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8話 彼のキモチ

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「お前はその……イ、井上 イノウエ と一体どういう関係なんだ?」 エリカの声は冷たく硬かったが、震えていた。 その震えには怒りだけでなく、何かしら深い不安の感情も混じっているようだった。 彼女は俺を直視することが出来ないのか、自信なさげに金色の髪をクネクネといじっては顔をそむけている。 「えーと、関係って言うと?井上さんはただ単に同じクラスの子で……」 「そんなことは知ってる!……なんで井上とお昼を食べていたんだってことを聞いているんだ!私は!」 俺が口を開くやいなや、エリカはそれに被 かぶ さってキツく問い詰めてくる。 彼女の言葉は短く、俺を見る目は鋭かった。 しかし、その可愛らしいグリーンの瞳の中にはある種の恐れのようなものが混ざっているようにも思えた。 (あー、さっきのお昼の光景を見てたからからこんなにイライラしてるのか)と、俺は理解した。 おそらくエリカは「遠見の魔術」か「使役霊の目」でも使って、中庭での出来事――俺と井上たちの昼食会を隠れて見ていたんだろう。 「井上さんにはちょうど忌引 きびき に入る前に参謀演習旅行の企画員だったのを変わってもらっていて。そのお礼も兼ねてお昼を一緒にしたってだけだよ」 「……だからって」 エリカは言葉を切った。 「級友と話すことは許したが、女と話すことを許した覚えはないぞ。今度から新しい『制約』にくわえ……」 「井上さんは本当にただの級友だよ。それに女性と話さないってのは、流石に女子がほとんどの将校課程にいる以上は無理だってエリカも分かるだろ?」 エリカは俺の言葉への反論が、中々思いつかないようだった。 ピンク色の唇が白くなるほどに何度もグッと噛んでは、俺の方をチラチラと涙目になって睨 にら みつけてくる。 ……こんな時にアレだが、エリカみたい美少女の涙目の顔ってめちゃくちゃエロいな。 (困ったなぁ、俺としては初体験 ・・・ の夜のあの乱暴なやり方はともかくとして、エリカのことは前から好きだってことは伝えたいんだけど……) メ○ヘラモードに入ってしまい小声でボソボソと卑屈な呪詛を吐く彼女に、俺は自分の気持ちを打ち明けたかったが、それは出来ない。 それもこれもこの「従属の首輪」のせいだ。 今の俺はこの忌まわしい首輪の力によって、行動にある程度 ・・・・ の『制約』をかけられてしまっていた。 基本的には、 – 自傷 じしょう 行為や自殺などを行わないこと – 魔石で合図を出したら指定の場所に出来るだけ早く来ること – 俺とエリカが婚約をしていることや、「従属の首輪」について口外しないこと – エリカや嬢ヶ崎家の不利益になるようなことはしないこと – エリカに対してのどのような好悪 こうお の感情を持っているかについては一切、口にしたり、伝えたりしないこと という以上の5つの『制約』さえ守っていれば、後はいつも通りで良いと言われていた。 まぁ基本的にはどれも守れるレベルのものでしかないのだが、唯一ネックなのが最後の制約、 『エリカに対してどんな感情を持っているか、口にしたり伝えたりしないこと』 こいつが今の俺にとってはとてつもなくやっかいな代物 しろもの だった。 俺が自分を嫌っていると思い込んでいる彼女は、決して俺に本心を語る機会を許さなかった。 まぁ、俺はともかくとして、「この世界」での普通の男なら、いきなり婿入り先で初日から逆レイプかまされたら相手を恨むだろう。 ……というかそれが嫌なら何でいきなりあんなハードプレイ仕掛けてきたんだ、コイツは。 「お前もどうせ、ああ言う顔の女がいいんだろ……男なんてみんなそうなんだ……」 エリカは卑屈な顔を浮かべながら俺への恨み言を吐く。 子供みたいに駄々 だだ を捏 こ ねる彼女に、俺は少し呆れたような気持ちになる。 だがエリカの表情は本当に辛そうで、見ていていたたまれない気持ちになってしまった。 「おい、エリカ。俺はお前のこと……」 俺はまた、『制約』のことを忘れて自分の気持ちを思わず発してしまいそうになった。 だが首元から急激な魔力の高まりが生じ始め、それは俺の声帯を急速に閉じていった。 「井上たちとは、あんなに楽しそうに話しておいて……嘘つき……」 エリカの声はもはや泣き崩れる一歩手前だった。 彼女は悲しげな表情のまま、部屋を出ていった。 自分の気持ちを伝える言葉すら口に出来ない俺は、彼女を止めることが出来ない。 ただ、彼女が扉を閉める音だけが、この空間に響き渡った。 「とりあえず、服着るか……」 俺は一人寂しくベトベトの股間をハンカチで拭 ぬぐ い、制服を手早く着込んで部屋を後にした。 ◆◆◆◆ (ハァ……またやってしまった……私はどれだけダメな女なんだ……) 先程のカイとのやり取りを思い出して、深いため息をついてしまう。 彼との出来事が一瞬たりとも頭から離れてくれない。 頭の中をぐるぐると思考が駆け巡っていき、その一つ一つがガラス片のように私の心に突き刺さっていく。 授業の内容など当然、頭に全く入ってくるはずもない。 私の頭の中を占領するのは、カイのあの驚いた顔と、私が吐き出したあの卑屈で子供じみた罵倒の言葉だけ。 つくづく自分自身――この嬢ヶ崎 ジョウガサキ 英里香 エリカ という人間に嫌気がさしてしまう。 あの時のカイの驚きと困惑を含んだ表情。 それは私が彼をどれだけ傷つけたかをはっきりと示していた。 (ああ……。私はまた彼を余計に苦しめてしまったんだ。) 深い自己嫌悪の感情を紛らわすために、思わず歯を食いしばってしまうほど。 (なぜあの時の私は、あんな身勝手で酷い言葉を投げつけてしまったんだろうか……。) (どうして私は、いつもカイを眼の前にするとおかしくなってしまうのだろうか……。) 疑問の答えは明白だ。 「従属の首輪」を使ったところで、手に入るのは彼の肉体だけ――私が一番欲してやまない肝心の彼の心は、決して私に向いてくれることはない。 彼のことを思い出すたびに、自分へのうんざりした気持ちと同時に胸の奥から恋情 れんじょう の渦が湧き上がり、自分の意志を無視してジクジクと早鐘を打ち続けていた。 (カイに愛して欲しい。その為だったら悪魔にだって……。) 「嬢ヶ崎……嬢ヶ崎学生!聞いているのかね?」 「……ハッ。失礼しました。教官。なんでしょうか?」 「『なんでしょうか』ではない。授業が終わったら教官室に来るようにと何度も呼びかけていただろう。そんなボンヤリした人間に士官は務まらないぞ」 「申し訳ありません……」 気づけば授業の終わりを告げるチャイムが鳴っていた。 講義後の緊張感が溶けた教室内に、クスクスと笑いの波が広がっていく。 最前列に座る私としてはは、後ろの方の席にいるカイがどんな表情を浮かべているかが気になってしまうが……。 けれども「すぐに来い!」と教官に急かされてしまい、振り返る暇もなくすぐに彼女に従って部屋を後にするしかなかった。 ◆◆◆◆ 軍学校校舎の3階の一角。そこにひっそりと佇む教官の個別室に私は通された。 広々とした部屋の中央には、樺 かば 色の大きなデスクが鎮座 ちんざ している。 机の上にうず高く積み上げられた書類は乱雑に置かれていてそれが教官の性格を表しているようだった。 「それで話というのはだな……来週に控えている参謀演習旅行についてのことなんだが」 教官は煙草 たばこ の煙を吐きながら、言葉を続けた。 参謀演習旅行――この軍学校に独特の一大イベントである。 “旅行”と付いているので民間の学校における修学旅行のようなものだと世間では誤解されているらしいが、そんなに甘いものではない。 演習旅行の直前に学生は、ランダムに2人1組の『バディ』を組まされる。 そしてチームごとに全く内容の異なる『戦術課題』と呼ばれる、仮想の作戦状況のようなものが与えられる。 学生らは課題で指定された場所(大抵の場合、有名な古戦場であることが多い)に向かう。 そこで具体的な地理的状況を数日間かけて実地で確認しながら、課題の回答論文を2人で協力しながら仕上げていく……とまぁ以上が演習旅行の概要だ。 参謀演習旅行での課題提出はそれ自体当然、軍学校での成績として評価されることになる。 だがそれ以上に、重要なのが『バディ』との関係構築だ。 ここで組まされる『バディ』とは、今後の卒業研究なども一緒に行うことになるので、この演習旅行を通して絆を深めることが何より重要だとされていた。 「本来『バディ』については演習旅行当日に明かされることになっている。これはお前も知っているな?」 「はい、事前に知らせないことで短い演習旅行期間内で素早く人間関係を構築する能力を身に付けて欲しい……という狙いがあるんですよね?」 「あぁ、その通りだ。だからこれから言うことは他言無用 たごんむよう にしてくれ。お前の『バディ』なんだが……本人の希望もあって、東堂 トウドウ にすることにした」 「え?カイ……東堂とですか?本人の希望というのは……」 カイの名前が出たことで、私は思わず動揺して彼を下の名前で言ってしまう。 教官は若干、訝 いぶか しんだ顔をしたものの、あまり細かいことは気にしないタイプなのか紫煙 しえん をくゆらせながら私の疑問に答えてくれた。 「東堂は男だということもあるからな……男の士官候補生には演習旅行で何日も一緒に寝泊まりするような相手くらい選ばせてやるというのがこの学校の決まりなんだよ」 以前、母が「男の将校なんて見えない所で下駄を履かせてもらっているだけ」と言っていたが、今は軍学校の男性保護の方針に心の底から感謝してしまう。 (母が聞いたら憤慨してしまいそうなので言えないが。) 「1ヶ月前に本人に確認して、つい先日も再確認したんだが。嬢ヶ崎、お前がバディが良いそうだ。」 「そう……ですか……」 「一応言っておくが変な気だけは起こすなよ。」 最後に失礼なことを言われた気がするがそれも気にならない。 (まぁ、教官はもちろん知らないだろうが、実際私は『変な気』を既に起こしてしまって行動に移してしまっているのだから、彼女の懸念 けねん はある意味でまっとうなものだと言えるのだが。) 私はあまりの悦 よろこ びに気が狂いそうになっていた。 彼と演習旅行で一緒の時間を過ごせる、ということももちろん嬉しい。 だがそれよりもはるかに『彼が私を選んでくれた』、という事実の方が胸を高鳴らせていた。 1ヶ月前も直前も――つまり婿入り前も無理矢理に貞操を奪った後さえも、彼は私を希望してくれた! (もしかしすると……カイも私のことを本当に……いやありえないことだけど……でも!) 私は、必死で落ち着きを保ちながら教官室を後にすると、廊下を小躍りしたいような気持ちで走り抜けていった。 他の漫画を見る