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5話 婿入り先

帝都から遥か北、奥弘洲
おくひろしゅう
と名付けられた地方の州都。

婿入り先から送られてきた「手紙」の指示に従い、この街にたどりつく為に三日近く寝台列車に身を任せていたので俺は既にクタクタだった。

長旅を終えて降り立った駅は、州内最大の利用者数を誇る大駅だ。

ここは鉄道だけでなくバスや乗り合い馬車、そして飛竜便
ひりゅうびん
といった各種交通ネットワークの中心になっているようで、ターミナル内は人で溢れていた。

駅構内の建物は美術館を思わせるような壮麗
そうれい
な彫刻や色鮮やかなモザイク画、そして美しく繊細なステンドグラスで装飾されていて、初めて来た者を圧倒させる。

その巨大で美しい駅内の一角にある落ち着いた雰囲気のカフェで、俺は香ばしい香りを放つコーヒーを啜
すす
りながら、新聞をながめていた。

〜外法衆
げほうしゅう
による大蔵大臣の暗殺未遂事件〜

〜植民地州での匪賊
ひぞく
の討伐〜

〜人民連邦の資金援助を受けた共産主義者による列車強盗事件の増加〜

新聞の見出しはどれも平穏とはほど遠い内容のものばかりで、余計に気が滅入ってしまう。

突如、駅の時計台が鐘を鳴らし、大きな音が広場内に響き渡った。

時計の針は17時を指している。

俺は新聞をたたんで、テーブルに置いた「手紙」に目を向けた。これによると、確かそろそろのはずだが……。

「東堂様、お待たせしました。そちらの『手紙』の送り主様の使いの者です」

時計の鐘が鳴り終わるのと同時に、穏やかな声をかけられる。

振り向くと、執事服姿の女がこちらを見つめて立っていた。どうやら時間通りに迎えが来てくれたようだ。

◆◆◆◆
女性執事の案内を受けて、俺は駅の乗降場へと向かう。

ロータリーには既に黒塗りの高級車が俺達を待ってくれていた。

魔石を燃やす内燃機関特有の低いうなり声のような音が、ほんの少し耳障りだった。

車内の革張りの座席は張りが強く、今の俺にはなんとなく硬く感じられる。

座り心地の悪さもあいまってだろうか。
どこか他人事のようなこの車の高級感に俺は気まずさを覚えていた。

大通りを進む車から見える街並みは、石畳の道に映る街灯の光と共にどこか憂鬱な美しさを描いている。

花々が咲き誇る公園、地元の商人たちが声を張り上げている商店街、美しく手入れされた庭を持つ家々。

後部座席の窓に映るそれらは次第に夕闇に包まれていった。

車は慎重に速度を落とし、真っ白な雪が覆う坂道をゆっくりと登っていった。

坂道を抜けた高台の先には、ひときわ目立つ建物が見える。

その屋敷は、白壁に深緑の窓枠が織りなす西洋風のスタイルと、黒光りする瓦の屋根という日本的な様式が見事に融合した、一枚の絵画のような美しさを放っていた。

(門に表札がないな……。どこぞの貴族か閣僚
かくりょう
あたりの隠れ家的な別荘なのかもしれない)

魔導回路で制御されている大門が無音で開き、車はその中にスムーズに滑り込んでいった。

車のドアが開かれ、俺は執事の先導で屋敷内へと誘
いざな
われた。

「ご主人をお呼びしますので、こちらで少々お待ちください」と彼女に言われ、館
やかた
内の大きな客間に通される。

ソファに腰掛けながら、用意されていたホットティーを口に含み、俺は応接室を見渡していた。

室内にはこの家の歴代の当主達であろうか――厳しい顔つきをした女達の肖像画や、ピカピカに磨
みが
き上げられた彫像が飾られている。

室内の調度品には全て上品な落ち着きがあり、俺のような素人の目から見てもかなり高価な物であることがうかがえた。

(このアンティーク机なんて、売ればどれだけの金額になるのやら。やはり想像していた通り随分と金持ちなんだな、ここの家は……。)

「君が東堂
トウドウ
君かな?」

少し湿り気の混じったような声が突然耳元から聞こえて、俺は肝を冷やしてしまう。

驚いて振り向くと、そこには20代くらいの片眼鏡をしたシルバーブロンドの髪の美女が立っていた。

(エリカ……?!いや、似てるけど違うな。親族か?エリカに姉がいるなんて聞いたことがないけど……)

眼の前の女性は俺の同級生、エリカに顔がよく似ていたが、髪色や背丈が違った。

それに胸のサイズも……爆乳と言って過言ではないエリカのそれよりもさらに一回りは大きい。

そのデカさは反則だろ。

俺はド級のパイオツに、思わず頭がポーッと惚けたようになってしまっていた。

しかし徐々に違和感が芽生え理性が取り戻されていく。

俺の眼の前にいるこのエリカ似の爆美女は一見穏やかな笑みを向けてくれているようだが、その目もとにはまったく表情が見えなかった。

どこか冷たく、遠く、無機質なその瞳は、エリカとはまったく違っていた。

「えっ、はい、自分は東堂 海
カイ
軍学生であります!」

俺が慌ててソファから立ち上がって軍学校方式の挨拶をすると、相対する彼女は片眼鏡をクイと上げて口を開いた。

「はじめまして、東堂君。私はこの嬢ヶ崎
ジョウガサキ
家の現当主。嬢ヶ崎 京香
キョウカ
と言います。以後お見知りおきを」

(嬢ヶ崎 京香……?!エリカのお母さん……?!)

俺は眼の前の女性が侯爵家の当主であることよりも、エリカの母親であることに驚いていた。

どう見ても眼の前の女性は、大学生か精々社会人1~2年目と言って良いくらいの見た目をしている。

とても、十代後半の娘のいる母親には見えない。

俺が驚いて声が出ないのを無視して、京香
キョウカ
さんは無遠慮
ぶえんりょ
に俺の全身をシゲシゲと眺めてきた。

「エリカが懸想
けそう
するのも無理はないな……これは」

(彼女は何を言ってるんだ?それにさっきから……とてつもなく眠いんだが、これは……)

「……嬢ヶ崎閣下……大変申し訳……ありません……体調が優れないようで……座らせていただきます……」

体中を走る倦怠感に俺は抵抗出来ず、自分より格上の当主の前だと言うのに情けなくソファに沈んで行ってしまう。

「お茶に最高級の魔法睡眠薬を混ぜ込んでおいたんだが、かなり時間がかかったみたいだな……おい、お前たち、彼を娘の居る寝室に運んでいってやれ。『首輪』を嵌

めるのを忘れないようにな」

彼女が余裕をもって何かしら語る声が遠くから聞こえてくる。

だが今の俺には全く内容が理解出来なかった。不味いこのままじゃ……。

全身が痺れ、感覚が消えていく。

意識が遠くなる中で、俺は最後の力を振り絞って思った。

でも、それは無駄だった。
谷底へ落ちていくように、俺の意識は深く、深くへと沈んでいった。

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