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10話

「あーもう分かった…終わったら後で手コキしてあげるからおんぶして〜」

「え……えぇ!?」

「シて欲しいでしょ?」

「え、まぁ…そりゃ…えぇ??」

「ほら〜…はやく〜…おんぶしてくれないとクラスLimeに送っちゃうぞ〜」

「ぁぁぁぁあもう分かりましたよっっっ」

急いで百花さんの前に移動すると僕もしゃがみ込んだ。
2人して村の入口でしゃがみ込んで何しているのだろう。

アリの観察日記を共同研究でもしているのだろうか

僕がしゃがみ込んだのを確認すると百花さんは僕の背中におぶさってきた。

両手を僕の首の前に回し体を密着させてくる。
ベリーベリービッグなお胸がむにゅっと背中押し付けられる。

吐息が首筋にあたってこそばゆい。

百花さんを持ち上げようとお尻に手を回したが手をはたかれた。

「なにを」

「お尻触んないの」

「わがままだなぁ」

「ほら、太もも持って」

「はい…」

百花さんの太ももを掴むとがっしり脇に挟み、そのまま立ち上がった。

「うん…苦しゅうない」

「重いなぁ」

「重くない♡軽い軽い♡」

「おんぶされてる側の言う事じゃないんだよなぁ」

百花さんを背中に乗せた状態で始まったアサガオ村探検ツアー。

その状態のまま村の中ほどまで進んだ訳だが、もちろん村の人たちからは変な目で見られ…。

無かった。

え?…なんで?。

「あら〜百花ちゃん。こないだ畑で大っきいスイカ取れたから食べにらっしゃいよ〜」

「うん、今度行くね」

「百花ちゃ〜ん、なんだい帰ってきてたんかい。大きくなったねぇ。偉くべっぴんさんになってぇ」

「もー平坂おじさんたら〜。」

「百花ちゃん!!ほらっ!トマトいっぱい取れたから持ってって!!」

「うん!ありがとう!ほら、パシリ君…受け取って。」

「あ、あの…」

さすがに気になりすぎるのでトマトを持ってきたおばさんに聞いてみる。

「あら、どうしたの?」

「これ、何も思わないのでしょうか」

「あら、可愛いじゃないおんぶり抱っこで」

「えぇ…」

「ほらね?私なら大抵の事は許容されるから」

「それにね〜、百花ちゃんはちっちゃい頃もよく男の子達にやらせてたものねぇ〜?懐かしいわぁ」

「まじかよ」

「私パシリは君が初めてと言った覚えはないよ」

「別にパシリ君1号じゃなかった事にショック受けてる訳じゃないですけど…。」

なんか、そこまで意外には思わなかった。
というよりむしろ僕が最初の犠牲者では無いだろうなとは思っていた。

トマトの入ったビニール袋を脇にさげながらもアサガオ村ツアーは続いた。

僕はこないだお世話になった剛田商店…じゃなかった小島商店へ来ていた。

今回はちゃんとお客さんとして来たのだ。

「やっほータケオ」

「あー!迷子の兄ちゃん!」

「その迷子の兄ちゃんって呼び方は止めてくれよ〜」

「えーじゃあなんて呼べばいいの?」

「召使いのお兄ちゃんだよね〜♡」

「タケオ〜、この人の言う事は聞いちゃだめだぞ〜」

たまたま店先辺りに居たタケオが出迎えてくれた。

「兄ちゃんどうしてお姉ちゃんをおぶさってるん?怪我でもしたの?」

「あーこのお姉ちゃんはね、自分の足の使い方すら忘れちゃった可哀想な人なんだよ〜」

がぶっっ

「いっっっっっっっったぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ」

百花さんが後ろから僕の首筋に噛み付いてきた。

なんだ、僕は猛獣を運搬していたのか。

「なっっっ、なんて事するんだ!!」

「ご主人様に逆らうからだよ〜♡」

「くっっっっ」

この背中の珍獣は帰りしな川にでも不法投棄してやろうか。
いや、野生化して繁殖したら怖いから止めておこう。

いや、というか報復が怖いので止めておこう。

「ごめん、痛かった?」

「結構痛かった」

「ごめん〜力加減ミスった」

噛んだ場所をチュパチュパと優しく吸ってくる。
それはそれでこそばゆいのでやめて欲しい。

「ねーパシリ君、私アイス食べたい♡」

小島商店の中のアイス用冷蔵庫を指さしながら言ってくる。

「あーたしかに、ここまで来て何も買わずに帰るのは失礼かも」

「食べよ♡」

「そうですね」

「オニイサン達コッチムイテ〜」

「ん?」

声の方を向いて見る。

「撮るアルヨ!チンチンフラッシュ!!」

パシャパシャっ

「わぁっ!」

「イイネ!田舎のオミセの前での美男美女カップル!!エモいアルヨ!!エモチンチンアルヨ!」

「チンチンさん…びっくりするからやめて…」

そこに居たのは村に来た初日にも出くわしたあの変人1号。
中国人旅行者のチン・チンチュウさんだった。

「君いいチンチン持ってるネ!!ナイスチンチンね!!」

「あの…チンチンさん…一応聞いておきたいんですけどチンチンの意味わかってます??」

タケオがケラケラと笑いながら「チーンチン!チーンチン!」と謎のコールをしている。

「チンチン?チンチンは私のあだ名でアリ、私の中ではイイ絵になるモノはチンチンって言うネ!」

「なに?パシリ君この人にチンチン見せたの?…引くわぁ」

「なわけあるかっっっっ!!!」

「お兄ちゃんチンチン見せびらかしたんだ〜ギャハハっ」

「がぁぁぁぁぁぁ!!!」

「オニイサン、チンチン丸出しはヨクナイヨ」

「いや、そりゃそうですけど………ん?」

あれ…今この人普通にチンチンの意味理解してなかったか…?

「チンチンさん、もっかい聞きますけどチンチンの意味は?」

「イイ絵になるモノネ!!!」

「うーん?勘違いか…」

チンチンさんが離れようとしたので呼び止める。

「サイチーン」

「あっ、チンチンさん!」

「ん、ドウシタネ、もう1枚撮るアルか?」

「あ、いやそうじゃなくて。チンチンさんも一緒にアイス食べませんか?」

「オー!一緒に食べてイイアルカ?チンチンさんおカネ持ってきてナイヨ!」

「僕が出すんで大丈夫ですよ」

「さすがパシリ君♡ご馳走様でーす♡」

さりげなく便乗してくる背中のご主人様兼珍獣。

百花さんが一時的に背中から降りる。

「タケオも一緒に食べよう?」

「え!オイラもいいの!?」

「いいよ!」

「やったぁ!」

4人でアイス用冷蔵庫の前に並ぶ。

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