巨乳キャラあつめました 巨乳のキャラクターが登場する漫画や小説を集めたサイト

波乱の転校生② 爆谷響子

「雑崎
さいざき
クーン! 探したよォ、こんなところにいたんだァ?」

号山組の男たちはアブないクスリでもキメているかのような笑顔で一斉に立ち上がった。

人数は三人。一人はロン毛のオールバックに顎ヒゲ、一人は逆立てた金髪にサングラス、一人は虎刈りに眉ピアスと、全員がイカツい容貌で、目が血走っている。

迂闊にも槍太は逃げそびれてしまった。戦うときに不意打ちが有効なように、逃げるのも不意打ちでなければうまく逃げることはできない。しかし相手はもう立ち上がっているし、槍太が逃げようとしたらすぐにでも飛び掛るような〝心構え〟ができてしまっている。

槍太も、一人であればすぐに逃げていたはずだった。しかし、槍太が一人で逃げたら一緒にいる転校生がどうなってしまうのか、一瞬悩んでしまった。残された彼女が槍太の仲間だとみなされて酷い目に合わされるのでは──と考えてしまったために、三人に立ち上がる隙を与えることになった。

槍太は自分の失敗を悔やんだ。こういう事態に陥ることは考えられないでもなかったのに、同行者を見捨てて逃げるかどうか決めておかなかったのは、槍太のミスだった。

「おい、雑崎ィ。お前どこ行ってたんだよ?」
「もう約束の日は過ぎてるってのに、ちっとも顔を出さないから心配しただろうが」

そんなことを言いながら、逆毛の金髪が槍太に肩を回してくる。残りの二人も横に立っているが、逃げようとしてもムダだぞということを立ち位置で主張するような位置取りだ。

「こっちは徹夜でお前を探し回ってたんだぞ。ちゃんと持ってくるもんは持ってきてんだろうなァ?」

ロン毛の顎ヒゲが槍太の顔を覗き込んで言った。目が赤くなっているところを見ると、徹夜というのはあながち誇張ではないらしい。

そのせいか、三人はやけに機嫌が悪かった。日ごろからチンピラ感丸出しの連中ではあるが、今日は特に酷い。「何か口答えでもしたら即殺す」と顔に書いてあるようだった。

槍太は、そんな三人の恫喝に恐れをなして、真っ青な顔で俯いていた。

もう逃げられない。捕まってしまったからには、せめて出来るだけ怒らせないようにした方がいい。そう思って、槍太はどう返答したものか言葉を選んでいた。

「なに? アンタ、こいつらにイジメられてるの?」

それなのに、横で様子を見ていた爆谷響子が、そんな無造作な言葉を投げかけた。

「あ?」
「……おい雑崎、こいつは何だ?」

ロン毛の顎ヒゲが爆谷響子を睨み、金髪逆毛はそちらを無視して槍太を問

い質
ただ
そうとした。

「お前らバカか?」

しかしその質問を横から引ったくるようにして、爆谷響子が言った。

「さっきお前らにも道を聞いただろ。そいつがここの生徒と一緒にいるんだから、道案内してもらってる以外なにがあるんだよ。そのくらい察しろ」

あまりにぐうの音も出ない正論をぶつけられたせいか、三人とも唖然とした様子で押し黙ってしまった。

その状況に、槍太は身も凍るような思いがしていた。この三人を口で言い負かしたところで、良いことなど一つもあるはずがない。それどころか、余計に酷い目に合わされる──。

三人はしばらく妙なものを見るような目で爆谷響子を睨んでいたが、やがてそのうちの一人、虎刈りの眉ピアスがこの他校の制服を着た不遜な態度の女子の前に歩み出ると、無言で顔を横殴りにした。

それから低い声で言った。

「道案内だったら他のやつに頼め。こいつはオレらに用があって忙しいんだ」

しかし爆谷響子は殴られて横向きの顔のまま、鋭い目線を虎刈り眉ピアスに返した。

「お前ら、物の頼み方一つ知らないんだな」

それから、まるで効いていない様子でニヤリと笑う。

「こっちが先約だ。先に声をかけたのはアタシなんだからな。それを譲ってほしいんだったら、ちゃんとしたお願いの仕方ってもんがあるだろ」

その反応に、虎刈り眉ピアスは表情を硬くした。気絶させても構わないつもりで思い切り殴った。それなのにこの相手はまるで平然としている。

しかしそれを知らない残りの二人は、いまだにニタニタと笑みを浮かべていた。

「『お願いの仕方』だってよ。面白いこと言うな」
「じゃあ言うことを聞いてもらえるように、たっぷり〝お願い〟してやるのもいいんじゃねぇか?」

そう言いながら、二人は舐めまわすような視線で爆谷響子の体を見た。

二人がそんなスケベ心を催
もよお
すのも無理はない。

爆谷響子は、凛々しい顔立ちとスレンダーな体形には不釣り合いな、豊かな胸をそのシャツの下に押し込めていた。襟元を開けているせいで、爆乳といっていいその谷間が一部覗いて見えるのが、生意気な顔つきとのギャップで男の嗜虐
しぎゃく
心を刺激する。

そして二人には侮りがあった。どんなにイキがっていても、固有能力
インヘレンス
を持つ能力者に、他校の一般生が敵うはずがない──。

「お前も雑崎と一緒に来い。お望み通り、タップリと〝お願い〟してやるよ」

ロン毛の顎ヒゲが爆谷響子の腕を掴んだ。

「なるほど。さてはお前ら、クズだな」

爆谷響子はその手をひねり上げた。ロン毛の顎ヒゲは手首を極められて苦悶の声を上げる。

「けどあいにく、アタシはゴミ掃除が得意なんだ。クズはクズらしくクズカゴに片づけてやろうか?」
「──ッ、てめぇ」

仲間を助けようと、金髪逆毛が殴りかかる。

しかし爆谷響子はロン毛の顎ヒゲをひねるようにして投げ飛ばした。殴りかかってきた金髪逆毛にぶつかり、二人は絡まり合うようにして倒れこむ。

体を強く打ったのか、二人は起き上がれず、苦しそうに悶えた。

「おいおい、何いきなり殴りかかってきてんだよ。〝お願い〟っていうのは、言葉でするもんだろ。それともこの学校ではボディランゲージが流行ってるのか? それなら楽でいいけど──」

そう言いながら、爆谷響子は虎刈り眉ピアスの方を振り向いた。

「こっちも、どっちかっていうと、拳で語り合う方が得意だからな」

虎刈り眉ピアスは落ち着いていた。何を考えているかわからない虫のような目で、地面に倒れ伏した二人をチラと眺め、またすぐ爆谷響子に視線を戻す。

「てめぇ……何者だ?」

その問いに、爆谷響子は腕を組み、堂々たる仁王立ちで答えた。

「極星高校二年。美化委員長、爆谷響子」

そう言ってしまってから、爆谷響子はハッとしたように目を少し大きくした。

「──っと元、か。今日からはお前らと同じ、天頂高校の生徒だ」

それを聞いて、虎刈り眉ピアスの目の鋭さが増した。

その理由は槍太にも察しがつく。それは、爆谷響子が告げた〝極星高校〟という学校名のせいだ。

極星高校は、天頂高校と同じく、固有能力
インヘレンス
に適合する人材を育成するための学校で、西の極星・東の天頂と並び称される、西日本屈指のエリート校だ。

その極星高校から転校してきたということは、爆谷響子も固有能力
インヘレンス
を持つ能力者
コンセプテッド
であると考えられる。

それに、今の二人を倒した手際を見ても、喧嘩慣れしているのは間違いない。戦闘向けの固有能力
インヘレンス
を所持していることを虎刈り眉ピアスが警戒するのは、当然と言えた。

虎刈り眉ピアスは爆谷響子をジッと見据えたまま、拳を構えた。左手を胸元に、右手を前に突き出すサウスポースタイルで、やや背を丸めて顎を引く。

「ボクサーか」

爆谷響子はニヤリと笑った。

「いいね。シンプルで強い、アタシ好みのやつだ。でもさ、礼儀がなってないのはお前も一緒だな。人に名前を聞いたんだから、自分も名乗れよ」
「……支峨
しが
虎丸
とらまる
だ」
「虎丸クンね」

爆谷響子は槍太の方を振り向いて、肩に担いでいた上着を放
ほう
った。

「雑崎。それ、預かっててくれ」

それから爆谷響子は支峨虎丸に正対した。

一方はボクシングスタイルで臨戦態勢を取っているが、もう一方は拳も構えず、膝も曲げず、ただ単に立っている。

普通であればこの状況は構えている方が圧倒的に有利だ。拳を上げていないのはともかくとして、半身にもならず、なにより足も使わずに避けられるほどボクサーの拳は甘くない。

しかし支峨虎丸はなかなか動き出せないでいた。一般人と戦うのとは違い、この相手は固有能力
インヘレンス
を持っている。隙だらけに見えて何か罠が仕掛けてある可能性は十分にある。

「そうビビるなよ」

警戒する支峨虎丸の心情を読んだかのように、爆谷響子が語り掛ける。

「アタシの固有能力
インヘレンス
が気になるか? 心配すんな。アタシの能力は、ただ単純に『ケンカが強い』ってだけさ」

そして爆谷響子は、両手を広げた。戦意に満ちた顔のまま、口元だけで愉快そうに笑う。

「小賢しい小細工はなしだ。さぁ、お前の固有能力
インヘレンス
を見せてみろ」

支峨虎丸の足先が、地面を蹴った。

他の漫画を見る