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12話 列車ジャックとの戦い

「こいつっ……!よくもっ……!このアチキの顔に肘鉄なんてっ……食らわせやがって……!」
自分の怒りが火山の噴火のように、頭を突き抜けていくのが分かった。

その怒気を全て、壁に倒れ込む金髪の醜女にぶつけてやる。

何度も、何度でも!

顔を殴りつけ、腹を蹴り上げて、そのけばけばしい金色の長い髪を掴んで振りまわしては、思いきりヒザ蹴りをぶち込んでやる!!

でもな、この軍学校の女、どれだけ痛めつけて額から血が吹き出しても、その瞳から剣のような鋭い闘志が消えやしないんだ。

痛みなんて関係ないと言わんばかりのその鋭い瞳からは、アチキに反抗する意思を感じる。

それがとにかくムカついて、ムカついて……仕方がない!

「森、ほどほどにしておけ」

背後から、背筋がゾッとするような声が聞こえた。

「さっきも言ったがこいつはおそらくどこぞの貴族様の子女だろう。身代金を取ることが出来るかもしれないからな」

例の魔石を飲み込んだ姉貴の目は白黒が反転しており、とてもこの世の者とは思えない恐ろしさがあった。

それでも、このクソ貴族女への腹の虫がどうにもおさまらないアチキは食い下がって「……でも、姉貴」と抗議の声を上げた。

いつもの姉貴なら、ウンザリした顔をしつつも多少の粗相はこれでお目こぼししてくれるのだが……今日は違ったみたいだ。

姉貴の白黒が反転した瞳がこちらをギロリと睨みつける。

「お前は……私の言うことが聞けないのか?」

姉貴のその悪魔のような睨みとドスの聞いた声に、アチキは蛇に睨まれたカエルのように情けなく縮こまってしまった。

「い、いやっ……!いやいや!そんなことはもちろんありませんですよ……!アチキが姉貴に逆らうはずないじゃないですかぃ……」

「いい加減、後ろの客車を見てこい。他にも金を絞れそうな上流階級の客が居るかもしれん」

仕方ない。言うとおりに後ろの車列の見回りでもしてくるか……。

幾人かの部下を引き連れつつ、アチキはその場をすごすごと離れて後ろの号車へと向かうことにした。

列車はゆっくりとではあるが再度、走行を再開したようで車内は少しづつ揺れ始めていた。

その揺れのせいか、それとも緊張のためか……アチキの足はプルプルと震えてしまうのだった。

◆◆◆◆
ズガガッ!!とけたたましい火薬音が銃口から響き渡る。

鍵のかかったドアを銃撃で無理矢理に破壊して開くと、その中には怯えきった顔をしている上流階級の連中が出てきた。

お貴族様に高級官僚、富豪の老夫妻、姉貴曰く「金の卵を生むニワトリ」たち。

姉貴の指示通りに、そいつらを部下たちに命じて捕縛させる。

「イチイチ、面倒くせえっすね。私は、こういう社会を舐め腐ったような金持ち連中共を、好きなだけ殺せるって聞いたから、この『紅い狼』に入ったっんすけど」

「せめて、活きの良い若い男でもいたらお楽しみ出来るってモンなんですけどね」

ブツブツ文句を言いつつも、せかせかと捕縛をしてまわる部下たち。

こいつらの言うことも、もっともだ。

いつもなら少しくらいハメを外して、革命のための潜伏活動をしていた憂さ晴らしをするんだが……。

「はぁ〜。あの変な魔石を飲み込んでからの姉貴はおっかねぇからな。さっさと仕事を終わらせるぞ、お前ら」

1等列車の部屋は根こそぎ調べた。

2等列車の寝台室あたりになってくると、流石に上流階級の連中も減ってくる。

ちょっとした小金持ちの爺、婆くらいなら撃ち殺しても姉貴から文句を言われることもないだろう。

もしかすると若くて面の良い男を連れた奴もいるかもしれない……。

アチキは舌なめずりをしながら、2等列車へと足を進めることにした。

弾切れを起こした軍用ライフルのマガジンを床に投げ捨てて切り替える。

そのまま個室のドアに火薬で強引にノックし、「床に手を伏せな!」と叫びながら、無理矢理に部屋に押し入った。

室内のムンムンとした不快な湿気と発情した女の残り香に辟易
へきえき
としてしまう。

だが同時に眼に飛び込んできた上物の存在に、アチキは思わず顔を歪めるほどの笑みを浮かべてしまっていた。

「コイツは飛んだ上玉じゃねぇすか……!」

「森さん、これは大当たりってやつですね!この男、エロすぎだろっ!」

後ろで部屋の中を覗き込む部下たちから、下品な歓声があがっている。

それも無理はない。

部屋に備え付けのダブルベッドの端には、天使のような顔立ちをした若い男が横たわっていたのだ。

湿気のこもった部屋の中、少し寝苦しそうな表情を浮かべる男の額には汗が垂れ、その滴は頬を伝ってベッドの白いシーツまで濡らしていた。

その様がもう、たまらなく男のエロさを際立たせていて、アチキは思わず犬のようにハァハァと息を荒げてしまっていた。

「どれ、アチキが味見してやろう」

口から零れた涎を袖で拭いつつ、ベッドに乗りかかる。

女の理想をこれでもかと詰め込んだような顔をした青年の顔に、アチキは自分の熱い舌を這わせようと口を開くと……彼の目がカッと見開かれた。

「ん?エリカ……ってクセェ!!」

次の瞬間、全身の骨が砕け散ってしまうような感覚と共に、凄まじい魔力の波がアチキを襲った。

「ぶべらぁっ?!」

隣の部屋のドアを突き破って壁に叩きつけられたアチキは馬車に踏み潰されたカエルのように情けない叫び声をあげてしまう。

(せめてひと舐めでもしたかった……)

しかし、アチキの眼の前の風景からは急速に色彩が失われていき、そのまま意識を飛ばしてしまうのだった。

◆◆◆◆
「ん?エリカ……?」

体に異様な重たさを感じて目を開けると、眼の前にはカエルのような顔をした醜悪な女が、ニタニタと嫌らしい笑みを浮かべていた。

「どれ、アチキが味見してやろう」

奴の口元からは真っ白な舌苔
ぜったい
で汚れたグロテスクな舌がまろび出ていた。

何日も口を洗っていないのか、眼の前の太った女がハァハァと吐く息は、ドブのような悪臭がただよってきて、吐き気すら覚えてしまう。

「クセェ!!」
「ぶべらぁっ?!」

その不気味さに恐怖を覚えた俺が、反射的に腕に魔力を込めて押し出すと、女はビール腹をドゥルンドゥルンと揺らしながらネズミ花火さながらに吹き飛んでいった。

(勢いで吹き飛ばしちまったけど、大丈夫かなこの人……まさか、死んでないよな?)

隣の部屋の扉を突き破って血だらけになって壁に延びているデブ女の様子を見ようと俺が部屋を飛び出す。

廊下には複数人の武装した連中が突然の出来事にうろたえていた……この気色悪い女の仲間だろうか?

「おい、森さんがのされてるぞ」

「なんだこの男?!」

薄汚い雨合羽やシャツを着込んだ女達は、俺にあからさまな敵意と警戒の目をこちらに向けてきた。

「構わねぇ!ぶち殺しちまえ!」

興奮した顔の女が肩から下げているアサルトライフルを手に持ち、引き金を絞り始めた……!

少し遅れて他の奴らも手に持っている銃を構え始め、弾幕を形成し始める……。

ズガガッ!ズガガガッ!

次の瞬間、空気を一気に切り裂くような火薬音が鳴り響き、雨粒のように銃弾が俺に降り注いでくる……!!

だが……!俺の身体を覆う超高密度の魔力の層が、殺意の塊のような鉛の雨を、火花を散らしながら全て弾き返していった!

「これだけ撃ちまくってるのにどうしてコイツ、傷一つ……ついてねぇんだ……!」
「バケモンかよ……」

銃撃が全く効かない事を悟った襲撃者達は腰を抜かしてしまっていた。

奴らに足を進めると、床に吐き出されている薬莢がジャラジャラと小気味の良い金属音を立てて転がっていった。

恐怖に満ちた視線が俺に集まるのを感じる。

ー影蛇の拘束ー

俺が呼び出した魔術で練り上げられた黒い蛇が影からヌルリとその身体を表し、シューシューと威嚇音を鳴らしながら連中に巻き付いて捕縛していった。

「お前、魔導杖もないのに、どうやってこんな高度な魔術を操って……」

魔導杖――車で言えばハンドルやクラッチのようなそれが無ければ、ごく少数の例外はあるものの、どれほど腕の立つ魔術師と言えど力を行使することは難しいと言われている。

まぁその「ごく少数の例外」がこの俺なわけだ。

莫大な魔力量、複数の国家の言語理解、それに魔導杖無しでの魔力行使……それが俺がこの世界
・・・・
に来る際に与えられた「転生特典」だったらしい。

らしい……という推測的な物言いをするのは転生の際の神様との邂逅で何を言われたのか俺がイマイチ記憶にないからだ。

まぁ地味ではあるものの、便利で有り難いものとして使わせて貰っている。……っと今はそんなことより。

「命が惜しかったら、俺の質問したことにだけ答えろ。お前たちは何者だ」

俺は「氷の魔術」で即席で作った刃を向けて襲撃者の女たちを脅しつけながら、同時に弱い「幻覚魔法」を見せることで連中の恐怖心を倍増させる。

すると奴らは、シドロモドロになりながらも各々に自分たちのことを話し始めた。

(「紅い狼」……貴族を人質にして金を揺するテロリストか、厄介だな……)

連中は最近ここら一帯を荒らしている反資本主義・反帝国主義を主張するテロリスト集団らしい。

この列車に乗る南方植民地の総督を人質に革命資金を荒稼ぎすることを狙っているとのこと。

(どうやら寝てる間にヤバいことになっちまったみたいだな……それにしても、エリカ、まさか単独で連中のところに行ってるわけじゃないよな?)

もしもこの連中にエリカが帝国御三家の一角、嬢ヶ崎家の跡取り娘だとバレれば、さらに厄介なことになってしまうだろう。

「お前、エリカ……金髪で色白の可愛らしい女の子を見かけなかったか?」

「そ、そ、そんな女は知らない……!」

「ウソをついてるなら殺すのにためらいは無いぞ、俺は」

「本当だ!ほんとうなんだ!信じてくれ!……前の車列で人質になってるのは、ここの総督と胸が気色悪く膨らんだ醜女の軍学生だけなんだ!」

(あぁ、この世界基準じゃエリカは醜女なんだった)と俺はこの世界
・・・・
のズレに今更な苛立ちを覚えて、顔を歪める。

俺は、捕縛した連中を強度を調節した「雷撃の魔術」を使って気絶させてから、「使役霊」を2匹、呼び出した。

使役霊と言っても「インプ」や「小妖精」などと呼ばれる類の低級霊だ。

伝書鳩に毛が生えた程度の仕事しか、コイツらには期待出来ない。
(俺は、使役霊術がまだ不得意なのだ。)

「お前は南方軍管区のお偉いさんにタリンタンブリーの州都からメルドール市へと向かう列車を、共産主義テロリストがジャックしていると伝えてこい。そっちのお前は、この客車に囚われている乗客の拘束を解いてから、安全な後ろの車両への誘導を頼む」

俺は言付けを使役霊達に託すと、襲撃者たちが懐に隠し持っていたマチェーテのような山刀を手に取る。

前の車両で見張りをしている連中と無駄に戦闘をするつもりはない。

連中の頭目が、エリカと総督を人質にしている2号車へと一気に向かうのだ。

俺は客車の窓を開けると、体中に魔力を循環させ身体強化をした上で、列車の屋根へと登った。

幸い、奴らの見張りも車両の上までは出張
でば
ってきていないようだった。

汽車の煙突からモクモクとあがる煙を「風の魔術」で作った魔力の羽衣で避けながら、俺は先頭車両へと走って向かっていくことにした。

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