。だから殺せない。
でも俺が、自分で死んでしまえば……。契約を反故したのは俺ということになるだろう。そうなれば、サキュバスたちは契約の代償を問題なく取り立てられる?

何かがカチッと嵌った気がした。

サキュバスたちはそれを知っていた。
いずれ召喚設定がとんでもないことになり、どうやっても俺を殺してしまうことを。
そうなると契約を反故したことになるから、魂までは喰らえない。
だからそうなる前に俺を追い詰め、絶望させ、自ら死を選ぶように仕向けていたのだとしたら……。

つまり……俺は殺されていたが、魂までは奪われないはずだった。

けど俺は、自ら死を選んでしまった…………。

そうなると契約を反故にしたのは俺の方で…………サキュバスたちは問題なく俺の魂を取り立てられるわけで…………だから…………――――グシャッ

……。

…………。

………………。

「……ここは?」

気が付くと、見知らぬ大地に立っていた。
岩肌が剥き出しの荒野。草木一本生えていない。
空は夕焼けより赤く、暗く、まるで地獄の窯を映し出したかのよう。

死後の世界。
そう思うには、あまりに地獄めいていた。

呆気にとられて空を見ていると、何かが飛んでいることに気付く。

鳥? 大型の鳥だろうか?

すると鳥たちが一斉に滑空。一直線に地上へ降りていくのが見えた。

そこで気付く。
鳥じゃない。だんだんはっきりしてくるシルエットは人の姿。漆黒の翼と尻尾を持った人型の女だ。

――サキュバスだ。

俺は慌てて身を屈め、奴らの行き先に注視する。その先には、一人の男がいた。
男もサキュバスに気付いたらしく、手を振り回しながら走り出す。だが、飛んで来るサキュバスからは逃げられない。
あっという間に囲まれ、捕まってしまった男。その後どうなるかなんて考えるまでもなかった。

「んあああぁぁぁぁぁぁッッ!! だずげでぇぇぇぇぇッッ!! もうヤだあぁぁぁぁぁぁッッ!!」

絶叫する男の声が木霊する。だがその声は、すぐに情けない喘ぎ声へと変わった。
正気を失っているような、泣いているような、嘆いているような、そんな声だ。
それも群がった女たちに埋もれ、すぐに聞こえなくなってしまったけれど。

酷い有様から目を背ける。
だが背けた先。そこでも同じような光景が繰り広げられていることに気付いてしまった。

複数のサキュバスによってたかって犯されている男。
どれだけ搾り取られたのか、身体がもう骨と皮だけになっている。
それでも快感は感じさせられているのだろう。男は白目を向き、口から泡を吹き、枯れ木のような身体をビクビクと細かく痙攣させていた。

――あれは死ぬ。

俺の予想通り、サキュバスの下で身体を跳ねさせていた男は、最後にもう一度盛大に震えてからパタリと動かなくなった。
だが

――え?

一瞬の後、男の身体がみるみる生気を取り戻していく。
体に張りツヤが戻り、ミイラみたいだった身体が二十代の若々しさを取り戻していたのだ。

意識も取り戻したらしく、カッと目を見開いた男が喚きだした。

「止めてくれっ! もう射精したくないっ! もう死にたくないっ! 俺のことは放って置いて――ぐああぁぁぁぁぁッッ!!」

命乞い虚しく、瞬く間に組み伏せられた男は、再び肉の海に沈んでいった。

アレが死ねないってこと。
この世界では死んでも死んでも生き返らせられ、いつまでもいつまでも犯され続けるんだ。

理解した瞬間、自然と足が後ずさる。

イヤだ。
あんなのはイヤだ。
逃げなきゃ。
今すぐ逃げて、隠れて、見つからないように――

「どこに行くんですか? お兄さん」

背中に、トンッと接触した手。
聞き覚えのある声に、恐る恐る振り返る。

「ナユ……」

召喚スイッチを押して二日目に現れたロリサキュバスの一人。俺に処女をくれるって約束したナユがそこにいた。
長い黒髪。優しげな眼差し。あの日と同じく、少女はどこかお嬢様然としている。
けどその服装は、胸と局部だけを辛うじて隠しているビキニ姿。翼や尻尾を隠しもせず、彼女がサキュバスなのだと示していた。

「お兄さんなら、きっとこちらに来てくれると信じてました♪」

「や……やめろ……っ! 近付くな……っ!!」

「どうしてですか? どうしてそんな悲しいことを言うんですか? ナユの初めて、貰ってくれるって約束しましたよね?」

近付いて来るナユの肩を突き放し、俺は走り出した。
だが前方に、何人ものサキュバスたちがいることに気付いてしまい、足が止まる。

「逃げられませんよ? もうお兄さんの魂は、永遠に囚われましたから」

背後から近付いて来るナユ。
前方から近付いて来るサキュバスたち。

逃げられない。
逃げ場がない。
逃げる自由が与えられてない。

「は……はは……」

力なく膝を付き、乾いた笑いで空を見上げる。
一面真っ赤に染まった不気味な空。視界の中に、可愛らしくも恐ろしいナユの顔がにゅっと割り込んできた。

「サキュバスの世界へようこそ。お兄さん♪」

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