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25: ひとりの女として(参)

雲が出たのか、廂から垂らされた障屏具の向こうはいつのまにか翳っていた。
室内では代わりに行燈の明かりが勢いを増し、湯船から溢れた湯やそれに濡れた敷布を煌々と照らし出している。
そのねっとりとした妖しげな煌きは、俺に押し倒された葛葉さんのうえをも舐めるように走りスケベすぎる肉置きを赤々と浮かび上がらせていた。

(何人の男に抱かれてきたらこんなエロい肉体になるんだ……)

襦袢は大きくはだけている。重力に従っていやらしくたわむ乳房はほぼ剥き出しになっていて、そのまま視線を下ろせば見えてくる流麗な腰のくびれも、そこからむっちりと膨らんでいく尻のラインも盗み見し放題だ。
一方、股間だけは恥ずかしげに擦り合わされた膝によって半ば隠れており、奥まった位置の排泄口はもちろん可憐な花弁も今は様子をうかがうことが出来ない。見えそうで見えないその光景に、下肢を無理やり開かせ牝穴を好き勝手に犯したいという下卑た情欲が湧き起こる。
そんな俺の邪な視線から乳蕾を隠すように、葛葉さんは美しく歪んだ肉房に手を乗せた。

「ダメですよ、隠しちゃ……」
「あんっ……」

おっぱいを覆った手を掴むと、葛葉さんは服従の意を示すかのようにふっと力を抜いた。そのまま腕を敷布に押しつけ、むっちりした双丘から遮蔽物を取り除く。

(何度みても凄まじいおっぱいだ……)

改めて目の当たりにした葛葉さんの爆乳。葛葉さんが浅く呼吸をするだけでたゆたうように震え、腋の間からこぼれていきそうだ。
手を伸ばし乳狭間を開くと、ぷうん――と濃厚な精の臭いが広がった。乳肉と乳肉のあいだに射精したザーメンがたっぷりこびりついている。

「こんなに出してたんですね……。葛葉さんのおっぱい、俺の出した子種汁でぐっちょぐちょですよ……」

精液を掬って口元に突き出すと、葛葉さんは素直にザー汁まみれの指を口に含んだ。

「ちゅむっ、ちゅっ、ちゅるっ、れろえろっ、れりゅえりゅっ、ちゅぅ……、ちゅっ、ちゅぷっ……」

絶妙な口技で汚液を舐め取った後、(これでいいですか……?)というような上目遣いを向けてくる。

(くっ……、なんて目で見つめてくるんだよ……。どちゃくそに犯したくなるだろ……)

葛葉さんの淫らに揺らめく瞳にあてられてしまった俺は、また精液を掬って、今度はピンと逆立った乳首になすりつけた。

「んんっ! 史郎、さんっ……。あんっ、あっ、そんな、いきなりぃっ……」
「……こういうことされるの嫌ですか?」

白濁液で乳首をデコレートし、その臭いをすりつけるように可憐な乳蕾をキュッキュとしごきあげる。

「んぁっ、あっ、嫌じゃ、ないですっ……。ふぁっ、あんっ、史郎さんのモノにされていくようなっ、そんな不思議な気分になってっ、んはんっ、胸の奥がきゅぅってなってしまいますっ……」

どこか淫蕩な色を含んだ紅の瞳を向けられ、たまらない気持ちになる。

「そうですか……、じゃあ遠慮なくマーキングさせてもらいますね……」
「んっ……。まあきんぐ……?」
「野生動物なんかが縄張りを主張するために自分の臭いをすりつける行為を指してそう言うんです」
「縄張り……。あの……、それって、私をモノにされたいってことでしょうか……?」
「そうです。嫌、ですか?」
「いえ……。嬉しくて……」

葛葉さんが顔を赤くしながら蠱惑的な吐息を漏らす。その反応に、ペニスがズキズキと痛んだ。

(こういう顔を、他の男にも向けてきたんだろうか……?)

それは俺の勝手な妄想なのか、真実あったことなのか……。どっちなのか、知りたい……。

「葛葉さんのこと、もっと教えてくれませんか? 男の体をスケベに洗う方法をどこで学んだのか。乳洗いとか、タワシ洗いとか……。あれってソープ嬢――遊女って言えば判ります? その手の技だと思うんですけど、誰に教え込まれたんですか……?」
「え……? あ……、そ、それは……」

きょろきょろ、と所在なげに視線を彷徨わせる葛葉さん。
何かを隠すようなその反応に、肉棒がイライラし始める。

「こういうこと本当は訊きたくないんですけど……。葛葉さんって処女じゃなかった……ですよね? 俺とセックス――まぐわう以前に誰かと性交してます、よね……?」

俺の問いに――
葛葉さんは、かぁっ――、と顔を赤くした。

(???)

葛葉さん、恥ずかしがってる……? なぜ……、そんな反応を……?
もし俺の口にしたことが図星で、引け目を感じたとしたら(もちろんそんなことを感じる必要は本来ないが)、申し訳なさげな表情になる、はず……。どういうことだ……? と首をひねっていたら――

「い、言えません……」
「なぜです……?」

乳首に精液を塗り込めていた手に力が篭もる。心に湧いたモヤモヤをぶつけるように張りつめた肉房をぐにぃぐにぃと揉みしだいていく。

「あんっ、あっ、やぁっ……。だ、だってそれは……。……やっぱり言えません。ゆるして史郎さん……」

手の甲で口を隠すようにし、俺から視線を外す葛葉さん。
この反応……。やっぱり俺以外の男が幻燈亭にやって来たことがあって、葛葉さんを抱いたってことだよな……?

「なんで言えないんです……? 隠さなきゃならないような何かがあるってことですか……?」

重ねての問いに、葛葉さんは愛かなしげに瞳を伏せた。

(そんな顔、見せないでくれよ、葛葉さん……!)

やっぱそうなのか……? 俺以外に葛葉さんを抱いた男が居て、そいつに処女を捧げたってことなのか……?

「すみません、俺そのことがどうしても訊きたいです……。葛葉さんが言ってくれないんなら、体に訊きますけど、いいですか……?」

例の壺を引き寄せ、中から薬蜜をたっぷり掬いとる。そして媚薬としての効用もあるというソレをたっぷりと手に塗り込め、むちむちの肉房に両手を掛けた。むにぃむにゅぅと柔肉を揉み込みながら、葛葉さんの弱点である乳首を指の間に挟み込む。

「ふぁっ……、あっ、あんっ……、乳首っ、キュンキュンしてっ、だめですっ、薬いっぱいつけながら指でしごくのだめっ、ですっ……!」
「葛葉さんの体ってほんとスケベですよね……。肉がむっちりしてるってのもありますけど、ちょっと乳首いじられたぐらいで鳴き声こぼしちゃうぐらい敏感で……。これも誰かに開発されたせいですか……?」
「そ、それは……、んっ、んんっ……! だめですっ、そんな乳首ばっかりぃっ……、ひっ、ひうんっ……! おかしくなっちゃうぅっ……!」

いやらしくそそり立った乳突起を容赦なくしごきたてる。熟れた女体がびくんびくんと跳ね、その快感の大きさを伝えてきた。

「やめてほしいなら教えてください。このどすけべボディは誰に開発されたんですか?」
「そ、それはぁっ……、んっ、んんぅっ……!」

手の甲を口にあて漏れる声を必死に殺そうとする葛葉さん。

(くそ! なんで言ってくれないんだ!)

劣情で胸がいっぱいになる。

「これはもう本格的に体へと訊いていくしかなさそうですね……」

薬蜜をめいっぱい付け直し、べっとべとになった手を腹に滑らせる。ぬっちょぬっちょと塗り込めながら、男に嬲られることへの期待に濡れた下半身に両の掌をおろしていく。
俺は秘苑を責めるため、そのむっちりとした太ももに手をかけ股を開かせた。

「や、やぁっ……! だめぇっ、ゆるしてっ、史郎さんっ……! 今はダメです……!」

脚に力を入れ、抵抗を示す葛葉さん。そういった態度ひとつひとつに心の襞がかきむしられる。

「どうしてです? もう何度もヤらせてくれてるじゃないですか。なぜいまさら?」
「んっ、ひんっ……。久しぶりの史郎さんにおまんこが期待しちゃってますから……、いま無理やり犯されるときっとおかしくなっちゃいますっ……。あっ、だめ、だめぇ……」
「また男を煽るようなこと言って……!」

股のあいだに体をねじこみ、強引に脚を開かせる。露わになった葛葉さんの濡れまんこ、その上部で息づく肉真珠を俺は指でこすりたてた。

「んひゅんっ!? だめっ、史郎さんっ! そこっ、んぁっ、あッ! クチュクチュらめッ、そんなこすられるとっ、すぐイッちゃいますっ、奥からっ、溢れちゃうぅっ!」
「言う気になってくれました?」

可憐な濡れ真珠を焦らすように優しく撫でながら問いかける。

「っ……! っ……!」

しかし葛葉さんの返事はノー。

「判りました。残念です」

ヌチュヌチュヌチュヌチョッ!

「ひぃっ、ひっ、いっ、ひんっ! らめっ、そこ敏感なんれすっ! いっぱいいじめられてっ、イッちゃう! イク! イクっ、イクぅっ!」

悶まくる女体。むっちりと卑猥にたわんだ肉房はたゆんたゆん揺れ、股間からは愛液がお漏らしのように溢れてくる。クリトリスへの刺激に絶頂寸前まで追い詰められた葛葉さんにトドメの一撃を加える。

「剥き出しになったテラテラの肉豆、思い切り絞ってあげますから」

キュムッ!

「ひッ……! いッ……! イクっ、イクッ、イッちゃうぅっ……!」

びくんっ! と腰が跳ねる。直後、沈み込んだかと思うとまた跳ね上がってきた。その動きに合わせて股間から潮が勢い良く吹き出し、俺の腕から胴から濡らしていく。

「盛大にイッてますね。俺の愛撫で気持ちよくなってくれて嬉しいです。もっともっと気持ちよくなってください」
「ふぁっ! あっ、らめっ、史郎さんイッてましゅっ、おまんこ撫でないれっ、いまはらめなんれしゅっ! ひっ! ひゅんっ! またきもひよくなっちゃいますっ! ゆるして、ゆるしてぇっ!」
「ダメです。許してあげません。このまま俺の手でイキ狂ってください」

肉裂に食ませ中の肉を上下にこすっていた指を、その穴ににゅっぷと突き入れる。

「ひぅんっ……! あっ、んぁっ! 史郎さんのいじわりゅっ、あっ、らめっ、まらいきゅうぅっ……!」

ドチュドチュと激しく指を出し入れすると、葛葉さんはあっさり蕩け顔になった。そのみっともない顔を俺にさらしながらまたアクメをキメる葛葉さん。ピンと背を反らし、腰をいやらしく持ち上げながら全身をぴくんぴくんと震わせる。

「葛葉さんの姿、すごく綺麗でめちゃくちゃそそられます……。ちょっと我慢できそうにないや……。種付け、いいですよね……?」

葛葉さんの艶姿に、俺のペニスはついさっき二度も射精したとは思えないほど反り返っていた。青筋が浮き立ったグロテスク極まりないソレは、触ると火傷しそうなほどの熱を帯びている。

(葛葉さんには悪いけど、本気で俺のモノになってもらおう……。手加減なしだ……)

俺は漆黒の壺の中から薬蜜を掬って、パンパンに腫れ上がった肉棒に塗りたくった。
べっとべとになった種付け棒を葛葉さんの男を誘うように開いた肉裂にこすりつける。

「ひっ――! ら、らめれすっ……、それほんとうにらめれすっ……! 今そんなの挿れられたら、しろうさんのおちんちんのことしか考えられなくなっちゃいますっ……!」
「俺はそれでいいと思ってるんですが……。待ってほしいなら葛葉さんの男性経験、教えてもらっていいですか……?」

にゅりっ、にゅるぅっ、にゅりぃっ……!
そう訊きながら、グラインドを大きくし、ペニスを蕩けきった秘裂へとすりつける。

「あふっ、んっ、んんっ! ふぁっ、あっ……、そ、それはっ、そのっ……、っ……」

ようやく観念した葛葉さんが、口を開いた――
かに見えたが、けっきょくはまた手の甲で口を隠し、つむった瞳から涙を流しながらイヤイヤと首を振った。
頑なに何かを守ろうとする葛葉さんに、俺の我慢は限界を超えた。

「そう、ですか……。判りました。俺も訊くのは諦めます。その代わり、葛葉さんに俺のペニスでイキ狂わせて、俺以外の男のことを忘れてもらいます」
「そん、なっ……」
「挿れますよ」

ぐったりと力の抜けた葛葉さんの下肢を卑猥なほど開かせ、正常位の姿勢でずぷんっ! と奥まで一気に貫いた。

「んあ――ぁっ! なっ……、あっ……、久しぶりの史郎さんっ、頭っ、しびれてっ……! あっ、やぁっ! 待ってっ! まってくださいぃっ!」
「……なんです?」
「はぁっ、あーっ……、はぁっ……、あまりにもっ、気持ちよすぎてっ、体っ、とけちゃいそうなんですっ、もっとゆっく――ひゃんっ! はっ、あっ、らめっ、はげしいのらめぇっ――!」

俺は葛葉さんの哀願が終わる前に律動を開始した。淫らに開いた牝まんこに容赦なく肉棒を叩き込む。

「やっ、ぁっ……! ひうぅっ! んんっ、んっ、ふうぅっ……! あっ――、はっ――、薬でにゅるにゅるのおちんちんっ――、あっ、ひんっ……! やっ、らめっ、奥たたくのらめれすっ……!」
「何がダメなんですか? 葛葉さんのおまんこ、めちゃくちゃ悦んでるじゃないですか。俺のちんぽをぎゅうぎゅうに締めつけて、あっ、くっ! ほら、今も、子宮口で亀頭に吸いついてきながら精液を搾り取るように膣肉がうねってますよ……!」

さすが種乞い狐まんことでも言うべきか、葛葉さんの膣穴は極上の感触をもって俺を迎え撃った。尿道口に吸いついて精液を搾ろうとする子宮口や、裏筋をれりゅれりゅと舐めあげてくる膣襞の蠢きに目が眩みそうになる。
そんなペニスにまとまわりつく甘美な性感に慄きながらも俺はずちゅずちゅと抽送を繰り返した。膣奥を小突き、とろっとろに蕩けた膣襞に薬蜜をなすりつけることを意識しながら陥落寸前の牝まんこを貫く。

「あっ、らめっ、らめっ、史郎さんらめっ……! あちゅいおちんちんがっ、気持ちいいとこいっぱい当たってますからぁっ!」
「んくっ……、いいんですっ、それでっ……!」

葛葉さんには他の男のことぜんぶ忘れてもらわないとだからな。身も心もとろとろになるまで責めたててやる!
たゆんたゆんと卑猥に揺れる葛葉さんの乳房。汗と精液と薬蜜でどろどろになったそれに手をかけ、激しく揉みしだきながらぐちょぐちょに濡れる牝穴への出し入れを激しく繰り返す。

「ひぁっ、ひぐっ、ひぅっ……、らめっていっへるのにぃっ……! あっ、あっ……! 薬でおまんことけちゃぅっ……!」
「ダメもなにも、奥を突きながらおっぱい揉んだらまんこがキュンキュン締まったじゃないですか。愛液の量もいっそう増えて……。気持ちよくてしょうがないんですよね? ほら葛葉さんの股間、おしっこ漏らしたみたいになってますよ!」

ぐっちゅっぐっちゅっ、にゅちゅっ、ずぼずぼじゅぼじゅぼっ!
わざと音が鳴るように抽送すると、葛葉さんがイヤイヤと首を振った。

「史郎さんのいじわるっ! いじわるいじわるいじわるぅっ……!」

駄々っ子のような葛葉さんの反応に、胸がキュンとなった。そしてそれはすぐさま獣欲に取って代わり、もっと鳴かせたい、もっと狂わせたいという想いが胸に満ちる。

「んっ、んぁっ、ひぁっ、あっ! ひっ、ぐっ、いきゅっ、いぐっ、イクッ、いっちゃいますぅっ!」

屹立した乳首をこりこり摘みながら腰を叩きつけると、葛葉さんが絶頂の予感を口にした。
俺はストロークをいっそう激しくし、パンパンパンッ! とイク寸前の牝まんこを責めたてる。

「んひぃっ! ひっ! んっ! んはぁっ! らめらめッ、おまんことけりゅっ、ちくびとけちゃいますぅっ、あひんっ、ひぐっ、いきゅっ、いきゅぅっ……!」

弓を引き絞るような葛葉さんの声。それとともに、牝まんこがペニスを吸い込むようにきゅぅっ! と締まった。

(くぁっ……! ヤバイ、搾り、取られる……!)

イキまんこが吐精を促すようにうねり、子宮口も亀頭に激しく吸いついて精液を搾り出そうとする。
が――

(ここでイッたら台無しだ。我慢しないと……!)

必死に堪える。長く激しい牝まんこの絶頂。歯を食いしばってそれに耐えていると、葛葉さんの体がふっと弛緩した。万力のように竿を締めつけてきていた膣穴からも力が抜けていく。

「ひゃぁっ……はぁっ……はぁっ……」
「イッちゃったみたいですね……。でも当然、これで終わりじゃないですよ……」

蕩けきった顔を覗き込みながら言うと、葛葉さんは畏怖の入り交じった表情でイヤイヤと首を振った。

「だから言ったじゃないですか、他の男のちんぽのことなんか忘れてもらう、って……」

葛葉さんのアキレス腱を肩に乗せ、絶頂によって桜色に染まった肢体にのしかかる。テコの原理で葛葉さんのケツが高々と持ち上がり、パンパンに膨らんだままの肉棒がずちゅぅっ! と膣肉を掻きかけて子宮口を叩いた。

「んんっ――!」

イッたばかりの牝まんこがキュゥッ! と締まった。軽くイッてしまったようだ。

「第二ラウンドですね。次はイッても止めずに何度も何度もイカせますから。覚悟してくださいね」
「ま、まってくださいっ!」
「いえ、待ちません――」
「いいますっ、いいましゅからぁっ!」

ストロークを再開しようとした瞬間のひとことに、体が硬直する。

「なにを……、なにを言ってくれるんです……?」
「わ、わらひが処女だったかどうかれしゅ……」

そのキーワードにギシ、と胸が軋んだ。

「……言うのが辛いようでしたら、無理しなくていいんですよ?」

どの口がそれを言うのか、と自分自身に呆れてしまったが、気づけば俺はそんなことを口にしていた。

「いいますから……。だから……、そんな怖い目、しないで……」

その一言に、ハッとなった。

(俺は、いったい何を……)

頭に幾分か冷静さが戻り、自分のやったことを客観的に捉えることができた。

「す、すみません……。やりすぎましたね、どう考えても……」

俺の体から力が抜けたことが判ったのか、葛葉さんが大きく息を吐いた。

「いえ……」
「…………」
「あの……」
「はい……」

沈黙モードに一瞬はいりかけたが、葛葉さんが改めて口火を切った。

「お話、しますから……、ひとつだけお約束いただきたいんです……」
「な、なんでしょう……?」

葛葉さんはそこでまた、かぁ――っ、と顔を赤くし。

「き、聞いたら忘れていただけませんか……? そのことを思い出さないように、していただきたいんです……」
「ええと? はい……。善処、します……」

何を要求されたのかすぐには呑み込めず、少しだけ混乱したが、やがて理解に至る。
感じたのは――

(俺にとってそれほど辛いこと、なんだろうか……?)

ということ。
恥ずかしがる葛葉さんの態度とその言葉に何か一致しないものを感じながらも、俺は葛葉さんが話し始めるのを待った。

そして――……。

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