巨乳キャラあつめました

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所有者のいない山で首つり。
これが、私の考え出した最も人に迷惑をかけない自殺方法である。
首つりという自殺方法は、案外ポピュラーなものだ。
頑丈な支えとなるものと縄などの首を絞めつけるものがあれば、どこでもできることだからである。
初期費用も頑丈な縄だけでよかったので、練炭自殺などと比べるとはるかに経済的だ。
さて、ではどこで首つりをするかということである。
私の部屋はなしだ。賃貸だし、大家さんに迷惑がかかる。
人の目があるような場所は当然ダメなので、必然的に人が密集していない田舎の方へと目が向かう。
そして、現在田舎にあるような山々は、所有者がいない山というのも中にはあるらしい。
私はそれに目をつけた。
誰かが所有している山で首つりをすると、管理のために見回りをしていれば私の死体を発見されて、迷惑をかけることにつながってしまうかもしれない。
だが、所有者のいない山で、田舎の……人も寄りつかないような山の奥で首を吊れば……おそらくだが、私が見つけられることはないのではないだろうか。
もし、見つかったとしても、それははるか先の話になるだろう。
これらの考えから、私は自分が死ぬべき山をピックアップした。
それは、名前すらないような山。山の幸が採れるということもなく、登山を楽しむことができるということもないような、そんな山。
所有者もおらず、近くに人里すらなく……誰も寄りつかないような場所。
私はそこに向かって歩いていた。

「……よし、家も人もいないな」

歩きながら確認する。
辺りには人影はもちろんのこと、人が拠点にする人家すらなかった。
いや、遠くにそれは見えるのだが、それだけである。近くは田んぼすらない。
昔はおそらくここでも農耕が行われていたに違いない。
だが、少子高齢化の影響もあるのだろうな。私のような自殺者にとっては、ありがたいことだ。

「ここ、だよな……?」

私がふと足を止めて前を見ると、視界を遮るように鬱蒼と茂っている木々が。
斜面ができており、土地が盛り上がっている。
ここが、私が自殺をする場所に選んだ山。
登山客も一切いないし管理者もいないので、入り口みたいに整備されている所はなかった。
入り口とも言えない場所から、この山を登るしかないのだ。

「よし、行こう」

私はよじ登るようにして、山へ脚を踏み入れるのであった。

「はあ、はあ……! やっぱり、運動不足かな……!」

山を登り始めて、数時間が経っただろう。
私は息を激しく切らしていた。
普段はアスファルトで舗装された道しか歩いていないものだから、整備されていない道を歩くことがこれほど大変だとは夢にも思わなかった。
いや、そもそも道と呼べるところはどこにもないのだ。
突き出た硬い土、ねじれた木の根、苔の生えた大きな石。どれもこれもいきなり現れるものだから、歩きづらいことこの上ない。
しかし、これこそが人がほとんど出入りしないということを明確に表していた。
誰にも迷惑をかけず、ひそかに命を落としたい私にとっては、決して忌避すべきものではなかった。
……とは言うものの、かなりきついのは事実である。
やっぱり、多少は運動をしておいた方がよかっただろうか?
だが、そんな余裕なんてなかったし……。色々と準備をするので忙しかったし……。
そんなウジウジとした気持ちを感じながら、私は山を登り続ける。
これで、少しでもいい景色が見られるのであれば登山も頑張れるというものだが、本当に手入れが一切されていないのだろう、外の景色なんて木々に遮られてまったく見えなかった。
鬱蒼と生い茂る木々は、方向感覚を容易く狂わせる。
私も今から下山しろと言われて実行に移したとしても、一切迷わず外に出ることは不可能だろう。
まあ、自殺しに来ているのだから、下山のことなんて微塵も考えていないが。
外はそろそろ暖かくなってくる時期で、気が早い者は長袖から半袖へと衣服を換えている季節だが、この山はとても涼しい。
むしろ、寒さを感じるほどだ。ひんやりとした空気にさらされている肌を、思わず擦ってしまう。
さらに、湿度が高いのか、じめじめとした空気がさらに心を締め付ける。
なるほど、手入れされていない山というのはこんな感じなのか。
確かに、人が不安になるような危険な場所だ。動物たちからすると、とても良い場所なのかもしれないが。
こんな所で一人で死ぬのは……少しだけ怖い。
だが、私には当然の末路であり、ふさわしい最期だろう。

「……そろそろ、場所を決めようか」

考え事をしながら山を登っていたので、それなりに奥深くへと入ることができただろう。
この辺りなら、そうそう人の目につくことはあるまい。
適度な……人間一人の体重をかけても折れないような枝はないだろうか?
キョロキョロと見回してみるが、私の視界に入る限りでは、どうにも細くねじれたような枝を生やした木々ばかりだった。
これでは、途中で折れて中途半端に生き残ってしまうかもしれない。
死にたいのは事実だが、苦しみたいわけではないのだ。
太い枝を生やした木を探して歩いていると……。

「……霧か」

視界を覆うような真っ白なモヤが、唐突に現れる。
標高の高い場所にいるためだろう、霧が発生したようだった。
うーむ……これはかなり濃い霧だ。数メートル先ならまだしも、十メートル以上になるとまったく見えない。
足元もおぼつかなくなってしまうと、一切整備されていない山道を歩くのは危険だろう。
息も上がっていたことだし、私は少し休憩をとることにした。
細い木を背中にしながら、座りこむ。
一応水分も持ってきていたので、リュックの中をあさりペットボトルを手に取ると、それを口に含んで喉を潤す。

「……霧が晴れたら、出発しよう」

なに、あとは太い枝を持つ木を見つけるだけでいい。簡単だ。
そう考えながらボーっとしていると、どんどんと瞼が重たくなってきた。
やはり、身体は疲れ切っていたのだろう。
……少し、眠るとするか。
クマなどが出ないとも限らないが……まあ、そういった展開になるのも望むところだ。
私は死にに来たのだから。
そんなことを考えているうちに、私の意識は深いところに沈んでいったのであった。

「はっ……」

寒さに目を覚ます。
思わず腕をさすりながら、いまだに寝ぼけている目で辺りを見渡す。
どうやら、クマは出てこなかったらしい。
ホッとするというか、残念というか……。
近くを見る限り、霧はだいぶ晴れてきているように見えた。
足元はしっかりと見えるし、先も十分に見通せる。これなら、歩いていても滑落する危険は少ないはずだ。

「こ、腰が……」

ちゃんと横になって寝なかったからだろう、驚くほど腰が痛い。
何とかグッと背伸びをして、一息ついてから歩き始める。
さて、そろそろ手ごろな木が見つかればいいのだが……。
そう考えて歩くと……。

「ん……?」

ブワッと霧が晴れていく。
いや、表現が悪いか? なんというか……スーッと消えていくのだ。
風が強く吹いているというわけでもないのだが、不自然なまでに急速に消えていく。
その現象に目を丸くしていると……。

「んん……?」

さらに不可解なことが起きて、私は目を丸くしてしまう。
なぜなら、目の前にありえないくらい立派な屋敷が現れたからである。

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