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2話

市内から電車を2回ほど乗り継ぎ、今は田舎特有のローカルバスに揺らされている。

駅前からしばらく揺らされ現在は山道を走っており、僕は酔わないようにと必死に窓の外を見ていた。

田舎のローカルバスに空調などという近代文明技術が搭載されている訳もなく。

他のお客さんが開けたのであろう窓から車内に入り込む田んぼと木々の匂いを程よく含んだ緑のそよ風を堪能していた。

窓の外に目を向けると1時間前に電車で見ていた市内の景色からすっかり様変わりしてしまった。

田んぼ、田んぼ、森、山、民家、田んぼ。

これでは過ぎ去る屋根の上を忍者がパルクールで駆け抜けていくあのゲームが出来ないじゃないかっ!!と必要のない葛藤をしていた。

『アサガオ村〜アサガオ村〜』

(あっ、ここだ)

やっと着いたかと安堵すると僕は降車ボタンを押し…押し……。

(このバス降車ボタン無ぇぇぇ!!)

「降りますっ!!降ります降ります!!!」

運転手
「なんだい、あんちゃんココだったんかい。はいよ270円ね」

お金を投下するあの機械が何故か付いていないため僕は運転手さんに直接お金を渡した。

運転手
「にしてもこんな辺鄙な村に外から来る子なんて珍しいなぁ、おばあちゃんでも住んでるんかい」

「ははは、まぁそんなところです」

住み込みのアルバイトでーとか話し出すとまた長い話になってしまいそうなので適当に受け答えする。

運転手
「へぇ、いい孫じゃんねぇ…んじゃ忘れ物はないね?」

「はい、大丈夫です」

少し錆びてそうな駆動音の後バスのドアが閉まり、ゆっくりと発進していく。

バス停からここまで自分が乗ってきた目の前のバスの車内を見るともう誰も乗っていない、それもそのはず、最後に一緒に乗っていたおじさんも10分前には降りていた。

「すーー……はぁ〜……。」

朝から長時間乗り物に揺らされ、肺に溜まっていた疲労という名の嫌な空気を田舎の綺麗な空気と入れ替える。

空気が美味いというのはこの事だ。

改めて自分が目的の場所にたどり着けたのか確認したくなりバス停を見る。

錆びたトタンの壁と屋根、色褪せた青のプラスチックベンチ、破れかけの謎のポスター。

これらがまたいい味を出している。

このメンツの中では比較的に1番綺麗な状態を保っているバス停看板には「アサガオ村」と書かれていた。

良かった、合ってる。

「ふいー……腰いて」

最後に紫陽花駅に降りた時から既に1時間以上が経過している。

ゆらされている時間も長かったのだがそれ以上にバスの行き来する時間が開き過ぎている。

「さて〜…たしかこの村のさらに奥だったか」

バス停の後ろ、川を挟んだ向こう側の村に視線を移す。

事前にネットで調べたところ、目的の牧場はこの夏井川市で1番大きな山の山中にあるらしく、牧場に向かう道の途中でひとつの村を通らなくてはいけないらしい。

ひとつの山の中に村と牧場があるなんて、悪くないな。

確かに目の前には小さな村があった。
多分面積で言うならウチの高校の方が広い、それほどに小さな村。

村の入口近くには大きな和風旅館、村の中ほどにはひまわり畑その奥には10個ほどの瓦屋根の民家、そして1番奥には棚田が見える。

良い……。

その村が構成する要素全てが開放的なノスタルジックを奏でていた。

こんな村で幼少期を過ごしたかったなと叶わぬ願望に思いを馳せながら僕は村の中へと足を踏み入れた。

「たしかこの旅館の道を横に進んで……」

道の奥の方からは住民達の楽しそうな話し声が幾つか聞こえてくる、やはり住民はそれなりに居るらしい。

迷ったら最悪村の人たちに道を教えてもらうという手段が取れそうだ。

と、そこで前に読んだ漫画の知識が脳内にフラッシュバックする。

その漫画によれば田舎の村の住民は排他的で、見知らぬ顔が村の中を通りかかろうものなら、クワを持ったおじさん達が奇声を上げて襲いかかり、その日中には夕食の鍋の具材にされてしまうんだとか。

「だ、大丈夫だよな……旅館とかあるんだし」

村の入口に旅館があるくらいだ、僕以外にもちょくちょく観光客くらいは居るはずだ。

そう思いつつもその漫画のワンシーンがフラッシュバックして少し身震いした。

急に足取りが重くなった気がしながら村の中の道を進む。

(だ、大丈夫……だよな?……襲われたりしないよな………?)

しかし、その先入観はとある男の一言で程なくして打ち砕かれた。

「オニーサン…撮るアルヨーっ!チンチンフラッシュ!!」

「ぎゃっ」

僕の目の前に突然現れたその人は唐突に僕を激写した。
フラッシュに驚いて身を強ばらせたがしばらくして、その人の姿が目に入った。

その人は中国人らしき男の人だった。

「オニーサンチョット顔カタイネ、リラックスリラックスアルヨー」

「え、えっと…にこぉ」

「ソウ!ソレヨ!ソレアルヨ!もう1回チンチンフラッシュっ」

パシャッ

「ウーン、イイネ!イケメンは絵になるネ」

「そのぉ…」

「ダメだよ〜チンチンさん…。急に観光客撮っちゃ、せめて撮っていいか聞かないと〜」

「チンチンさん!?!?!?」

たまたま通りかかったおばさんが笑いながらその中国人の男の人に注意する。

「この人ねー、中国からはるばる日本の田舎の写真を撮りに来たらしいのよ〜。」

「ち、チンチンさんって…」

ちょっと呼び名が面白すぎて自分の聞き間違いを疑った。

「あーこの人ね、名前がチン・チンチュウさんって言うの。だからみんなにチンチンさんって呼ばれてるのよぉ、面白いでしょ?」

聞き間違いじゃなかった。

「全く〜チンチンさんもほどほどにしなね〜」

「オニーサンイイネ、イイチンチン持ってるネ、また良いチンチン撮らせてネ〜」

サイチン〜と言うと嵐のようにチンチンさんと呼ばれるその人はどこかへと過ぎ去って行った。

……え…サイチェンじゃなくて?。

(あの人…チンチンの意味分かってんのかなぁ)

変な漫画知識で妄想をしていた自分がなんだか馬鹿らしくなり僕は肩の力を抜いて普通に観光客気分で村の中を散歩した。

太陽の光を目いっぱいに吸うヒマワリ畑、ニジマスが泳いでそうな程に透き通った水が流れる道端の用水路、セミの鳴き声、温かみのある村人達。

その全てが心地よかった。

普通に観光客としてココに来るのもアリだな〜とか思いつつ僕はバイトをしに来たのだと自身を心の中でビンタして事前に印刷してきた地図を確認した。

だが、現地に到着して気づいた。

「ん?……チョウセンアサガオ村…?…………なにこれ………」

(これ、よく見たらこの村の地図じゃねぇ!!!)

マズイ…確かにたどり着いたこのアサガオ村の近くに僕の向かうべき牧場があるのは確かだ、確かなのだが。

「あれ……?ここをこっちか?いや、待てよ………あっちか?」

途端に自分の方向感覚が怪しくなってきた。

「どうしよう…一応夜までに来てとは言われてるけど……」

「うーん」

仕方ない。
頑張れコミュ障。

「道……聞いてみるか」

当たりを見回してみる。

するとちょうど目の前に個人商店らしきお店があった。
ここに聞いてみよう。

屋根に取り付けられた看板には『小島商店』に書かれている。

なんだか国民的代表アニメのガキ大将の実家を彷彿とさせる外観だが。

僕は恐る恐るそのお店の中を覗き込んだ。

開け放たれたその店の中には雑貨や生活用品、アイス用冷凍庫、駄菓子などが陳列されている。

中に設置されたレジには誰も立っておらず無人だった。

「す、すみませーん」

無人の店内に声が高らかに響く。
しかし反応は無い。
やはり誰も居なかったのかと少し気抜けする。

しかし、しばらくすると2階からスリッパ特有のシュッシュッという擦れる音が降りてきた。

「はいはーい、ちょいと待ちなね〜」

2階から降りてきたのはジャイアンママ……によく似た恰幅の良いおばさんだった。

「はいはい〜……おや?……お兄ちゃん見ない顔だね」

「は、はい……ちょっと村の外から来た者なんですけど……道に迷っちゃって」

「あらあら、どこに行きたいんだい」

「ひまわり牧場ってところなんですけど」

「あー、牛牧
うしまき
さんの牧場かい。あそこは道知らない子にはちょっと分かりづらいかもねぇ」

「そうなんですか……」

「うーんアタシが着いて行ってやれたら良いんだけどね〜、あいにく今ちょっと手が離せなくてねぇ〜、困ったねぇ」

「あ、なら道を教えてくれれば……」

「あっ!ちょいと待ちな……おーい!タケオ!!ちょっと来なさい」

ジャイママは大きな声で店の奥の方に居る誰かを呼びかけた。
すると「なんだよカーチャンっ」と奥から子供らしき声が帰ってくる。

まさかっ…ジャイアン!?。

「ちょっと手伝いなさいっ」

「えー、店番やだよお〜」

「いいから来なさい!お小遣い減らすよっ!!」

「あーん、分かったよカーチャン」

そうしてしばらくすると奥からはぽっちゃりしたガキ大将が……ではなく思ったより細身で丸坊主の小学生くらいの男の子が出てきた。

「どうしたんだよカーチャン」

「このお兄ちゃん牛牧さんとこの牧場に行きたいって言うからね、アンタ、案内してやんな」

「え、この兄ちゃん迷子なの?」

「らしいのよ…だがらタケオが助けてやんな」

「あいよっ、それならいいぜっ」

ははは……迷子だってさ。

どうやら僕は小学生の男の子に助けてもらわないと一人で目的地にも行けない残念な人になってしまったらしい。

ジャイママに送り出されると僕はタケオと一緒に村を歩いた。

「兄ちゃん、恥ずかしぜぇ?オイラもう小学5年生だけど迷子になった事なんて一回もないぜぇ?」

「ははは、すごいね……お兄ちゃん助けられちゃったよ」

「カーチャンが言ってたんだ”人は助け合いだ”って、だからオイラが困った時は今度は兄ちゃんがオイラを助けなくちゃいけないって事なんだろう?……あれ……ちがう?」

「ううん…合ってると思うよ、……そうだねその時は今度はお兄ちゃんがタケオを助けるよ」

「にしし、リシは付けないでおいてやるぜ兄ちゃん」

「難しい言葉知ってるんだね……」

そんなガキ大将君との会話を楽しんでいるとバス停から見えていたあの棚田がすぐ横まで来ていた。

「すげぇ、棚田
たなだ
なんて初めてみた」

「タナダ……ってなんだ?兄ちゃん」

「これだよ、田んぼが階段みたいにみたいになってるでしょ?これを棚田って言うんだ」

「兄ちゃん物知りだな」

「タケオほどじゃないよ〜」

「お!そうか!?にししっ」

また今度時間がある時にこの棚田をじっくりと見物しに来ようかなと思案していると村道も終わりを告げ森に囲まれた山道に移り変わった。

少しだけ上り坂のその山道は上の方まで50mほど続いていた。

「この奥だぜ?牧場は」

「そうなんだ」

歩いていて違和感を感じる、先程までは長年使われてきた固い土の村道といった感じだったのにこの山の道はというと。

田舎育ちでは無いこの僕でも見慣れたアスファルトの道だった。

「ここはアスファルトなんだね」

「カーチャンが言うには牛のじーさんが作った道なんだって」

牛のじーさん…さっきジャイママが言っていた牛牧さんの事なのかな。
そんなアスファルトの道をしばらく歩くとやがて森の木々が開けた場所に出た。

牧場だ。

リング状の看板には大きく『ひまわり牧場』と書かれていた。

想像していたより大きく、それでいて動物はほとんど居なかった。

牧場の範囲には木で出来た柵が、その牧場を囲うように広がっている。

牛舎のような建物、牧草地、奥には大きな民家1つと、大きな倉庫、そして子供が遊ぶ用に作られたような木造のアスレチックなどがあった。

ん?あっ。

民家の横によく見たらでっかい綺麗なアパートみたいなのがある。

いや、牧場に似合わなすぎるだろ。
従業員が住んでるのかな。

そしてなにより、来る前に想像していた牧場特有の牛糞のような匂いは一切せず、ただひたすら澄んだ山の綺麗な空気だけが流れている。

「兄ちゃん、このベル鳴らすんだよ」

「これ?」

「うん」

入口の横には煤けた色のベルが取り付けられている、呼び鈴的な扱いなのだろうか。
僕は垂れ下がったヒモを掴み勢いよくベルを鳴らした。

チリンチリーン。

思ったよりいい音が牧場内に響き渡っていく。

「たぶんそのうち来ると思うぜ、兄ちゃん」

「分かった」

僕はタケオが牛のじーさんと呼んでいたその人が来るのを待った。
だが呼び鈴に反応してこちらに近づいてきたのは想像とは全く違う人だった。

「はいはーい」

「えっ…………。」

少し背の高い女性が奥の牛舎らしき場所から近づいてくる。
牛の角、服の後ろプラプラと見え隠れする後ろしっぽ。

(あ、あれ…牛娘だ……。本物……初めて見た)

動物舎から出てきたのは牛娘のお姉さんだった。
初めて見る人種の女性。
確かに驚いた。
だがそれ以上に僕を驚かせたのは。

「あっ!おっぱい丸出しおねーちゃん!!」

「あらあら、ごめんなさいね〜。さっきまで搾乳してたもんだから服着るの忘れてたみたい〜」

胸が……丸出しだった。

ズボンや靴はちゃんと身につけているのだが、胸だけが丸出しだった。

どうやらこのお姉さんが身にまとっている服は搾乳用の服らしく、胸の部分だけが外に出せる設計になっているらしい。

Jカップくらいの大きさはある迫力満点なその白いお胸が、そのまま丸出しになっている。

女性の胸自体初めて見た僕にとっては目が点になる状態だった。

「ん、兄ちゃん?どしたん」

「あ……ぁぁぁ、いや〜……」

「?」

その牛娘のお姉さんはその豊満な胸を搾乳用の服の中にいそいそとしまいながらこちらに視線を向けてくる。

なんていうか、艶めかしい光景だった。

「あら、もしかして君がバイトで来るって言ってた子……かな?」

「あっ……えっとはいっ!この求人を見て……」

「あっ……ふふふ……。それ、私が描いたやつ」

「え?……あ……そうだったんですか」

この手描きの求人はどうやらこのお姉さんが描いたものらしい。

「そんじゃ!兄ちゃん!牧場これて良かったな!オイラそろそろ戻るぜ!」

「あっ、ありがとね。タケオ」

「うん!今度あった時は虫相撲で遊ぼーな!!」

「うん!またね!」

短い間ではあったが、確かに世話になったその少年に手を振る。
めっちゃいい子だった。

「ふふふ…もう村の子と仲良くなっちゃったんだ」

「あー、えっと……。はい、村で迷っちゃって…あの子がここまで案内してくれたんです」

「じゃあ今度お礼に行かないとね〜」

「そ、そうですね」

「じゃあ、君はとりあえず…………お名前…聞いていいかな?」

「え、僕……ですか?」

「そうだよ〜…これから一緒にお仕事するんだもん。名前くらい知っとかないと〜」

「はは……そうですよね」

僕はどうやらこの牛娘のお姉さんとこれから一緒に仕事をする仲になるらしい。

「えっと……星野
ほしの
って言います」

「ふーん……星野くん…下の名前は?」

「あっ……南央
なお
です」

「星野南央君ね〜、じゃあこれからナオくんって呼ぶね?」

「あっ……はい」

女性に対する免疫が皆無なせいか「あっ……」とか「えっ……」とかばかりが口から出てくる。

「私はセシリア……よろしくね?ナオくん」

「あっ……はいっよろしくお願い……します……セシリアさん」

このお姉さんはセシリアさんというらしい。

身長は僕より少し高いくらいだから恐らく170くらい。
ミルキーブロンドのルーズサイドテール。
表情の柔らかさと太ってはいないものの程よく肉付きのいい体、そして全てをやさしく包み込んでくれそうなその優しい言動からは母性が滲み出ていた。

「へ〜、どんな子が来るんだろ〜ってワクワクしてたけど。君みたいな可愛い顔した子が来るなんてな〜……ふふふ」

「え……い、いやぁ……」

女性に可愛いと言われた男はなんと返すのが正解か、きっと神様でも分からない。

「じゃあ、ナオくん……どうしよっか」

「え?」

「ひさ爺ちょっと出掛けててね、多分夕方には帰ってくると思うんだけど〜」

「ひさ……爺?」

「あー、えっとね。このひまわり牧場の牧場主さんの名前。牛牧久義
うしまきひさよし
さん」

「あー、なるほど……それでひさ爺」

どうやらこの爺さんには呼び名が沢山あるらしい。

「とりあえずここじゃあれだし事務所行こっか?ナオくん」

「え…事務所」

「うん…まあ事務所って言ってもただの家なんだけどね…ひさ爺が事務所って言ってるだけで…ふふふ」

「ほらおいで?こっちこっち」と促されるとそのまま僕はセシリアさんの後ろについて行きながら奥の方に見えていた大きな民家へと向かった。

(にしてもこの牧場……やっぱり動物が少ない……)

セシリアさんの後ろを歩きながらその牧場があまり牧場らしくないのが気になった、なにより動物臭が全くしない。
ここから確認できる動物でさえ奥の牛舎らしき場所にいる一匹のヤギくらいの物だ。

ますます自分がこの牧場でどんな仕事をするのか分からなくなりながらもセシリアさんの後をついて行くしかなかった。

「あまり綺麗な場所じゃないかもだけど良かったら上がってね〜」

「お、邪魔します」

牧場の入口からも見えていたあの大きな民家にたどり着く。
事務所ってここの事だったのかと思いつつ自分靴を整えしずしずと民家に上がった。

セシリアさんはああ言っていたもののその民家の内装はかなり綺麗で手入れが行き届いており、なんというか古き良き日本家屋といった感じだった。

セシリアさんに「ここ座って待ってて〜」と促されるまま居間に通され座布団の上に座らされていた。

「…。」

「綺麗…。」

セシリアさんが戻ってくるまでの間、僕は開け放たれた縁側から見える牧場の景色を眺めていた。

開放感のある牧草地、牧場を囲う青々とした木々、雑草啄むヤギ、それら全て優しく撫でる山の綺麗な空気のみで構成されたそよ風。

そしてこの牧場の位置が山の中で少し高い位置にあるせいか、この縁側から山の麓の街「紫陽花町」の高層マンションや家々が見えた。

こんなほのぼのとした景色が見れられる民家で生活出来たらどんなに気持ちいいんだろうか。

コンクリートジャングル出身の僕にとってはその景色は羨望その物だった。

「その縁側…気に入った?」

そんな風に思いを馳せていると、不意に後ろから声をかけられ振り返る。

台所らしき場所で何かを準備していたらしいセシリアさんがお盆にスイカと麦茶を乗せて戻ってきていた。

「えっ……えっと…はは…綺麗だなって……」

「ふふ、じゃあそっちで食べよっか」

お盆を片手で持ちながらセシリアさんは僕の背中をトントンと叩いて縁側へと誘導させてくる。
流されるまま僕は縁側に座った。

するとすぐ隣にセシリアさんも座ってくる。
セシリアさんからはふわっと今まで嗅いだことの無い優しい匂いがした。

どんな柔軟剤とも違う、まるで本能に母性で訴えかけるような、そんな優しい匂い。

牛娘の人は皆こういう優しい匂いがするのかなと思っているとセシリアさんは手に持てるサイズにカットしたスイカを渡してくる。

「暑かったでしょ?……ほら、食べて食べて」

「え、いや悪いですって」

「いいからいいから、男の子でしょ〜?遠慮しないの〜」

「は、はい」

渡されたスイカをかじる。
甘い。美味い。

僕がスイカを食べる姿を微笑ましそうに横から見つめるセシリアさん。

なんだか居心地の良いような悪いような不思議な感覚だった。
母親がいるというのはこういう感覚なのだろうか。

「みんなはまだ搾乳場
さくにゅうじょう
に居るからしばらくは2人っきりだね〜」

「もぐ……みんな…ですか?」

「うん、牛娘さん達」

「え、セシリアさん以外にも牛娘さんが居るんですか?」

「そりゃあそうだよ〜ここはそういう場所だからね〜。」

「はぇ〜」

珍しい事もあるんだな〜とスイカの汁を飲み込みながら思った。
牛娘自体かなり珍しい存在なのに。

「僕…牛娘さんって初めて見ました」

「あらあら、そうだったんだ。大丈夫?抵抗とかない?」

「いや、大丈夫です……。」

「そっか、それなら良かった」

スイカを食べ終わり皮をお盆に置くとセシリアさんがニコニコしながらハンカチを取り出してきた。

「ふふ、ちょっとじっとしててねナオくん」

「え」

セシリアさんが僕の口の周りについたスイカの汁を白いハンカチで丁寧に拭いてくれる。
なんだか子供扱いされてる気がする。

「あ、ありがとうございます」

「ふふっ……いいのいいの」

うん、綺麗になった。と僕の顔を確認するとセシリアさんはハンカチをポケットにしまった。

「ひさ爺に言われててね、今日来る男の子のお世話をしてあげて欲しいって」

「え、僕……ですか?」

「うん、だからナオくんの身の回りのお世話は私がする事になると思うんだ〜、だからよろしくね?ナオくん」

「え、えっと……はい。よろしく…お願いします」

セシリアさんの僕を見る目がまるで我が子を見る母親のように見えて少しドキッとした。
しばらくすると家の中からゴーンゴーンと鳴った。
壁掛け時計の音だ。

「あら!いけないいけない、こんな時間。私やらなくちゃいけない事があった〜」

そう言うとセシリアさんは「ナオくんはここに居ていいからね?」と僕に告げてトタトタっと家の中へ行ってしまった。

どうしたんだろうとセシリアさんが行った方向を見ているとしばらくしてセシリアさんは腕の中に赤子を抱いて戻ってきた。

「ごめんね〜おっぱいの時間で戻ってきたの忘れてたよ〜」

セシリアさんは再び僕の隣に座るとパチっパチっと服のボタンを外して片乳を服から取り出した。

「わっ…わっ……」

「んー?……ふふ…。別に見てても良いんだよ〜?」

「え〜、で、でも」

そう言いつつもやはり気になって見てしまう。
セシリアさんは服の中から取り出した豊満な胸を赤ちゃんに向ける。

綺麗なピンク色の乳首が普通に見えていてドキドキする。

赤ちゃんはセシリアさんのおっぱいに吸い付くと一生懸命おっぱいを吸っていた。

「セシリアさん、子供居たんですね」

「んーん、この子は友達の子。2日くらいお仕事でどうしてもこの子を誰かに預けなくちゃいけないんだって〜。だから私はベビーシッター」

「あ、なるほど」

しばらくその赤ちゃんを「いいな〜」とか思いながら羨ましそうに見つめていると僕の視線に気づいたのかセシリアさんが思わぬ事を言ってきた。

「ふふ、ナオくんにも後でおっぱいあげよっか?」

「え゛っ」

「なんか物欲しそうに見てたから…ふふっ」

「い、いやっ…そ、そんな事っ」

「遠慮しなくていいのに〜、ね〜彩音ちゃん?」

どうやら赤ちゃんの名前はあやねちゃんと言うらしい。
赤ちゃんという存在は見ているだけで癒される。

そうしてしばらく彩音ちゃんの授乳を観察していると彩音ちゃんはお腹がいっぱいになったのかセシリアさんの乳首を離してスースーと寝てしまった。

セシリアさんは乳首をハンカチでつまむように拭くと胸を服の中にしまい彩音ちゃんを肩の方へ背負った。

何をしてるんだろうと思うとセシリアさんは彩音ちゃんの背中をトントンと優しく叩き始めた。

物珍しそうにその光景を見ているとセシリアさんが教えてくれる。

「赤ちゃんはね〜、ミルク飲んだあとはこーやって背中トントンしてげっぷさせてあげないとげーしちゃうの」

「そ、そうなんですね」

しばらくそうしていると彩音ちゃんはけぷ〜と可愛いゲップをした。
それを確認するとセシリアさんは抱っこ紐で彩音ちゃんを背中に背負った。

「ちょっと牧場見て回ろっか?ナオくん」

「え、今からですか?」

「うん、まだひさ爺帰ってきそうにないし〜。せっかくだから軽い見学、どう?」

「そ、そうですね」

僕の腰を軽くトンっとすると「ほらっ行こ?」とセシリアさんは僕の手を引いた。
セシリアさんに連れられ僕たちは1度事務所と呼ばれる民家を出た。

「ここが動物舎、色んな子が居るよ〜」

先程縁側からも見えていた牛舎のような建物に入る。
中にはヤギ、うさぎ、鶏が居た。
でもやはり数はそこまで多くなかった。

「今日はもうご飯あげちゃったんだけどね〜、よっかたら今度一緒に餌あげてみる?」

「は、はいっ、やってみたいです」

動物園の餌やりコーナーみたいな物を想像して胸が踊った。

「この鶏、ちょっと小さいですね」

「あ〜、この子達はね〜。烏骨鶏
うこっけい
って言うの。ニワトリさんとはちょっと違うんだ〜」

「へ〜」

「でもこの子達が産む卵はすっごく美味しいんだよ〜」

「ご、ごくり」

「今度ナオくんの朝ごはんに一緒に出してあげるよ?ふふっ」

「お、お願いします……。」

ヤギの頭を撫でてみたりうさぎを抱っこしたり、動物舎見学はそれなりに楽しかった。

「それで〜、こっちは私たち牛娘用の牛舎」

「え、牛娘用の牛舎……?」

セシリアさんが牛舎と言って指さしたのは牧場の入口からも見えていたあの牧場に似合わな過ぎる綺麗な二階建てアパートだった。

「なんか、牛舎っぽくないですね…」

「うん、ほとんど社員寮みたいなもんだからね〜みんなここで生活してるの」

だがそこには人の気配はなかった。

「その、他の牛娘さん達は今別の場所に居るんでしたっけ?」

「うん、今は奥の搾乳場にみんな居るよ〜、こっそり覗いてみる?」

「え?」

「ほらほら〜こっちこっち」

セシリアさんに連れられその牛舎の裏にある施設へと向かった、その施設に近づくにつれて若い女性らしき話し声がチラホラと聞こえ始めた。

僕は入口の壁からこっそりと中を覗いた。

「でね?……聞いてママ…!……その男子が放課後に呼び出してきて〜、付き合ってくださいっ、無理なら千円払うのでおっぱい触らせてください!!って言い出したの〜。」

「なんじゃそりゃ…今のガキンチョはすげーな」

「ルヴィちゃん早く男の子喰いたい〜、そのバイトの子まだぁ〜?」

「ルヴィ…貴方は限度を知らないんだから。しばらく我慢しなさい」

「やぁーだァ〜、お姉ちゃんだって若い男好きなくせに〜」

「そ、それは…誤解です…。」

「暇だにゃ〜、さくにゅーきらーいにゃ〜」

「だーめだっての、ちゃんと仕事する」

その施設内の奥では登場時のセシリアさんのと同じように胸だけをさらけ出した牛娘さん達が牛の乳絞りに使うようなホースを胸に取り付けていた。

みんなクッションの上で膝立ちになって鉄の手すりみたいなものに両肘を置いて隣同士の人とおしゃべりしたりしている。

胸に取り付けられたホースはタンクのような場所に繋がれていた。

こっそり覗き見ていたので顔まではよく見えなかったが皆とても胸が大きかった。

「ね?搾乳してたでしょ?」

「は、はい」

しばらく覗いていると1人の牛娘さんがなにかに気づいたように当たりをキョロキョロとしだした。

「クンクン…クンクン…」

「ん…どしたんルヴィ」

「……雄の匂い…良い種を持った雄の匂いがする…。」

「オメーのその嗅覚だけで男を感知できる能力はどうなってんだよ」

「ルヴィ…恥ずかしいのでやめてください…。」

僕は瞬間的に顔を引っ込めた。
なんだか生命の危機を感じたからだ。

その後は牧場の敷地内をセシリアさんと一緒に軽く散歩した後、再び事務所へ戻ってきた。

数十分前と同じように縁側でセシリアさんと隣合って涼む。

ちなみに彩音ちゃんは先程、奥のベビーベットで寝かせてた。

「どう?こんな感じだけど…やってけそう?」

「は、はい…でも仕事内容まだ教えられてないのでなんとも言えないですけど…頑張ります」

するとセシリアさんは驚いたような顔をしてこちらを見つめる。

「えっ…ナオくん…ここにどんなバイトで来たのか知らないのっ…?」

「え、はい…まだ聞かされてないです」

「あちゃ〜…そうだったかぁ〜…どうりで私たちが居ることを不思議がってたんだ〜」

「え…どういう事ですか?」

「えっとね…ここはね」

セシリアさんがなにかを説明しようとしたその時、搾乳場からこちらへ向かって歩いてくる複数の人の気配を感じた。

そちらに視線を向けるとそこには先程まで搾乳場に居たであろう牛娘さん達らしき人達と…。

なにか…。

なにかこちらに向かって爆走してくる何かが…。

なんだあれは……山から降りてきたイノシシか?

間違いない、イノシシだ、そうに違いない、だって角あるし、シッポあるし。

ダッダッダッ。

「男の子みぃぃぃぃぃっけぇぇぇぇぇぇぇっっっっっ」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁあ」

ドッカァァァァン。

衝突。

その突進からかイノシシを彷彿とさせる牛娘のお姉さんが僕の元に飛び込んで来たかと思うと、その瞬間僕の視界は真っ暗になった。

衝突の勢いは行き場を求め、僕はそのまま硬い縁側の床に頭を強く打ち付け…打ち付け…。

てなかった。

後頭部と顔面。
前と後ろ。
両サイドからとても柔らかく心地のいい感触に挟まれている。

なんだろう…これは。

「いたたた〜、もう〜ルヴィちゃん?ダメじゃない飛びかかっちゃ」

「あちゃ〜ごめんごめん…て、あれ?男の子は?」

「あら、ナオくん…どこ行っちゃったんだろ」

「ふぐ…」

「あら?…あっ…ふふっ…ココに居たか」

姿勢が少し楽になり僕は視界を取り戻す。
自分の状況を確認する。
僕は、突進お姉さんとセシリアさんにサンドイッチされていた。

顔面に感じていた柔らかさは突進お姉さんの胸。
後頭部に感じていた柔らかさはセシリアさんの胸だった。

「クンクン、うんやっぱり…いいモノ持った男の子だ…ルヴィちゃんの鼻は鈍ってなかったね」

突進お姉さんはおっぱいの監獄から僕を解放する気がないらしく、クネクネとその柔らかいカラダを擦り付けながら仕切りに僕の匂いを嗅いでいる。

ほとんどセシリアさんの体の上に乗っかってしまっているこの状況で僕は極上の柔らかい『掛け布団』と『敷布団』に包まれているような感覚だった。

「あん…もう…ナオくんが困ってるでしょ〜ルヴィちゃん」

「だって久しぶりのご馳走じゃん?ルヴィちゃんそういうの我慢出来ないじゃん?ならする事はひとつじゃーん?」

感触は心地いいのだがそろそろ拘束を解除してくれないと僕はこの2人の女体に溺れて窒息死してしまう。

三途の川が見えたような気がしなくもないレベルまで到達しかけたその瞬間、ルヴィと呼ばれる突進お姉さんを1人の女性が僕から引き剥がした。

「こらルヴィっ…やめなさいっ」

「んぁぁぁ〜男の子ぉ〜、私の〜」

「誰が貴方のですか」

慌てて呼吸をし体に酸素を供給する。

「はぁ…はぁ…」

「大丈夫?ナオくん」

「あ、は、はい…大丈夫です…すみません…すぐどきます」

「ふふ、しばらくココに居てもいいよ〜」

セシリアさんは嫌がる素振りを見せず、むしろ自身の胸を枕替わりにしている僕の頭を撫で付け、乱れた前髪を整えてくれている。

しばらくして息を整えると僕は縁側に座り直した。

目の前には胸の大きいお姉さん達が心配するように僕を中心に輪を作って前かがみに覗き込んでいた。

「あの
ナオ
、えっと…」

「気いつ
ヤンママ
けな?あいつ結構やべーから」

「お兄さ
猫語の女の子
ん大丈夫かにゃあ?」

「うちの馬鹿
黒髪ショートお姉さん
な妹がすみません」

「うがーっっ
突進お姉さん
!私の子種君んんん!!」

色んな毛色の魅力を持ったお姉さん達。

金髪ロングに少し日焼けしたこの中では1番長身のヤンキーママを思わせる言葉遣いのお姉さん。

何故か頭に猫のカチューシャを付けて猫を模した言葉遣いをしている黒髪おさげに黒のセーラー服を着た女の子。

ルヴィと呼ばれていた突進お姉さんの首根っこを掴んで僕を助けてくれた黒髪ショートヘアに色白の肌の真面目そうな言葉遣いのお姉さん。

そしてその黒髪ショートヘアのお姉さんに現在進行形で首根っこを掴まれている、ルヴィと呼ばれる黒と赤を混ぜた赤髪ショートにウルフカットの褐色肌のお姉さん。

みんなお胸がとてもベリーベリービッグ。
そしてやはり、牛娘特有の角としっぽがあった。

全員なかなかお目にかかれないレベルの美人。

人生でこんなに綺麗な女性に囲まれた経験がなく、僕は少し自分の心臓がうるさく感じた。

きっと今頃僕の顔は真っ赤になっている事だろう。

そして、ヤンママお姉さんの横にいるストロベリーブロンドのウェーブがかったロング髪の女の子。

この子もなかなか美人で胸がでかい。

うん、でかい。

だがなんだろう。

その子はどこか見覚えがある気がした。

「あれ…?あれぇ…?」

それは隣の席の篠崎さんだった。

疑問で頭がいっぱいになっていると篠崎さんもこちらに視線を向けてびっくりしたような顔をしていた。

「え!?…なんでキミが…」

「し、篠崎さんっ!?…な、なんでここに」

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