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小悪魔の呼び出し① 揺木未結

放課後に来るよう手紙に指定してあった〝エルミタージュ〟は、カラオケ店だった。入口は民家のような木造平屋にあり、コンクリ二階建ての小ぶりな建物とくっ付いている。いかにも個人経営で細々とやっている、小さな店だ。あまり儲かっていないのか、看板は錆が浮いてボロボロで、ノボリ旗も色褪せて、なにが書かれているのかほとんど読み取れない。

「あっ、来た来た。こっちこっち、こっちだよ~!」

背の低い女の子が、空に向かって上げた手を元気に振っていた。

槍太はそれを見て吐き気を覚えたように不快な顔をした。店の脇で待っていたのは、揺木
ゆるるぎ
未結
みゆ
だった。

揺木未結が跳ねるようにして手を振ると、短いスカートがヒラヒラと上下に揺れる。太ももが付け根近くまで露出し、中等部生のまだあどけないパンツが見えそうで見えないが、槍太はそんな光景にさえ表情を緩めなかった。

〈こいつ……なにを考えてるんだ〉

槍太が警戒するのも無理もない。

槍太は揺木未結に弱みを握られていた。数日前、学校内外で人気を誇るギャル軍団のリーダー・新ヶ浜
にいがはま
玲奈
れいな
の、裏サイトで懸賞金がついたパンツを盗むために女子更衣室に忍び込んだところ、待ち伏せしていた揺木未結と待月
まちづき
由真
ゆま
の二人に捕らわれてしまった。槍太は二人の前でオナニーを強要され、それを動画に撮られている。

「ちゃんときてくれたんだぁ♡ えらい、えらい♡」

槍太が近づくと、揺木未結は下から覗き込むようにして言った。顔だけは良い。もし脅されていなかったら、こんなことをされてトキメキを覚えない男性はいないだろうという笑顔だ。

「あ、あの手紙……」

思わず顔を離して槍太が聞くと、揺木未結はにひっと笑った。

「うん。あれミユが書いたんだ♡ ドキッとしたでしょ?」

ドキッとしたも何もない。今時わざわざログの残らない紙の便箋に筆跡で特定されないよう印刷して無記名で送りつけてくる手紙なんて、何か問題が起きたときに身元を知られたくない以外の意図を感じない。

「ちゃんとミユからだってわかった?」
「……まぁな」
「えーっ、すっごぉい♡ 名前書いたらぁ、先輩ビビッて来てくれないかも~♡ って思ったのに~」

揺木未結はわざとらしく言うが、呼び出しに応じなかったら〝女子更衣室でオナニーしている動画〟を学校中にバラ撒かれるのだから、来ないわけにはいかなかった。

「うんうん。ちゃんと約束は覚えてるみたいだね。じゃあさ、先輩、ちょっとこっち来て~♡」

そうやって揺木未結は槍太を袖を引っ張った。

揺木未結は店の入り口は通らず、裏手に回り、平屋に隣接したコンクリの建物の階段を上った。塗装が剥げ、錆が剥き出しの朽ちかけた階段から二階に入ると、そのまま目の前にある〝STAFF〟と書かれた扉の部屋に入る。

槍太が連れ込まれたのは、カラオケ店〝エルミタージュ〟の事務室らしき手狭な部屋だった。

誰かが大音量で歌っているのか、カラオケの曲と調子っぱずれな歌声が、どこからか間遠に聞こえていた。

「ミユと二人っきりだからって、悪いこと考えちゃだよ♡」

揺木未結は、槍太の手首を掴んだまま笑った。

「わ、悪いことって……?」
「も~、わかってるくせに。もしミユのこと力づくでどうにかしようと思っても、絶対ムリだから。大人しく言うことを聞いてね?」

小首を傾げてニコッと笑うが、その可愛らしさとは裏腹に、槍太を脅迫したときの無邪気な残酷さを含んでいた。

「今日は……どーして先輩に来てもらったか、わかる?」
「……金だろ」

槍太が即答すると、揺木未結はむーっと頬を膨らませた。

「ちょっとぉ。先輩、つまんない人ですね。少しくらい変な勘違いして、顔を赤らめてキョドるくらいしてくださいよ~」

揺木未結は不満そうに言うが、前回あれだけ残酷な仕打ちをした人間に呼び出されたのだから、脅迫以外の目的などあるはずがない。

「そりゃそうですけどぉ。でも、こんな美少女に迫られてるんだから、ついうっかりドキドキしちゃうくらいの可愛げがあってもいいじゃないですか~」

揺木未結にそうなじられて、槍太はわずかに眉をひそめた。

〈こいつ今、オレの考えてることに答えた……?〉

「あっ。いっけなーい。つい返事しちゃった」

揺木未結はてへっと舌を出した。

「まぁでもいっか。むしろミユの固有能力
インヘレンス
のことわかってた方がやりやすいし。

そうだよ~。ミユはね、相手の心が読めるの。先輩が悪いことを考えてもわかっちゃうし、隠し事をしてもぜ~んぶお見通しなの♡ だからぁ、余計な手間はかけさせないで、さっさと金よこせ♡」

可愛らしい口調でとんでもないことを言う。

「金って……いくらくらい?」
「ん~。そうだなぁ、とりあえず10万くらい?」
「そ、そんな大金、持ってるわけないだろ」
「あるでしょ~? パンツ泥棒して荒稼ぎしたお金が」

そんなこと言われても、ないものはない。

裏サイトで懸賞金がかけられた物品を槍太が盗んでいたのは事実だ。しかしそれは号山組の〝上納金〟のためにやったことで、槍太の手元には残っていない。

「ないなら作ればいいじゃん。そもそもさぁ、先輩、わかってる? 先輩はぁ、これからずっとミユたちに脅されて、お金を払い続けなきゃいけないんだよ? 『ないから払えません』じゃ済まないんだけど?」
「うぅ……」

なんてやつだ。まるで悪魔だ。あの動画を撮られてしまったとき、槍太を〝貢ぎ奴隷にする〟と言っていたのは本気らしい。槍太は働きバチのように命がけで蜜を集め、女王バチは豪奢な巣の奥で自分は何の手も下さないままにローヤルゼリーを堪能する。

「じゃあさ、神堂
しんどう
夏姫
なつき
のパンツ盗んできてよ」

揺木未結は思いがけない人物の名前を挙げた。

「あいつのパンツ、すごい値がついてるでしょ」
「そ、そんなの絶対ムリだ……!」

槍太は神堂夏姫の冷徹な顔を思い浮かべた。あの生徒指導部統括主任のパンツを盗む……? そんなの絶対にできっこない。

体育の授業や部活を受け持っていない限り、教師が学校で着替えることなどまずない。そんな相手のパンツを手に入れようと思ったら、強引に脱がし取るか、自宅に押し入るかしかない。女子更衣室に忍び込むのとはわけが違う。

しかもその相手が生徒に極端に厳しいことで有名なあの神堂夏姫だ。バレたら退学どころではすまない。槍太もつい先日、その横暴さを身をもって知ったばかりだ。不可能な指令
ミッション・イン・ポッシブル
にもほどがある。

「も~、じゃあ何だったらできるの」

揺木未結は不愉快そうに目を尖らせた。

しかしいくら睨まれようと、無理なものは無理だ。

そもそも、いきなり10万円なんて大金を稼げと言われても、一介の男子高校生にそんなこと出来るはずがない。女子とは違って、オッサンを騙して金を巻き上げたりできるわけではないのだ。

槍太がそんなことを考えていると、揺木未結はパッと顔を明るくした。

「あっ、そっか。いーこと思いついた♡」

それからニッコリと──今までで一番の笑みなのに、今までで一番極悪な笑顔で言った。

「処女、売って来てよ」

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