第六話
濁流の流れと大雨で、音と視界が遮られた橋の下は完全に俺たちだけの空間になっていた。
「なあ月葉
るなは
」
「んー?」
腕枕をしながら月葉のわがままおっぱいを優しくもみしだき、声をかける。絶頂後の心地よい気だるさの中、彼女からもまどろんだ返事がくる。
「地縛霊って何なんだろうな?」
「なに? 急にてつがく的な質問だね」
「いやさ、こうやってしてると月葉が地縛霊だってことつい忘れちゃうんだ。確かに月葉は俺にしか見えないし、触れない、ここから出られないし、お腹も減らない。透明人間だってお腹は減るだろうし、不思議だなって」
俺は彼女が自称地縛霊なことに、どうも引っかかっていた。ネットで調べる限りでは確定的な死亡情報は出ていない。ただ、爆◯イのような地域コミュニティサイトでは、海外に売られただの、海に沈められただの、勝手なことが書かれていたが。
「ああ、そういう……あたしもなんとなく地縛霊って思ってるだけで、自分ではあんまり死んだ覚えはないんだよね。寝て起きて気づいたらこうなってたから」
大したきっかけはなさそうに思える。家庭環境の劣悪さから家出して、野宿したことがトリガーになった? トラックに轢かれたら異世界転生できるくらい、考えても仕方がないのかもしれない。未来志向で考えよう。
「そうだよな、なんとなくだよな。試しに俺に取り憑いたりとか出来たりする?」
「えっ? 取り憑く? え~? そりゃっ♪」
――じゅぶっ
いきなりフェラをしだす月葉。平常時に戻っていた俺の愚息が一瞬で元気になった。
「うおっ!」
「じゅるっ……取り憑くとか分かんな~い♡ もっとおじさんと一緒になってたら取り憑けるかも♪」
なんだそれは。取り憑けないってことだよな。地縛霊とか幽霊とか、分かりやすく呼んでいたが、もっと別のなにかなのかもしれない。そもそも、その二つだって確認されていない超常現象なわけだから、今まで成仏うんぬんとか変に囚われていた俺が愚かだったに違いない。
「よし、月葉今度はお尻をつきあげるんだ」
「は~い♡」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
明け方も近くなると雨脚がずいぶんと弱まってきた。あれからというものの、散々ヤりまくった。俺は失われた青春を取り戻すかのように。……いや、元からなかったのだから取り戻すというのは正しくないのかもしれないが、盛りまくった。
「はあ……はあ……おじさんえっちすぎ♡ あたし初めてなのにイきまくっちゃった♪」
月葉が豊満なおっぱいを俺の腕に押し当てながら、甘えてくる。
「俺も初めてだけど、そう言ってもらえると嬉しいよ」
「えっ? ああ、JKとヤるのがってこと? おじさんの大人のテクで分からセックスだったね♪」
勝手に勘違いする月葉。ちょいちょい月葉は俺が「経験豊富な大人の男」であると勘違いするのがこそばゆかった。そろそろ本当のこと言うか。
「いや……セックス自体、月葉が初めてだったんだ」
月葉は言っていることが理解できなかったのか、少し間が空いた。
「えっ!? どういうこと……つまり、童貞だったってこと?」
「ああ」
「ええ……ちょっと訳わかんないんだけど。あんまり女の人とか興味なかった系? おじさんってそこまでヤバい人オーラとか出てないけど、そんなこと有り得るの?」
やめてくれ、月葉。その言葉は俺に効く。同僚からの風俗の誘いも断っていたら、この歳までこうだ。学生時代なんで作らなかったかは聞かないでくれ……
「就職氷河期の中、もらった内定先で頑張って働いてたらこうなっちゃってた……」
精密板金という業種上、異性との接点がほぼない。今は数少ない女性社員がいる総務で働いているが、ちっぽけな会社なのでほぼ既婚者か年配社員だ。足りない時に現場に立たされたり、独身だからという理由で色々使い勝手のいい便利屋としてこき使われている。
「”こうなっちゃってた”って……まあ別に童貞自体嫌じゃないけど……」
口ではそういうものの、どこか、腑に落ちていないようだ。
「月葉も初めてだったろ? まあ、お互い様ってことで」
俺は満面の笑みで親指を立てる。もう開き直るしかない。
「なにその顔。きもっ、一緒にすんな! あたしみたいな可愛い子が処女守れてるってマジで奇跡なんだからね。まあ親が反面教師だったってのもあるけど……あたしこうみえて乙女なんだよ!」
「なんかすまん。初めて奪っちまって……」
勢いでセックスしたことを謝る。すると、月葉は頬を赤らめてそっぽを向いた。
「……こういう時のために残して置いたんだからいいの!」
いきなりのデレ、やめてくれ、月葉。この言葉も俺に効く。
――ちゅぱっ
「んっ♡ ちょっとぉ♡」
俺は大きなおっぱいにまたかぶりつく。途端に月葉も甘い声を漏らしだす。
「そろそろ人が来ちゃうよぉ♡ あたしは別にいいんだけど、おじさんはやばいよ?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「はあ♡ はあ♡ はあ♡」
今日、何度目か分からない事後。本格的に朝日が差し込んできた。これ以上は、大雨の後ということもあり、役人やら近所のお爺さんが様子を見に来そうな予感がビンビンする。
「幽霊なのに、腰がじんじんするよぉ」
月葉は肉付きの良い腰回りをさすっていた。とろりと中から溢れ落ちる精液がエロい。
「あのさ、今日最後は真面目な話。俺が思うに月葉は死んで幽霊になったわけじゃなくって、きっと元に戻れると思う。……根拠はないけど」
「そーかな? そうかも?」
「月葉、これから元の姿に戻れるように一緒に色々試してみようぜ」
もう、「成仏」なんて言わない。
「りょーかい♪ なんかおじさん生き生きしてきたね。そういうおじさんの方が好きだよ」
最後にキスをして「行ってきます」と橋の下を俺は出ていった。雨は完全にあがっている。アパートに帰ってテレビをつけると、大雨は幸いにも大きな被害をもたらさなかったらしい。俺はシャワーを浴びた後、麦茶を一杯あおり、幸せな気持ちで布団に入った。
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