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第六話【ちんぐり返し】-セックスするより楽しいし、興奮するの

わずかに酸の混じったコーヒーの香りで俺は目を覚ました。皮膚感覚が外気を察知する。いつも寒いはずの部屋は充分に暖かかった。ふと見ると暖房はついていない。調理で室温が上がったのだと頭が理解するまで少し時間がかかった。

「おはよう」

白いエプロンを着けたセナが俺の顔を覗き込んだ。キレイに切りそろえられた前髪がはらりと揺れ、女性特有の甘い香りがした。

「……おはよう」

俺は覚醒しきっていない頭のまま、ゆっくりと布団から這い出した。昨夜マッサージを受けたあと、狭い風呂場で汗を流した。その後は疲れが出たのかセナと二人でドロのように眠った。おかげで身体がすっきりしている。

「タケルくん、ムスコさんも朝から元気だね♡」

セナは俺の下半身を見て、愛おしそうに微笑んだ。彼女が見つけたものを確かめるためにゆっくりと視線を動かすと俺の陰茎が見事に朝立ちしていた。

「ごっ、ごめっ……」

俺は慌てて両手で股間を隠した。なんとか鎮めようとするが、一向に小さくなりそうもなかった。

「いいよー、男の子だもん。朝からおっきくなるのは健康な証拠だよ」

彼女は照れた様子もなく俺が抑える手を払い除けて、すっかり固くなった股間のテントを優しくさする。

「ふふ、ねぇ、ヌいてあげようか?」

セナの突拍子もない問いかけに俺は戸惑った。

「え?」

思わず間の抜けた返答をする。

「私もまだ時間あるし……タケルくんも今日は昼からでしょ?」

「あ、あぁ、まぁ……」

俺は横目で時計を見た。彼女の言うように出勤まで時間は充分にあった。

「それにほら、男の人ってそういうの好きなんでしょう?」

セナは俺の内心を見透かしているのではないかと思うほど、蠱惑的な笑みを浮かべながら問いかける。

「そ、そういうのって……」

「朝勃ちフェラ♡」

セナは健康的で艶のある唇をはっきりと動かして卑猥な単語を口にする。あまりにもアンバランスな発言に俺は気後れする。

「う……」

憧れはあった。起き抜けで勃起するたびにフィクション作品ではおなじみの光景を回想したのは一度や二度ではない。

「ほらほらー、どうせ着替えちゃうんだし、パジャマ脱いで♡」

セナはしゃがんで俺を見上げる。奉仕する気満々の姿勢に俺は途惑いを隠せない。

「それとも……脱がせてほしいの? 甘えん坊さんだね」

セナの手が俺のパジャマへと伸びていく。穏やかに微笑んではいるが彼女の目は本気だ。このままじっとしていたら本当に脱がされてしまう。

「じ、自分で脱ぐからっ!」

子供じゃあるまいし、そこまで面倒はかけられない。

「はーやーくー♪」

セナは両手をリズミカルに叩きながら俺を急かす。俺は彼女に急かされるがままにズボンと下着を脱ぎ捨てた。ピンと張ったペニスが外気にさらされる。

「こ、これで、いいか?」

俺はペニスを突き出すようにして彼女の前に差し出した。構図としては男性側が優位にしか見えないのに、明らかに俺が支配されていた。

「いい子、いい子~、よく出来ましたー」

彼女はまるで子供でも愛でるような口調で俺のペニスに触れる。いつの間に取り出したのかひんやりとしたシートで俺のペニスを撫でるようにして拭いていく。

「じゃあ、まずはおちんちん、キレイにしようね~」

俺はシートによって与えられるかすかな涼感に身を震わせながら、彼女に亀頭、陰茎、睾丸、果ては肛門に至るまでじっくりと拭われていく。

「おしっこは大丈夫?」

以前のことがあるからだろう。セナは俺を見上げながら優しくまるで子供に尋ねるかのように問いかける。

「だ、大丈夫」

勃起はしているが尿意はない。

「ふふ、したくなったら我慢しなくていいからね」

セナはシートをゴミ箱に投げ捨てた。ポンとプラスチック製のゴミ箱の底が鳴る音がした。

「それじゃあ……いただきまぁす、あむ♡」

セナは捕食前動作と言わんばかりに髪をかきあげた。黒髪をかき分けて彼女の形の良い左耳がよく見えた。彼女はゆっくりと口を開き、躊躇なく俺のペニスを咥えた。

「んちゅ♡ あむっ♡ んぷっ♡」

彼女は俺の先端を舐めるようにして舌で丁寧に愛撫していく。唾液で十分に濡れた唇がカリに当たるたびに無意識のうちに甘い声が漏れる。

「ううぅ……ううぅ……ふっ……♡」

俺に跪くようにしてセナはフェラチオ奉仕を行う。その姿は清楚で献身的でありながらも、間違いなく卑猥としか言いようのない光景だった。俺は気づけばその状況だけで充分に興奮しきっていた。

「れろ……どう? あむ♡ 朝一番からおちんちん、れろ♡ 咥えてくれる女の子、なかなかいないよ? ちゅっ♡」

セナはアーモンド型の目を輝かせながら、挑発するような上目遣いで俺を見上げる。

「あぁ……ありがとう、気持ちいいよ……セナだけだよ……」

俺は思わず彼女の頭を撫でた。さらりとした髪が指先に触れ、甘い香りが広がった。彼女は余裕のある表情で嬉しそうに目を細めた。

「えへ……もっと、してあげる」

俺の反応に気を良くしたのか、セナのクチははゆっくりと俺の根元まで進行していく。

「ちゅっ♡……ずずっちゅっ♡……んぐっ♡ んむ♡ んぷっ♡」

唾液を潤滑油にして確実に俺のペニスが快楽に支配されていくのがわかる。射精管を絞り出すように舌が上下に触れていく。生暖かい口内に包まれる感触がたまらなく心地よい。

「ちゅっ……んちゅ♡ んぐっ、んっ、んちゅ♡」

セナは器用に顔を動かしながらペニスへの前後のストロークを繰り返す。

「あっぁ……ぁあっ♡ ああっぁ♡」

俺は砕けてしまいそうな濃密な快感の波に腰を震わせた。彼女の熱がペニスを通じて俺の中に流れ込んで来るような感覚だった。いつまでも彼女の口に咥えられていたい、そんなバカげたことを思ってしまうほどだった。

「……そうだ」

奉仕を続けていたセナの顔に怪しい色が灯る。いたずらを思いついた子供のような表情に俺は反射的に身構える。

「んふふ……タケルくんはこっちも感じるのかなぁ?」

セナの腕がゆっくりと俺の背後に回る。気づけば彼女は腕を回して、俺の尻に触れていた。

「え?」

さわさわとした手の感触が俺の尻を撫でる。まるで痴漢でもされているかのような手つきに思わず鳥肌が立つ。

「だってほら……触ると」

セナの指先が尻の割れ目に侵入し、俺の菊紋に強く触れた。反射的にきゅっと肛門がしまった。

「きゅぅう♡ って、えっちに動いてる。嬉しいんでしょ? 本当は」

「んっ♡ ……う、嬉しくなんか」

彼女の予想外の行動に俺は戸惑った。まさかそんなところを愛撫し始めるとは思わなかった。

「クスクス、素直になっていんだよ? 挿れるのはローション無いから無理だけど」

セナは俺に構うこと無く指先で俺のアナルをグニグニと弄ぶ。違和感しかない愛撫は次第に、俺のカラダにかすかな電流を走らせた。

「んっ……♡」

「ほら、感じるよね? 触るだけで、おちんちんハネてるよ。あはっ、おもしろい」

彼女の言うとおり、肛門を愛撫されるたびに唾液に濡れたペニスがハネた。気持ちいいというよりも反射しているというほうが正しいのではないのだろうか。俺の快感とは別のところでカラダが動いている感じがした。

「お尻の穴、気持ちいい? 女の子みたいにアンアンって感じちゃう?」

セナは意地悪く目を細めながら問いかける。小悪魔的な笑いに心が揺らいだ。

「か、感じてなんか……っ」

俺は恥ずかしくなって咄嗟に否定した。

「ふーん、じゃあ、タケルくんが素直になるまで、お尻の穴、舐めてあげる」

「え?」

あまりにも突拍子もない一言だった。俺があっけに取られているスキにセナは体重をかけて俺のバランスを崩し、布団へ押し倒した。

「タケルくん、本当無防備だよね。ダメだよー、フェラされたくらいで女の子に簡単に押し倒されたら♥」

確かに。油断していたとは言え筋力も体格も違う女子に押し倒されるという構図はなんとも間抜けだ。

セナは両腕で俺の両足を持ち上げた。彼女の細腕のどこにそんな筋力があるのか不思議になった。

「ふふ、ほら、両足持って、M字開脚して? わかるでしょう?」

彼女はできの悪い生徒に教えるような優しい口調で俺の行動を促した。

「うぅ……」

こうなってしまえば俺に逃げ場はない。俺は恥辱に震えながら観念して両腿を支えて、セナに見せつけるようにして股間を広げた。勃起した陰部が丸見えになるのがわかる。彼女の視線を感じるたびにまるで目で犯されているような気がして不覚にも陰茎に血が通っていくのがわかる。

「もうちょっと腰上げて……そうそう♡ 上手」

俗にいうちんぐり返しのポーズを取らされる。俺の身体は硬いので、なかなか体勢がつらい。

「おちんちん、ゾウさんの鼻みたいにぱおーんってなってるね。お尻の穴も丸見え……ヒクヒクって動いてるよ。キレイなピンク色してるよ、かわいい……ねぇ、見られて興奮してる?」

「くぅ……」

彼女の挑発に俺は顔が赤くなっているのを感じていた。恥ずかしくて顔をそむけた。

「恥ずかしがってる顔もかわいい……ふふ、もっと可愛くなるように。私がタケルくんをいじってあげる♡」

セナの指がゆっくりと俺の肛門に触れた。

「くぱぁって……ほら、お尻の穴、開いちゃった♡」

彼女の両指で肛門が押し広げられている感覚があった。屈辱的な状況にもかかわらず、俺のペニスは歓喜を示すかのように激しく上下運動を繰り返した。

「や、やめろぉ……」

俺は自分でもわかるほど声を震わせながら抵抗する。

「ホント、素直じゃないよねー、本当は嬉しいくせに。まぁ、そういうところも可愛いんだけど……れろ」

俺のアナルに不意に生暖かく柔らかな何かが触れた。直感的に正体を察するが、あまりにも現実感の無い想像だった。

「えへっ、お尻の穴、舐めちゃった♡ 嬉しい? 嬉しいよね? おちんちん見てたらわかるよ」

やはり彼女が俺の肛門を舐めたのだ。その事実を認識すると興奮と同時に気恥ずかしさが湧き上がってくるのがわかった。

「ちゅぷ♡ ふふ、おちんちんが……っんぐっ♡ わんちゃんの尻尾みたいに……ちゅっ♡ ブルブルって……んぐっ♡」

セナは俺の扇情を引き出しながら肛門に舌を這わせていく。特に吸ったりする動作も交えているようでいやらしい水音がだんだんと大きくなっていく。

「はぁ、ふっ、お尻、ダメェ、ああっ♡ や、やっぱ、き、汚い……くっんぅ♡」

出すための器官を舐められるなんて想定もしていなかった。

「んうぅ? 汚くないよ、ちゃんと拭いたもん」

セナは特に気を害した様子もなく、再び温かい舌先をチロチロと俺の肛門に這わせていく。

「くっ、うくっ、うっ♡」

未知の刺激に俺は身を悶えさせた。慣れない快感はあまりにも魅力的で抑えても声が漏れ出てくる。

「タケルくん、お尻舐められて感じちゃうの? やっぱりマゾなんだね……私に責められるの大好きだもんね」

否定は出来ない。実際、自分でも責められる方が好きなんじゃないかと思い始めてきた。この状況に抵抗すら出来ないのが何よりの証拠に思えた。

「ね、ほら、ちゃんと好きって言わないとやめちゃうよ?」

セナの愛撫が止まった。下半身が切なくうずく。もっとして欲しい。もっと快感に浸っていたい。俺はたまらず声をあげた。

「す、好きぃ♡ セナにぃ♡ お尻、責められるのっ、好きぃ♡」

懇願するようにおねだりをした。みっともないと言う感覚がすでにどこかに吹き飛んでいた。

「ふふ、いいよ。大丈夫、私がタケルくんのこと、骨の髄まで可愛がってあげる」

セナは再び愛撫を再開した。俺の肛門を舐めながら、指先をペニスに絡める。そのままゆっくりとペニスをストロークさせた。

「ふっ♡ はぁ……♡ はぁ、あぁ、うう……っ♡」

じくじくと先端からいやらしい音が漏れる。まるでアナルをいじることで俺の下腹部に溜まっていた熱を一気に吐き出させるような動作だった。射精前特有の開放感が一気に押し寄せてくる。

「んっ、ちゅっ♡ どう? おちんちん、気持ちいい? ふふ、お尻びちょびちょ、コレくらい濡れてたら指でも感じるかな?」

セナは舌先から指での愛撫に切り替えた。まるでアナルのシワの一つ一つを確かめるかのように触れられているような感覚があった。

「うはぁっ、き、気持ちいい……♡ あぁううぅう♡」

俺はたまらず喘ぎ混じりに返答する。

「タケルくんのお尻の穴、おまんこみたいになってるよ? パクパク物欲しそうに動いて……ふふ、練習したら指とかもっと太いのも入っちゃうんじゃない? 淫乱なお尻、そうやって私を誘惑するんだね」

セナは優しくも熱っぽい口調で俺を責める。意識の底にある欲望を並べ立てるような挑発に俺は心を乱された。

「ゆ、ゆうわくなんて……」

そんなつもりは全く無かった。どちらかと言えばずっとされている側だと思っていた。正直、セナが俺の姿を見て興奮しているなんて想像も付かない感覚だった。

「してるよ」

セナは断定した。彼女にしては珍しいピシャリと言い放つような口調だった。

「タケルくんのおちんちんがおっきぃと私も興奮するの。いやらしい喘ぎ声や真っ赤なお顔、えっちなお尻を見るたびに私の身体の奥からじゅんってえっちなお汁出ちゃうの」

彼女は肛門への愛撫を交えながら、俺の陰茎を的確に射精へと導いていく。何度もされた動作には淀みがない。決して強くはないのに、俺の射精への興奮が強まっていく。

「あ、ああっ♡ き、気持ちいい♡ うくっ、ああっ、うっ、いい、セナぁ……ふっあぁ♡」

「あは、面白い。いいよタケルくん、最高だよ。こういうのセックスするより楽しいし、興奮するの」

彼女の顔は紅潮していた。潤ませた視線を俺に向けながら、情熱的な動作でペニスを上下させていく。まるで彼女自身の興奮を証明するために俺の身体を使っているかのような激しさに俺はたまらず身を捩らせる。

「もっと、もっと、私を楽しませて。エッチな声聞かせて……」

セナの吐息が肛門にかかる。熱気を帯びた呼吸は舌とは違うぬくもりを俺に与えた。

「はぁっ♡ ぐっ、ううぅ、はぁっ♡ あぁ……ううぅ♡」

まるで身体全体が楽器にでもなってしまったかのように俺は無意識のうちに喘ぎ声を漏らす。

「そうそう、その調子……甘い声だけになっちゃうね。もっと、もっと出して、タケルくんも気持ちいいし、いいよね?」

セナの愛撫は激しさを増していく。肛門を撫でる指の動きも激しくなってきた。

「ふっ、うはぁっ、きもちいい、ああっ、お尻、あぁ、ち、ちんぽああっ、あぁあ、う、イキそう♡」

頭がおかしくなりそうだった。彼女の前で開脚しながら陰茎をしごかれる。肛門への愛撫が想像以上に気持ちよく、より一層俺の恥辱を掻き立てていく。

「あぁ、くっう♡ 射精、射精しおう、おか、おかしくなるぅ♡」

お腹の下辺りにたまった熱が行き場を求めていた。腰のそこから射精したいという欲が湧き上がってくる。先端は興奮しすぎてもう、漏らしてしまったのではないかと思うほど濡れていた。

「ほら、イッちゃえ♡ お尻の穴責められて、女の子みたいな喘ぎ声あげながら、濃厚ザーメン発射しちゃえ」

セナは指先での肛門への愛撫をやめた。再び顔をうずめるようにして口を近づけるとアナルにキスをした。

「ちゅっ♡ んっ……♡ じゅぷっ♡ ずずっ♡」

彼女はまるで肛門にディープキスでもするかのように舌を絡めていく、同時に手は器用に包皮を使ってストロークしている。

「ああっ♡ ううぅ♡ ううぅ♡ はぁっ、ああっ♡ ううぅ♡」

下半身の前後から感じる性の衝撃に俺は身を震わせた。かつてない愛撫に頭が白くなっていく。

「あむっ♡ お尻舐められて感じちゃうなんて……ずずっ、かっこ悪い。でもかわいい、ずっ♡ タケルくん ほら、いっぱい舐めて、ちゅっ♡ あげるからぁ……」

「私のためにぃ、ちゅっ♡ ぴゅっぴゅってザーメン、射精してぇ♡」

瞬間、下腹の力が緩んだ。手のストロークに寄って睾丸から一気に射精の熱水が吹き上げてくる。

「うっ♡ で、射精するぅ♡ ふっ、ふっ、ううぅあ、ふっ……♡ あぁはぁっ!」

ペニスが水鉄砲になったのではないかと思うほどの勢いで俺は射精した。熱く飛び出した精液が激しく顔にかかった。独特の生臭さが顔中に広がる感触があった。

「あは、すごい顔っ♡」

セナは俺の顔に付着した精液を指で救うと俺の口元まで運んだ。

「ほら、タケルくん、なめとって」

「はぁ♡ はぁ♡……そ、そんな……」

自分の精液を飲むなんて。たまらず顔を逸らそうとするが射精後特有の脱力感も相まってうまくカラダに力が入らない。

「ほら、早くぅ♡ 飲まないと、お仕置きするよ? あとでもっとひどいもの飲ませちゃうよ」

ひどいものってなんだ。俺は恐怖を覚えながらセナの細指を咥えた。ぷるんとした精液は口に含むと、舌のうえで得体の知れない苦味と海産物のような臭みが広がっていく。食品ではありえない臭みに俺はたまらず顔をしかめた。

「ほらほら、飲んでぇ♥」

俺は意を決して飲み込んだ。喉に粘り気が絡みつく。気持ち悪かった。

「美味しい?」

美味しいはずもない。俺は無言で首を横に振った。

「私はいっつもそれ飲んでるんだよ?」

そう言えばやたらと飲んでいた記憶はある。改めて彼女の凄さを実感した。

「ふふ、タケルくんが好きだから出来るんだよ。私の愛の深さ、わかった?」

セナは俺を褒めるかのように手のひらで優しく頭を撫でた。

「あ、あぁ……」

実際、セナは俺に不釣り合いなほどよくしてくれる。性行為はもちろん、時折家事までしてくれるのだから頭が上がらない。それが愛だと言うのならば、彼女は充分すぎるほどの形を俺に示し続けてくれている。

果たして恋人だからというだけでここまでしてくれるものなのだろうか。俺の中で疑念が湧き上がる。

「困らせちゃった? ごめんね。私が好きでしてることだから、タケルくんはそこまで深く考えないでいいんだよ? ただ……」

俺の表情を見てにこやかな彼女の顔にわずかに影が差すのがわかった。

「私だけを愛してね。他の人は見ないって約束して」

セナの表情は穏やかだ。しかし、その瞳の奥には真摯な願いがこもっていた。

「……約束するよ、俺はセナが好きだから」

実際にセナ以上の女性なんてめったにいないだろう。可愛くて巨乳で性格も穏やかだし家事も上手だ。今日のように暴走することはあるが、それを差し引いてもおつりが来るほどの存在だ。俺が捨てられるようなことはあっても、俺が彼女を見限ることなんて何を言われても無い。

「ありがとう」

セナはボディシートを取り出すと、俺の顔やカラダにかかった精液を手早く拭き取っていく。あっという間に拭き終えると早々と立ち上がった。

「じゃあ、私はそろそろ大学行くね。タケルくんは一回シャワー浴びたほうがいいかも♡」

彼女はそう言って俺の首筋に軽くキスをした。ついばむような柔らかな口づけだった。触れられた部分にじんわりと熱が伝わる。

「あ、そうそう、朝ごはん、ちゃんと食べるんだよー」

セナは憑き物が落ちたかのように朗らかな笑顔で手を振りながら出ていった。俺はドアがバタンと音を立てて閉まるのを呆然と見守った。

(……シャワー浴びるか)

俺は何気なく彼女が触れた首筋に手をやった。そこからやんわりとした甘く切ない彼女の匂いがした。

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