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号山組との決闘④ 爆谷響子

誰もが固唾を飲んで見守っていた。旧自動車整備場に、さっきまでのような熱気はまるでない。ただ睨み合う工業科三年Aランク号山堅剛と普通科二年Sランク爆谷響子の一触即発の空気に、その場に居合わせた槍太
そうた
も、橘川
きっかわ
那由他
なゆた
も、遠巻きに見ている号山組の男たちさえも、一言も発することさえできず、冷たい汗を流している。

〈み、見てるだけで息の根が止まりそうだ──〉

片や、鉄製のドラム缶を軽々と握りつぶし、鉄の塊をボリボリと貪り食うような化け物。片や、天頂高校と双璧を為す極星高校で〝頂点〟に立ったという転校生。その二人がぶつけあう敵意だけで、傍観者であるはずの槍太は逃げ出したいくらいの圧を感じていた。
しかし──

〈この戦いは、長引くかもしれないな……〉

槍太はそう予想していた。

昨日、槍太は爆谷響子が号山組の支峨
しが
虎丸
とらまる
と戦うところを見ている。目にも留まらぬスピードで相手を翻弄する支峨虎丸に対して、初めは防戦一方だった爆谷響子は、最終的に支峨虎丸のスピードに対応しカウンターでノックアウトした。そのときの戦いぶりからして、支峨虎丸の拳でダメージを受けていたくらいだから、号山堅剛の鉄の豪腕
ビッグ・ハンマー
をまともに受ければさすがに無事では済まないだろう。

おそらく、爆谷響子は支峨虎丸の雷神の足
ステップイン・ステップアウト
すら見切った反応速度を武器に、号山堅剛の拳を避

わし続けるはずだ。そうしながら隙を見つけて反撃を試みるだろうが、号山堅剛の鉄の要塞
ビッグ・ウォール
の防御力は高く、多少のことではビクともしない。

スピード対パワー。爆谷響子の体力が尽きるか、号山堅剛の守りに亀裂が入るか──どちらが先かの持久戦になりそうだ。

「ズイブン自信があるみてェだな」

号山堅剛は岩壁のような顔を不愉快そうに歪めて爆谷響子を見下ろした。

「『テメェはそれに応えてくれるんだろうな』だと? ナメやがって。そんなに〝ヒリつく戦い〟がしてェってんなら、〝グラッジ・ルール〟でやっても構わねェんだろうな」
「〝グラッジ・ルール〟?」

聞きなれない言葉に爆谷響子が問い返すと、号山堅剛は大口を開けて笑った。

「お前、〝グラッジ・ルール〟も知らねェのかよ!!」

号山堅剛はいかにも爆谷響子の無知をあげつらうように哄笑する。転校してきたばかりなのにそんなローカルルールを知っていると思う方がどうかしている──と槍太は思うが、そんなことを口にする勇気はない。

「〝グラッジ・ルール〟ってのは、簡単に言えば〝賭け勝負〟のことだよ」

橘川那由他が口を挟んだ。

「一度決着をつけたのに後からグダグダ言ったりできないよう、固有能力
インヘレンス
の〝サスペンド権限〟を賭けて決闘しよう、ってのが〝グラッジ・ルール〟さ」

この世界に生まれつきの先験者
コンセプテッド
は存在しない。

天頂高校の生徒は入学時点で全員が〝ファータライザ〟と呼ばれる能力発現促進剤を投与されている。その最も重要な構成物質は一種の〝生体分子機械
ナノマシン
〟で、それが体細胞とうまく結合することで固有能力
インヘレンス
が発現する。

もちろん異物を体内に取り込む以上、拒否反応が起こることもある。むしろ大半の人間はファータライザを投与されても数日間高熱が出て寝込むくらいで、〝生体分子機械
ナノマシン
〟もすべて体外に排出されてしまう。

しかし中には拒否反応を起こさず〝生体分子機械
ナノマシン
〟を体内に取り込んでしまえる人間もいた。そうした〝適合者〟が、たとえば天頂高校のような先験者
コンセプテッド
育成校に進学する。

この〝生体分子機械
ナノマシン
〟の機能は外部から停止させることができる。先験者
コンセプテッド
が超人的な能力を有しているにも関わらず社会システムに対して安定的な存在として組み込まれているのは、制御可能だからだ。仮に先験者
コンセプテッド
が罪を犯したり、国家や社会秩序に対して反逆しようとした場合、法に基づいて固有能力
インヘレンス
を無効化
サスペンド
されることになる。天頂高校では教職員にも生徒の固有能力
インヘレンス
に対する〝サスペンド権限〟が与えられている。

いくらAランクやSランクの先験者
コンセプテッド
でも、固有能力
インヘレンス
を無効化
サスペンド
されてしまえば、一般人と変わらない。相手に〝サスペンド権限〟を握られるということは、自分の支配権を奪われることに等しい。

「どこの学校でも似たようなバカをやるもんなんだな」

爆谷響子は愉快そうに笑った。

「いいぜ、乗ってやるよ。本気の勝負は望むところだ。具体的にはどうやるんだ?」
「学校から生徒手帳
コンパニオン・デバイス
を貰っただろ。そいつで〝サスペンド権限〟委譲用の一時トークンを発行するんだ。それを相手の生徒手帳
コンパニオン・デバイス
で読み取られたら〝サスペンド権限〟を奪われて負けってことになる」
「げ。天頂
ここ
の生徒手帳
コンパニオン・デバイス
ってそんなイカれた機能が付いてんのかよ」
「生徒手帳
コンパニオン・デバイス
はあくまで〝端末〟だからね。生徒のランクや成績関連の管理データは学校のサーバにあるものを表示してるだけだし、固有能力
インヘレンス
に関する機能は〝生体分子機械
ナノマシン
〟に元々備わってるものを呼び出してるだけだって話だよ。〝端末〟の方でわざわざその呼び出しに制限をかけてるのに、それを〝ハック〟したバカがいるってことさ」
「で、その〝一時トークン〟はどう発行すりゃいいんだ?」
「対話モードで、今から言う〝コマンド〟を実行しな」

爆谷響子は胸ポケットの中の生徒手帳
コンパニオン・デバイス
に触れると、固有能力
インヘレンス
を行使するときの要領で、メンテナンスモードを起動した。

すると、爆谷響子の頭の中に機械的な音声のようなものが響く──。

〈──コマンドを入力してください〉

橘川那由他から伝えられた通りの〝コマンド〟を頭の中で唱える。一瞬のノイズの後、同じく機械音声によるインストラクションが聞こえる。

〈〝サスペンド権限〟委譲用の一時トークンを発行しました。このトークンは24時間で自動破棄されます。トークンの読み取りは接触認証により行われるので管理には十分に注意してください。認証後の権限委譲の有効期間は30日間です〉

「なるほど、これがその〝一時トークン〟ってことか」

爆谷響子が左手を上げた。握った拳を顎の高さに掲げ、手の甲を見せる。そこには赤黒に発光する紋章
エンブレム
のようなものが浮かび上がっていた。

「覚悟はできてんだろうなァ」

同じく手の甲をかざす号山堅剛。岩石のような拳の背に、鉄色に暗く輝く紋章
エンブレム
が浮いている。

「負けたらテメェはオレ様の奴隷だ。逆らえるなんて思うなよ。固有能力
インヘレンス
が使えねェ生徒
ヤツ
なんざ天頂
ここ
じゃゴミ同然だからなァ。全員でマワしてやる。テメェにやられた子分
ヤツ
らも仕返ししたくてウズウズしてるだろうしよォ。どんなに無様で情けねェ仕打ちだろうが、お前に拒むことは許されねェ。一ヶ月、たっぷりかわいがってやるぜ」

猛り狂う怒気に、号山堅剛のズボンは股間がずんぐりと膨らんでいた。

「チッ──男ってのはそれしかねェのか。どいつもこいつも似たような下らねぇ発想しやがる」

爆谷響子は不愉快そうに吐き捨てた。

さっきまでと違い、胸の膨らみが増しているように見えるのは、今の制服に着替えたとき、破れたブラジャーを脱ぎ捨てたからだろう。新品のシャツ越しに抑え込んだ乳房の柔らかさがハッキリと見て取れる。

「テメェがドスケベな体してんのが悪ィんだよ。さっきからそのはち切れそうな爆乳、ノーブラでたぷたぷ揺さぶりやがって。誘ってんじゃねェのか?」
「そういうテメェは脳ミソ、股間にぶら下げてんのか? これから勝負しようってんのに、胸ばっかり見てんじゃねェよ発情ゴリラ」
「その発情ゴリラにテメェは今から嬲
なぶ
りものにされンだ。泣いて詫びても手加減なんざしてやんねェぞ。オレ様のはとにかくデカくてカッテェからなァ。コイツをブチこまれた女はどいつもこいつも、マンコがオレ様のモノのカタチに変わっちまってよォ、二度とマトモなセックスじゃ満足できなくなっちまうんだ」
「よく言うぜ。どうせ粗チンだろ」
「試してみるか? そうすりゃハッキリするぜ」
「童貞ゴリラの筆下しなんざ御免
ごめん

こうむ
るね。どうしてもって言うんなら、粗チンの前にその両腕のブッといの、ブチ込んでみろよ」

爆谷響子の誘いに、号山堅剛はニヤリと笑った。

「いいのか? オレのをまともに食らったら、一発で〝昇天〟しちまうぜ」

号山堅剛が拳を握る。爆谷響子の胴より太いのではないかというその剛腕に、筋肉がグッと盛り上がり、血管が怒張する。

号山堅剛も、こと戦いに関しては、バカではない。爆谷響子が支峨虎丸にどう勝ったかは聞いていた。あえて挑発してくるということは、そのスピードと反応速度を活かしてカウンターを狙ってくるかもしれない──そのことは頭にあった。

しかし号山堅剛は自身の防御力に絶対の自信を持っていた。たとえカウンターで殴られたところで、ダメージなど受けるはずがない。もし反撃してくるようなら、むしろそれを捕まえて、握りつぶしてやろう。

あえて渾身の大振り。
号山堅剛は拳を振りかざした。肘を天高く引っ張り、限界のところから弓が弾けるように振り下ろす。

直前まで鉄を齧
かじ
って強化された鉄の豪腕
ビッグ・ハンマー
が爆谷響子に直撃し、建物そのものが揺れた。その威力を証明するように、床には亀裂が走る。しかし──その上に立つ爆谷響子の足は、1ミリたりとも動いていない。

予想は外れた。
槍太の思った通り、長期戦にはならなかった。号山堅剛の考えた通り、カウンターを狙っているわけではなかった。

「なるほど──確かにこいつはガツンと〝キク〟な」

拳を額で受け止めた爆谷響子は、極太い鉄の豪腕
ビッグ・ハンマー
の影から不敵な笑みを覗かせた。

「自慢するだけあって、いいパンチ持ってるじゃねぇか」

号山堅剛は絶句していた。何が起こったのか理解できない。

手を緩めたわけではない。確かに全力の拳だった。それなのにこの相手は倒れることなく──それどころか元の立ち位置から微動だにもせず、鉄の豪腕
ビッグ・ハンマー
を受け止めた──!!

「じゃ、次はアタシの番だ」

言葉を失くしたままの号山堅剛の前で、爆谷響子が拳を構えた。

「お前のそのご自慢の防御力とやらを見せてもらうぜ」

ハッと我に返ると、号山堅剛は咄嗟に腹に力を込めた。拳が飛んでくる。そう思うより早く、両手を強く握り、グッと息を詰めた。

支峨虎丸の必殺技・疾風迅雷
バレット・レイン
を食らっても傷一つつかなかった無敵の鉄の要塞
ビッグ・ウォール
。そこに爆谷響子の拳が突き刺さる。身長差で下から上へと振り上げる形になった拳に持ち上げられて、号山堅剛の巨躯が浮いた。

「ゴ、ォエ──ッァ」

大きく開かれた口から、吐き出すように苦悶の声が漏れた。ピクピクと血管が浮かび上がった顔面に、丸い眼球が転がり落ちるほど目が剥き出しになる。力んだ手足をブルブルと震わせて──それからガクリと号山堅剛はうな垂れた。全身が弛緩し、爆谷響子の拳を支点に力なく覆いかぶさる様は、くたびれたボロキレのようだ。

爆谷響子が拳を払うと、号山堅剛の体がドサリと床に落ちた。山のようなその巨体は、いまや巨大なゴミの山のようだった。

「たまには〝ブチ込まれる〟側になるのもイイもんだろ」

それを見下ろして、爆谷響子がニッと笑った。

「また〝昇天〟したくなったら、いつでも相手してやるよ」

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