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37話

行ってしまった。

当たり前だ。

自分が追い出したのだから。

こうするしかない。

だってこれ以上は。

私が辛い。

本当にこれ以上はだめ。

これ以上は好きなったら戻ってこれない。

だって…この夏が終わってしまえば、私と彼は。

だから突き放すならあのタイミングしかないと思った。

これ以上好きになったりしたら私はもう仕事なんてまともに出来ない。

今日確信した。

正確には彼と山下さんが食事に行ってる間、ふと気づいてしまったのだから。

だって私は今日、全く仕事に集中出来ていない。

こんなに仕事が進まなかったのは初めてだ。

手を動かしてるつもりなのに、気づけば彼の事で頭がいっぱいになって思考がまとまらなくなっていた。

もしここで引き返さなければ私はもう彼無しでは生きていけないほどに依存すると、そう思った。

私は社会人で彼は高校生、本当ならこんな深い仲になるどころか出会う事すらありなかったのだ。

それが元に戻るだけだ。

だから演じたのだ。

それだけ。

誰もいなくなったオフィスでパソコンを叩く。
仕事をすれば。
仕事がきっと私の心を洗い流してくれる。

そう思い込みたい。
だからそう思い込む。

「あ…れ………」

キーボードが濡れてる。
指先が滑って気づいた。
液漏れ?

ノートパソコンが液漏れなんて聞いたことない。

「………あっ……。」

液漏れなんてしてない。
指先が濡れてる。
手の甲も濡れてる。
頬が濡れてる。

泣いていた。

仕事中に泣いた事なんて今まで1度もない。
今は部下となってしまった当時の上司に入社当時、人とは違うと言うだけで理不尽な扱いを受けても私はめげなかった。

どんな困難でも合理的な判断と建設的な思考と諦めない努力さえあれば打ち勝てると信じていたから。

実際そうして打ち勝ってきた。
自分は強い女だと信じていた。

でも。

私は。

私はこんなに弱かったのですね。

だって。

13歳も年下の男の子に泣かされているのだから。

もし彼がもう一度戻ってきてやり直したいと言い出したらどうだろう。

私はきっと受け入れてしまう。

自分で取った判断を曲げてしまう。

自分の言葉を曲げるのは弱い人間のする事だ。

なら。
その時が来たら私は。
弱い人間になるのだ。

でも。

そうなったらどれほど幸せなのだろう。

彼と過ごした甘く楽しい時間と先程自分が言い放った言葉が同時にフラッシュバックする。

会いたい。

いつものように彼に抱きしめられ、キスされたい。
笑って許して欲しい。

股がムズムズする。

彼に出された後だ、いつもの事。

でも。

言葉では中に出す事を制止しつつ、本当はいつもこの時間が愛おしい。

彼に愛された証のような気がするからだ。

お腹の中で泳ぐそれですら可愛い。

ほんと。

馬鹿な女。

恋愛も幕上も不必要と考えていた数年前の自分に謝りたい。

私は思想を曲げたのだと。

彼が去ってしまったドアを見つめる。

江理香さん、ごめんなさい。でも僕、やっぱり江理香さんを諦められません。

そう言って彼が出てきたらどれほど嬉しいか。

なんてめんどくさい女だ。

山下さんがよく相談してくる彼氏との惚気や不満、いつも聞いてはあげるものの共感した事なんて今まで1度も無かった。

でも。

今なら。

今なら分かる。

山下さんがなにを想い、何に不安を感じて、私に相談をしていたのか。

これが女の本質なのかと、30年生きてきて今やっと知った。

はぁ。

「…………」

仕事なんて手につかずただただ彼が去った扉を見つめる。

「…………」

開かないかなぁ。
あのドア。

ガチャ。

「!!」

開いた。

「ほ、星野…くん??」

私から謝ろう。
彼から謝らせたくない。
ここは大人として先に。
いや、違う。
一夜を共にした1人の女としてちゃんと謝ろう。

許して…くれるかな。

「あ、あの……先程の事は……」

「愛島さん……良かった…まだ帰って無かったんですね」

胸が一気に冷たくなる。
晴れかけた暗雲がまた立ち込める。

扉の前に立っていたのは彼じゃなかった。

藤本くんだった。

そっか。
そうだった。

藤本くんは今日辞めるんだった。
元はと言えばその引き継ぎ業務で私は出社したんだった。

もはや公私混同もいい所だ。
元の目的も忘れて色ボケするなんて。

気を引き締めなければ。
今は上司としても愛島だ。

頬の涙の後を拭いた。

「藤本ぐん……ですか…すん……書類をまとめるにしては…随分時間がかかったんですね」

「あー、そうですね…その事なんですけど。」

「なんですか?また記載ミスしちゃいましたか?」

「あーいえ…それに関してはもうどうでもいいというか……」

「は、はい?」

藤本くんはゆっくりと私に近づいてくる。
どうしたんだろう。
なにか不安でもあるのだろうか。
仕方ない事、転職というのはそれなり不安も感じるはず。

「とりあえずどうしてこんなに時間がかかったのか説明願えますか?」

「説明…ですか」

「一応私は君の残した仕事のせいでこうして会社に残っているのです……ならせめて急ぐ努力や前向きな姿勢を見せて欲しかったのですが」

「いや、僕も待ってたんですよ?愛島さん」

「…………はい?」

「だって…僕今日が最後なんです。愛島さんからしたらもう僕には会えない訳ですよ?これならきっと愛島さんも焦ってくれるって思ってたんですけどね」

「えっと…すみません。話が見えないのですが。」

「まぁいいです。愛島さんは感情表現が苦手な方なのは僕も十分わかってます…なのでやはり僕からリードしないとですよね。」

「えっと…君はさっきからなにを言っているのですか?」

藤本くんの話はさっきから的を得ない。
どうしたのだろう。
もしかしたら転職にあたりなにか大きな不安でも抱えているのかもしれない。

「あっ………ひょっとして転職先になにか不安が?
……だったらもっと早めに私に相談して頂ければそれなりにお世話してもよかったのに……君は入社当時からなかなか相談してくれない子でしたし。」

「いえいえ…そこは大丈夫ですよ…僕…起業しようと思ってるんです」

「起業…ですか…。私としては少し心配ですね……君は熱くなると周りが見えなくなる節がありますから。人の話をよく聞かない癖もあります。」

「いや大丈夫ですよ!だって愛島さんも着いて来てくれるんでしょ??」

「…………」

「…………」

「は、はい??」

「い、いや…だから…愛島さんって僕の事好きじゃないですか…だから僕が退社するって聞いたらきっと着いてきてくれるって思ってて…その連絡も来ると思ってたからこの時間まで待ってた訳なんですけど………。」

「えっ!?…は、はい??…えっと…すみません…繰り返すようですが話が見えません……私が藤本くんの事を好いている…と??」

「いやだってそうでしょ、僕が仕事でミスをしたら必ず尻拭いしてくれるし、熱心に仕事のノウハウを教えてくれるし…それでも分からないことがあるって言ったらお昼休憩中も僕の事を探して教えようとしてくれるし…僕がミスをして落ち込んでいたら甘いスイーツとか持ってきてくれたりするじゃないですか。こんなの僕の事好きって言ってるような物じゃないですか?違いますか?違わないですよね?」

「ちょ、ちょっと待ってください…落ち着いて……」

「好きじゃないならあんな待遇してくれないでしょ?違いますか?」

「そ、それは…仕事熱心な部下を持って、それが誇らしかったので私もその情熱に応えようとしていただけで………」

「は???違うんですか???…だって愛島さん僕以外に好きになる人なんて居ないでしょ……居ないですよね????ねぇ???」

「うっ………」

居る。
居ますよ。
私は彼の事で頭いっぱいです。

「い………」

「はい??なんですか???」

「居ます…よ…慕っている男性…なら……」

「は??????????????」

「私は……今……ちゃんと恋……しています……」

「はぁっっ!??」

バンっっ。

「きゃっ……」

藤本くんがデスク下のゴミ箱を蹴り飛ばす。

「誰だよそれ……言えよ……おいっっっっっ」

「……ふ、藤本くん…お、落ち着いて……」

「言ったら落ち着くわ…はよ言えよ」

「…………」

「…………」

バンっっっ。

今度はデスクそのものを蹴り飛ばす。
怖い。
怖いよ。
どうしちゃったの。

「い、言いますから………お、落ち着いて………」

「で?誰なのそれ……あー経営企画部の村上とか???イケメンだもんなあいつ……」

「い、いえ……そのっ…」

「は?違うの??じゃあ誰」

「そ、その……」

「誰だよ…」

もう彼への気持ちに嘘はつきたくない。

「…………」

「…………」

「ほ、星野………くん…」

「え……誰」

「…………」

「…………」

「……今日……一緒に…居た………子……」

「…………」

「…………」

藤本くんがポカンとする。
当たり前だ。
恋愛をするにしては年が離れ過ぎている。

しばらくして誰の事か理解できたらしい藤本くんは激昂した。

「はぁぁぁぁぁ!?!?!?!あいつ!!?あのガキ??馬鹿じゃねぇの!!!?はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!???」

バコンッッ

「ひっ……」

「てめーみたいなババアがあんなガキと付き合える訳ねーだろ!!!馬鹿じゃねぇの!!!ゴラァァァ!」

バコンッッッバコンッッッ

「きゃっ……や、やめて……」

「おめーはあんなガキなんかにケツ振ってねーでさっさと俺にケツ出せってんだよ!!俺だったら金稼ぐ力だってあのガキより何倍もあんだよ!!!頭悪いんかゴラァァァ!!」

チャキン

藤本くんがなにか取り出す。

あれは。

うそ。

ナイフ。

「おい………」

「わ、悪い冗談はやめてください藤本くんっ……そ、それで何をする気ですかっ………」

「…………」

「…………」

「藤本………くん?」

「脱げ」

「は、はいっ!?」

「ヤラせろ……今すぐ」

「なっ…何を言ってるんですか!!」

「いっつも馬鹿デケェ乳振りまきやがってよぉ……俺はいつかその乳揉んで毎日セックスできる日が来るって信じてたのによぉ……いいから今すぐ脱げっ……俺のチンコ味わったら気が変わんだろ??なぁ!!!」

藤本くんがナイフをチラつかせながら近づいてくる。
怖い。
怖い怖い。

「や、やめてください……こ、来ないで……」

「いいからヤラせろつってんだよォ!!!」

藤本くんが一気に距離を詰めて襲いかかってくる。
必死の思いで椅子から窓際に避ける。
藤本くんは壁にぶつかりかける。

「は?避けた???ムカつくわ……分かった…1回くらい足とか刺せば大人しくなんだろ…………ニヤニヤ」

「きゃっ……ほ、ほんとに………やめて……お願い…」

「じゃあ俺と大人しくセックスする??それなら痛い思いはしないで済むけど」

「…………」

「…………」

「…………」

「どうなの??ヤるの…ヤらないの??」

「い……」

「おう…」

「嫌…です………」

「は???」

「わ、私が…体を許していいと思える相手は………この世に1人だけです………君とは死んでもしたくありませんっっっ」

「あっそ…死んでも……ねぇ〜?………」

藤本くんがさらに距離を詰めてくる。

「…俺さぁ……基本は合意でヤリたいんだけどさ……もう1個やってみたいプレイあんだよね」

「え………」

「死姦」

「ひっ………な、なにを……」

「死ねよ!!!」

「きゃぁぁっっ」

藤本くんがナイフを振り上げてくる。
だめだ、2回目は避けられそうにない。

私は窓際で完全に座り込んでしまっている。
避ける余力もスペースも無い。

あぁ……。

星野くん助けにきてくれないかなぁ。

無理だよね。

だって私あんな酷いこと言ったんだもん。
今頃タクシー中だよね。

あんな事言っておいて助けて欲しいなんて願ってしまってる年増の女なんてごめんだよね。

ナイフが迫ってくる。

私は目をつぶった。

必死に思い出す。

これが最後の幸せ。

どうせ死ぬなら最後くらい。

こんな男の顔を見て死ぬぐらいだったら大好きな星野くんの顔を思い出しながら。

それぐらいなら…許されるはず。

ごめんなさい。

「おらっっっっっ!!!!!!!!!!!」

ガンっっ…カキンッ…カランカラン。

「ぐぁっっっ……ってぇ……て、てめぇっっ……」

おかしい。
来るはずの痛みが来ない。

おかしい。
私の大好きな匂いが目の前からする。

私が恋した彼の匂いが。

走馬灯ってこんな感じなの。

最後にそんなご褒美あっていいの。

妄想でも彼に会えるなら。

私は目を開けた。

点になった。

「はぁ……はぁ………おい……お前……」

「て、てめぇぇぇぇぇ!!ゴラァァァ!!」

「僕の江理香さんに何してんすか………」

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