02: 幻燈亭へようこそ!
幻燈亭は、羽城
はぎ
の湯脈を源泉とする秘湯宿だ。人里から遠く離れた山中にあり、羽城山が南麓、惟任平の急峻な崖の傍に建っている。
宿の西側は大きく眺望が開け、羽城の山並みが楽しめる。特に夕方の時間帯は、一面が鮮やかな赤に染まっていく絶景を目にでき、それが温泉と並ぶ宿の名物――なんだとか。
そういった説明を聞きつつ、宿一番という三階の室に通された俺は、女将とその妹ふたりによる挨拶を受けていた。
「幻燈亭の女将、葛葉と申します。本日は当宿にお越し下さり、まことにありがとうございます」
混じり気のない、透き通るような金髪を揺らし、秘湯宿の主は深々と頭を垂れた。所作はただただ優美。着物というのも相まって、どこか匂い立つ色気がある。そして天女かと思うほど整った目鼻立ちに、母性を感じさせる優しい笑み――
ヤバ……、ドストライクだ……。こ、好みすぎて目すら合わせられない……。
だけど逸らすのも失礼だし……。
そう思って何とか盗み見たら、可愛く微笑まれた。
ほ?
ほっ……。
ホアーッ!!
と叫びかけていや違う、挨拶だ、と思い至る。挨拶されたんだから、取りあえずこっちも返すべきだろう、うん。
「こ、これはご丁寧に、私
わたくし
、メディ……栗本史郎と申します」
危な! 焦って思わず社名を名乗りかけてしまった。営業じゃないって……。やけに畏まった物言いにもなったし……。は、恥ずかしい……。
などとひとりでパニクっていると、
「燐火、月夜」
葛葉さんが妹ふたりに俺への挨拶を促した。
先に膝を進めて来たのは、林の少女――桃色ブロンドのツインテールちゃんだ。
葛葉さんの妹だけあって、非常に美しい。何となくだが、この姉妹は可愛いというよりは美しいという形容が似合うように思う。顔の輪郭や目の形がシャープなのだ。特にこの少女は、少しツリ目で、そういった印象が強い。
「いやらしい笑み浮かべちゃって。ひとのこと見てなに想像してんだか」
おっとと。
いきなりの毒舌に、値踏みするかのような視線――
お姉さんと正反対の性格なのかー。
「燐火」
葛葉さんがたしなめると、少女は肩をすくめた。
「ハイハイ。次女の燐火よ。仲居っぽいことをしてるけど、アンタの世話を焼く気はないから安心して」
「申し訳ありません……、家族でやってるものですから、なにぶん不調法なところもありまして……」
「あー、大丈夫ですよ。仕事柄、居丈高なひとには慣れ……じゃなくて、特に気にしてませんから」
むしろ平常心が取り戻せたので、感謝したいぐらいだ。
そして最後のひとり――
清澄な空気をまとったプラチナブロンドの少女が、葛葉さんの後ろに隠れながらこちらを見ていた。
「月夜、です……。よろしく、おねがいします……」
中学生、あるいは小学生かもしれない。どっちにしてもかなり幼い子だ。顔立ちは西洋人形顔負けで、加えて月光のような美しい肌が目を惹く。
「はぅ……」
じっと見たのがマズかったのか、月夜ちゃんは葛葉さんの後ろへと完全に隠れてしまった。
「アンタ、ロリコン?」
「違います」
そこは全力で否定しておきたい。
「あの、本当に申し訳ありません……。失礼なところがあるとは思いますが、誠心誠意おもてなし致しますので……」
葛葉さんの取り成すようなひとことに、はた、と我に返る。
「あ―……、それなんですが……。ここまで引っ張っといてこっちこそ申し訳ないんですけど、俺、客じゃないんですよ」
事情をかいつまんで説明する。
「なるほど、そうだったんですね。私ったら早とちりしてしまって……。でも、今日はもう下りるの、難しいかもしれません……」
障子を開け、外の様子を教えてくれる葛葉さん。
「日が落ちかけてますから。今からだと恐らく下山する前に沈んでしまいます。夜の山道は危険かと……」
言う通り、日はだいぶ沈んでしまっていた。街灯のある市中ならまだしも、見知らぬ山の道を月明かりだけで下ろうとするのはちょっと無謀だろう。
どうしようか考えていると、葛葉さんが「あの……」と声を掛けてきた。
「一泊だけでもなさってはいかがですか?」
ふむ。
状況を考慮すると、有り難い申し出だ。
しかし、そうなると困るのが――
「? どうかなさいましたか?」
俺の視線に、葛葉さんが嫣然と微笑む。
「あ、いえ……。あの失礼ですけど、他にお客さんとか従業員の方は……?」
「お恥ずかしいお話ですが、私たちだけなんです」
思った通りか……。
となると必然的に、美人三姉妹が従業員の宿に男がひとりってなるんだけど……。いいんだろうか……?
いやさ? 俺だって不埒なマネに及ぼうと考えてるワケじゃあないよ? こっちの身を心配して軒を貸してくれるって相手に、恩を仇で返すほど腐ってはないといいますか?
ただ……
分厚い着物の上からでも判る葛葉さんの豊かな胸の膨らみ――
ついついそういう視線
・・・・・・
を向けてしまうのは仕方ないよなあ、……男として。
「言っとくけど、妙なマネしたらすぐに叩き出すからね」
「しません。もちろん」
ズイッと身を乗り出してきた燐火に、両手を上げ、降伏の意を示す。
でも――
エロい目でちょっと見るぐらいは許されるよね?
「…………」
「いえ、ほんと。何も。エロい目で見たりもしません」
さらに鋭くなった燐火の眼光の前に、無条件降伏する俺だった。
「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて一泊させてもらっていいですか?」
「はい。喜んで」
うわ。
なんという可愛らしい笑み。前言撤回。美人だけど可愛いわ、この人。
「私たちは、お食事の用意をいたしますので。先にお風呂へどうぞ」
浴衣を差し出し、葛葉さんが退出する。
「お風呂は一階。階段降りてすぐの廊下を右だから。露天風呂もあるわ。ただし! 絶対に汚さないでよ。掃除するのあたしなんだから」
「ご、ごゆっくり」
連れてふたりも退出。
「……俺もひとっ風呂浴びてくるかあ」
あ……。
そこで俺は、とんでもない事実に気づいた。
「下着の替え……」
どうしよ……。
◇
下着の替えは、葛葉さんに相談したら貸してもらうことが出来た。
……もちろん男物だよ?
亡くなったお父さんの分で、手付かずのものがあったんだとか。
ほんと助かった……。
それにしても――
「いい湯だな……」
沈みゆく夕日を眺め、一〇月のちょい冷たい空気を感じながら、温泉に浸かる――
「極楽だー……」
背もたれにしている岩がちょっとごつっとしているが、それもまた露天風呂の醍醐味だろう。
「狐ケ崎にこんなところがあったんだなー……」
平日に接待で呑む分、休日は基本寝てるんだけど、そう遠くない場所にこんなところがあるんならちょくちょく来てもいいかもしんない。
「美人女将もいるしな」
天女のような笑顔を思い出す。
三姉妹はみんな美人だけど、俺のイチオシはやっぱ葛葉さんだなー……。おっぱいもすごそうだし……。
とと、いかんいかん。
「エロいことを考えながら風呂ってたらのぼせちまう」
火照った体を冷ますように湯から上がった俺は、隅に設置されてあった洗い場に着席した。
よーし、さっさと洗って室に戻ろう。じき食事が運ばれてくるはずだ。
「女将さん~♪ 山菜料理ありがとう~♪」
外で素っ裸という開放感と、葛葉さんとまた話す機会があるかもしれないという期待感から、鼻唄が自然と口を突いて出る。
「でも俺が~♪ 食べたいのは~♪ コレじゃないんだ~♪ 俺が食べたいのは~♪ 女将さん~♪ あなたなんだ~♪」
「あら、私のお話ですか?」
…………。
…………。
…………。
へっ!?
恐る恐る背後を確認する。
するとそこには――
「どっっふえぇぇええぇぇええっっ!?」
白い肌襦袢姿の葛葉さんが立っていた。
「えっ、ちょ、えっ……!?」
わけが判らず風呂イスから転げ落ちた俺は、反射的に手ぬぐいで股間を隠し――って見られたよなあ、多分……。
「驚かせてしまって申し訳ありません」
そう言いつつ、葛葉さんは笑顔だ。
「そんなことは――いえ、すごく驚きました。こんなところで何の用でしょう」
葛葉さんの肌襦袢を見れたのはいいが、こうやって不意打ちされるのは面白くない。つい詰問調になったが、それは軽く受け流され――
「お背中を流しに参りました」
そうなるよなあ……。
彼女がそうする理由は判らないけど、それ以外の理由も思いつかない。
サービス料金をガッツリ取りに来たとか? 客もいないみたいだし。
でもそれならそれで望むところだ。無趣味なもんで、貯金だけはけっこうある。好みに完全一致してる女の子が体洗ってくれるならいくらでも積むぞ、俺は。
「えーと、じゃあ、お願いします」
半ば開き直って、葛葉さんに背を向ける。
「はい」
声とともに、背後に彼女が跪く気配がした。
それにしても――
肌襦袢良かったなあ……。
あの薄布の向こうに葛葉さんの裸があるかと思うとすごく興奮する。それに肌こそ見えなかったが、肉付きの豊かさはハッキリと判った。特に胸。ユサッとした膨らみが、布地を押し広げるあのシルエット……たまらん!
「では失礼いたしますね」
などと考えてたら葛葉さんの背洗いが始まった。細くて長い指がにゅるっとしたぬめりとともに背中を這い回る。
「く……」
ゾクッとした感覚が背中を走る。単純にくすぐったくもあったが、美女に背中を撫でられるという“現象”が俺を敏感にしたんだろう。それでも慣れてくると心地よいと感じられるようになった。
にゅる、にゅるる、にゅる、にゅる……。
肩から肩甲骨、肩甲骨から腰と手が滑っていく。その手つきは、玉を磨くような丁寧さで、俺の気分を盛り上げてくれる。
にゅるん、にゅるる、にゅるにゅる……。
さらには横腹から脇、脇から腕へ。葛葉さんの可憐な指先が隅々まで這い回る。
にゅるにゅる……。
にゅるにゅる……。
にゅるにゅる……。
んん、そろそろ終わりかな?
丁寧に、と言ってもそんな洗える場所があるわけでもない。さすがに前は洗ってくれないだろうから終了だろう、とそう思った時だった。
シュル、シュル、シュル。
背後から衣擦れのような音が聞こえてくる。
こ、これはまさか……。
期待にチンポを膨らませた瞬間――
むにゅん!
という至高の感触が俺の背中を襲った。
「うひょひょっ!」
思いっきり変な声が出た。それでも葛葉さんは気にせずソレを押し付けてくる。
そう――
とろけるような柔らかさとぷるんとした弾力を兼ね備える魅惑の物体――
おっぱい。
おっぱい!
おっぱい!!
しかもサイズが凄い。俺の背中に当たってる乳肉の面積を考えると、巨乳と言うのも役不足。爆乳とか超乳の域だろう。
「いかが、ですか?」
「最高です」
他に形容のしようがない。
「くす、ありがとうございます」
俺のストレートな賛辞が嬉しかったのか、葛葉さんの行為がより大胆になった。俺の胸とか腹とかに手を回し、背中へと抱きつくように乳洗いを始めたのだ。
むにゅ、にゅるっ……ぬる、にゅる、むにゅん。
恋人のような密着感の中で形を変え続ける乳房。その柔らか天国に、俺のチンポは完全にそそり勃った。
あー。
チンポしごきたい!
でも葛葉さんがすぐ後ろにいるんだよなあ……。無理だよなあ……。
くっそー! ギッチギチにいきり立っているというのに解放してやれないのがこんなに辛いとは!
そんな俺の昂ぶりを見抜いたか――
葛葉さんが耳元で囁く。
「お嫌でなければ、前も……いかがでしょうか?」
ほんとですか!
「是非!」
「ふふ。かしこまりました」
葛葉さんがさらに抱きついてくる。首筋に吐息がかかり、葛葉さんの甘い匂いが鼻先に香った。そのせいでさらに滾るチンポ。
は、早く……!
早く、“前”を洗ってほしい!
しかし、葛葉さんの手つきはあくまでゆるやかだ。俺を焦らすように、ゆっくりゆっくり洗っていく。
肩、鎖骨、胸、腹、そして――太もも。頑なに中心を避けていくスタイル。
くー、“前”ってそういうこと!?
それは逆に辛い! 生殺しじゃないか!
「あ、あの!」
「はい?」
「あの、ですね……」
い、
い、
言えない! 言えないぜ、そんなこと!
俺の根性なし! ズバッと言っちまえ! イケるって! たぶん! きっと! 恐らくは! と内心葛藤を続けていると――
「あの……、要望がおありの際は、遠慮なくお申し付けくださいね?」
葛葉さんの甘ったるい声が俺の耳朶を打った。
アレだ。
いわゆる『かゆいとこありませんか~?』ってヤツだったのかもしれない。葛葉さん的にはそんな軽い気持ちだったのかもしれない。
でももう俺はそこに全力で乗っかることしか考えられなかった。
「こ、ここも洗ってもらっていいですか!?」
葛葉さんの手首を掴み、いきり立ったチンポを握らせる。
「きゃっ!?」
悲鳴。
さすがにダメか……と思ったが――
葛葉さんは、おずおずと、しかししっかりと俺のチンポを包み込んでくれた。
「すごく昂ぶっていらっしゃるんですね……」
にゅる……にゅる……にゅる……にゅる……。
「それに、とても大きくて……熱い……」
季節は一〇月。日が落ちればけっこう寒くなるし、ましてや裸で外にいれば体は冷えてしまう。しかし俺のチンポは、火が点いたようにドンドン熱くなっていた。
にゅる……にゅるり……にゅる……にゅるり……。
あっ、く……。
熱くなったチンポに這わされる葛葉さんの冷たい指先……。それがめちゃくちゃ気持ちいい……。
「痛かったら、仰ってくださいね」
葛葉さんの指はさらに玉袋へと伸びる。壊れ物を扱うかのような優しい手つき。それが却って精嚢を刺激した。
妙な感覚だけど……、これも良い……。
玉袋から付け根、そしてまた竿と丹念に洗いながら、葛葉さんの指は先端へと伸びていく。
「あの、そこ、重点的にお願いしていいですか」
亀頭に指が伸びたとき、俺は真っ先にお願いした。
羞恥心はまだあるけど、旅の恥はかき捨てって言うし、言うだけ言ってみようと腹をくくったのだ。
「はい。かしこまりました」
すると葛葉さんはわずかに躊躇したあと、亀頭に指を這わせてくれた。
傘と鈴口を指の腹で優しく撫で洗い、カリをほじくる葛葉さん。にゅるにゅるの指先が亀頭を愛撫する感覚に、腰がピクピク跳ねる。
う……、あ……。
もっと、もっとして欲しい!
そう思っていると、そのにゅるにゅるの指先が裏筋の敏感なところをくちゅくちゅっと刺激してきた。
「うあっ!」
たまらず腰を突き上げてしまう。
「も、申し訳ありません。痛かったですか?」
「ち、違うんです、気持良くて……。続けて、ください……」
「良かった……。こう、ですか……?」
カリに親指を回し、裏筋には人差し指と中指の腹を押し当てキュッキュと責めてくる葛葉さん。
あ、うあっ、ああっ……。
「気持ち良くなってくださってるんですね……」
葛葉さんの声も濡れてる、ような気がした。それと関係があるのかは判らないけど、葛葉さんは俺の背中にまたおっぱいを押し付けてきた。そのむっちむちの乳肉を背中で潰しながら、さらには首筋にキスをしてくる。
「ちゅ、ちゅうっ、ちゅっ、ちゅむ」
「うあっ、ああっ、あっ……!」
こんなの耐えられるわけがない。
葛葉さんの手コキに合わせて腰を動かし、性感を加速させる。
にゅるん! にゅるっにゅるるっ、にゅるっ!
「も、もう……!」
まだ始めてもらったばかりなのに、あっさり臨界を迎える俺。
「良いんですよ、いつでもイッてくださって」
耳元に優しく囁かれたそれが引き金になった。
「イキ……ます……」
敗北宣言のようにその言葉を口にし――
びゅるるっ、びゅるっ、びゅるるるるるるっ!
亀頭が弾けた。白濁液をみっともなく撒き散らしていく。
「くっ……、あっ……」
あー……、出てるー……。
「すごい量……。搾っちゃいますね……」
「あっ、ちょっ……」
射精チンポをにゅるにゅるっとしごかれ、さらに精液を吐き出す。
くー……、最高だ……。めちゃくちゃ気持ちいい……。たかだか手コキでこんなにイッてしまうなんて……。
「はあ……、はあっ、はっ、はあっ……」
葛葉さんにもたれこみながら肩で息をする。
すると彼女の嬉しそうな声が少し遠くから聞こえてきた。
「うふふ。いっぱい出されましたね。ご満足いただけましたか?」
「もちろんです。最高っす」
「でも……」
「?」
にゅる、にゅる。
「あう!」
「まだ出し足りないご様子……」
チンポに刺激が走ったので何事かと思ったら、葛葉さんに軽くしごかれたのだ。
見ると俺のイチモツはまだマキシマムの状態を保っていた。
うは……。恥ずかし……。
しかし、現金なもので、まだまだ元気なマイサンを見ると、この夢のような時間をもっと貪りたいという気がムクムクと湧き起こってくる。
チラ、と肩越しに葛葉さんの様子を窺うと、彼女はニコッと可愛く微笑んだ。
む。これは葛葉さんもカモン状態!? ひょっとして押せばイケる!?
よし――
勇を鼓した俺は、思い切って立ち上がり、勃起チンポを葛葉さんの鼻先に突きつけた。
「つ、次はそのおっぱいでしてもらえませんか!?」
言った……。言ってしまった……。
調子に乗りまくりの、過大すぎる要求。
怒られるかもしれない、ひょっとしたら宿を追い出されるかも……、そんな不安がよぎる。
だけど男がこんな状態で引き下がれるか! もう破れかぶれだ! いざとなったら土下座してでも『うん』って言わせてやる!
そんな情けない覚悟を決めた俺を前にして――
葛葉さんはどこかうっとりとした様子で頷いた。
「判りました……。ご奉仕、いたしますね……」
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