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結局、私は一度部屋に戻ってきて眠ることにした。
やはり、最近まで一切運動をしてこなかったのが影響したのだろう。足腰がガクガクしてまともに動くことすらままならない。
また、身体の疲労感も凄まじいもので、軽く横になったとたんに意識を飛ばしてしまった。

「ぐっ、おぉ……っ。か、身体が……」

パチクリと目を覚ました私が真っ先に感じたのは、全身の筋肉痛である。
か、身体がゴキゴキ言っている……。
布団もすでに処分していたから、そのまま地面で眠ったのがいけなかったか……。
しかし、どこかスッキリするような爽快感もあった。
おそらく、運動をしてぐっすりと眠ったからだろう。爽やかな気持ちでいっぱいだ。
だが……。

「……腹が減ったなぁ」

昨日は帰ってきてすぐに寝てしまったため、食事は一切とっていない。
あれほど激しい登山をして、しかもその山奥で腹が鳴ってしまうような素晴らしい料理を見せられていたので、なおさら空腹感が強かった。
とはいえ、また山まで電車で移動しようと思えば、おいそれと何かを買うことなんてできない。
さて、どうしたものかと悩んでいると……。

「ん……?」

少し不思議な感じがした。
やけに私の部屋が狭く感じるのだ。
いや、決して広い部屋を借りるほど財力がないので、狭いのはもともとなのだ。
だが、家具などすべてを処分していたから、普通よりは広く感じるはずだし、実際そう感じていた。
なのに……。

「…………なんだこれ」

ああ、もう現実逃避は止めよう。
起きてから、ずっと目に入っていたじゃないか。
入っていたが、頭も心も受け入れることができなかったんだ。
だって、そうだろう? 何もなかったはずの私の部屋がいっぱいになるほど、大量の物資で埋め尽くされていたのだから。
床、抜けちゃう……。

「いやいや、そうじゃない。なんなんだ、これはいったい……」

まだ頭が混乱しているようだ。
それはそうだろう。私が寝ている間に、いったい誰がこんなにたくさんのものを持ちこんだんだ?
物資も様々だ。大量のお米、野菜、魚、肉……どれも物凄く大きくておいしそうだが、全部私は一切知らない。
そして……。

「これはまずいだろう……」

私の目を引きつけてついでに頬も引きつらせるのは、キラキラと光を放っているのではないかと錯覚するほどのもの。
そう、小判である。時代劇でしか見ることができないような小判が、箱にぎっしりと詰め込まれているのである。
小判だけではない。それ以外の多種多様な金銀財宝が積み上げられている。

「……夢遊病で強盗でもしたのか?」

ガクガクと震えてしまう。
もしそうなのだとしたら、とんでもないことをやらかしてしまった。
ストレスと疲労でそんなことまでしてしまうなんて……。

「いやいや、落ち着け。もし強盗を私がしたとしても、小判はおかしいだろう」

そう、冷静になれ。
私の部屋に所狭しと並べられている金銀財宝。これがおかしい。
食糧はお腹が減っていたから無意識的に盗んでしまったということはあるかもしれないが。そもそもこの小判などはどこにあったのか。
宝石店にでもないだろう。
そりゃあ、日本にも昔ならこういったものがあったかもしれないが、少なくとも現代においてこんなものがあるなんて聞いたことがない。
あったとしても、私が忍び込んで盗めるようなところにあるはずがないのだ。

「じゃあ、これはいったい……」

急に怖くなってくる。目の前に飛びつきたいほど美味しそうな食材が並んでおり、私自身も空腹なのだが、一切手を出そうとはしない。
誰かが私を陥れるために運び込んだ?
だとしたら、何故? もう落ちるところまで落ちている私を、これ以上貶める必要があるか?
それに、そんな恨みを買った覚えもない。いや、恨まれている方は皆そう言うだろうが……。

「うーん……」

腕を組んで悩む。
こんな非日常のことが起きる理由……。
思いつくのは、一つしかなかった。

「やはり、昨日の屋敷か……?」

不思議なことと言えば、それくらいしか思い浮かばない。
確かに、あんな管理されておらず、また人も寄りつかないような荒れた山奥に、あんな立派な屋敷があるなんて不思議だ。
しっかりと掃除もされていたし、馬やニワトリといった動物もいたから、誰かがあの屋敷を管理しているのは間違いない。
しかし、私の呼びかけに応えることはなかったし……何よりも、あの料理だ。
今まさに誰かが食べようとしている状態で残っていた、非常に美味しそうな料理の数々。
あれはいったい……。
うんうんと頭を悩ませていると、私の記憶の片隅に残っていたある言葉が急浮上してきた。

「迷い家……」

そうだ。確か、ああいう屋敷を、迷い家と言うのではなかったか?
私も昔に何かの本やテレビで得た情報だから明確に覚えているわけではないが、私が体験したこととそっくりな気がする。
その家はいきなり山中を歩いていると現れる。家には誰もいない無人の状態であり、しかしつい先ほどまで人が生活していたかのような痕跡があるらしい。
動物なども飼われているということも、確かあったような……。

「そうか、それで……」

迷い家に遭遇した者が欲を出さずに何も持ち帰らないでいると、その分富を得ることができるらしい。
私も何も持って帰らなかったことから、それが適用されたのだろう。
しかし……。

「死にに行っているのに、持ち帰るも何もないからなぁ……」

意気揚々と自殺しに行ったのに、何かを持って帰ろうとするのはおかしいだろう。
つまり、私は別に善人とかそういうことではないので、こういったものをもらえる立場にはないのだ。

「……返しに行くか」

電車賃を持って行かれるのは痛いのだが、私のところに置いておかれても宝の持ち腐れだ。
こういったものは、私以外のしかるべき人がもらえるべきなのだ。
もちろん、この部屋を覆い隠してしまうほどの量をすべて持って行くことはできないので、まずは簡単なものからだ。
何度かに分ければ、いけるだろう。
……それまでに私の貯金が持つかどうかが一番心配だが……。

「よし、行こう」

今度は、自殺をするためではなく、物を返すために。
私は同じ山に向かうのであった。

「はぁ、はぁ……相変わらずキツイ……」

私は激しく息を切らしながら、やはり手入れのされていない山を登っていた。
昨日の今日だから、まだ身体がガクガクしている。

「返しに来たはいいけど、あの屋敷どこにあるんだ……?」

登り始めてから気づいたことなのだが、私はあの屋敷の明確な居場所を知らないのである。
でも、早く返して自殺したいし……。
とりあえず、リュックに詰め込めるだけの小判などの財宝を入れてきた。これもなかなか重いのだ。

「ふう、ふう……」

随分と登ってきたような気もするのだが……。
そんなことを考えながら、息を切らしつつ脚を進めていると……。

「お……?」

ぶわりと、また濃い霧が広がってきた。
おお! 確か、昨日遭遇した時も霧が出てきた後だった。
もしかしたら、これが迷い家に遭遇する前振りなのかもしれない。
私は期待しながら少し立ち止まり、霧が晴れるのを待つ。
そして、しばらくすると、ゆっくりと晴れていくので、またゆっくりと歩き始めた。
すると……。

「ああ、よかった……」

私の目の前に、あの立派な屋敷が再び現れたのであった。
よかった……。これで、この財宝を返すことができる。
相変わらず立派な外壁に近づき、そして入り口も至極あっさりと見つけることができた。
もう二回目だしな。

「失礼します」

無人であることは分かっているのだが、やはりこれほど立派な建物の中に入ろうとすると一言添えたくなる。
また馬とニワトリを見ることができた。彼らもこちらを凝視している。
……なんだろう。流石に動物の気持ちはさっぱりわからないのだが、彼らは酷く驚いているように映った。
とにかく、さっさと小判を返そう。また来られたし、何度か往復することもできるだろう。
とりあえず、縁側に置かせてもらうとしようか。
私はそう考えてそちらに向かうと……。

「あ……」

そこに、人がいた。
昨日は見ることができなかった、人がいたのだ。
美しい豊かな黒髪がウェーブしており、肌は病的なまでの白。
ただ、肌を露出しているところは非常に少なく、顔と手くらいなものだ。
それ以外は、美しい着物で着飾っている。
キセルを咥えて紫煙を吐き出している様は、とてもよく似合っていた。
時代錯誤とも言えるほどの、古き大和撫子の美しさを、彼女は纏っていた。

「ん?」

私の無遠慮な視線に気づいたのだろう。こちらを見る女性。
ジッと赤く美しい目に見据えられると、身体が硬直して動かなくなってしまう。
どこかつまらなそうな、寂しそうな表情だったのだが、私を見据えて驚いたようなものへと変わった。

「なんじゃ、お主。また来られたのか?」
「え、と……はい」

彼女……七穂様との最初の会話は、そんなものだった。

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