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27話 疑惑 ☆

「講義後に私の部屋に来てね」と言われていた俺がルリの教官室を開けると、そこにはニコニコ笑っているとルリと能面のような表情を見せるエリカが俺を待っていた。

「校外学習?自分とエリ……嬢ヶ崎の両方を連れてです?」
「そう!私が引率で3人でね。まぁ校外学習なんて仰々しい名前だけど、息抜きのピクニックみたいな物だと思ってくれれば良いから!」

「来週の水曜日、『小春山の戦い』の跡地見学ね、決定ぇー!」と楽しそうにルリが告げる。

指導日でも無いのに急に「教官室に来て」なんて言われたから、また何かマズいことが起きたかと思ってヒヤヒヤしたぜ、全く。

「あ、そうそう。当日は各自、お弁当を各自作ってきておかずの交換会なんてどうかな?」

「あはは……ルリ姉、完全に遊び感覚じゃん……」

「えー!?カイ君は真面目だなぁ。ほら、『同じ窯の飯を食った仲間』なんて言葉もあるし、せっかく2人の卒業研究も私が指導するんだから仲良くなっておこうと思ってね!」

ルリはそう言って茶目っ気たっぷりに俺にウィンクした。

(お弁当かー)

体力的にキツい軍事教練や眠たくなるような座学の授業を堂々と抜け出せるって言うのは楽しみだが、料理がからっきしな俺としては少し気が重いな。

ノリヒコに何か、付け焼き刃で料理を教えて貰うか〜、肉じゃがとか。

そう言えば、エリカは料理が出来るんだろうか?

俺は自分の側で相変わらず無表情を貫いている金髪美少女の横顔を見て、そんな事を考えていた。

◆◆◆◆
帝都より汽車を乗り継いで1時間半ほど。

俺とエリカはルリの先導の元、古戦場として名高い『小春山』という小高い丘の上を歩いていた。

「ここがちょうど300年前に、政府軍が西ノ宮 義子率いる反政府軍に対して強襲をしかけた『小春山の戦い』があった場所よ。ほら、そこかしこにまだ砲弾の痕が残っているでしょう?」

言われてみれば、至る所で地面がえぐれていたりクレーターのような穴ぼこがあいていたり。

未だにこの地でどれだけ激しい戦闘が行われたのかを生々しく伝えていた。

ルリは時折、足を止めて当時の交通状況や軍の配置のことなどを交えながら戦場の説明をしてくれた。

一方のエリカはと言うと不機嫌そうに黙りこくったまま。

なぜか、寒くもないのに嵌めている薄手の手袋を、ゴニョゴニョと動かして居心地が悪そうだ。

まぁ、それも仕方ないことだろう。

エリカは、「ルリや秘密警察は自身
エリカ
を『連合王国』の間諜と繋がる売国奴だと疑っている」と思っているのだから。

俺はどこかのタイミングでエリカと2人きりになれないかと朝からずっと考えていた。

そうすれば『花谷』が疑われているという話は伏せた上で、「エリカや俺への武装秘の疑いはおそらく薄いだろう」という話を出来るかもしれないのに。

「『小春山の戦い』の戦いには嬢ヶ崎さんのご先祖様も参戦していたのよ。ここがちょうど嬢ヶ崎家が本陣にしていた所ね」
「……はい」

だが、ルリは俺よりもむしろエリカの方に愛想よくピッタリくっついてペラペラと話し続けていたので、中々そんなチャンスは訪れてくれなかった。

しばらく歩いた後にルリが「お昼にしましょう」と言うので、俺達はその場にシートを引いて弁当を並べることにした。

「じゃあ、ハードルを下げるためにまずは俺から」

俺はバツの悪そうな笑みを浮かべながら、自分の持ってきた銀色の弁当ケースに入っている「俵おにぎり」を2人へと披露した。

「ごめん、俺本当に料理とか苦手で。こんな簡単な物しか作れなくて」

週末はずっと男子寮のルームメイトであるノリヒコの指導の元、家庭料理を作るのにチャレンジしていた。

だが指導役のノリヒコが「申し訳ないけど……カイには料理の才能はないよ。これっぽっちも」と早々と匙
さじ
を投げてしまったので、諦めてこうなったわけだ。

「えぇ〜ごめん、カイ君、気を遣わせちゃったみたいで。そんな気負わなくても良かったのに」
「カイ、十分に美味そうだぞ。それじゃあ、いただきます」

お世辞もあるだろうが、ルリもエリカも俺の作ったおにぎりを「美味しい、美味しい」パクパクと食べてくれたので、俺はふぅと安心して胸を撫で下ろすことが出来た。

それにしてもエリカは俺の「おにぎりだけ弁当」を見た時に、やけに安心したような顔を浮かべていたのだが、なぜなんだろうか?

俺がゲテモノ料理でも出してくるのでは、と警戒していたのかな?

「じゃあ、次は私ね。ちょっと気合入れて作りすぎちゃったから2人共頑張って食べてね」

今度はルリの番だった。

彼女が開いたランチボックスの中を、エリカが少し怪訝
けげん
そうに覗き込む。

「フレンチフライと……これはハンバーガーですか?」
「そう!」

(こ、これは?!)

俺は空いた口が塞がらなくなってしまった。

別にバーガーやフライドポテト位ならこの世界にもある。

だが俺の眼の前のそれは……完全に……

(マルデナルドのダブルチェダーチーズバーガーにマルデフライポテトじゃないか?!)

俺は突然に出てきた転生前の世界での食事にショックを隠せないでいた。

(い、いや。まだだ。慌てるのにはまだ早い。他人の空似ならぬ、料理の見た目だけ似てるって可能性だって……)

半ば神に祈るような気持ちで、少し平らに潰れたバーガーのバンズへと食らいつく。

噛んだ瞬間に、俺の脳に薄べったいパティの上に載るケチャップとチーズ、それに各種化学調味料を混ぜたかのような味わいがガツンと染み渡ってくる!

フライポテトの強い塩気は喉の乾きを誘発してくる。あぁここにコーラさえあれば完璧なのに……。

「カ、カイ。どうした?どこか痛むのか?」
「いや。美味しくて……それ以上に懐かしくて……」
「な、懐かしい?」

横でエリカが引いた顔をしているのにも関わらず、俺は郷愁
きょうしゅう
から来る涙が溢れるのが、止められないでいた。

畜生、感動の余りフライポテトが揚がった時に聞こえるベルサウンドまで空耳で聞こえて来やがる。

しかし、ここまでの原作を再現した味をルリはどうやって……?

まるで俺と同じ世界から来たかそれか……

「俺の脳内を盗み見たみたいな味の再現度だ……」
「へぇ?!」

俺がボソっと呟いた一言に、ルリはやけに素っ頓狂な声を上げて驚く。いやまさかな。

「じゃ、じゃあ、今度は嬢ヶ崎さんの番ね!」
「え、あぁ。私のはもう良いんじゃないですか、鷲峰教官。結構、お腹も膨れてきましたし……」
「えぇ〜折角作ってきてくれたのに勿体ないわよ!それに私はまだまだ食べられるから!」
「そうだよ、それに俺もエリ……嬢ヶ崎の弁当食べてみたいし」

俺達がゴネるとエリカは渋々と言った様子で持参した可愛らしい弁当箱を開いてくれた。

どれどれ……。

プラスチック製の容器の中には、焦げ目の付きすぎたウィンナーやボロボロの卵焼き、歪な形にカットされた生野菜に抽象画のようなノリ弁アート。

(おぉ〜これは。エリカも俺と同じ位の料理初心者だったみたいだな。)

俺とルリが一瞬何とも言えない生暖かい目線を向けてしまった事に気づいたエリカの顔に、徐々に赤みが差していった。

「私は少しお手洗いに行ってくる」

エリカは少し涙声でそう言うと席をそそくさと離れて行ってしまった。

(いやぁ、しまったな……そういうつもりじゃ……)

「しまったぁ〜〜!!嬢ヶ崎さんと仲良くなるつもりだったのに……あぁああ!!また私やり過ぎてしまって一人だけ浮くくらいの料理作ってしまったぁ……こんなんだから丸井からも『喋るコミュ症』って言われるんだよ、私は……」

気落ちしかけた俺の心の声を遮るように、横にいるルリが大声で絶叫していた。

え?え?どういうこと……なんだ?

◆◆◆◆
放心状態のルリに「嬢ヶ崎の様子を見てくるね」と一言断りを入れた上で、俺はエリカを探しに小春山の丘を少し下った先にある川の近くを歩き回った。

「あ、いた」

瞳に魔力を行き渡らせてエリカの魔導反応を探ると、存外、彼女はすぐに見つけることが出来た。

「エリカー、おーいエリカー」

俺が呼びかけてもエリカは川の方にそっぽを向いたままだった。

「子供みたいに拗ねるなよ」と言いたい気持ちもあるのだが……まぁ、考えてみればさっきの俺の態度に反省すべき所があったのも確かだ。

逆の立場で考えてみれば、好きな女が別の男の手料理を「旨い、旨い」と言って食べて、その上で自分の料理に何とも言えない視線を向けてきたようなもの。

……それは傷つくのも無理ないな、うん。

手袋を外した彼女の手が絆創膏
ばんそうこう
だらけなのを見てしまって、俺は増々いたたまれない気持ちになってくる。

ほとほと困り果てた俺が、それからしばらくエリカの側に黙って立っていると、彼女はいきなり俺をグッと引き寄せ……熱烈に舌を吸い始めた。

ちゅ♡ぢゅるる♡ぢゅぽぽ〜〜♡

下品な程のバキューム音をたてて、俺の口内と舌を痛いくらいの勢いで貪
むさぼ
るエリカ。

「ちょ、え、エリカ。いきなり……」
「う、うるさひ!ちゅむ♡ぢゅるる〜♡お前は私の婚約者なのに別のほんな(おんな)なんかにしっぽをふって、れろぉ」

先程の一件と二週間近くまともに一緒に入れていない欲求不満を解消するように、彼女は俺の胸や尻を乱暴に揉みしだきながら、激しいベロチューを続けた。

「ぷはぁっ、なぁ、エリカ。ちゅむ、レロレロ、京香さんの使役霊に記録されて……流石にマズいって!」
「お母様の付けた妖霊は今はいない。今日は鷲峰教官に気づかれるとマズいから外してもらっている、ぶちゅるるる♡」

それからたっぷり3分近く俺を味わったエリカはようやっと体を解放してくれた。

彼女があんまりに強く腕や体を手で犯してくるもんだから、ちょっと握られた痕が残ってヒリヒリするくらいだ。

しかし、まぁ、図らずしもちょうど二人きりになれたんだ、このタイミングを逃す手はないな。

俺はハァハァと息を整えると、エリカに秘密警察の件を話すことを決意した。

「エリカ、鷲峰教官の秘密警察の件で話したいことがあって。その……名前は明かせないんだけど、どうやら武装秘やルリ姉はお前じゃなくて別の軍学生を追っているようなんだ」
「……別の軍学生?もしかして花谷のことか?」
「え?なんでそれを?」

驚く俺にエリカが2枚の白黒写真を手渡してくる。

1枚目はどこかのクラブで酒を酌み交わす花谷と女達……1人だけモヤのかかったような顔のダークスーツの女が居るがこれは?

「花谷は毎週木曜に軍学校を抜け出して、秘密の会合に顔を出しているようだ」

「こんな写真どうやって?」

「他の連中が念入りに魔導追跡避けの防御魔術を張っているのに花谷だけ色々と緩くてな。私の召喚した使役霊で簡単に尾行することが出来た」

「え?尾行?!」

「お母様経由で武装秘が『花谷』を追っているという情報をもらっていてな、それで……」

「えーと、尾行の件はその……エリカのお母さんもご存知で?」

俺が困惑した声を上げると、初めてそこでエリカがバツの悪そうな顔をして押し黙った。

「いや、知らない……というか正確にはこの間知られて、こっぴどく怒られてしまったよ」

俺が呆れたようにため息を着くと「だって仕方ないだろう!気になるし!」とエリカが駄々っ子のように言い張ってくる。

全く、このパツキン娘はしっかりしてるんだが、子供っぽいんだか、よくわからないな。

「でも、まぁそれならちょうど話が早くて良かった。実は俺も先日のルリ姉の個人指導の際に、『花谷』を追ってるから近づかない方が良いって聞いてたんだ」

俺がそう明かすと、エリカの目が鋭く光った。

「それは、鷲峰教官がお前に直接にその話をしたのか?」

「うん、そう。で、その時に『エリカ』の名前は出なかったから、安心して良いんじゃないかな?少なくともそんな危険人物とは見なされていないってことじゃ……」

「こっちの写真も見てくれ」

「ん?これは……ルリ姉?」

エリカが差し出した2枚目の写真はいわゆるモンタージュ写真と呼ばれる類のもの。

少々角ばった顔立ちの似顔絵だが、どこからどう見てもその顔立ちはルリそのものだった。

「さっきの1枚目の写真に顔にモヤがかかったようなスーツ姿の女が1人居ただろう」

「うん、あれは使役霊に対する認識阻害術の影響かな」

「その通り。で、こっちがその場にいた別の嬢ヶ崎家の手の魔術師が、魔眼を通して見た女の素顔の似顔絵ってわけだ」

「えーと、つまり……」

「鷲峰 瑠璃。彼女こそが花谷や連合王国と繋がる間諜なんだ」

確かにエリカの差し出した2枚目の似顔絵はルリそのもの。これは一体……?

戸惑いを隠せないでいる俺に、エリカは気遣うような優しい眼差しを向けてくれた。

「カイ、私は花谷への尾行がお母様にバレたことで週末の『帝都電波塔』の祝賀式に出席したその日の夜には家に戻されることが決まった」

「え?そうなの?」

「あぁ、それでお前も一緒にとお願いしたんだが『逆に嬢ヶ崎家との繋がりを怪しまれるかもしれない』とお母様は言って聞かなくてな。それで1つだけどうしてもカイ、お前に確認しておきたいことがあるんだ」

エリカはそう言って、ひと呼吸を置く。

「確認したいことって?」と俺が促すと、彼女はどこかせつなそうな ――まるで何か大事な物が実は傷つけられていたんじゃないかって心配するような――表情を見せた。

「お前、鷲峰教官との個人指導の際に、記憶が飛び飛びになった事とか、急に眠りこけてしまった事とか……ないか?」

俺はそう問われて今までのことを思い出す。最初の尋問の時、先日を含めた数回の個人指導の時……

「そう言われてみれば、確かに急に机に突っ伏してしまってたり、時間が妙に経っていたことがあったような……」

俺が何気なく吐いたその一言にエリカの顔が地獄の悪魔のように歪み始めた。

「あの盗っ人女め、殺してやる」
「えーと、エリカお嬢さん?」

エリカさん、ナニカ、ワタクシメがお気に触ること行ってしまいましたカ……?と俺が心配そうな顔をすると、彼女は俺の頭を震える手で撫で始めた。

「カイ、あいつは……鷲峰はおそらく……<幻覚の魔術>をお前に使っている」

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