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夜が明けて

「……あ、起きた?おはよう」

──うー、ん……。

寝ぼけ眼を擦り、ゆっくりと体を起こす。
体には、何の重みも感じない。
どうやら、昨日は布団も被らずに眠ってしまったらしい。
と言うか、今は何時だろう。
そして──ここはどこで、目の前の彼女は。

「フフ、無理に起き上がらなくていいよ。体力もまだ回復しきってないだろう?ゆっくりお休み。……まあ、もっとも」

まだ完全に目覚めていない頭で、記憶をゆっくりと遡ろうとすると、優しく上から布団を掛けられる。
家のせんべい布団とは比べ物にならない、ふわりとした感触に──何やら、甘酸っぱくて、湿った匂い?
嗅ぎなれない、しかし中毒になりそうな甘い香りを、しばらく肺の中に取り込んで──

「……起き上がろうとしても、今のキミでは、無理だと思うけどね」

──ッッッ……!!!!!♡♡♡

ようやく、意識を落とす直前の事を思い出す。
それと同時に、強烈に残った快感の痺れをようやく認識して、腰を激しく痙攣させた。

「クク……♡その様子だと、思い出したみたいだね……♡昨日、自分が何をされたかを……♡」

腰が、まだ焼けるように熱い。
下半身がびりびりと痺れて、とてもじゃないが立つことなど不可能だ。
それは、紛れも無く、昨日の──あの、調教の名残り。
全身をくまなくイかされて、あんな──涙を流して、許しを乞うまで、射精させられて。

──そうだ、そうじゃないか。
だとすれば、目の前に居る、この悪魔じみた美貌の持ち主は。

「……改めて、おはよう。仔猫クン」

──おはよう、ございます……。

にっこりと、屈託のない笑顔を見せる渚さん。
その表情は、昨日、あれだけ僕にトラウマを刻み付けた、淫欲と嗜虐欲に染まった、吊り上げるようなそれではなかった。
だが──何せ、あんな事をされたのが昨日の今日だから、どうしても恐ろしく思ってしまって、少し布団で僕の体を隠しながら、おずおずと挨拶を返した。

「…………♡」

──けれど、もしかしたら、それが良くなかったのだろうか。
渚さんは、ほんの少しだけ、昨日の片鱗を見せるような、言いようのない深い笑顔を浮かべる。
しかし、その重い情欲はすぐになりを潜め、いつもの爽やかな笑顔に戻った。

「ああ、そんなに警戒することはないよ。昨日みたいに辛いことは、もうしない。もっとも……キミがそれを望めば、話は別だがね?♡」

──っ……♡♡♡

渚さんは、するりと懐に入り込み、妖しげに僕の唇を人差し指で撫でる。
にやりとした、不敵な微笑み。
その表情に、思わずどきりと心臓がときめく。

やっぱり、渚さんは、美人だ。
そんな、1+1が2になるという事ほども当然なことは、改めて言うまでもないが、それでも。
こうして、彼女の長く艶めくまつ毛の一本一本まで見える距離で、じっとその顔を見つめると、心臓がばくばくと高鳴って、渚さんの世界レベルの美女っぷりを再度認識する。

「んー……?どうしたの、顔赤くして?」

──あ、いや、その……

そうして、渚さんの顔を茫然と眺めていると、悪戯っぽい表情でそれを見つめ返される。
どうにも気恥ずかしくなって、目線を下に逸らすが、そこには渚さんの寝巻のローブ──きっと、僕が気を失って眠った後に一人で着替えたのだろう──の緩い胸元から、たわわな胸の谷間が覗いており。
そこに目線が吸い込まれると──もう、離せない。
しっとりと艶めき、はち切れんばかりの乳脂肪を蓄えた、柔らかたっぷたぷの、豊乳。
細かすぎの肌のキメが、呼吸に合わせて、羽二重みたいに、ぷるぷる、ぷるぷる、揺れている。
その乳肉の、もっちゅりとしたぷるつき加減と言えば、いかにもこってりと濃い、手のひらに吸い付いて絡みつく揉み心地である事は明白で。

「……おっと♡それは……朝の生理現象という訳ではなさそうだね♡」

──そんな事を考えていると、昨日しこたま働かせた精巣がフル稼働して、またもペニスが反りくりかえってしまう。
これでは、『僕はあなたのおっぱいの谷間を見て勃起させました』と白状しているようなものだが、そんなセクハラ同然の反応をされた当の渚さんと言えば──嬉しそうに笑うだけだ。

「ああ、そうだ……♡ところで、随分喉が枯れてしまっているね……♡まあ、昨日あれだけ叫んだのだから、無理もない……♡」

そっと身を寄せて、渚さんは軽く微笑む。
いかにも甘く、まるで今から睦み合いでもするかのような──いや、それは例えなどでは決してなく、実際にそうなのだろう。
捕食でも、レイプでもなく、睦み合い。
愛し合って、抱きしめあって、熱い愛情を注ぎ合う、恋人同士の触れ合いをしようと、その目は語っている。

「ほら、お水を持ってきてあげたよ♡寝起きだし、喉も渇いているだろう?♡たくさん飲むといい……♡」

渚さんが手に持っているのは、ペットボトルに入った、水。
恐らくは冷蔵庫に入っていた、サービスの物だろう。
それを片手に、ちゃぽちゃぽと回し、キャップを開けて。

──きゅっと、一息に、それを口に入れた。

──え。

てっきり僕に渡してくれると──そうでなくとも、まあ、もしかしたら手ずから飲ませてくれたりするのだろうかという期待が打ち砕かれ、唖然とする。
そんな僕の間抜け面を片目に、渚さんは──にやりと微笑んで。
突然、両手でがっしりと、僕の顔を掴み。

ん、ちゅうぅぅぅ……♡♡♡

思いっきり、口づけた。
いきなりの柔らかな感触に、僕は当然、戸惑いを覚える。
そして、口を半開きにしてしまうと──そこから、渚さんの舌と、少しぬるい水が流れ込む。

──口移し。
親しい相手どころか、恋人にでもしないようなそれを、一切の逡巡なく行われ、困惑よりも先に嬉しさを覚えてしまう。
もちろん──それは、はっきり言ってしまうと、渚さんというこの世に二人と居ない美女だからこそ喜べる芸当だ。
そこいらの女性と恋仲になり、これと全く同じことをやられたとしたら、いくら恋人と言えども不快感が勝ってしまうだろう。

けれど──逆にそれを、早瀬渚という女が行ったなら。
構成する全ての要素が人智を超えて美しく、女性的魅力という概念が服を着ているような女が、それをやったなら。
生理的な忌避感を覚えるまでもなく、歓喜と幸福に包まれて、大喜びでそれを受け入れてしまう。
何故ならば──彼女の全ては、美しくて魅力的で、触れ難い部分などどこにも存在しないから。
むしろ、例えそれがだれであっても、ある程度は生理的不快感を覚えてしまうような行為を、渚さんから進んで行ってくれるというシチュエーションに──男なら、堪らない愉悦を覚えてしまう。
つくづく、早瀬渚という女性は、我々が住んでいる範疇の、その外側で生きている人間なのだ。

こく、こく、こくり。
故に、何の疑いもなく、抵抗もなく、それを飲み干す僕。
──なんだか、普通の水より甘いような、そんな気がするな。
なんて事をぼんやりと考える僕を、渚さんの碧眼は、よしよしと頭を撫でるみたいな優しい目線で見つめている。

──ぷぁっ……

そして、じっくり時間をかけて、唇が離れてゆく。
名残惜しい、もっと味わっていたい──なんて気持ちを隠そうともせず、視線で彼女にそれを訴えると。

「フフ……♡♡♡そんな目をしなくても、いくらでも飲ませてあげるよ……♡♡♡その為に、私は三日もスケジュールを開けたんだからね……♡♡♡」

また、水を口に含み、ちゅ。
ちゅるん、と唇の隙間を割られて、たっぷりの時間をかけて、飲み干す。
優しく、甘く、心の中までたっぷりと潤うような、そんな愛撫。

そうしていると、そっと両手を取られ──渚さんの、ずっしりと重い両胸に、添えられる。
触覚には、どこまでも沈み込むマシュマロのような肉質を確信させ。
視覚には、淡い暖色の照明の光すら反射する、まったりとまろやかな肌質の照りを映し。
聴覚には、乳肌の谷間で緩く肉がぶつかり合い、時折『たぱっ……♡たぱぱっ……♡』と重たげな音を聞かせる、そんな、極乳を。
──好きなように、触っていいよ。
そんな意思表示をするように、差し出してくれるのだ。

──っ……♡♡♡

そんな据え膳を与えられては、当然黙っていることなどできず、両手を一杯に使い果たして揉みたくる──と、そうしようとしたけれど、迷ってしまい、手が止まる。
あまりにも、大きすぎる。

右乳を、右手に。
左手を、左乳に。
左右の手に、それぞれの爆乳を乗せられてはいるけれど──そもそも、片乳だけを両手で弄ぼうとしたって、どう考えても持て余すサイズ感なのだ。
それを、この小さな手のひらでどうこうしようと言ったって、どうすればいいのか分からない。
例えるなら、ナイフもフォークも渡されず、ただホールケーキだけを目の前に置かれた子供のように。
飛び上がるほど嬉しくて、今すぐにでもむしゃぶりつきたいけれど、あまりにも贅沢過ぎて、どう手をつけたものかと戸惑ってしまうのだ。

──だから、仕方なく。
ずっしりと持ち上げては離し、持ち上げては離し。
手のひらに潰れて、指の隙間から溢れ出すとろめきを堪能して。
離すときには、ばるんと手を跳ね返す、わがままな肉のじゃじゃ馬さ加減を味わい尽くし。

──そして、上では。
つまり、口の方では、べろべろと渚さんの口と、ひたすらねちっこいベロキスで、貪り合うのだ。

とんだ贅沢、誰もが羨む女肉のオードブルを堪能して、むらむら興奮と快感がつのる。
昨日みたいに、無理やり高められるそれではなくて、自分の内側から欲求があふれ出し、もっともっと手を出したくなる、中毒性のある性的欲求。
麻薬にも似た興奮を、手つきと舌つきに如実に表し、ねちねちと粘っこく、絡め合う。
渚さんは、今日に限っては無抵抗に、僕の無礼を許してくれるようだ。
必要以上に動かず、必要以上に責めず、ただ僕の動きをサポートするように、舌も手も動かしてくれる。

それはつまり──渚さんの女体は、思うがままに、今日の僕は、犯せる。
自分の望んだように、彼女の肢体を貪り食うという、世の人間が百万回も思い浮かべるような、陳腐でありきたりで、それ故に根源的に求めてやまない、夢のような境遇。
当然、僕だって一度くらいは──いや、きっと3ケタくらいは考えたことのある、酒池肉林の状況に、今自分は立っているのだと自覚して、興奮が止まらない。

「ん……♡♡♡ぷは……♡♡♡うん、今日は、キミの考えてる通り……♡♡♡早瀬渚を、独占やりたい放題えっち……♡♡♡して、いいよ……♡♡♡」

──う、あ、あ……♡♡♡

一気に、獣欲を煽られて、手つきが激しくなる。
ぐいっと手を押し込み、揉みつぶし、手首まで肉塊に入り込むほど、強く。
僕には女性の感覚は分からないが、ここまで強くすると、多分ちょっと痛いんじゃないかと思うぐらいに、がっつりと乳を練りたくる。
しかし、手にはクリーミーでとろける触感がまとわりつき、まったりと母性的な肉は、完全に受け入れて、手にぴったりと潰れて吸い付いてくれる。
けれど、芯には確かなハリとコシがあって、ぷるんと指を弾いて抜群の揉み心地を演出し、永遠にでも揉んでいたくなる病みつきの感覚をもたらす。

手のひらをいっぱいに開いて、なるだけ乳肌と密着できるようにして、ねりねり。
乳肉の芯を目がけて、指をみっちり食い込ませ、柔乳の脂肪が練られていくのを感じながら、ねぇり、ねぇり。
ぱつぱつの乳肉の隙間に指を潜らせ、疑似的にパイズリの感覚を味わったり、乳の谷間の熱さや深さを確認したりしながら、楕円を描く乳を両手でもにゅん、もにゅん。

そんな狼藉に、先走りをぴゅっと吐き出し、渚さんの肉厚太ももを汚しながら。
口の中を、できるだけべろべろと舌で凌辱しつつ、口を押し付けて唇のぷるつきに、うっとり夢心地。
──でも、渚さんは怒らない。
ただ微笑んで、受け入れる──どころか、もっとこう動けば気持ちいいよと教えるみたいに、手を重ねておっぱいを練りつぶす。舌を導く。

もう、心臓の高鳴りも、興奮も最高潮。
昨日もあれほど射精したのにとか、朝っぱらからセックスに励むつもりかなんて、頭の片隅で思いながら、けれどペニスはそんな下らない事は気にも留めずに天上の方を向いていて。

──ああ、今日は、一日交尾で使い尽くすのだろうか。
渚さんとは、会って喋ったのは二日もないくらいなのに、そんな爛れたことをしていいのだろうか。
なんて、どうせ今更止まる気もないのに、そんな無益な疑念を抱く。
プラトニックな愛情は重視すべきだと思うし、対話も必要とされずに身体だけを求められるのも、またその逆も悲しいとは思うけど、だからと言って、この興奮を止めるなんて今更できるはずもないのに。

「……クスッ♡♡♡ほら、何を迷っているんだい……?♡♡♡まさか、女に恥をかかせるつもりかな……?♡♡♡クク、酷い彼氏サマだね、キミは……♡♡♡」

けれど、そんなどうでもいい疑念は、渚さんが晴らしてくれた。
──ペニスに、コンドームを被せるという行為によって。

「ほら、おいでよ……♡♡♡全身で抱きしめながら、対面座位セックス……♡♡♡むっちりハグされて、潰されながら、びゅー……♡♡♡絶対、きもちいよ……分かるでしょ……?♡♡♡」

渚さんは、両手を開いて、招き入れる。
たぷんと揺れる胸、ずっしり甘くひしゃげる臀部。
なっがい脚も開いて、ペニスを受け入れられるよう、守りを解いて。
そして、ローブの前面を開き、その甘ったるいフェロモン溜まりに迎えてくれる。

──はーっ……♡♡♡はーっ……♡♡♡

拒まない。
どころか、引き込もうとする。
とことん、渚さんは、魔性だ。
あんな、むっちりたわわな肉に抱かれたら、人間なんて即刻堕落するに決まっているのに。
そして、そのことを、渚さんは自分で分かっているのに。
あの、女肉のるつぼ、悦楽のアリジゴクに叩き落そうとするのだ。

「どうしたんだい……?♡♡♡早く、飛び込みなよ……♡♡♡ぎゅっと抱いて、胸の谷間に頭をしまい込んで……♡♡♡全身あまあまに蕩けるの、どうせ好きだろう……?♡♡♡」

──う、ぅ……♡♡♡

おずおずと、にじり寄る。
渚さんは、ただそこに居て、逃げもしないが、迎えに来てもくれない。
──あくまでも、自分から、堕ちろ。
極楽への門を開いたまま、彼女はじっと、座っている。

「おいで……♡♡♡私の生肌を堪能できる人間なんて、キミしか居ないんだよ……?♡♡♡多種多様な人間から、私は下品な目で品定めされてるけど、それでも……♡♡♡私の地肌に触れられるのは、抱き着けるのは、キミだけ……♡♡♡」

ぞく、と、背筋が震える。
──また、悪い性癖を、独占欲と優越感を、植え付けるつもりだ。
そう確信したが、渚さんの口は、止められない。

「そうだね、例えば……♡♡♡出版社のお偉いさんとか、放送局のマネージャーとかから、『営業』を持ちかけられる事だってあるんだ……♡♡♡権力と金だけをたらふく貯めた、ひどく低俗な男が、勝利を確信したような顔で、応じなければお前は二度とメディアに出られないぞ、なんてさ……。ブランド物の腕時計や、値段ばっかり高そうでちっとも似合ってない小物なんかをちらつかせて、誘うんだ……。ああ、実に惨めだよね……♡♡♡」

──何故、それが惨めだと思うのか。
そんなの、聞くまでも無い。

「もちろん、そんな馬鹿な話、私は聞かなかったさ……♡♡♡クク、するとどうだい……♡♡♡奴らは目先の欲に囚われて、必死になって私に縋りついてくるじゃないか……♡♡♡あんなはした金で、どうやって私を手籠めにする算段があったか知らないが、もう当時は既に、彼らよりずっと稼いでいたと言うのにね……♡♡♡」

──黙って、彼女の言葉に、耳を傾ける。
息を荒らげて、ペニスを硬くして。

「そうしたらさ、奴らは臍を曲げて、私を干そうとしてきたんだ……♡♡♡本当、ちんぽでしか物を考えられないのかな……?♡♡♡結局、そいつらはクビにされて、金も名誉も失っちゃったよ……♡♡♡だって、あの早瀬渚を起用させないように圧力をかける奴なんて、切って当然だろう……?♡♡♡それは、金の卵を産むニワトリを殺そうとするようなものなんだから……♡♡♡」

──だから、そいつらは、渚さんのカラダを羨んだまま、消えていった。
金も地位もあったはずの、僕より何百倍も偉い立場の、重役が。

「他にも、巷ではイケメン俳優なんて呼ばれる男からも、お誘いを受けることはよくあるよ……♡♡♡まあ、体なんて許した事は一度も無いけどね……♡♡♡フフ、やっぱりプライドとかもあるのかな……?♡♡♡それはそれは悔しそうな顔で。何度も食い下がるんだよ……♡♡♡」

じっとりとした光を放つ、エメラルドの目。
それがすうっと細められて、瞳が向く先は、僕しかいない。

「そんな奴らがさ、私がパッと見は普通の大学生なキミに……こうやって♡♡♡ん……♡♡♡」

──僕は、言葉の途中で、辛抱堪らなくなり、渚さんにペニスごと抱き着いた。
それは、もうやめて欲しいという意思表示でもあり、性欲に脳を冒された男たちの同類であることの証明でもある。

ぬかるんだ秘所にペニスを突き入れ、深く深く、ハグ。
僕よりも身長がいくらか高い彼女に、座ったままきつく抱き着くと、頭がちょうど──おっぱいの谷間の高さに来る。
つまり、僕は──対面座位だと、渚さんのむちむちで抱き心地抜群のボディに甘えつつ、谷間に顔を舐められるようにぱふぱふと愛撫される。
もう僕たちは、お互いに成人を迎え、もうこれ以上身長が変化する事はそうそう望めない。
だから──僕は、一生、この天国みたいな甘えんぼ体勢を、いつだって味わえる。
他の人間が──例えば、どれだけ偉い政治家でも、どれだけ人気があるハリウッドスターでも、どれだけお金を持った実業家でも──絶対に、一生、何を賭けても味わうことができないこれを、僕だけが。

「フフフ……♡♡♡私が、処女を捧げて、心からのらぶらぶえっちで絶頂するところを見たら、どんな顔をするんだろうねぇ……?♡♡♡クク、嫉妬に狂った歯軋りの音が聞こえてきそうだろう……?♡♡♡」

渚さんは、相変わらず、嫌な顔一つしない。
それどころか、深く頭を抱いて、耳元に口を寄せて、囁いてくれる。
ガチ恋製造機とも呼ばれる、耳が蕩ける極甘ハスキーボイスを、すぐ傍で。

「ほんと、幸運だよね、キミは……♡♡♡ああ、どうしよう……♡♡♡キミに囁いてあげた、この言葉を……そのまま、お古として売ってみようか……?♡♡♡優越感を擽って、頭のキモチイイところを直で刺激するいけない音声……♡♡♡でも、それは既に愛する人に囁いた後の出涸らしなんだ……♡♡♡何万、何十万本と飛ぶように売れたとしても、マイク越しではない、吐息がかかるほどの距離で囁かれたのは、一人だけ……♡♡♡売れた本数が多ければ多いほど、評判が良ければ良くなるほど、有名になればなるほど、その特別感と優越感は跳ね上がる……♡♡♡ね、いいアイデアだろう……?♡♡♡」

──ペニスの震えが大きくなり、ぎゅっと、反射的にきつく抱き着く。
渚さんの肉体は、やっぱり神が与えた最高の芸術品だ。
力を込めればふんにゅり沈み、撫でまわせばさらさらとシルクのように手のひらを滑らせ、鼻を寄せれば甘くて妖艶なラベンダーのような香りがする。
誇張や比喩ではなく、一生こうして抱いていたいと思わせるほどの、渚さんの肉体の食虫植物みたいな蠱惑さには、ただただ感服するばかりだ。

「もしも本当にそれを売ったら、どれだけのお金が動くのかな……?♡♡♡きっと、こんな内容なら、何万、何十万出してでも買うっていう人、多いと思うよ……♡♡♡それで、そうして、お金を稼いだらさ……♡♡♡キミとフレンチでも食べに行こうか……♡♡♡ファンにシコらせて稼いだお金で、キミと二人デートに勤しんで、その帰りにラブホでまた新たな音声を拵える、最低の裏切り交尾ループ……♡♡♡きっと、気持ちいいと思うな……♡♡♡」

──本当に、やっぱりこの人は、実は悪魔か何かなのではないだろうか。
よくもまあ、こんなに的確に、人の負の性欲を煽ることができるものだ。
相変わらず、深すぎる爆乳に耳まで埋もれかけて、昨日あれだけ酷使した精巣をまたも煮立たせる。

たぷたぷ、もちもち、乳肌が顔を撫でる。
呼吸をすれば、甘ったるい生クリームのような空気が肺になだれ込み、血液まで甘くなる気分だ。
華奢な背中に手を回すと、汗で多少ぬるついていて、それが実に官能的でペニスに悪い。
腰は、しっかりと太ももに固定されて──有り体に言えばだいしゅきホールドと言うのだろうか。一瞬たりとも逃がさないという意思表示でもあるそれを渚さんにされるのは、大きな愛情の証のようで、思わず頬が緩むような多幸感を刺激されてしまう──ぴっちりと恥部と恥部をくっつけさせられている。

「クク……♡♡♡まあ、私の言葉はキミ専用で、キミのちんぽを硬くするためだけにあるのだから、そんな事はしないけど……でも、キミがもし、それを本当にやれと願うのなら、私はやぶさかではないよ……?♡♡♡どうする……?♡♡♡キミが、全部決めていいよ……♡♡♡」

ぬるぬると、膣内の愛液の分泌量が一層多くなり、粘度が上がったように感じる。
きゅうきゅうと、撫でるように襞がざわめき、締め付ける膣の感触に吐息を漏らすと、熱く湿った谷間が一層、濡れてゆく。
全身に容赦なく絡む肉は、ふくよかに脂ののった、熟れた雌らしさと共に、ハリのある反発もあり、まさに絶好の孕ませ頃の具合。
確かにこれは──どんな手を使ってでも、抱きたくなるに決まっている。
実際にこうして正面から抱いて、改めてそれを強く痛感した。

「そう、今日は、キミが全部決めていい日だからね……♡♡♡キミの欲望のままに、私のことなんて一切考えない乱暴な腰振りをしたっていいし……♡♡♡逆に私に腰を振らせることを命令したっていい……♡♡♡もちろん、それに対して対価を提示する必要も無いよ……♡♡♡報酬やリスクを示してなお、眼中にも入れなかったアイツ達とは違って、ね……♡♡♡」

ぞくぞく、ぞくぞく、ペニスに感じるのは、射精の予兆。
脳の奥まで痺れはじめ、腰が熱く溶けてしまいそうな、昨日の夜に何度も味わったあの感覚。
しかし、昨日とは体勢を変えて、感じ方も変わり、慣れない快感に新鮮な震えを起こした。

──膣奥で、いっちばん気持ちいい射精。
すっかり射精欲に染め上げられた本能は、そのことだけを意識して、勝手に体を動かす。
渚さんに何かを伝えるでもなく、あくまで自分本位に、自分だけが気持ちいい絶頂を迎えるために。

てち……♡♡♡てち……♡♡♡

しかし、そんな身勝手なことを考えておいて、行うのはひどく弱弱しい腰振り。
せっかくの射精だから、動かずに黙ってお漏らしするよりは、どっぷり粘つく濃いのを子宮にぶっ放したい。
そんな本能が始めた行為のくせに、肉体はあまりの快感に悲鳴を上げて、上手く動けないのだ。

──男として、人間として、あまりに惨めだ。
いくら渚さんのカラダが全身名器な搾精用女体とは言え、繁殖相手としては最低の姿。
野生の世界なら劣悪遺伝子と見なされて、交尾途中で失望され逃げられたっておかしくはない、こんなに情けない腰振りでも──渚さんは、優しく頭を撫でて、あまつさえ「ゆっくりでいいよ……♡♡♡」と励ましてくれるのだ。

──もう、好き、大好き。
天使みたいに優しくて、女神みたいに美しくて、邪神みたいにいじわるで、淫魔みたいに淫ら。
それは要するに──考えうる限り、最高の恋人。
一生離れない、絶対幸せにする、結婚してほしい──なんて、射精直前の最もお花畑な脳みそで考えて、更に勝手に多幸感を感じ、そして恋心を増幅させる。
性的弱者である僕は、そうして自分から進んで快楽のスパイラルに陥ってしまう。

「ああ、気持ちよさそう……♡♡♡へこへこ求愛して、耳まで真っ赤にしながらシアワセ全開深呼吸して、全身ですきすき表現して……♡♡♡私、やっぱり、キミを悦ばせるの、好きだな……♡♡♡私が気持ちよくなるより、キミをいじめる方が、よっぽど心臓が痛くなるみたいなゾクゾクを感じるもの……♡♡♡やっぱり私、支配欲とか嗜虐心とかそういうの、強いみたいだ……♡♡♡
そういう訳でね……♡♡♡もっともっと、気持ちよくしてあげたいんだ……♡♡♡苦しいぐらい、頭がぐちゃぐちゃになるぐらい……♡♡♡」

──けれど。
それだけで、渚さんが逃がしてくれるはずがない。
少なくとも、ベッドの上ではしつこいほどの完璧主義である渚さんが、その程度の幸福だけで、終わらせてくれるはずがないのだ。

「だから、ほら……♡♡♡のーみそ蕩かしターイム……♡♡♡今からキミの性癖、ぐっちゃぐちゃに歪めて……♡♡♡もっともーっと気持ちいい射精、サポートしちゃいまーす……♡♡♡」

──っ……♡♡♡♡♡

ぽやぽやと、爆乳谷間によって酸欠になりかけた、全く回っていない頭が、直感的にアラームを鳴らす。
──今日はとことん、渚さんの悪魔の部分が、牙を剥いてくる。
母性的なほど甘い態度に誤魔化されて──いや、だからこそ、よりこの囁きには破壊力が出るのか。
とにかく、今日ばかりは、渚さんは極悪人だ。
期間こそ短いものの、密度の濃すぎる時間を渚さんと過ごした僕は、そう結論付けるが──だから、どうすればいい?
どうせ渚さんからは逃げられないし、その口から放たれるとびっきりの淫語に警戒するにも、渚さんの言葉はいつも僕の心の隙間を的確に突いてくる。
つまり、今の僕──渚さんの肢体に脚まで絡めて抱きつき、乳肉に頭を預け、甘腰を使っている、見るからに負け癖のついた弱っちいオス──にできる事とは。
ただ、期待感を高め、弱者らしくマゾ精子を濃くすることしか、ないのだ。

「ほら、じゃーん……♡♡♡これ、私の最新モデルのスマホ……♡♡♡さっき居酒屋でも、キミと連絡先を交換したやつね……♡♡♡ケータイ会社のCMに出た時に貰ったんだよ……♡♡♡」

そして、また呼吸を深くしていると、渚さんはスマートフォンを取り出す。
それは何の変哲も無く、しかし現存する中で最も性能がいいもので──だからこそ、何でも出来てしまう。
持ち運べるパソコンとはよく言ったもので、この小さな長方形の中には、数えきれないほどの機能が存在しているのだ。
だから──想像できなくて、恐ろしい。
この中のどれを武器として使うのか、全く読めなくて、興奮する。

「これね、知ってる……♡♡♡写真とかの画質……特に動画なんかは、どこを切り取っても写真として使えるぐらい、ワンシーンごとにくっきり映るのが魅力なんだってさ……♡♡♡
……試したくない?♡♡♡」

──ぎゅっと、抱きついた両手が強張り、力がこもる。
セックスをしている男女が撮る、動画。
そんなの、どう考えたって、一つしかない。

「そう、ハメ撮り……♡♡♡くっきりはっきり、キミの情けない姿、撮っちゃおう……♡♡♡音もちゃんと拾ってくれるから、防音おっぱいクッションがあるとは言え、あんまり喘ぐとそれも入っちゃうからね……?♡♡♡」

──ぎゅうぅ……と、また一層強く、しがみついた。
ハメ撮りという行為には、当然、それなりのリスクが付きまとう。
つまるところ、流出。
ネットの海にそれが流れたら、当然顔バレするし、場合によっては──特に、超の字が付く有名人である渚さんの場合なら絶対に──住所や名前などの個人情報まで、特定されるだろう。

「じゃ、撮るよ……♡♡♡準備いい……?♡♡♡後でキミのスマホに送って一緒に見返すから、ほら、かっこいいところ、画面の向こうに見せようねー……♡♡♡」

けれど──それによるリスクは、明らかに、僕よりも渚さんの方が、大きい。
渚さんは、イメージそのものが仕事に直結する、モデルというタレント業を行っているし、何よりも渚さんほどの切れ者が『うっかり』それを流出させるとは到底思えない。
彼女の性格上、仲のいい友達やらにもそれを見せる事はないだろうから──だから、それを全世界にバラ撒くとしたら、それは。

──僕しか、いない。
僕の指先一つで、全世界の男を嫉妬の渦に巻き込むためだけに、自分がひたすら羨まれて気持ちよくなるために。
そんな、心の底からちんぽ本位に、渚さんの立場まで壊して、優越快楽を追求する事だって、できてしまう。

──や、そんなの、危な……♡♡♡

なけなしの理性で、必死に危険性を訴える。
その声は、ひどく甘えきった、ぐずる赤ん坊のようなものだったが──しかし、渚さんの耳には届いたはずだ。
その声を聴いた渚さんは、にやりと笑って──

「ああ、そうだね、流出したら終わりだ……♡♡♡今から撮る動画は、私にとっては特にね……♡♡♡そう、私にとって『だけ』、大きなリスクがあるんだよ……♡♡♡」

──などと、宣う。
その言葉の意味は、当然こんな脳みそでは理解も追求もできないまま──ポコン、と。
撮影を開始した音だけが、この静かな部屋に響いた。

「はーい、見てる?♡早瀬渚、だよ♡私は今、こうして、見ての通り……♡裸で、男の子と抱き合っています♡所謂ハメ撮りというやつだね♡」

もしかすると、万が一。
誰かに、これが見られるかも知れない。
そう思うと、思わず羞恥が湧き起こったが──彼女はどこ吹く風。
渚さんは、その美しすぎる裸体やペニスを挿れられている姿すら、見られて恥ずかしくないのだろうか、全く平然とした態度で、悠々とカメラに語り掛けていた。

「そして、こちらの男の子が……仔猫くん♡私の恋人……いや、彼氏、ううん、婚約者だよ♡見ての通り、私がこうして襲って、無理やり手籠めにしてしまいました♡フフ、平たく言えばレイプ、散々私が未遂されてきた、唾棄すべき最低の犯罪だね♡」

──えっ、いや、違……むぷっ♡♡♡

がんと、頭を殴られるほどの衝撃と驚愕に、思わず胸から顔を出し、口を挟もうとする。
あまりにとち狂った、全く虚偽の──それも、渚さんがワルモノになるような内容ばかりを語るものだから、反射的に声を出してしまった。
最もそれは、声を出す隙間もないほどみっちりと張り付く爆乳の谷間に押し戻されることにより、失敗に終わったが。

「フフ、所謂一目ぼれ……というやつかな?♡この子を見たらピンと来て、ついついホテルに連れ込んでしまったよ♡多分、この子はもう私以外では一生イけないから、こうやって襲った分、一生分の射精には責任を取ろうと思っています♡つまるところ、婚約ですね♡」

──婚約。一生責任を取る。
都合のいい部分だけを脳みそが拾い上げ、沸騰するような気分になる。
実際には、この内容は真実ではないのに。

──だが、しかし、現実問題として、言っている。
『婚約』とも、『一生責任を取る』とも、彼女は言っているのだ。
そして、そのセリフがいくら虚偽であろうとも、実際にその言葉はこれ以上ない物的証拠として、スマホの中に入っており──

──あ、あぁっ……!!♡♡♡♡♡

雷のような衝撃を受けながら、気付く。
渚さんの意図、その真意に。

「だから……♡もしも、万が一、私がこの子を捨てるような事があったら♡私は自分からこの子を犯して、責任を取るから結婚してくれと迫った挙句、食い散らかすだけ食い散らかしてポイ捨てする最低最悪のクズ女……♡石をぶつけられて当然、どこからも干された挙句に慰謝料をブン取られることになるだろうね……♡フフ、まあ、ラブラブだからあり得ない話だけど……♡」

──これは、僕にとってだけ有利な『証拠』を作っているんだ。
渚さんがどこかへ離れて、僕を捨てたなら、これを見せれば一発で彼女が『悪』になる。
このハメ撮りは、楔であり、鎖なのだ。
僕をもしも裏切ることがあったなら、これで背後から刺せばいい。
明らかにそういうメッセージを込めて、彼女は画面の向こうに語っている。
これは、彼女が今できる最大の『媚び』であり『隷属宣言』だ。
そう確信した瞬間──僕は、思いっきり、腰を練りつけて、射精した。

「あ……♡♡♡フフ、駄目じゃないか……♡♡♡折角私がレイプしてる設定だから、辻褄を合わせるために、キミの蕩けて幸せそうな顔を必死に隠していたのに……♡♡♡もう、仕方がないな……♡♡♡ここはカットして、プライベートで私が愉しむとしよう……♡♡♡」

──もう、泣きそうなほど、いや、実際に大粒の涙をぼろぼろ溢すほど、幸せ。
彼女にここまでお膳立てされて、僕を見捨てない覚悟を示されて、その上で優しく射精を褒めてくれる。
そんなの、渚さんじゃなくったって心酔してしまうのに──それをしているのが渚さんだから、尚のこと悪い。
心の底から惚れて、分不相応にも一生添い遂げてほしくなって──そして、そうしてくれることは、既に確定していて。
僕は、幸せたっぷりの長射精を、下半身を蕩けさせながら、終わりなく注ぎ込んだ。

「よしよし、いい子いい子……♡♡♡たくさん気持ちよくなれて偉いね……♡♡♡
……ああ、そうだ。そう言えばすっかり忘れていたけれど……動画を撮って思い出した。私にはちょっと仕事があったんだっけ」

そうして、たっぷり腰を押し付け吐精する僕の頭を撫でながら、渚さんは何かを思い出し、呟く。
渚さんのおまんこにどっぷり膣内射精するという、恍惚の極地に浸っている僕には、それが何かを考える余裕は一切無かったが、何か僕の不利益になるような事ではない。
そう直感で判断して、褒められるままに脈動を繰り返していると──卓上ライトの傍に置いてあった僕のスマホが、ピロンと鳴った。

何のことはない、どうせ下らない詐欺メールの通知だろう。
少なくとも今だけは、そんな酒池肉林を謳うサイトへの誘導にだけは引っかからない。
悔しければ、渚さんにこうして甘やかされながら吐精する以上に羨ましいシチュエーションを提示してみろ──と思うが、でも、それはおかしいという事に、ふと気が付く。

だって、通知は切っておいたはずだ。
メールも、SMSも、ラインも、電話すら、今だけは着信拒否にしている。
あと、それ以上に大事で、通知を切っていないものと言えば。

「……あ、スマホ、鳴ってるね。もしかして、私の投稿に通知設定してくれてるの……?♡♡♡フフ、嬉しいな……♡♡♡」

──渚さんがよく自撮りを上げている、SNS。
それも、自分へのいいねなどの通知は切っているはずだから、もしスマホが鳴るとしたらそれは──彼女が、何かを投稿した時だけだ。
なら、一体、何を。
──そんなの、決まっている。
今、彼女の手元にある、自分が映った写真もしくは動画と言えば。

「うん、なるほど……動画のどこを切り取っても、写真のように鮮明という謳い文句は、どうも嘘じゃないみたいだね……♡♡♡綺麗に撮れてるじゃないか……♡♡♡これなら、元が動画だったなんて、誰も気づかないだろう……♡♡♡」

さっきの、ハメ撮り。
それを、自分から──流したのか。
そんな、そんな恐ろしいことを、自分から。

「……ん?ああ……♡♡♡大丈夫だよ、もちろんあの動画を直接投稿なんてしてないさ♡♡♡ただ、私の顔だけをトリミングして、静止画として上げただけだよ♡♡♡瞳やレンズの反射もばっちり確認してるから、キミが居ることなんてばれないさ……♡♡♡」

確認してごらん、と、僕のスマホを手渡される。
震える手でそれを開くと──実際に、一枚の写真が、キャプションと共に投稿されていた。

『おはよう、皆。昨日はリフレッシュするためにホテルに泊まったよ。さっき朝風呂を浴びてきたから、バスタオルを巻いただけの姿で失礼するよ。結構長い間浸かってたから、まだちょっと汗かいてるかも。やっぱり露天風呂は気持ちいいね。皆も、私と一緒にお風呂、入りたい?』

──彼女の言う通り、これは確かに、自然な写真だ。
言われてみれば、十分お風呂上りにも見える、しっとりと上気した微笑み。
もちろん元の動画では丸裸だが、この写真では肩口までしか見えていないから、バスタオルを着けていないとは、これだけを見て断じることもできない。

被写体の力なのか、SNS映えする自撮りとしては完璧なほど、魅力を引き立てた写真。
しかし、だからこそ──僕は、疑念に眉を吊り上げた。

「ほら、私もモデルだからさ、一応こうしてSNSを使うのも仕事の一つなんだよ……♡♡♡フフ、その顔を見るに、もしかしたら、ここに写ってる私は独り占めしたかったのかな……?♡♡♡だとしたら、すまなかったね……♡♡♡」

──それも、まあ、正直言うと、ある。
あるけれど、それよりももっと、気になる事があるのだ。

これは、渚さんの写真にしては──媚びすぎている。
そう、渚さんは、普段はここまで分かりやすく、色気を前面に押し出した写真は撮らないのだ。
何故なら、そんな必要はどこにもないから。
例えばこれが、駆け出しのアイドルやら女優やらがファン獲得のために、必死に自分の性的魅力で男を釣ろうとしているのなら、分かる。
けれど、渚さんほどの、全世界ありとあらゆるの全てのアカウントを対象としたフォロワーランキングでも、首相やら大統領やらを押さえてトップ数人に食い込むほどに国際的な人気がある人ならば、そのような自分の安売りはかえって自分の価値を下げる。
そもそも、凡百のアイドルのエロ衣装コスプレや風呂上りの半裸画像なんかよりも、何の変哲もないバーで撮った渚さんの横顔の方が、圧倒的に価値があるのだ。
渚さんにはそれほどの、美の女神も裸足で逃げ出す美貌があるのだから、わざわざこうして性欲に尻尾を振るような真似は、サービス過剰になってしまうとすら言えよう。

そしてそれは、僕よりも渚さんの方が、ずっと深く理解しているはずだ。
それなのに、何故こんな写真を公開したのかは、分からない。
きっと、今までの行動から考えて、そこには深い理由が──恐らくは、僕をもっともっと、悦ばせるための理由があるのだろう。

渚さんの、熱いほど暖かで滑らかな肢体に抱き着いたまま、心音に少し耳を傾けていると──ピロン、と音がした。
ピロン、ピロン、ピロン、ピロン。
その音は、三度や四度では収まらず、時には音が重なりながら、延々と鳴り続けている。
その音の出処は、渚さんが持っている、彼女のスマホ。
恐らく、いいねやらコメントやらが世界中から付けられて、通知が止まらなくなっているのだろう。

──でも、渚さんほどの有名人なら、SNSの通知は切っておいた方がいいんじゃないだろうか。
現に、今もこうしてスマホは音を出し続けているし、これではすぐにバッテリーも消費されるだろう。
そんな疑問を浮かべて、その答えを伺うように彼女の目を見てみると──にやりと、狡猾なカラスのように意地悪く、笑っていた。

「フフフ……♡♡♡まあ、キミが今抱いている様々な疑問はごもっとも……♡♡♡全て道理に合わなくて、困惑している事だろう……♡♡♡でもさ、これらは全て、必要なことなんだよ……♡♡♡
キミが、気持ちよくなるためにね……♡♡♡」

ひょいと、自分の傍に置いていたスマホを拾い上げる渚さん。
その画面をちらりと眺めて、イタズラが成功した悪ガキみたいに、ころころと笑う。

「これ、さ……♡♡♡何の通知か分かる……?♡♡♡コメントでも、いいねでもなく……♡♡♡私はね、今、ダイレクトメッセージだけを、通知オンにしてるんだよ……♡♡♡
知ってる?DMってさ、他の誰にも見えないで、ただ私にだけ届くから……♡♡♡本当にひっどいセクハラな文面とか、嫉妬丸出しな女のクレームとか、毎日腐るほど届くんだよ……♡♡♡だから、普段は完全に無視してるんだけどね……♡♡♡」

たふ、たふ、と、渚さんの爪が液晶を叩く音がする。
あの画面の中には、どのような醜悪な言葉が詰まっているのだろう。
世界に向けて何かを発信したことも無く、人生の中で不特定多数の人間から注目されるようなスポットライトを浴びたことも無い僕には、これっぽっちも想像もつかない。

ファンの数が多ければ多いほど、その分様々な人間の目に晒される。
それは即ち、攻撃的な人間や、他者の感情を想像できないような人間が、自分に刃を向けてくるということで。

──だけど、何故そんな精神衛生上目に入れるのもよろしくないものを、わざわざ通知まで設定して確認するのだろうか。
そんな疑問は、やはり──渚さんが考えた、悪魔的に邪悪な発想により、氷解する。

「普段のさ、肌なんてちっとも出さない写真でも、こういう手合いはしつこく私に迫ってくるのに……♡♡♡こんなに直接的にえっちな写真を見ちゃったら、どんな事を書かれちゃうのかな……?♡♡♡
っていう事で♡♡♡今から私に届いたセクハラDMを、キミに直接囁いて読みながら……♡♡♡オフパコ希望の気持ち悪ぅい文面晒して、キミとだけガチハメ交尾、しようと思うんだよね……♡♡♡」

──っ……!!♡♡♡
小便をするほども長い大量射精を終えて萎えかけたペニスが、ぴくんと甘く跳ねた。

本当に、本っ当に、渚さんは──とんでもない事を考える。
心から、彼女は天才だ。
優越感を煽り、男の心の最も弱い部分をくすぐる、天才。

だって、そんなの、卑怯だ。
他人がどれだけ渚さんのことを魅力的に感じ、無様な姿を見せながら性欲を晒しているかを糧にして──自分だけが彼女の寵愛を受けるという行為の特別性を高められ、ひいては自分が他人より優位に立っていることを錯覚させられて、その背徳感にひたすら興奮を高め。
そして、その優越煽り実況を聞きながら、また密着抱きつき腰振りで、渚さんのカラダをラブドール代わりにし、どぼどぼと射精するのだ。

──想像しただけで、ペニスがまた芯を張ってしまう。
そんな僕の、俯いて荒い息を吐く姿を見て、渚さんは淫靡に破顔した。

「フフ、気に入ってくれたようで何よりだ……♡♡♡悲しい事に……いや、今日ばかりは嬉しいことに、そんなメールなら選り取り見取りだからね……♡♡♡いくらでもキミに囁いてあげられるよ……♡♡♡
例えば、さ……♡♡♡これとかどうかな……?♡♡♡」

嘲るように、彼女は笑う。
そうして、そっと僕の体にしなだれかかりながら、肩に顎を置き、ゆったりとスマホを弄る。

「ふーん……。『19歳の童貞です♡どうしても貴方とセックスしたいです♡前々からずっとファンでした♡写真集も買って、見抜きぶっかけで5冊ダメにしちゃいました♡マゾちんぽいじめて下さい♡処女ください♡』……だって。そんな誘い、何で成功すると思ったのかな……?マゾちんぽいじめろって言ったって、そんな性癖に私がわざわざ無償で応えながら、あまあま密着マゾいじめえっちされる幸運なファンなんて居る訳ないのにね……♡♡♡ねぇ……?♡♡♡♡」

──うねる生膣に、へこへこと抽挿をする僕の頭を撫でながら、渚さんは言う。
妖艶な流し目に僕を映して、あえて深くは語らない。

「クク、ご丁寧にオナニーしてる動画まで撮ってるよ。さっきの私の写真だね。お、手つきが早くなって……あーあ、スマホの画面にぶっかけちゃった。ちんちんも小っちゃいし、それに早漏だなー。ぜーんぜん楽しめなさそう……。もう愛想尽かしちゃった。
ね、こんな男がさ、私のおまんこに挿入しちゃったら、1ピストンも持たずに射精しちゃうんじゃない?同じ早漏仲間としてどう思う、仔猫クン……?♡♡♡」

──ふーっ♡♡♡ふーっ♡♡♡
黙って腰を振り、渚さんの胸に強く顔を埋めて、吐精。
一分もしないうちに、膣内でペニスを甘やかされながら、早漏射精をたっぷり注ぎ込んで──渚さんは、それを褒めそやすかのように、首筋にキスをしてくれる。

──キミにだけは、絶対に愛想なんて尽かさないよ♡♡♡仔猫くんの早漏ちんぽすきすき大好き♡♡♡とぷとぷ甘えんぼ射精かわいいねー……♡♡♡
DMを読んでいる時のどうでもよさそうな口調からは一変、渚さんはぐずぐずに蕩けた声で囁く。
それだけで頭が馬鹿になってしまいそうなのに──今の僕は、比較されている。

「ああ、ごめんごめん……♡♡♡こんな奴、仲間なんかじゃないよね……♡♡♡だって……この男が写真を見てシコってる間にキミは、私のおまんこでオナニーの百万倍気持ちいい膣内射精をどっぴゅんキメてたんだし……♡♡♡そもそもあの写真だって、この男は風呂上がりの写真だって思い込んでたけど、これを撮った時はおまんこの中にキミのちんちん挿入ってたし……♡♡♡大体キミってば、私で童貞卒業して、私の処女を奪った、贅沢者なんだから……♡♡♡やーい、裏切りものー……♡♡♡」

──もう、セクハラしてきた加害者なのに、可哀そうになるぐらい、コテンパン。
この男だって、数限りないDMの中からたまたま選まれ、渚さんに射精しているところを見て貰った幸運な人間なのに──どうやったって、客観的に見て幸運なのは、最終的な勝者は、僕になってしまう。

「フフ、チン凸DMって言うのかな?こういうDMは他にもいっぱいあってねー……。さっきみたいな貧相なちんちんから……おっ、こーんなにおっきいちんちんまで。ほら、見て見て!ドス黒くて、カリ高で、太くて長いよ。絶対ヤリチンなんだろうね、これ」

無邪気にきゃっきゃとはしゃぐ渚さんに釣られ、ちらりと、画面に目線を落とす。
確かにそこに映っていたペニスは、僕のモノとは比べ物にならないほど男性的な逸物だ。

──でも、だけど。

「しかし、いやに自信満々な文章だね。このチンポとハメたかったら連絡くれー、って。こんなに自信たっぷりなら、さぞかし色んな女の人を食べてきたんだろうねー……あ、元バスケサークルの社長なんだってー。如何にもって感じだね。つまんなさそー……」

──そう、そもそもセックスのお誘いをしている時点で、こいつらは確実に、僕よりも下なんだ。
お前達がいくら言葉を凝らし、どれだけ男性的魅力を磨いて、何人の女性と関係を持ったって。
明らかに、どう考えたって、渚さんと付き合って、こうして脳みそを沸騰させながらセックスしている僕の方が、上。

なんて、非常に道徳的に良くない気持ちよさを味わいながら、また吐精。
中小企業のイケイケ社長とやらが、目の前で無慈悲にDMを削除され、男性として一ミリも興味を持たれずに忘れ去られながら──また、渚さんの手が僕を可愛がってくれるのを感じて、脳髄が弾ける。

「こういう高圧的な男ってさぁ、本当にどこにでも居るんだね。『渚ちゃんって、見るからにマゾそうだよね♡おじさんが調教してあげよう♡すぐに返信を返すように♡』……って。本当、弁えないよねぇ……。気持ち悪い……。大体、人を見る目もからっきしだし。私がマゾだなんて、バカバカしい。
ああ、それとも、私は本当にマゾだったりするのかな……?♡♡♡ねえ、試してみる……?♡♡♡キミになら、全然されても嫌じゃないからね……♡♡♡縛って、責めて、鳴かせてくれる……?♡♡♡それもまた、楽しそうだ……♡♡♡」

つつつ、と、背筋に指先が沿わされて、くすぐったいような快感が走った。
渚さんが、僕以外には絶対に見せるはずがない姿を、見せてくれる。
それに対する期待感が、僕の中で膨れ──同時に、僕達の情事のダシに使われるだけ使われて、すぐポイ捨てされた男に、憐れみを覚えた。
僕達が渚さんとそういうプレイに乗じたとして──このセクハラ親父の事は、もう一生思い出さないだろう。
渚さんの痴態という、最も美味しい部分は、ただ僕一人だけが味わえる。
むらむらと、思わずにやけるような感情が湧き上がった。

「フフフ……♡♡♡キミ、こういうの、割とイケるタイプだよね……♡♡♡私としても、そっちの方がありがたいんだけど……♡♡♡」

ぎゅっと、渚さんが僕の背中に手を回し、ふくよかな胸を一層強く押し付けた。
──きっと、渚さんの爆乳に関する話題は、DMでも事欠かないのだろう。
でも、この感触──特に、乳奥に鼻を突っ込み、濃ゆいフェロモンを嗅ぎながら、ぐりぐりと乳肉に顔中を挟まれる感覚──は、僕以外の誰かが知るわけがない。
頬を舐めつける乳肌の奥に、まったりとたぷつく肉がたっぷり厚く連なるのを感じ、そのつきたて餅じみた乳肉の柔らかさを堪能する多幸感は。
そして、当然、こうして僕の全てを肯定されるみたいに抱かれながら、むちむちと吸い付く肉にしがみつき、必死で抽挿を繰り返す、得も言われぬ中毒感は。
僕の、僕だけもの。
一生、ずっと、これからも。
早瀬渚という究極の美女を──独占。
思わず、恍惚のため息を吐く。

「……あーあ。でも、こんなのばっかり見てたら、何か気分悪くなっちゃったな。ね、慰めてー……♡♡♡」

そうして、渚さんの匂いやら感触やら、他の人間が堪能できないそれらを味わい尽くしていると、彼女はスマホを放り出し、僕の首にキスマークを付け始める。
激しく吸い付き、赤い虫刺されのようなマーキングの証。
見る人が見れば、一発で何があったか丸わかりのそれを、渚さんに付けられて──それを、ひたすら見せびらかしたくなる衝動に駆られた。

「ほら、もっとぎゅってして、頭も撫でてよ……♡♡♡キスもしよう……♡♡♡ラブラブべろちゅーえっち……♡♡♡体も心も、他の男が付け入る隙がないぐらい独占してよ……♡♡♡」

──興奮やら何やらで真っ赤になった顔を、柔らかな胸の谷間からやっとの思いで離れさせ、渚さんの方へと向き直る。
彼女はにんまりと微笑む顔で、また首筋にキスを落とした。

──と、そこで、突如アラーム音が鳴り響く。
SNSの通知の音とは違う、マリンバの着信音。

「んー、誰……?いいところだったのに……。ね、誰からの着信って書いてある?」

渚さんはそれに見向きもせず、舌をにるにると這わせたまま、僕しか目に入らないという様子で、興味なさげに言う。
僕も、ぬぷぬぷ腰を振るのを一時止め──止めるまでに、もう一度、もう一度だけと尾を引いて、結局6,7コールほど待たせてしまったが──スマホに手を伸ばした。

言われるがままに、液晶のコール画面を見る。
そこに書いてあった名前は、何となく見覚えのある男のものだった。
はて、どこでこの名前を見たのだろうか、誰か有名な芸能人だったかな──と思いつつ、渚さんに見たままの名前を伝えると。

「ああ、それか。切っといて。何なら着信拒否にしといてもいいよ」

一切の感情無く、冷たく切り捨てた。
その反応から、ああ、きっと、さっきの男たちの同類なんだろうな──と思いつつ、指を滑らせると。

──あっ……

汗でぬるついて、言葉通りに指がつるりと滑り──通話状態に、してしまう。
いくら何でも、この音声を誰かに聞かせるのは、まずい。
慌てて通話を切ろうとするが──スマホは、渚さんに奪われる。

「ほら、ぽーいっ……と♡♡♡あんなの放っといて、早く続きをしようよ♡♡♡」

そして、スマホは誰かと電話で繋がったまま、ベッドの隅へ。
それに焦りを覚え、渚さんに何とか伝えようとするが、頭はまたも乳の隙間に押し込まれ、言葉は乳肉に全て遮られてしまう。

「あれさ、例の合コンで……ほら、キミに掴みかかってきたアイツ、居たでしょ?多分あれの名前じゃないかな。飲み会の最初の方でライン交換しちゃったから、大方それで電話かけてきたんだろうね。私がえっちな格好してたから、我慢できなくて謝りに……もとい、またワンチャンに賭けてどこかに誘おうとしてたんだよ。本当、馬鹿だよねぇ……♡♡♡」

──ああ、そうか、どこかで見た名前だと思ったら、それだ。
何となく引っかかっていた疑問が解けて、少しすっきりすると共に──より、焦りの感情が大きくなった。
よりにもよって、あの男が。
直接、ついさっき、僕とも渚さんとも会って、これから大学なんかでも会うかも知れないのに。

そして、更に悪い事に。
今日の渚さんの趣向は──

「大体さぁ、あれだけ私をレイプしようとして、また電話かけてくるっていうのも分からないよねぇ?♡私よりも先に、警察に自首すべきだと思うけど……まあ、今更あんな奴が牢屋に入れられようが賠償金を支払って来ようが、ぜーんぜん興味ないしどうでもいいか……♡でも、私に薬を盛って、隣に居る男も殴りかけて、脅してからの強姦未遂なんて、訴えたら人生終わるだろうね……♡だって、結局私が強かったから結果論としてよかったものの、普通ならあのまま犯されてボロボロになって、トラウマでもう二度と表になんて出られずに、早瀬渚としての活動を無期限休止してたと思うよ……?♡それが顔写真付きで実名報道なんてされたら、まあ……普通に、精神的にも、運が悪いと肉体的にも、リンチだろうからさ……♡」

──誰も聞いていないのを良いことに、とことん、僕だけを気持ちよくするという、あまりにも邪な行為のフルコース。
まともに正面から浴びれば──いくら相手に相当な非があるとは言え、100%トラウマ必至の、公開されないだけの私刑なのだ。

「ああ、でも、それなら……もう二度とこういう事が起きないように、牽制のために訴えておこうか♡私に手を出したらどうなるか、一人の人間を生贄にして、世間に知らしめるというのも一つの手だ……♡一応証拠として、あいつらが持ってた薬のケースはぶん盗ってきたし……♡そうしたら、これは手に入れることすら違法なモノだから、余罪まできっちり裁かれてしまうだろうね……♡フフ、ついでにキミも被害を被ったんだし、訴えておくかい?うちの事務所には腕利きの顧問弁護士が居るからね……♡その男の罪を追求することは、うちにとってもメリットがある事だから、きっと手を貸してくれるよ……♡クク、一人の男の命運を握るのは楽しいねぇ……♡」

だから、止めさせないと。
止めさせないと──あの男も、僕も、おかしくなる。

──でも、やっぱりこうして振り返ると、あの男は本当に救いようのないクズだし、こうしてちょっとトラウマを植え付けられるくらいは、いいか。
なんて、そう思いかけていること自体が、おかしくなっている証拠だ。
あの、暴力的で空気が読めなくてセクハラばかりしている気に入らない男が、そのくせコミュニティの中でだけは一定以上の地位があって、どこかで裁かれなければずっとああして誰かに迷惑をかけ続けるんだろうなと、そういう偏見を抱いてしまう男が──こうして、破滅させられて、気持ちいい、だなんて。

「でもさ、本当、情けないよね……♡そこまで非合法な手段に訴えかけて、薬なんてわざわざご丁寧に用意して飲ませてさ……♡それで、その後はご自慢の腕っぷしに訴えかけて、その上で負けちゃって、みっともなく情けをかけられて、ほーんと、無様そのものだね……♡かっこわるーい……♡あんなのでも女にちやほやされるのなら、キミならすぐにモテモテになれるよ……♡アレがその生き証人だ……♡」

ねちり、ねちり。
わざと大きく粘音を出すように、渚さんは腰を揺する。
媚びるような甘い声で、明確な『誰か』に語り掛けながら。

──本当に、電話の向こうの男は、哀れだ。
夢にまで見た渚さんとのセックスが、この電話のほんの向こうで、自分ではない誰かと行われていて。
最後に自分に向けられたものとは対極的な甘い声を、聞かされて。
でも、それでも、耳を離せずに、聞き入ってしまう。
それが、早瀬渚の、魔性。
誰もを凶行に導かせる、彼女が持つ淫魔性なのだ。

「それでさ、結局私はキミを選んで、こうしてセックスしてる訳でしょ……?♡じゃあ、アイツがやった事って何だったんだろうね……?♡交尾するために、鼻息を荒くして私に迫って、それで結局嫌われて、もう一度でも会ったら警察呼ばれて人生のどん底まっしぐらなんだから……♡それで、私がこうして……あんっ♡キミといちゃいちゃしながら、アイツが妄想と計画の中でさえできなかったラブラブセックスしてるんだもん……♡もう、完璧に、負け組だよねぇ……♡そのくせ、これを知ったら、どうせ寝取られたとか言って喚くんでしょ……?♡どう考えても、お前が、悪いのに、ねっ……♡」

──ぱんっ♡ぱんっ♡ぱんっ♡
腰と腰がぶつかり合う、乾いた音が響く。
セックスの擬音そのものな音に、もう、逃げられない。
思考を逸らして、渚さんはセックスなんてしていないと思い込もうとしても──もう、絶対に、不可能だ。

「んふ、んべろぉっ……♡♡♡れぷ、れぷんれぅ、ぬちょ……♡♡♡ぷはっ……♡♡♡フフ、べろちゅー、好きだなあ……♡♡♡私はね、普段は素朴で、優しくて、私という個人を見てくれる男の人が好きなんだ……♡♡♡私のカラダに惑わされなくて、許可も無いのにいやらしい言動を向けたりしなくて、ずーっと一緒に居ても無理やり襲おうとしない人……♡♡♡キミは、私の隣に座られても、必死に耐えようとしてくれたよね……?♡♡♡あれ、嬉しくてさ……♡♡♡だから、こうして……んむちゅっ♡♡♡れるれる、ぬりゅる♡♡♡んべぇ~ろ♡♡♡れるれるれるにゅらにゅらにゅら……♡♡♡ぷぁ、キミの望み通り、ねちっこぉいベロキス、してあげる……♡♡♡キミが耐えてくれたから、キミの望むえっちな事は、なーんでもしてあげたいんだ……♡♡♡」

にちゅにちゅと、キスの中でも格別に下劣で、口中をべろべろと舐め回す、最も深いキス。
それを、たっぷり愛の告白をされながら、される。

そもそもキスとは愛情を確認するための、交尾には一切関係のない行為だ。
お互いの急所である口腔を、他人の舌に侵入させて、そして尚且つ舌という急所を、やろうと思えば歯で噛み切ることもできる口腔に送り込む。
これ以上ない信頼の、そして愛情の証を見せつけられ──もとい、聞かせつけられ、一体彼は何を思うだろうか。
その中でも特に情熱的で、まさか好きあっていない男女がするはずがない、ディープキスと言うのも烏滸がましい、本能だけの貪り合いを聞かされたら、精神が崩壊してしまわないだろうか。

「……実はさ、今だから言える事だけど……♡合コンの途中で電話がかかってきて、私は一度抜けたでしょ?♡あの時はね、別に電話なんて一切かかってきてなかったんだ……♡本当にごめんね、心細くさせちゃって……♡あの時はさ、ちょっとアイツらの言動があまりにも目に余るものだから……どうせ、私が居なくなれば、暴力でキミを排除し始めるだろうと思って、そこを一網打尽にしようと思ったんだ♡ほら、ああいう輩って、放置しておいたらストーキングとかし始める事も多いから……♡だから、キミが危なくなったら、裏で待機してた私が飛び出して、全員私が叩きのめして、警察なり何なりに引き渡して……っていう算段だったんだけど、まさかキミがあそこまで怒ってくれるなんて思わなくて……♡」

そんな中で──告白。
あの時の真意を、裏での行動も含めて。

『お前が邪魔だったから、わざとお前等に問題を起こさせて、追い出そうとした』
平たく言えばそういう事を、自分が犯そうとした人間に言われるのは、どんな気分なのだろうか。
自分たちの計画が、所詮は渚さんの手のひらの上だったという事を知らされ──いくらあんな事をしでかした男であろうと、流石に同情の念を抱いてしまう。

「それで、その姿がすっごく可愛くて、かっこよくて……♡♡♡つい、全部放っぽりだして、ホテルに連れ込んじゃった……♡♡♡だって、あの時のキミの最適解はさ、絶対にそれじゃ無かったんだよ……♡♡♡脅されても大声を出すとか、私が戻るまでじっとしておくとか、そうできた筈だった……♡♡♡もっと言えば、一番キミに利益がある行動は、アイツらに迎合する事だったんだ……♡♡♡頭を下げて、おこぼれに預かろうとすれば、キミは私とセックスできたんだよ……♡♡♡でも、キミはそうしなかった……!♡♡♡正義感と怒りのまま、立ち向かったんだ……!♡♡♡」

そして、明確な高揚と共に、渚さんは高らかに語る。
僕の頭をかき抱き、ちょっと恥ずかしいくらいに美化された僕の行動を、まるで英雄譚を謳うかのように、声すら震わせながら。

体を締めつける強さが、ほんの少し増す。
全身に感情が満ち溢れ、それが抑えられないといった様子で、僕に愛を囁いて。
そして、それはそれは嬉しそうに、愛を語ったその口で、うっとりと耳を舐められた。

「その姿が本当に、全身に鳥肌が立つぐらい、魅力的で……♡♡♡絶対私の虜にしてみせるって思ってさ……♡♡♡その場で、もうキミと結婚するって決めちゃったんだ……♡♡♡
ああ、そう、だから……♡そう考えると、アイツらにもチャンスはあったのかな……?♡最初から大人しくしてて、セクハラもせずに、クスリを盛られそうな時に純粋な善意だけで助けてくれて、悪い奴らに立ち向かってたらさ……♡もしかすると、キミの負けライバルくらいにはなれたのかもね……♡」

──感極まった声、時折漏れる甘い嬌声、粘つく水音。
もう、これを聞けば誰が見たって理解できるくらいに、渚さんは僕を愛してくれている。
そして、それを聞かされている男は、一体何を思っているのだろうか。
自分が見下した相手のことを、手籠めにしようとした極上の女性が絶賛しているところを、否応なしに見せつけられて──少なくとも、僕なら、立ち直れない。

それは、同情してしまうくらいに、可哀そう。
その感情に間違いはないのだが、しかし──僕は、渚さんの言葉を、止めはしない。止められない。
他人にすこぶる羨まれ、憎まれ、喉を掻きむしるほど悔しがられるそれを──見せつけて、聞かせつけて、独占するという優越感は、ちょっとやそっとでは、覆すことはできないから。
じっと、渚さんの肉に吸い付きながら、全身をもぞもぞと揺らして擦りつけ、なるだけ肌を触れさせながら──渚さんが、僕だけに心酔し、僕だけを愛してくれるその理由を教えてくれる、その快楽から離れられないから。
この世の誰一人として、僕以外の人間は彼女に触れられないという事を実感しながら、頭の天辺から足のつま先まで、ほんの少しの穢れもない体を、徹底的に僕が汚し尽くすという、無上の快感を覚えてしまったから。

だから、渚さんの残酷な独白を、止めない。
全ては、快楽のために。
男に希望を持たせ、でもその希望が叶うチャンスは二度とないと、渚さんの口からそう言わせてしまう。
ほんのちょっと早く、渚さんの心を知れていれば、きっと結末はこうじゃなかったのに。

──でも、その希望すら、渚さんは、容赦なく砕く。

「フフ、なーんて……♡♡♡冗談に決まってるじゃんか……♡♡♡だって、そんなの、真逆だもんね……♡♡♡アイツらが私にやったことの、完全に真反対……♡♡♡それはもう、人格から全部ねじ曲げないとどうしようもないし……♡♡♡そもそもアイツら、群れてるから強気なだけで、実際はキミほどの度胸の一かけらも無い事は知ってるし……♡♡♡って言うか、キミに関しては、初対面の頃から、直感的にビビっと気に入るくらいには魅力的だったし……♡♡♡初めてあの中庭で喋った時から、完全に勝負は決まってたんだよね……♡♡♡ほーんと、逆立ちしても勝てないくらい、どうしようもなくキミの勝ち……♡♡♡」

──更に、こっぴどく、追い打ち。
『勝ち』とか『負け』とか、そういった概念は人間そのものに当てはめることはできないけど──現代に生まれたサキュバスこと、あの早瀬渚に蛇蝎の如く嫌われて、二度と話すことも叶わない人生と、逆にすっかり気に入られて恋人になり、毎日でもその肢体に埋もれながら愛を囁かれる人生なら、誰がどう考えたって。
例えその他の何もかもが上手くいったって、前者がどうしようもない敗者で、その他の何もかもを失ってしまったとしても、後者が圧倒的に勝者。

早瀬渚という女性には、そう断言させるだけの『強さ』がある。
それは、もはや世界中で周知の事実であり、つまり──この場では誰が優れた雄であるのかも、自ずと答えが出てしまう。
実際は、僕が男として優れている訳ではないけれど、でも──この世で最も優れた女性である渚さんの、その旦那であるという事は、つまりそういう事だと、他の誰でもない渚さん自身が、僕に錯覚させてくるのだ。

私が選んだのは『あれ』ではなく、私が好ましいと思ったのもまた、『あれ』ではない。
私が身体を許すのは『キミ』であり、私が心を許すのもまた、『キミ』だけなんだ。
それを証明するかのように、渚さんは、にやりと笑い。

──あ、それ……♡♡♡

ベッドの隅で、忘れ去られたかのように横たわっていたスマホを手に取り。

「……だから、最初っからお前にチャンスなんて無かったんだよ。もう二度と、喋りかけるな。今度私達の邪魔したら、容赦なく、潰すから」

──と。
聞くだけで胃がひりつくほど冷たい声で、マイクに向かい、断言。
そして、慣れた手つきで、通話を打ち切った。

──最初から、知っていたのか、この人は。
全部全部、僕もあの男も、踊らされていただけだったのか。
ただただ、僕を悦ばせるためだけに、あんな事を──。

──っ……♡♡♡♡♡ふぅ~……っ♡♡♡♡♡

そんなの、そんなのって──堪らない。
『嬉しい』とも『もっと』とも言っちゃいけないけど、分かってはいるけど、射精してしまう。
どぷどぷと、とめどなく、一番濃い精液を、流し込む。
背中に跡が残ってしまうくらい抱きしめて、でも、渚さんはモデルだから、そんなことをしてはいけないのに、抱きしめてしまう。
それなのに、渚さんはただ、それを肯定してくれて、もう、ぐちゃぐちゃで、何も分からない。
ただ、心臓が破裂するくらいの興奮と、ペニスが使い物にならなくなるくらいの快感だけが、僕から湧き起こっては、渚さんの中へと注ぎ込まれてゆく。

「………………♡♡♡」

渚さんは、静かだ。
ただ、何を言うでもなく、ひしと体を抱いて、一滴たりとも自分の中から逃がさないとばかりに、きゅうきゅうと膣肉を締めてくれる。
その、心の底から通じ合うような優しさに、先程の苛烈さが対比となり、より興奮が込み上げた。

「……本当はね、別にあそこまでするつもりは無かったんだ。でも、向こうから連絡されたらさ、それって結構危ないサインなんだよ。未練タラタラでさ、そういう手合って、ちゃんとフらないと付きまとわれちゃうから。特にアレなんて、同じ大学だろう?ああいうのは得てして、見当違いな憎しみを抱く。もしかすると、キミに復讐してくるかもしれないから、そんな気も起こらないくらい、コテンパンにしてやる必要があったんだ」

よしよしと、子供を慰めるような手つきと口調で、渚さんは僕を撫でくり回す。
もしかすると、さっきの態度で怖がらせたと思っているのだろうか。
確かに、渚さんが本気で失望した、氷のように冷たい声は、それを向けられていない僕ですら、喉がきゅっと詰まるような心地を覚えた。
まあ、当の僕は──それにすら、喜びを感じていた訳だが。

「それにさ、折角私とキミとで二人っきりで愛し合っていたところだったのに、下らないエゴでそれを邪魔されて……。それに対して、ちょっと本気で苛立ってしまった、というのもあるよ。まあ、さっきの態度は、私にとっては見せる予定の無かった、いわゆる誤算というものだったんだ。
けれど、最も誤算だったのは……キミが、そういう態度にすら興奮してしまう、わるい仔猫くんだったという事さ……♡♡♡」

──つい、と顎を指先で持ち上げられ、強制的に目を合わせられる。
とろんとハート型に蕩けた目が、渚さんにばっちりと見られ、羞恥に耳まで赤くなってしまう。

にやにやと意地悪く、なじるような笑み。
渚さんの圧倒的な顔の良さと相まって、それに顎を持たれたまま迫られると、こちらが女の子にされてしまったような、そんな錯覚を抱く。

「まさか、あの善良で勇敢な姿を見せてくれたキミが、ああして誰かを卑下することによって優越感を覚えるヒトだったとはね……♡♡♡全く、ひどい奴だなぁ、キミは……♡♡♡フフ、なーんて……♡♡♡その性癖を植え付けたのは、他でもないこの私だからね……♡♡♡しかし、それなら、色々と捗りそうだ……♡♡♡」

ぬぽ、とペニスを膣から抜き、少しだけ距離を取る渚さん。
その刺激で、かく、と腰がへこついた僕とは違い、その動きは確としており、腰も全く抜けていない。
やっぱり彼女は、生まれついての性的強者だ。
おそらく、僕ほどではないものの何度も絶頂してはいるだろうが、脚を震えさせるでも腰を砕けさせるでもなく、全くピンピンしている。

対する僕は、もう全く立てないほどに全身が甘く震えて、唯一ペニスだけがしゃっきりと勃起しているよう状態だ。
だから、彼女にこうして離れられてしまうと、僕から彼女に近づくことはできない。
できない、はずなのだが──

「例えば……この胸を使って、パイズリする時にもさ……♡♡♡ネットの匿名掲示板でも漁って、私にパイズリ欲求を抱く男の、どぎつい性欲の声でも代弁してあげようか……?♡♡♡あそこには『こんなオナホみてえな乳してるくせにパイズリレイプしたら犯罪とか狂ってんだろ』とか書かれてるんだよ……♡♡♡怖いよねぇ……♡♡♡フフ、まあ、キミだけは、いくらパイズリレイプしてなまちち孕ませても、恋人だから犯罪にはならないんだけど……♡♡♡」

──ばるっ……♡♡♡だっ……ぷん……♡♡♡

渚さんは、ローブの中に押し込められた乳肉──実際は、その規格外の特大メロンサイズの爆乳は全く隠れてもいないが──を開帳して、その深い乳穴を見せつけるように、開く。
いわゆる観音開きのように、閉じ込めていたフェロモンを撒き散らしながら、ぐっぱりと。

じっとりと蒸れて、真珠のような肌には、珠のような汗が滑り落ちる。
見るからに滑りも吸い付きも最高級で、乱暴な言い方をすれば、子供を育てるよりもオナホとして使う方が向いているくらいの、絶品乳まんこ。
あの谷間に挟まれ、閉じ込められて、谷間から溢れるまで精液をナマで注ぎたい、乳まんこ孕ませたい。
ぬぱぬぱ腰を使って、乳肉をひたすら肉棒でかき混ぜたい

──そんな欲望に突き動かされ、ふらふらと彼女の下へ、這いずって向かう。

「あはっ……♡♡♡まだまだ、今日は始まったばかりだからね……♡♡♡たくさんたくさん、楽しもう……♡♡♡」

──そう、今日は始まったばかり。
三泊四日という、長すぎるほど長い交尾合宿は、始まったばかりなのだ。

──ああ、もう、最高……♡♡♡

そんな呟きが、腰がぶつかる音に溶けてゆく。
絢爛なホテルの最上階で、爛れた時間が、ただ過ぎていった。

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