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第13話 女子校でJKたちにキス!?

「ごめんなさい! 私が悪かったから、犯さないで!」

上戸が叫ぶ。

まあ、このあたりが潮時か。
俺は半裸の上戸から離れた。

「今日はこのへんで許してあげますよ」

「っ……!」

上戸はほっとした表情になると、涙目で俺を睨む。

「つ、次は負けないんだから……」

「期待していますけど、またやるんですか? 負けたら今度こそ犯しますよ?」

「……絶対、勝ってやるんだから」

上戸は立ち上がって、泣きながら衣服を整える。
俺はその上戸の胸を背後からふたたび揉む。

「きゃあっ! ちょ、ちょっと!」

「負けたら何でも言うことを聞く命令、この先も有効ですよね?」

「え?」

「つまり上戸さんが俺に再び勝たないかぎり、この関係は変わりません」

「そ、そんな……!」

これで生意気な女上司に言いたい放題言われる日々も終わりだ。俺の手に乳首を弄ばれ、上戸は「ひゃうっ」と悲鳴を上げる。
「で、でも! 私は明日も貴方の上司なのは変わらないんだからね!?」

「まあ、会社員ですからね」

そのあたりは流石に変わらない。

「だから、これは上司としての命令! 貴方は明日、御城実菜たちの通う学校へ行きなさい」

「へ?」

「貴方は御城さんたちの教師になるの」

俺は呆然とした。
まさかこの年齢になって、女子高生たちと一緒に学校で過ごすことになるとは思わなかったのだ。

実菜たちの通っているのは、名桜高校
めいおうこうこう
という女子校だ。名古屋市の東側――昭和区にある。
まさかの女子校に足を踏み入れることになり、俺は謎の緊張を強いられていた。

普段の冒険者服ではないスーツを着てみたものの、不審者の雰囲気があるのは否定できない……。

「正門から堂々と入ればいいのか……?」

正門の横で俺はたたずむ。いや、職員室に近い入口があるような気がするな……。

ちょうど登校時刻の朝八時。続々と女子生徒たちが入ってくる。
きゃぴきゃぴ(死語?)とした女子高生たちが、ちらちらとこちらを見てくる。

というか、みんなけっこう可愛い容姿をしている。進学校な上に、わりと派手な子が来る高校だそうだ。

俺が男子高校生だったなら、友人たちと一緒に「レベル高ええええ!」なんて騒ぐところだろうけれど。

高校生だったのは、もう十年近く前のこと。アラサーのおっさんがそんなことをすれば逮捕されかねない……。

それなのに、配信をしろというのが上戸の命令だった。「女子校に行くなんて、そんな視聴者の稼げそうな機会無いじゃない?」と。
倫理観というものが上戸からは欠如しているのではないだろうか?

一応、先方の学校の承諾済みらしいが……。

俺はドローンを起動し、配信を開始する。

<まさかの女子校!>

<JK!>

<美少女ばっかじゃん!>

このネット民どもめ……!

<わたしもJKなんですよ! 橋川さんのこと大好きなJKがここに!>

あとコメント欄にも女子高生が混じっている。本当のことなら……平日なんだから、ちゃんと学校に行けと言いたくなる。

それにしても、場違い感がすごい。
夏菜子でもいればマシだったとは思うのだが、上戸の命令であいにく彼女は留守番。夏菜子は不満そうにしていたけれど、アシスタントは危険なダンジョンのみということなので仕方ない。

じろじろと女子高生たちを見ているわけにもいかず、俺はどうしようかと思ったそのとき。

「あれー、進一さんじゃないですかあ!」

明るい声で名前を呼ばれて、俺は慌てて振り向く。そこにはギャルっぽい少女が立っていた。暗めの赤に髪を染めていて、瞳も赤色。
派手だけれど、背が高くてスタイル抜群の美少女だ。

「えーと、君は……秋原舞依、さん?」

俺の言葉に、舞依は「わあっ」とおおげさに笑う。

「覚えてくださっていて嬉しいです、お兄さん♪」

「そりゃあ、忘れたりしないだろ」

秋原舞依はダンジョンで助けた四人の女子高生冒険者。その中の盾役の女の子だ。
ある意味、一番目立つ見た目をした派手な美人だし。

<爆乳JKの舞依ちゃん!>

<アイドルかってぐらい可愛いよな>

<実菜とは違った良さがある>

<胸の谷間見えてない?>

制服のセーラー服をギャルっぽく舞依は着崩している。だから赤いリボンも緩めにつけていて、たしかに胸の谷間がちらっと見える。

「ふふっ、進一さん。いま、あたしの胸を見ていたでしょう?」

「ご、誤解されそうなことを言わないでくれ」

「ごまかさなくてもいいんです。命の恩人になら、どんなサービスでもしちゃいます」

「子供がサービスなんてしなくていい」

「あら、あたしってけっこう大人だと思うんですけど」

そう言うと、突然、舞依は俺に抱きつく。甘い匂いがふわりとした。柔らかく大きな胸の感触を押し当てられ、「大人」だという舞依の言葉を実感してしまう。

そして、次の瞬間、頬にちゅっと柔らかく湿った感触がした。頬にとはいえ、キスをされたことに俺は驚愕した

「助けてくださったお礼です」

ふふっと舞依はいたずらっぽく笑うが、その顔は真っ赤だった。
こういうふうに男をからかうのに、慣れているわけではないらしい。

<ほっぺたにキス!>

<女子高生にキスされるとかいいなあ>

<くそっ爆発しろっ>

<わたしも橋川さんにキスをしたい……!>

コメント欄が大盛りあがりだが、このままだと収集がつかない。
しかも、周りの女子高生たちはみんなこちらを見ている。

俺は努めて冷静に言う。

「こういうことは彼氏だけにしろ」

「あら、他の男の人にはしたことないですよ? それに、進一さんなら彼氏にしてもいいかなって。かっこいいですし」

どこまで本気かわからないような、冗談めかした口調で舞依は言う。相変わらず俺に抱きついたままだ。

<これもう告白だろ>

<付き合っちゃえよ>

<橋川さんと付き合うのはわたしです!>

コメント欄を無視して、俺は肩をすくめる。

「いい歳した男が、女子高生と付き合うわけにはいかないだろ」

「でも、ダンジョン出現後に法律も変わりましたし。13歳以上の女の子なら付き合うのも……エッチするのも、自由なんですよ。あたしとそういうこと、したいと思いません?」

舞依が少し恥ずかしそうに言う。

「するつもりもないことを言うなよ」

「さっきも言いました。お兄さんになら、どんなサービスでもしますよ? でも……そうですね。配信されているのはちょっと恥ずかしいですから。二人きりのときにたっぷりとご奉仕します」

舞依が俺をますます強く抱きしめると、耳元でそんなことをささやいた。

<うわああああああ>

<舞依ちゃんは直球でエッチだな>

<ツンデレな実菜とは大違いか>

<エッチはわたしと! 橋川さん!>

いい加減、配信を切ってもいいかな……。
俺はとんと舞依の肩を叩くと、ゆっくりと舞依から離れる。

舞依が上目遣いに俺を見る。

「あたしじゃ、ご不満ですか? 自分で言うのも変ですけど、けっこう可愛いと思うんですけど」

「まあ、可愛いのは認めるけどな」

俺がそう言うと、舞依がみるみる顔を赤くする。「か、可愛いだなんて、そんな……」と小さくつぶやく。
自分で言ったくせに。相手から攻められるのは得意でないタイプなのかもしれない。

「だが、これでも俺は大人なんだ。子供が大人をからかうのはやめろ」

「からかってなんかいないです。あたしは本気で……」

そこまで言って、舞依は口ごもってしまい、恥ずかしそうに目を伏せる。
もしかしたら、この子には俺が本気でかっこよく見えているのかもしれない。だとしても、それは年齢差がそう思わせているだけだ。

危機的状況を大人に救われた。そのせいで恋愛感情を抱いていると錯覚したに過ぎない。

「一応な。俺はおまえらの師匠をやれと言われている。師匠らしくさせてくれよ」
俺は少し迷ってから、舞依の頭をぽんぽんと撫でた。普通なら嫌がられるかもしれないが、舞依なら大丈夫だろうと思ったのだ。

舞依は目を泳がせる。

「嫌だったか?」

「そんなことないです。お兄さんの手、温かくて……安心するなって♪」

舞依はそう言うと、えへへと笑った。

<橋川、意外とちゃんとしてるじゃん。かっこいいぞ!>

<これ以上舞依を惚れさせてどうするんだwww>

<橋川さんの頭ぽんぽん、羨ましいなあ>

舞依が「もっと撫でてください」なんて甘えたように言う。

そんなとき、校門の内側からもう一人、茶髪の美少女が現れた。
彼女は頬を膨らませて、こちらを睨む。

「何やってるの? 橋川さん」

御城実菜……俺の「弟子」の少女が、俺と舞依にヤキモチを焼いているのは誰の目にも明らかだった。

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