巨乳キャラあつめました 巨乳のキャラクターが登場する漫画や小説を集めたサイト

36話

とぼとぼとエレベーターへ向かう。

「………………江理香さん。」

どうしよう、まじで嫌われた。
調子に乗りすぎた。
こればっかりは許してくれない気がする。

僕はなんて事をしてしまったんだ。
あの反応はもう謝っても許してくれない気がする。

不意に胸を刺されたようなショックでエレベーター前へ立った。

ピコーン。

「…………?」

エレベーターが下から上がってくる。
誰か乗ってるようだ。
まあそうか、この会社大っきいもんね。
江理香さんみたいに誰かしら会社に残ってるんだよね。

ていうかそんな事どうでもいい。
はぁ………江理香さん。

もうショックで胸が割れそうだった。
許して欲しいというより…せめてちゃんと謝りたい。

好きだからってやっていい事と悪い事あるよな。

はぁ……僕って最低だ。

エレベーターが僕のいる階で止まった。

ウィーンと扉が開く。

「おや……君は確か……」

「んぁぁ……?」

「愛島さんと一緒に居た子じゃないですか……まだ残っていたんですね……」

「あれ………あなたは………」

誰だっけ。

「愛島さん…まだ残ってますか?」

「え……はい…居ますよ……」

「元気が無いですね……何かあったんですか??」

「はい………ちょっと江理香さんに怒られてしまって……」

「ははは…そうですか……僕も愛島さんには沢山怒られましたよ……」

あ、この人。
そうだ、この会社に入った時に江理香さんに話しかけてた若い男の人だ。

藤本さん………だったっけ。
なんか引き継ぎがどうとか言ってたな。

「まぁ…あー見えて気に入った人には沢山愛を注いでくれる人ですから…僕も愛されてると思います………君も……諦めてはいけません」

「そ、そうですね………なんか元気出ました……」

「まぁ僕は今日でここを辞めてしまうんですけどね……人の事は言えませんね……」

「はは…そうだったんですね……でもさっきの言葉はなんか元気出ました……僕…頑張ります」

「そうですか…良かったです……私もこれからひと勝負なので……君に負けないよう頑張ります」

あー、そっか。
会社辞めるとしたら再就職とか、再スタートって事だもんな。
確かにこれからが勝負時だ。

なんか励まされた。
おっぱい見てたぞこいつとか思っててごめんなさい。
やっぱ僕はまだまだ子供だ、自分の事ばっかり。

この人に負けないよう僕も再スタートの気持ちでもう一度江理香さんにアタックしてみよう。

「このまま乗りますか?」

「あ、はい乗ります!」

「どうぞ」

藤本さんがドアのロックを抑えててくれた。
優しい人だな。
僕も大人になったらこれぐらい余裕のある男性になりたい。

藤本さんと入れ替わりエレベーターに乗る。

カランっ。

ん?

藤本さんとすれ違うとなにか金属音のようなものが床から聞こえた。

足元を見る。
なにか楕円に近い手のひらサイズの金属が落ちていた。

「あの……これ……落としましたよ?」

その楕円のような金属を藤本さんに手渡す。

「っ!?」

藤本さんはそれに気づいてギョッとするような顔をした。

なんだ?会社の重要データでも入ったUSBか?
いや、USBメモリってこんな形してないもんな。
USBメモリにしては大きいし。

「ふ、藤本…さん?」

「は、ははは…いけないいけない…ありがとう。」

「いえいえ」

その楕円のような形をした金属を藤本さんに手渡す。

「それではっ…いつか会えたらその時はよろしくお願いします」

「あ、はいっっ!よろしくお願いします!」

エレベーターの扉が閉じる。

再アタックと言っても…許してくれるのかな…あの感じ。

あんなに怒った江理香さんなんて初めて見た。

クソガキの僕が調子に乗り過ぎた罰なのだろうか。
江理香さんと過ごした甘く楽しい時間と先程江理香さんに放たれた言葉が同時にフラッシュバックする。

もう江理香さんとはこのまま疎遠なのだろうか。
生きててこんなに胸が痛くなったのは初めてだ。

胃がキリキリと痛む。
今まで失恋はした事があってもここまで辛く痛いの初めてだ。

エレベーターという閉鎖空間が心にみるみる暗雲を吹かしていく。

はーあ。
あの人はあーやって前向きに頑張ってるのに僕ってやつは。

そういえば藤本さんは江理香さんに用があったのかな。

僕なら江理香さんみたいな綺麗な人が上司で会うのが最後だったら好きでしたとか言っちゃいそうだな。

ワンチャン藤本さんそうだったりして。

にしても。

うーん。

さっきの藤本さんが落としたあれ。

うーん?

記憶の矛先が江理香さんから藤本さんに移るにつれて違和感に近いなにかを捉え始める。

1階のボタンを押しエレベーターの下降を感じながらさっきの金属物について考える。

エレベーターの階数表示ランプは15階を示していた。

「んー………」

なんだろう。
どっかで見た事あるんだよなぁ…あれ。
でもこんな会社の中で見かけるような代物じゃなかったような。

なにか第六感に近い物が僕に囁きかけてきている気がする。

早く思い出せ……と。

特に気にするべき事じゃないはずなのに…なんか気になる。

こういうのは思い出せないと気持ち悪い。
それに思い出せるとスッキリする。

このなにか引っかかる感じを解消したい。
そうすればこの胸の暗雲も少しは晴れるかもしれない。

そうだ、こういう時はそれに付随する記憶から辿っていくのが手っ取り早い。

たしか……あの金属物に関連付けられる最初のワードは。

ワードは。

エレベーターの階数表示が12階を示す。

山だ。

なんでここで「山」というワードが出てくるのかは分からないけど。

あの金属物に付随する最初のワードは山だ。

これ、都内のエリート企業のビルのエレベーターというワードから思いっきり遠ざかったな。

でも何度考えても最初に出てくるワードは山なのだ。

山の…なんだろう。

山に関係するなにか楽しい記憶だった気が。

山……山……。

エレベーターの階数表示が9階を示す。

キャンプ

そうだ、キャンプだ。
お父さんと昔行った山のキャンプで見た気がする。

あれは確か小学生5年生の時お父さんと人生初のキャンプに連れてって貰ったんだ。

おっちょこちょいで安月給のお父さんが頑張って沢山キャンプの知識を身につけて僕を連れてってくれたんだ。

楽しかったな…あれ。
お父さんがテント燃やさなければ100点だった。

燃やす……燃やす……。

次に関連付けられるワードは。

エレベーターの階数表示が5階を示す。

薪割り。

そうだ薪割だ。

薪割り…というかどっちかと言うと。

そうだ、お父さんが火起こしの時になにか出してた。

確かお父さんが火起こししてた時木の棒を…。

あれ、なんだっけ。

木の棒をたしか。

エレベーターの階数表示が3階を示す。

フェザースティック。

そうだ。

お父さんは木の棒の先端を削って跳ね返してたんだ。

確かあれはフェザースティックという手法だ。

フェザースティックに絶対使う物だ…あれは。

フェザースティックに確実に使う物といえば。

エレベーターの階数表示が1階を示す。

ドアがゆっくりと開く。

誰もいないエントランスが開帳されていく。

「あっ…………」

僕は。

僕は思い出した。

それがなんだったのかを完全に思い出した。

それが分ってしまった途端僕はすぐさま元いた階数のボタンを連打した。

ドアは再び閉じ今度は元いた階を目指して上り始める。

僕今すぐにでも元いた階に戻らないと行けない。

今すぐ江理香さんの元に戻らないといけない。

頼むっっ早くッッッ。

早くっっ。

フェザースティック。

それは木の棒を鋭利な刃物で削り、木の繊維を跳ね返して火が着火しやすくする手法。

藤本さんが持っていた物。

それは。

「折りたたみ………ナイフ………」

なんでそんなモノを会社に持ち込んでるんだよ。
そんなもの、こんな会社では絶対使わないはず。

しかも時間が時間だ、周りにはほとんど人が居ない。
エレベーターまで向かう時に軽く周りを見たがあの階には誰もいなかった。

おそらくあの階には江理香さんしか居ない。

藤本さんは折りたたみナイフを持って1人で仕事をしてる江理香さんの元へ向かったのか?

なんで?

胸騒ぎがする。

考えみれば藤本さんの言動にはなにか、どこかに微細な異常性を孕んでいたような気がする。

先程まで異様に早く感じていた階数表示ランプの変化が、今ではとてつもなく遅く感じた。

何も無ければいい。
たまたま持ってただけで実は何も無ければいい。

そう願う。

それでも逸る気持ちを抑えられなかった。

早くっ。

早く登れよ!!

江理香さんになにかあったら……僕はっ。

他の漫画を見る