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第三話

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地縛霊の黒ギャル月葉
るなは
と出会って一か月ほど経った。あれからと言うもの、彼女の言いつけどおりに毎日橋の下に立ち寄るようにしていたが、残業などで遅くなるとポカポカと叩いてきたりした。

そこで俺がいない間、退屈しないよう、電池持ちの良い小型のラジオをプレゼントしたところ、非常に喜んでくれた。月葉は霊体のため触ることができないので人に気づかれない場所に隠し置き、小音でつけっぱなしにしている。

(彼女がいたらこんな感じなんだろうか。……いたことないから分からんが)

アパートから15分ほどホクホクした気持ちで歩き、橋の下に向う俺。仕事をして、シコって、寝る。ただそれだけだった日常が鮮やかに彩られたような気がする。

(いかん、いかん。そうやって鼻の下伸ばして、いつもキモがられてきたんだよなぁ……)

過去を振り返り自戒する。橋の下につくと、遠巻きから気づいていた月葉が手を振って出迎えてくれた。

「おそっ! 罰として、明日は5時に来てよ!」

「はいはい」

月葉はタブレットを出すのをまだかまだかと待ちわびているようだった。ここ最近は俺とゲームをして過ごすことが多かった。意外にも彼女はオタク気質なところがあり、アニメやソシャゲの好みが一致しており意気投合したのだ。

「今日は~、ぴけチャンネルからよろ~」

「……了解」

だが、当然好みが一致していない部分もあった。この「ぴけチャンネル」なる配信は、俺からすると若者が騒いでいるだけのように思えたが、月葉はいつも爆笑していた。俺が段差に腰掛けると、彼女は俺の横ぴったりに座るのだった。

(距離感近いんだよなぁ……)

膝をそろえて座るのは限られた時間の中、動画のスキップ指示等を出すためだろうが、時折勝手に俺の手を掴みタブレットを操作するのでドキリとする。また、月葉の染め上げられた金髪が霊体であるため、俺の服を貫通し肩をくすぐるのであった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「あひゃひゃ! ウケる~。ねえ、今のちょー面白くなかった?」

「ん……あ、ああ。そうだな」

笑いどころがよく分からなかったのと、彼女に気を取られていたため生返事をする。最初のうちは動画に集中していたのだが、数日も見続けてみるとあまりにどうでもいい内容のため、頭に入ってこないのだ。

「も〜。おじさん仕事で疲れてんの? 張合い甲斐ないじゃん」

構ってちゃん気質もあるのか、頬をふくらませる。ぷっくりしたほっぺは思わず突っつきたくなるほどかわいい。

「そういや今更だけど、おじさんってなんて名前?」

動画の話題で盛り上がれなかったからか、話題を切り替えたようだ。

「佐藤健太だよ」

名前で検索しても他人ばかりヒットするごくありふれた名前だ。

「サトケン!? あはは、ちょー普通! ちなみにあたしは手岸月葉だから。手に海岸の岸で、月に葉っぱのはで、ルナハ。めっちゃ珍しいでしょ?」

名字も名前も今まで聞いたことがない。確かに珍しい。

「月と書いてルナか。今風の子って感じだな。俺の同世代だとまず居ないよ」

「そりゃそうでしょ。あたしの周りにも居なかったね。……基本みんなには内緒にしてるけど、あたしハーフでさ。父親の国の国旗に月があったから、ママが思いつきでつけたんだって」

単なるキラキラネームかと思ったら、中々のパワーワードが飛び出してきた。月葉が金髪をかき上げ、挑発的な目線で顔がよく見えるよう見せつけてくる。

「んっ!? 月葉ちゃんってハーフだったの? お父さんって何人?」

国旗に月というと中東かどこかだろうか。日焼けして黒ギャルなのかと思っていたが地黒なのかもしれない。目鼻立ちがはっきりしながらも、日本人受けする可愛らしい顔立ちをしていたから気づかなかった。

「さあ……何人かはわかんない。ママがちょっと同棲してた間に出来た子らしいからさ、あたしって」

(うおっ……思ってたより凄まじいな)

想像以上に壮絶な家庭環境に言葉を失う。シングルマザーか再婚でもしたのかは分からないが、このエピソードだけで月葉の母親が相当な人物であると分かった。

「それより、今度はゲームしよっ!」

(おっふっ)

月葉はカラリと笑うと俺の膝に手を置いた。彼女のさらさらした手の感触。霊体の手が地肌に当たるので、衣類に覆われているところを触るのはやめて欲しいところだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

あれからアパートに帰って「手岸月葉」で検索をかけると、名前が珍しいからか色々とヒットした。約3年前に出たネットニュースでは顔写真つきで公表され、美人であるがゆえにコメント欄には様々な憶測が飛び交っていた。

(本人はああ言ってたけど、こうやって顔写真まで出てるってことは家族が探してるんじゃないか?)

『大気の状態が不安定なため、明後日より関東から近畿の太平洋側の幅広い範囲にかけて線状降水帯が発生する恐れがあり――』

(それにいつまでもこのままっていうのも……)

長年の一人暮らしの癖で、つけっぱなしにするテレビを聞きながら、マウスホイールを回した。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

約束通り翌朝5時に月葉の元に向かった俺は仕事終わりにも彼女の元に立ち寄った。俺はいつものようにゲームアプリを起動し、彼女とイベントを楽しんでいた。ときおり降る雨を橋が守ってくれる、秘密基地のような居心地だ。

「やっぱ、大人っていいよね〜。時間がなくてもお金でなんとかなるんだからさ――いや、あたしも、もうとっくに大人なんだった」

月葉がここに来てもう三年経っている。制服を着て、当時から見た目は全く変わっていなくとも戸籍上の年齢は刻み続けているのは確かだ。失踪宣告による書面上の死は七年経ってからのはずだし。

「しかも、もうちょっとで誕生日なんだ~♪ おじさん盛大に祝ってよ~」

「もちろん。何か欲しいものはある?」

「やった~♪ ん~また考えとくね」

はしゃぐ月葉。誕生日を喜ぶなんてまだまだ子供だな。

「なあ、ちょっと話があるんだけど……」

俺は昨日の考えをまとめ、話を切り出そうとする。

「なっ何だろう、もしかして告白? 参っちゃうな~」

彼女の頬がほんのりと赤らみ、ほっぺを指でかきはじめた。もしかして”告白”をすれば人生で初めて受け入れてもらえるのかもしれない。そんな魔が差す。

(――いや、浮かれすぎだな。月葉ちゃんは若すぎるし、俺しか頼る相手がいないんだ。そこに付け込むなんて大人のすることじゃない。いやいや、なんで受け入れてもらえる前提なんだ。俺がもっとちゃんとしないと……)

今までもボディタッチをされるたびに年甲斐もなく喜んでいた自分が恥ずかしい。彼女の年齢は早くに結婚した同級生の子供の年齢にも近い。――親と子ほど年が離れているなんて。

「月葉ちゃん。これからもっと真剣に君が成仏できる方法を探していきたいと思う」

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