巨乳キャラあつめました 巨乳のキャラクターが登場する漫画や小説を集めたサイト

14: 夢と鈴

夢。
夢を見ている。
空は突き抜けるように青く、地には一面の真新しい緑。CGのようなそれらはどこか過剰で、ああ――これはやはり夢なんだと思う。

そして夢の中の俺は、小ぢんまりとした山の裾にて何をするでもなく独りポツンと立っていた。手には滅多に飲まない缶コーヒー、時折り思い出したように頭をかきむしり、嘆息する。どこかイライラしているようだ。

これ――覚えてる。“先生”のところへ初めて営業に行った帰りだ。ルート営業先の紹介で、新しい医療機器の導入を考えているという先生のところへ行ったんだ。

しかし結果は惨敗。事前に情報を集めまくる質の先生は、のっけから細かい質問を繰り返して俺を後手に回らせた。購入の基準がほぼ決まっていて後は細かいスペック勝負――となると営業の難度はめちゃくちゃ高くなる。営業マンがカタログ以上の役割を果たせないからだ。ともあれ俺は先生の質問に何とか答えていったが、最後には『あなた、役に立ちませんね』と言われ轟沈してしまったのだった。

「チッキショー! あれだけ用途が明確なら自分でカタログ見比べて勝手に買ってくれっつーの!」

とは言え、そういう相手から情報を引き出して向こうが考えている以上の提案をしないと営業マンの価値はない。頭ではそう判ってるんだが――

「あーもう、今日は仕事したくねー……」

今日は午前に要件伺い、午後から次回のプレゼン用の資料作成――と思ってたけどあれじゃやるだけ無駄だな……。なんとか次回アポだけは確保したけどお茶を濁した資料持っていくか、いっそのこと辞退するか――

「ん?」

草の上に寝そべり、自主休講ならぬ自主休業を決め込もうとした時だった。目の端に茶色い何かが映り込んだ。
狐だ。

「さすが田舎。こんな人里まで下りてくるのか」

しかも人間に慣れているのか、のっしのっし悠然と近づいてくる。毛並みは遠目から見ても美しく、緋色の瞳にも力があった。あるいはこちらを値踏みするかのような気配すら感じる。

「お前やけに威厳あるな。この小山の主だったりするのか?」

撫でようと手を伸ばしてみたが――

「シャアァアァッ!」
「うわあっ!?」

思いっきり凄まれた。こっわー……、てか触られるのが嫌ならなんで近くまで来たんだ……。

「……ひょっとして腹でも減ってるのか?」

コンビニ弁当の食べ残しを地面に置いてみる。が――
げしっ。

「ああっ!?」

見向きもしないどころか蹴り飛ばされてしまった。さらには次またそんなもの置いたら引っ掻くぞ、ぐらいの視線を向けてくる。身なりもいいし、普段からお高いものを食べてるのかしれない。

「へいへい……ご期待に添えなくてすみませんね……」

営業には失敗し、狐からもこの扱い。今日は厄日だな。そんな日はゆっくり休むに限る。

「俺は寝るから。じゃーな」

タイマーをセットしたあいぽんちゃんを胸ポケに忍ばせ、草の斜面に今度こそ寝そべる。穏やかな陽気も相まって俺はあっさり眠りにつき――

「ふぁ~あっ……。よく寝た……。て、なんか重い……?」

一眠り後――タイマーに起こされた俺は、腹のあたりにさっきの狐が乗っていることに気づいた。猫のように丸まりながらスヤスヤと寝息を立てている。

「ほんと何なんだこいつ……」

が、起きていた時の威圧感は何処へやら。こうしてみるともふもふの可愛らしいアニマルにしか見えない。
そっと頭を撫でてやる。毛の感触は絹のように柔らかく、一瞬ピンと立った耳が、安心したようにへにょへにょと若干垂れたのも可愛らしい。調子に乗った俺は、背中をさすったり、顎をこしょこしょしたりしてもふもふタイムを楽しんだ。すると――

「げ……」

唐突に赤々とした瞳が開いた。自分の背に乗せられた俺の手と顔とを見比べて……。

「シャアァアァッ!」
「やっぱりかあ!」

手の甲を爪で引っ掻いた挙句、狐はぴゅーっと小山の方へと消えていった。ほんと何なんだよもう……。

「はぁ……。会社戻るかぁ……」

んーっと伸びをひとつして。俺は車に乗り込んだ。
同時に――すっかりクリアになった頭で俺はプレゼンの構想を描き始めていた。昼寝をしたせいか、あるいはもふもふタイムを堪能できたお陰か、さらにあるいはあの鬼畜眼鏡を見返してやりたいという気持ちが湧いてきたせいか――
清々しい五月晴れの下で。
俺はちょっとやる気になっていた。

風邪は三日三晩続いた。特に熱がひどく、こんなに寝込んだのは久しぶりだなと思うぐらいにこんこんと眠り続けたが、四日目の朝に昨日までが嘘だったかのようにケロッと治ってしまった。

「おはようございます。お加減すっかり良さそうですね」

廊下から一声かけ入ってきた葛葉さんは俺の顔色を見て微笑んだ。

「おかげ様で。ありがとうございました」

意識が朦朧としたせいであまり覚えていないが、葛葉さんがほぼ付きっきりで看病してくれたような気がする。

「いえいえ。感謝申し上げたいのは私の方です」
「女将さんが? 俺に?」
「はい。月夜のこと、ありがとうございました」

月夜に種付けしたことを言ってるんだろうと思い至る。確かに葛葉さんと燐火にそうお願いされたからしたことでもあり、この“お礼”はそう受け取るのが自然――
しかし俺にはそれ以上に、月夜と“仲良くなった”ことを指しているように思われた。葛葉さんは詳しくは言わなかったし、俺もあえて聞かなかったけど、ニュアンスからそんな気がする。

「ところで月夜、だいじょうぶでした?」

秋半ばに夜の林で裸になればそりゃあ風邪も引くだろうというもの。俺だけでなく、月夜も倒れてしまったという。

「はい。昨日にはもう」
「そうでしたか。それは良かった」

勝手に無茶した本人が倒れるのはともかく、俺に無茶させられた月夜の容体はかなり気になっていたのだ。

「治ってすぐ『お兄様のご看病したいです』と言い出すほどで……。さすがに止めましたけれど」

お兄様、か……。改めて聞くとすごい響きだよな……。というか呼ばれ方ももう葛葉さんや燐火にバレてるのか……。なんか気恥ずかしい……。

「もしご気分が宜しいようなら午後にでも月夜が来たいと言っているのですが……」
「ええ。大丈夫です」
「では伝えておきますね。あわせて私と燐火も同席させていただいてよろしいですか?」
「もちろん構いませんが……何かお話でも?」

改まった響きに少し緊張する。
葛葉さんは嫣然と微笑んだ。

「はい。これからのことで少し」

「お兄様。もうお加減はよろしいのですか?」
「おーう。もう治ったぞーい」

狐耳をぴょこぴょこさせ、俺にじゃれついてきた月夜と一通りのスキンシップを取る。キャッキャウフフと楽しんだ後――葛葉さんの話は始まった。

「鈴、ですか」

高そうな盆に乗った三つの鈴が差し出される。金色、緋色、白金色に輝く三つの鈴。これらを俺に預かってほしいという。

「はい。史郎さんは私たち姉妹と契りを結んでくださいました。前々から申し上げています通り、今後も情けをいただきたいというのが私たち三人からのお願いです。そしてこれもお話していた通り、誰にいつお恵みくださるかは全てお任せいたします。ただ、今日は誰というのを仰っていただくのもお手間かと思いますので――」

金色の鈴は葛葉さん。
緋色の鈴は燐火。
白金色の鈴は月夜。
抱きたい相手の鈴を鳴らし知らせてくれという。

「……本気ですか?」
「はい。どこか気になられる点でも……?」
「いや、そんなことはないですが……」

美人三姉妹を鈴で呼びつけて好きにセックスしていいとかどこの王侯貴族だよ、と……。
そんな扱いをして本当にいいのかな? と思って三人を見てみると――
葛葉さんはにこにこと微笑み、
燐火は不満気につんと横を向き、
月夜は恥ずかしそうに俯きながらも期待に満ちた眼差しを俺に向け。
三者三様の反応だが、それぞれ納得してるようにも見える。向こうから言い出してることだからそりゃそうなんだろうけど……。

「でも鈴は鈴ですよね? 誰のとか判るものですか?」

色こそ違えど大きさや造りは同じに見える。

「はい。三里先までなら聞こえますし、聞き分けもできますよ」

そりゃすごいな。
じゃあちょっと試しに……。
俺は盆ごと背中の後ろに回し、後ろ手にひとつ鳴らしてみる。

「なによ」

むすっとした声で応えたのは燐火だ。確認してみると確かに緋色の鈴。
その調子で二、三回やってみたが、ぜんぶ言い当てられてしまった。

「おみそれしました」

さすがは化生の身だけある。

「預かって、いただけますか……?」
「はい。了解しました。今後はこれでお呼びしますね」
「ありがとうございます」

葛葉さんの輝かんばかりの笑顔を見ながら――
でもこれ、誰を呼んだかまで筒抜けだよなあ、公平に呼ばないとなあ、などと思う俺だった。



話が終わり、退出しようとする三人を俺は呼び止めた。

「アンタからも? これから用事あるんだけど」
「そう言わずに頼むよ。すぐ済むから」

不満そうな燐火を宥めたりしながら、三人に座ってもらい――その頭部を改めて確認する。
葛葉さんと燐火は何も生えていない人間のソレ。
一方の月夜の頭からは狐の耳が生えている。出来るだけ自然な姿のまま居てほしいという俺の願いをちゃんと聞き届けてくれているようだ。

「月夜から聞きました。三人の自然な姿は月夜のように耳と尻尾を生やしている姿らしいですね」
「はい……。仰る通りですけれど……」
「でしたらこれからは俺に遠慮せず、その姿で居てほしいんです」

俺がこの幻燈亭に来てから一週間ちょい経った。その間に色んなことがあり、三人とも身体を重ねた。そしてこれからいよいよ縁を深めていこうというタイミングだ。葛葉さんが鈴を渡してきたのも、ある意味で俺を認めたからだろう。俺も、そして向こうもお試し期間だった。それが終わったというなら、俺の前で繕わないでほしい、俺は三人を受け入れるから、三人も俺を受け入れてほしい――それがこちらからお願いだった。

「ですが……」

長い沈黙の後、葛葉さんが苦しげに口を開く。俺の体を心配してるんだろう。言い淀むということは他に理由があるのかもしれないが。いずれにせよ、無理強いするつもりはなかった。

「そこは逆に女将さんたちに預けます。踏ん切りがついたらそうしてもらえると」
「判り……ました」

焦る必要はない。今は俺の意思が伝わるだけで十分だ。

「ねえ」
「ん?」

ふたりが退出した後、居残った燐火は俺を睨めけた。

「なんであんなこと言ったの?」
「あんなことって?」
「とぼけないで! あたしたちに顕現しろって言ったことよ! アンタ死にたいの?」
「俺、死んじゃうの?」

おどけたように言ってみるも、燐火はそれを無視。

「月夜と出来たからって調子に乗ってるんでしょうけど、あの子はまだ子どもなだけだから。あたしはともかく顕現した葛葉姉とした日には一発で死にかねないわよ」

やっぱり見られてたのか。正確には見守ってくれてたってことなんだろうけど。
というか一発で死ぬのか……。さすがにそれは困るな……。

「死ななくて済む妖術あったりしない? 俺としてる時に月夜が別のやつ掛けてきたんだけどさ」
「なんでそうしてまでこっちに入ってこようとするのよ……」

月夜が顔を背ける。軽くショックを受けているようにも見えた。

「大方はさっき言った通りだよ。プラス言えることがあるとしたら……そうだな。三人とするってことは、俺の子どもを産んでもらうってことだろ? それってひととひととの結びつきじゃ一番深いことだと思うんだよ。なのにその相手のことをぜんぶ受け止めてないってのはちょっと悪いなって思ったんだ」

子を成すってのはそんな簡単なことじゃない。流されるようにここまで来てしまったけど、風邪で寝込んでる間に俺も改めてそのことを考えた。月夜を通して三人がどんな存在かも知った上で考えることができたんだ。そして至った結論が葛葉さんたちにも顕現してほしいということ。もちろん見た目だけじゃなく、それをキッカケに、もっと深いところで判り合えたらと思ってる。
それを言葉にし、燐火に伝えてみたが――

「どうせ……どうせもう少ししたらいなくなるくせに!」
「あ、おい!」

そう叫んで燐火は走り去ってしまった。

「涙……?」

見間違いかもしれないが、燐火がそれを浮かべていたようにも見えた。

夜。
燐火のことは気になるものの、さしあたっての難題は――

「今夜は誰を呼ぼう……」

ということであり。

「順番からいえば葛葉さんってことになるんだけど……」

ただ、燐火とも初日したっきりだし相当ご無沙汰だ。それに昼のこともあるから早々に和解しておきたい気持ちもある。
月夜は月夜で退出時に婀娜っぽい視線を向けてきていたし……。というかどんどんえっちになってくな……。ああいうのどこで覚えてくるんだか……。
そして俺は俺で――

「パンパンになるまで子種汁ためちゃったしなー……」

風邪で寝込んでいる間に大量生産してしまったらしい。下腹部がずっしりと重い。
つまりヤリたい盛りの性年と化してしまっていた。するとこの立場を利用していっそのこと4Pできないかとか考えてしまうわけで……。

「さっきはちょっとカッコイイこと言ってみたけど、俺も男なんです!」

怒られるかもしれないけど、もしそうなったら土下座外交ってことで……。
チリンチリーン。
三つの鈴を一気に鳴らし、しばらく待っていると――
孕衣に着替えた三人が俺の室を訪れ――

「…………」「…………」「…………」

いったいどういうことだと言わんばかりの表情でお互いを見合わせる。

「ハハ……できれば全員いっしょにって思ったんですけど、やっぱダメですよね?」
「アンタね! そんなのダメに決まって――」
「わたしは……お兄様に抱いていただけるのなら……どんな形でも……」

いつもなら上の姉妹が喋ってるときに口を挟むようなことはしない月夜だが、今回ばかりは別らしい。顔を真っ赤にしながら割って入ってくる。

「月夜!? ちょっと騙されすぎ――」
「私も、史郎さんがお望みなのであれば……」
「葛葉姉まで! あ――あたしは嫌だから! そんなの、絶対!」

そう叫んだ燐火は逃げるように退出してしまった。
しかし逆に言うと、葛葉さんと月夜は居残ってくれたわけで……。

「ふたりとも、いいですか……?」

俺はふたりの手を引きながら、行燈の光だけが辺りを照らす例の種付け部屋へと招き入れる。

オレンジの妖しい光に赤々と浮かび上がるふたり。
そういや前にここでしたのは燐火であって、このふたりとは初めて――
そう思うと昂ぶりが抑えられなくなってくる。

こうして、美しい姉妹との性夜が始まった――

他の漫画を見る