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号山組との決闘③ 爆谷響子

号山堅剛は男たちを押しのけて旧自動車整備場に入ってきた。見上げるような巨体。重量感のある見た目に違わず、ドシドシと歩くたびに建物が揺れる。

「オレ様の子分どもがズイブン世話になったようだなァ」

爆谷響子の正面、橘川那由他との間に立ちはだかるような位置で号山堅剛は足を止めた。二人の女子に挟まれて、一画目がアンバランスに野太い〝山〟のような形になる。

「ッたく弱ッちいクセに無茶しやがって。だから最初からオレ様が出るッつったのによ」

号山堅剛は倒れた男たちを眺めながら呟き、それから視線を爆谷響子に上げた。

「だがこのオレ様が来たからには、もうテメェなんざの好きにはさせねぇゼ」
「アンタがこいつらの親玉?」
「おうよ。オレ様が号山組総長──工業科三年Aランク号山堅剛だ」

その実力を誇るかのように、号山堅剛は握りこぶしに親指を立て、工業科の制服である学ランの詰襟
つめえり
を指し示した。Aランクを表す三つ星のバッジが付いている。

「弱い者イジメしてイキガッてるところ悪ィがよ、コイツらと違ってこのオレ様はツエェのよ。カワイイ子分どもを痛めつけてくれた礼に、オレ様の拳でテメェを挽き肉
ミンチ
にしてやるゼェ」

力強く両拳を握る号山堅剛を、出口のすぐ傍で男たちが見ていた。

「助かった──号山サンが来てくれたらもう大丈夫だ」
「ほ、本当にそうか? あの女もトンデモない強さじゃねぇか」
「なんな化け物、いくら号山サンでも──」

逃げるべきかまだ迷っているらしく、男たちは不安を口にする。

「テメェら!」

号山堅剛が吠えた。

「情けねェこと言ってんじゃねえ。最強のオレ様が負けるとでも思ってんのか。オレ様がどんなに強ェか、昨日見せてやったのを忘れたわけじゃねェだろ!?」

そう怒鳴られて、男たちは思い出した。昨日、号山組で号山堅剛に次ぐ戦闘力を有する支峨
しが
虎丸
とらまる
の必殺技・疾風迅雷
バレット・レイン
を、ガードすることすらなく受け止めて無傷だった自分たちのリーダーの堅固無比な姿を。

その号山堅剛は今も、手にした粗鉄の塊をまるでクランキーチョコのようにボリボリと齧
かじ
っている。化け物というならこの男こそそれだ。いくらあの女が強くても、こんな人間の規格を超えた怪物
モンスター
に勝てるはずがない。

「テメェにも教えてやる」

号山堅剛が今度は爆谷響子に吠えた。

「オレ様の固有能力
インヘレンス
は無敵だ。この両拳から繰り出される鉄の豪腕
ビッグ・ハンマー
はすべてを叩き潰す! そして全身を強固にする鉄の要塞
ビッグ・ウォール
は、どんな攻撃を食らってもビクともしねェ! そしてオレ様の能力は、鉄を食えば食うほど強くなる!! 最強の攻撃力と最強の防御力を併せ持つこのオレ様に勝てるやつなんざこの世に──ッて、オイこらテメェ! どっち向いてやがる! オレ様の話を聞けッ!!」

号山堅剛が怒鳴りつけた先では、爆谷響子が背を向けていた。

「あー、悪い。なんか話長そうだったから、その間に着替えてようかなって」
「──着替えだァ?」
「お前の手下が制服破きやがってさ。片手が塞がってるんだよ。アンタ強いんだろ? どうせならちゃんと戦いたいからな」
「着替えを取りに帰ろうってのか? そんなこと言って、逃げるつもりなんじゃねェだろうな」
「心配すんなって。ここで着替えるから。たまたまこの学校の制服を受け取ったばかりなんだ」

そう言って、爆谷響子はさっき床に置いた紙袋のところまで歩いた。ここに来る前、職員室から出てきたときに手にしていたものだ。

〈この中身は新しい制服だったのか……〉

槍太
そうた
のすぐ隣で、爆谷響子が制服を着替え始めた。

紙袋からスカートを取り出すと、ボロボロに切り刻まれた旧いスカートの上に巻き付ける。新品の天頂高校の見慣れたスカートの下から、引き抜くように今まではいていたスカートを脱ぐ。

それからこの場にいる全員に背中側が向くようにして体を隠すと、破れ跡だらけの上着を脱いだ。千切れたブラジャーも捨ててしまう。肩甲骨を寄せた何も身に付けていない裸身の背中はなめらかで、脇の間から大きな乳房がチラチラと顔を覗かせている。

本当は顔を背けておくのが礼儀
マナー
かもしれないが、槍太は一部始終を食い入るように眺めた。後ろ姿とはいえ、女子の生着替えを見てしまい、スケベ心を刺激されているのは、この場にいる全員に共通していた。不愉快そうな顔の橘川那由他を除いて。

しかし新品のシャツとブレザーを着た爆谷響子の姿を目にすると、そんな浮ついた空気は一瞬で霧散した。

「待たせたな」

天頂高校普通科の制服に身を包んだ爆谷響子は不敵に笑って振り返った。胸元には篆書体
てんしょたい
の校名を丸く囲む校章のワッペン、その下には四







が煌
きら
めいていた。

それを見て槍太は愕然
がくぜん
とした。同様に気づいたのだろう、橘川那由他も絶句している。離れたところにいる逃げ損ねた男たちだけが、何が起きたのかわからないでいる。

「ど、どうしたんスか」
「号山サンも姐さんも、なに黙りこくってんスか」
「早くその生意気な女をブッ潰して──」
「ふざけんじゃないよ!」

橘川那由他が吠えたのは、男たちに対してではなかった。
爆谷響子に向けられた睨み目には、怒りが込められている。目の前の相手に対する怒りとは違う。理不尽な状況に対する、恐怖を帯びた怒りだ。

「冗談もいい加減にしな。なんだいそれは。まさかアンタ……じ、自分が、Sランクだなんて言うつもりじゃ……」
「どうやらそうらしい」

爆谷響子はあまり愉快でもなさそうな笑みで応えた。

信じられないものを見た気持ちでいるのは、槍太も同じだった。

天頂高校では、〝固有能力
インヘレンス
〟の開発度に応じて、生徒たちは峻厳にランク分けされる。その大半はC・B・Aいずれかのランクに分類され、落ちこぼれのFランクを含めれば全生徒の99.9%がこの範疇
カテゴリ
に収まる。

しかしその枠に収まらない極少数者のための特別なランクも用意されていた。

【Sランク】能力開発度
レベル
81~(特待生。将来的に先験者
コンセプテッド
運用の国家戦略に影響を及ぼす可能性がある特異能力者。)

「そ、そんなバカな話、あるもんかッ」

橘川那由他が八つ当たりするような大声で罵る。

「Sランクってのは、天頂高校でもたった六人しかいない、超人
エリート
中の超人
エリート
なんだよ! それを、二年になってやっと転入してくるような半端者がSランクなんて……有り得ないよッ。何かの間違いに決まってる」
「知らねぇよ。そんなこと言ったって、実際にそういうことになってんだから、しょうがねぇだろ」

爆谷響子は腰に手を当てると、呆れたように息をついた。

「だいたいさぁ、アンタもだけど、この学校の連中ってちょっと選良意識が強過ぎないか? まぁ確かに、〝天頂〟は全国トップの先験者
コンセプテッド
育成校かも知んないけどさ、アタシのいた〝極星〟だって半端者呼ばわりされるほど悪かないと思うんだけど」
「極星!?」

男の一人が上ずった声で叫んだ。

「こいつまさか、あの極星高校のハゼタニ──!?」
「……有名なやつなのかい?」

橘川那由他の問いに、男は脂汗をにじませながら答えた。

「ゆ、有名なんてもんじゃないスよ……。あっちに住んでるイトコから聞いたんスけど……天頂
ウチ
もそうスけど、能力開発が進んでる上級生の方が強いのが普通じゃないスか。それが、一年のクセに極星の〝頂点〟に立ったトンデモない生徒
ヤツ
がいるって……一見、大した能力は持ってなさそうなのに、どんな相手にも真っ向勝負で打ち勝って、天頂
ウチ
でいうSランクと同格の〝極星七天〟を片っ端から倒しちまったって話で……そいつの名前が確か〝ハセタニ〟だか〝ハゼタニ〟だか……」
「何いまさら驚いてるんだよ。極星から転校してきたって最初に名乗らなかったっけ?」

橘川那由他も、他の三人の男たちも、何も答えない。確かに、槍太は爆谷響子があの時「元・極星」と名乗っていたのを覚えていたが、支峨
しが
虎丸
とらまる
も残りの二人も、それを仲間には伝えていなかったのだろう。

だがもはやそんなことはどうでもよかった。

目の前に威風堂々と佇
たたず
む爆谷響子が、〝東の天頂〟と双璧をなす〝西の極星〟の〝頂点〟を極めたというのなら、Sランク級の固有能力
インヘレンス
を保有していてもなんの不思議もない。そんな相手に、いくら能力を強化されているとはいえBランク程度の力しかない男たちが、勝てるはずがない。

「取り乱してんじゃねェ!!」

仲間たちに喝を入れるように、号山堅剛が叫んだ。

「Sランクだァ? それがどうした……Sランクなんざ所詮
しょせん
〝特待生〟ってことでしかねェだろ。確かに先公
センコー
には目を掛けられてるかもしんねェが、ヒイキされてるからってAランクより強いとは限らねェ」

号山堅剛は臆することなくその巨躯で爆谷響子に立ちはだかった。

天頂高校の生徒は固有能力
インヘレンス
の開発度によってランク分けされるが、その能力開発度
レベル
は〝反応値×運用能力〟で評価される。〝反応値〟は適合検査において固有能力
インヘレンス
の能力行使に対して検出される値で、いわば固有能力
インヘレンス
の出力を表す。

しかし天頂高校に限らず、先験者
コンセプテッド
の有能性は、固有能力
インヘレンス
そのものの力だけではなく、それをどう扱うことができるかも合わせて評価される。〝素質〟だけではなく、その上で〝実際に何ができるか〟が重視されるのだ。

天頂高校では〝運用能力〟を〝適用試験+実地成果〟で評価している。〝適用試験〟は生徒が固有能力
インヘレンス
を十分に扱いきれているか確認するための評価基準で、日々の授業や学期ごとの定期考査で測られる。

そしてもう一つ、人為的な試験では測りきれない運用能力を評価するための指標として〝実地成果〟という基準が用意されている。それは平たく言えば──他の生徒と戦って、勝てばランクが上がり、負ければランクが下がる。

号山堅剛のように「検査や試験でいい成績を取る〝優等生〟より、腕っぷしで成り上がった自分の方が強者だ」と考える〝武闘派〟は、ここ天頂高校では、決して珍しくない。

「特待生だろうが劣等生だろうが、強ェもんが正義だ。そうだろ。Sランクなんざコケオドシのハリボテに過ぎねェってこと、このオレ様がハッキリさせてやる」
「いいこと言うじゃねえか」

鼻息荒くまくし立てる号山堅剛に、爆谷響子はニヤリと笑みで返した。

「ランクなんてくだらねーよなぁ。強いか弱いかなんて、勝ったか負けたかで決まるんだ。こっちはただヒリつくような戦いができりゃそれでいい。

──テメェはそれに応えてくれるんだろうな?」

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