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第一話【オナニー観賞】-だって、私達、そういう関係でしょう?

部屋のドアを開けると湿り気のある甘い体臭が俺の鼻孔をくすぐった。
けれども俺はそんな非日常的な香りに疑念を持つ時間さえ無かった。思考するよりも速くあまりにも衝撃的な状況が俺の脳に飛び込んできたからだ。

俺の視線の先には一人の女性がいた。

彼女はベッドに仰向けに寝転び、セミロングの黒髪をかすかに乱していた。整った顔立ちを色っぽい朱色に染め、艶っぽい声を漏らしながら、指先で秘部を刺激していた。どこか感じるツボのようなものがあるのだろう。指は単純に前後するだけでなく、とめどなくあふれる愛液を潤滑油にして、さするような動作も織り交ぜながら愛撫を繰り返す。

――彼女は間違いなく、オナニーをしていた。

ベッドの周囲には行為の最中に脱いだのであろう下着やスカートがだらしなく散らばっており、俺の視覚に日常的なエロスを訴えていた。

「あぅ……あん、ぅうん♡ んんっ♡ ふわっあ……ぁ♡ タケルくんっ……はぁ♡」

彼女は頬を紅潮させ、かすかに濡れた長いまつげを伏せる。性器に沿えられた右手とは別に、左手で形の良い乳房をじんわりと揉みやわらかな愛撫を繰り返す。柔肌は彼女の手の中で吸い付くようにして自在に形を変える。手が離れるとぷっくりと勃起した乳首がブラウスの隙間から顔を覗かせた。

俺は目撃した事実を拒否するように、一度開いたドアをなるべく音がしないようにゆっくりと閉める。あまりにも現実感のない光景に動揺が収まらない。心臓の鼓動が一気に早くなり、血液が全身へと循環していくのを感じる。

数度、酸素を行き渡らせるように浅い呼吸をしてから今度は覗くようにして少しだけドアを開いた。じっと薄板の奥に身をかがめるようにして隙間からその光景を見ている。

彼女のオナニーはAVのように激しくはない。けれども生々しい性に溢れた情熱的な動作だった。卑猥でありながらもどこか幻想性さえ感じさせる彼女の痴態に俺は心と股間を奪われている。

「ふわっっ♡ 好きぃ♡ 好きだよぉ♡」

彼女は指先を器用に動かしながら、うわ言のように愛をつぶやく。彼女の中で俺に見せつけているという自覚があるかはわからない。けれども愛と情欲が入り交じった切ない声が漏れるたびに、俺はドアを開けて飛び込んでしまいたい衝動に駆られる。

同時に親しい仲とは言え、極めてプライベートな自慰という行為を見てしまったことへの強い罪悪感が俺の中で芽生えていた。

俺の戸惑いを無視するかのように彼女の動作は次第に淫らさを増していく。

「んんっ……ぁぁあっ♡ んっ、んっ、んっ……♡」

彼女のくぐもった喘ぎ声が少しずつ荒く、大きくなっていくのがわかる。指の動作を繰り返すたびにサーモンピンクの性器は湿り気を増し、粘性の水音を立てる。溢れた液体が光を反射してぬらぬらとした輝きを放っていた。

「あぅぁ……ううぅ♡ はぁ、いい……はぁ……」

吐息混じりの艶めかしい声が大気に溶けていく。彼女が触れるたびに身体はかすかに痙攣し、触れた部分から性感を得ているのだということが遠目からでも察することが出来る。トロリと流れ出た愛液が太ももや臀部まで濡らしていた。

あんなにも濡れるものなのだ。俺ははじめて生で見る女性の自慰が新鮮で、瞬きも忘れ食い入るように見入ってしまう。

「んんっ♡ んんっ♡ タケルくんぁあっ♡ あっ、ふわっ、あんぁ♡ す、好きぃ、あっぁあっ♡」

彼女の動作が小刻みに変わっていく。求めるようにして指先の動作が細やかになっていく。彼女の呼吸が荒くなっているのがはっきりとわかる。額にはわずかに汗が滲んでいる。気がつけば俺自身も緊張と興奮から手が汗ばんでいるのがわかった。

「はぁぁんんっ♡ 好きぃ♡ だいすきぃ♡」

彼女はベッドの上でひと際強く乱れる。

「んん゛っ♡ ぁん゛んっ♡ ……ぁあっ、あぁ、あっ♡ ぁあ゛っ……」

獣のうめき声のような喘ぎを最後にして彼女の動きは止まった。絶頂、したのだろうか。よくわからない。俺は目を凝らして彼女を観察する。

先程までの痴態が嘘のようだ。部屋は恐ろしいほど静まり返っていた。

彼女は仰向けに寝転んだまま、乱れた着衣を直すこともなく、はぁはぁと色気のある呼吸を繰り返していた。だらりと投げ出された肉付きの良い太ももから伝うようにして透明な液体が垂れ、ときおり蛍光灯に反射してきらめいている。

「……タケルくん、いるのわかってるよ♡」

彼女の一言に俺は身を縮こまらせた。どうやらバレていたらしい。彼女は天井を向いたまま、言葉を続ける。

「ほら、そんなところから見てないでこっち来なよ。怒らないから」

彼女は優しい声色で俺に言った。どこから気づいていたかはわからない。けれども謝るべきだと思った。

「……すまない、セナ」

俺は意を決して半開きだった部屋のドアを開いた。部屋に入るとむわっとした性の香りを鼻が感知した。さっきよりも強い香り。この生臭いモノが彼女から放たれたかと思うと不謹慎ながらも興奮した。

「謝らなくてもいいよ。ふふ、私もタケルくんが覗いてると思ったら、いつもより興奮しちゃった」

セナは乱れた着衣を直すこともなくゆっくりと身体を起こして座った。俺はほとんど裸と言ってもいい状態のセナを直視できず、目をそらして部屋を見渡した。

彼女の部屋は簡素だ。木製の学習机とベッドしかない。衣服のたぐいは作り付けのクローゼットに収納しているのだろう。利便性を追求したビジネスホテルのようだ。

「いや、覗くつもりはなかったんだ……ただ、その声をかけづらくて」

俺は彼女から視線を外したまま言い訳をする。やはり立ち去るべきだったのだろうか。予想外の事態に足を動かすことさえ困難だったとは言え、結果として覗き見してしまったのは事実だ。俺は不誠実な己の行いを強く恥じた。

「入ってきても良かったのに」

セナは自慰を見られたとは思えないほど堂々とした態度で俺に接する。さすがにあの状況で割って入る神経は俺にはない。

「だって、私達、そういう関係でしょう?」

そのとおりだ。俺と彼女は交際関係にある。だからお互い性行為に及んでも別段何の問題もないのだが。

「いや、さすがに……なぁ」

いくらなんでも自慰行為というプライベートな時間に乱入するのは気が引けた。女子だって一人でしたいときくらいあるだろう。

「私はタケルくんがオナニーしてたら割って入るけどなー」

セナの奔放な発言に俺は絶句する。今後、自慰をするときは部屋の鍵をかけようと固く誓った。流石に見られるのはゴメンだ。

「……その、そろそろ、服着てくれないか」

セナは一向に着衣を直す様子はない。上はブラウスをはだけたままだし、下に至っては下着すら着けてない。部屋は暖房が効いているから薄着でも寒くはないだろう。しかし、彼女のそんな姿を平然と受け入れられるほど、俺は女性に慣れていない。

直視出来なくて、横目でちらりとセナを見る。すらりと長い足、肉付きの良いふともも、ぷりんとハリのあるお尻、豊かに生え揃った陰毛、ほどよく脂の乗ったお腹、そして大振りな胸。呼吸するたびにかすかに震える胸は正確なサイズこそ分からないが、男ならば誰もが間違いなく目をやってしまうほどの存在感があった。

「えー、着ていいの?」

挑発するような一言とともにセナは意地の悪い笑顔を浮かべた。ブラウス一枚のまま、俺の前で前傾姿勢を取る。巨峰のような豊かな胸が揺れた。巨大でありながらも瑞々しいハリを失わない乳房に思わず目を奪われる。

「ふふ、タケルくん、おっぱい好きだもんね」

セナは俺を誘惑するかのように乳房を腕で持ち上げ、強調する。まるで突き出すような仕草に思わず反応してしまう。

「っ……!!」

俺は自分の下心を悟られたようで恥ずかしくてとっさに目をそらしてしまった。耳まで赤くなっているのではないかと思うほど顔が熱かった。

「……ねぇ、私が着るよりさ、タケルくんが脱いじゃおうよ、逆に」
「え?」

彼女の突飛な提案に俺は耳を疑った。

「タケルくんもつらいでしょう? ココ♡」

セナはしなやかな指先で俺の股間を指し示した。彼女の痴態を目撃したことで充分すぎるほど興奮していた。ズボンの下でパンパンに張っていて少し痛いくらいだ。

「私、タケルくんがオナニーしてるところみたいな」

セナは俺を誘惑するように熱っぽい口調で提案する。しなやかな指先が俺の肌に触れる。予想だにしない刺激にカラダが反応する。

「ねぇ、私も見せたし、いいでしょ?」

いつの間にか俺が勝手に見たことになっている。とは言え、見てしまったのは事実なので反論は出来ない。

「え、いや、でもな……」

恋人とは言え、人前で自慰行為を始めるのは流石に躊躇がある。

「ね、お願い♡」

セナは邪気のない柔和な笑顔でおねだりする。大粒の瞳は情欲に濡れていた。吸い込まれそうな黒色の輝きに魅せられて俺は流されるように頷いてしまっていた。

「わ、わかった」
「ふふ、やっぱりタケルくんは優しいなぁ、脱がせてあげるね」

セナはブラウス一枚だけという扇情的な姿のまま、身体を動かして悠然と俺の前にひざまずいた。たわわな胸が震えた。彼女はしなやかな指を絡めながらベルトを手早く外していく。

するりと下着とボトムが一緒に引きずり降ろされる。勃起したペニスが飛び出すように外気に晒された。

「うわっ、おっきくなってるね……だいぶ我慢してたのかなー」

セナは挑発するかのように指先で俺のペニスをつついた。思いがけない刺激に股間を震わせる。

「せ、セナの見てたら……その……」

俺は気恥ずかしくなって両手で股間を隠した。セナは俺の気持ちを知ってか知らずか物怖じすることなくじっくりと見据える。

「うんうん、隠さなくていいんだよー、タケルくんも私で興奮してくれたんだね。嬉しい♡」

セナは立ち上がると俺にキスをした。二度、三度、軽くついばむようにして唇を合わせて離す。彼女は濡れた唇を少しだけ釣り上げて、邪気無く微笑んだ。

「さきっぽもヌルヌルだね……ね、タケルくんはおちんちんいじるときどうしてるの? やってみせてよ」

俺は無言で陰茎を握った。かつてないほど本能に強く訴えかける光景に興奮していたのか。途方も無いほど固くなっていた。たまらず皮を使ってスライドさせ始めた。一擦り動かすたびにすぐにでも射精してしまいそうなほど強い快感の波が襲ってくる。

「わ、そうやっていじるんだ。そんなに早くして……痛くないの?」
「い、痛くはない……かな」
「そうなんだ。ふふ、面白いね」

彼女は好奇心を宿した上目遣いで俺の顔を覗き込む。

「タケルくん、顔真っ赤だよ? 夢中になっちゃって……可愛い♡」

ふぅ、とセナの熱い吐息がペニスに向かって吹きかけられる。

「ひゅぅん♡」

不意打ちのような刺激に思わず変な声を漏らしてしまう。

「あはは、可愛い声ー、もう一回してあげるね」

ふぅ、と再度吐息が亀頭にかかった。

「ふふ、タケルくんのおちんちん、先端も赤黒くてえっちな色してるよ? 割れ目から透明なお汁、じくじくって溢れて……指までベトベトしてるよ? ねぇ、タケルくん、気持ちいいの?」

彼女の卑猥な実況が俺の興奮を高めていく。俺は無言で頷いた。不本意ながらとても気持ちがいい。

「き、気持ちいい……」

俺は消え入りそうなほど小さな声で応えた。

「うんうん、わかるよ-、おちんちん気持ちいいって顔に書いてあるもん。タケルくんはわかりやすいなぁ、可愛い♡」
「くっ……」

反論できない。人前でオナニーをするという異常な状況にもかかわらず、俺はかつてないほどの興奮を得ていた。

「ほらほら~、もっとおっぱい見ても良いんだよ? 脱ごうか?」

セナはブラウスの前を大きくはだけた。ぷるんと飛び出すようにして白く大振りな果実のような乳房が俺の眼前に現れる。肉色をした乳首はぷっくりと盛り上がっており、否応なしに先程の痴態を俺に回想させた。

「ほら、触って……」

セナはあいているほうの俺の手を自らの乳房にあてがった。手のひらにふんわりとした弾力のある感触が伝わる。壊れ物に触れるようにして指先を動かすと、温かみのある柔肌が指の腹に吸い付くように形を変えていく。

「すごい……」

俺は思わず嘆息の声を漏らした。もっちりとした独特の質感があった。

「ふふ、すごいでしょ。最近またおっきくなったんだよ?」

彼女は誇示するかのように俺の手の中に胸を押し当てる。ずしりとした重厚感が俺の手のひらを楽しませる。

「タケルくんのおかげかな? 好きな人いるとおっきくなるっていうもんね」

好き。という言葉に胸の奥から熱いモノがこみ上げてくるのを感じる。性欲とは別の温かさだ。

俺は片手でセナの巨乳を愛撫しつつ、もう片方の手で自慰にふける。かつてないほど贅沢なオナニーに完全に陶酔しきっていた。
腰の底から熱いものがこみ上げてくるのを感じる。紛れもない射精前の感覚だ。

「あっ♡ あ、ううぅくっ♡ もう……」

我慢の限界だった。思わず声を漏らす。セナの手前こらえてはいるが、もういつ漏れ出してもおかしくない状態だ。

「射精しそう? ふふ、ちょっとまってねー」

セナは手を伸ばしてベッドの上においてあったティッシュケースを寄せた。

「ティッシュ、ちゃんとあるからね、安心して射精していいよ」

俺の脳の理性が吹き飛び、射精したいという極めて本能的な欲求が吹き出した。

「あっ、ダメェ、くっくっふっう♡ い、イクぅ……」

しごく手が速度を上げていく。射精への欲求を抑えきれず、一気にスパートをかけていく。

「あ、でも……イクときは、ちゃんと好きって言ってね、私みたいに♡」

セナの一言は痴態を回想するには充分すぎた。俺の頭のなかで乱れきった彼女の姿が一気に思い起こされる。俺のことを考えてあんなにも興奮していた彼女の姿があまりにも愛おしく、そして俺の内面にある情欲を掻き立てた。

「ご、ごめん、セナぁ、も、もう駄目だぁ♡ ふっ、うぐっ、うあぁ、うぅ、はぁ♡……好きぃ、好きぃぃ♡」
「いいよ、タケルくん、射精して。私の事いっぱい好きって言って」
「ああっ、好きぃぃぃい♡ あぁ、はぁっふっうっ♡ うっ♡ くっ、好きぃいいいい♡」

俺は愛を叫びながら一気に熱を解放した。睾丸に溜まっていた白い塊が一気に放出される。ドクドクと熱い精液が射精管を通って吐き出されていくのがわかる。

「おっ、ふっ……ああっ、くっ、う……」

俺は数度の痙攣を繰り返しながら、たまりきっていた精を全て吐き出した。同時に頭の中が冷水を浴びせられたかのように冷静になる。

ふと見ると、俺が吐き出した白濁液は全てセナの手のひらで受け止められていた。

「うわー、熱い精液がこんなにたくさん……いっぱい射精したねぇ♡」

セナは頬を上気させ、両手にたまった精液を嬉しそうに見つめる。そして放心状態の俺を尻目にして、まるで水でも飲むかのように両手を口を近づけると、ちゅっ、ずずっっと卑猥な音を立てながら精液をすすりとった。

「……の、飲んだ、のか?」

俺は動揺のあまり彼女に問いかけた。セナは精液を含んだまま首をタテに振った。そして喉を鳴らしてゴクリと飲み込んだ。

「んっはぁ……タケルくんの苦くて臭くて……スッゴク濃い……結構、溜まってた?」
「あ、あぁ……」

彼女の突飛な行動に俺は戸惑っていた。確かに彼女は性に関して俺より遥かに貪欲な面がある。しかし、まさか飲精なんてことをするとは思わなかった。

困惑している俺を尻目にして、セナはティッシュを二、三枚引き抜くと俺のペニスを拭き始めた。

「あ、ごめっ、じ、自分でやるから」

俺の静止を意に介さず、セナはニコニコとした笑顔のまま射精の後処理を始める。

「いいよー、遠慮しないで」

セナは撫でるように俺のペニスに触れる。その感覚がなんともむず痒い。

「ふふ、いっぱい射精できてえらいぞー」

俺は彼女にされるがままに後処理をしてもらう。情けない光景ではあるが、どこか心地よさも感じていた。

「……ねぇ、タケルくんは私とえっちなことするのイヤ? エッチな女の子は嫌い?」

セナは俺のペニスを拭きながら問いかける。神妙な彼女の面持ちに俺は不安になる。

「そんなことはない!」
「そっか。良かった」

セナは安堵したように頬を緩ませた。

「ど、どうしてそんなことを?」

セナの突然の問いかけに俺は不安感を抱いた。俺が不慣れなばかりに彼女に不愉快な想いをさせてしまっていたのだろうか。

「私達、付き合って三ヶ月になるけど、まだあんまりえっちなことしてないでしょう?」
「それは……まぁ」

二人が肌を重ねたのはまだ片手で数えるほどだ。セックスは一度したっきり。一般的な回数はわからないので、多いか少ないかはわからない。ただ、セナが『まだ』と表現するということは少ないのかも知れない。

しかし、俺はセナ以外の女性と性行為をしたことがない。だから、どう振る舞っていいかわからないし、どうすれば喜んでもらえるのかさえよくわからない。強引に迫ったり、ましてや彼女が嫌がるようなことをしてしまったらどうしようと不安になり、つい二の足を踏んでしまう。

「最初はタケルくんそういうこと嫌いなのかなーって遠慮してたんだけど……」

そんなことはない。俺もエロいことはしたい。問題はどうすればそういう状況になるかわからないだけだ。

「今日思ったんだ。もしかしたらタケルくんは責めるより責められるほうが好きなんじゃないかって」

セナは精液を拭き取ったティッシュを丸めてゴミ箱に向かって投げた。丸めたティッシュは放物線を描いてプラスチック製の水色のゴミ箱に見事に収まった。

「そ、そんなことは……」

無いと否定し終わる前に俺の唇は塞がれた。セナは俺の言葉を拒否するかのように唇を重ねてきた。上唇を重ね、舌で触れていく。まるで俺の心を全て奪い尽くすかのような濃厚なキスに俺は言葉を失った。

「いいよ、無理しなくて。私が教えてあげるから」

セナの表情に淫靡な色が浮かんでいた。まるで肉食獣のような獰猛な笑顔に気圧される。

「これからは二人でたくさん気持ち良いことしちゃおう♡ フェラも、パイズリも、セックスだって。タケルくんが感じる方法いっぱい探してあげる」

それは良いのだろうか。男として俺がリードしなければならないのではないだろうか。俺の疑念を知ってか知らずか、セナは俺の首に両腕を巻き付けるようにして抱きついてきた。

「いいんだよ、私はリードするほうが好きだから、タケルくんのこと、いーっぱい可愛がってあげるね♡」

顔に押し付けられたやわらかな両胸の感触に俺は心を奪われる。

「でも、他の女の子に興奮しちゃダメだよ? 私だけだよ?」

彼女は熱っぽい吐息とともに俺の耳元でそう囁いた。

「私はタケルくんのモノ、タケルくんは私のモノなんだから」

セナはまるで噛み付くかのように俺の首に強くキスをした。

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