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校内美化運動 爆谷響子

暗い校内を一人の影が歩いていく。服装はシックなボレロ・タイプの制服で、その女子が芸術科の生徒であることを示していた。

胸の校章の下に光る星は三つ。整った長い黒髪に、生真面目そうな顔立ちの麗しきAランク生は、芸術科・音楽コース三年、楜沢
くるみざわ
清歌
さやか
だった。

天頂高校の中でも芸術科は規模が小さく、音楽・美術コース合わせて四クラス、しかも一つのクラスには他学科の半数しかいない。〝マエストロ〟の異名を持つ楜沢清歌は、その小所帯の中で、数少ないAランクの生徒だった。

しかしそんな彼女が訪れていたのは、いつも通っている芸術科の校舎ではなく、農業林業科にある古びた木造の旧校舎だった。

「指示通り、一人で来たみてぇだな」

楜沢清歌が教室に入ると、中にはガスマスクのような面をつけた不気味な男たちが待っていた。

その中心で椅子に腰かけた素面
すめん
の男──沼田
ぬまた
逸平
いっぺい
は、満足そうな笑みを浮かべていた。

反対に、楜沢清歌は苦々しく唇を噛む。

沼田逸平の足元に座り込んでいる女子生徒。それは楜沢清歌の妹、普通科二年Cランク、楜沢
くるみざわ
晴香
はるか
だった。

「えぇ、言われた通り、私一人で来ました。約束通り、晴香を解放しなさい!」

目の前の惨状を打ち払うように、楜沢清歌は凛とした態度で声を発した。

しかしその声に普段の力はなく、動揺の色が混じるのを、完全に抑えてしまうことはできなかった。視線の先にある、妹の格好を見ただけで、彼女が何をされたのか、容易に想像できてしまう。

楜沢晴香は、普通科のブレザーを着てはいるが、その下には何も身に着けておらず、白いお腹や乳房がむき出しになっていた。スカートは短く切り刻まれ、下着をはいていない下半身からは、白い体液のようなものが垂れている。

「おー、おー。そう睨
にら
むなって。オレたちは約束通り、妹ちゃんを解放してやってもいいって思ってるんだ」
「だ、だったら早く……」
「でもよぉ、オレたちの間で勝手に決めた約束なんかより、こいつの自由意志ってもんが大事だろ?」

沼田逸平は足元にはいつくばった楜沢晴香へと視線を向けた。

「おい、見ろよ。お姉ちゃんが、オマエのこと助けに来てくれたんだとさ。こんなところまで一人で乗り込んでくるなんて、妹思いの姉ちゃんだなぁ」
「お、お姉ちゃん……?」

楜沢晴香はけだるそうに体を起こした。見上げた顔は虚ろで、どこかぼんやりとしている。

「た、助けにきてくれたの……?」
「晴香! もう大丈夫だから、お姉ちゃんと、一緒に帰ろう」
「お、お姉ちゃん……お姉ちゃぁん……」

楜沢晴香は涙をこぼした。まるで迷子の子供が、親をやっと見つけたときのような表情で、涙でぐしゃぐしゃでもその顔には喜色が混じっている。

「よかったなぁ。優しいお姉ちゃんと再会できて。お前が望むんなら、解放してやっていいぞ。このまま、お姉ちゃんと一緒に帰るか?」

そんな楜沢晴香に、沼田逸平は小さな注射器を掲げて見せた。

「それとも──ここに残って、また〝コイツ〟を打たれるのがいいか?」

透明のシリンダーから冷たく伸びた針。そこからピュッとこぼれる透明の液体を見て、楜沢晴香の表情は固まった。

「どうする? どっちがいいか、お前が選べ」
「はぁぁ……お、お姉ちゃん……お姉ちゃぁん……」

楜沢晴香はガタガタと体を震わせた。恐怖ではない。体中が〝それ〟を欲しくて欲しくてたまらなくなっているのだ。

「ご、ごめんね……お姉ちゃん……」

楜沢晴香は沼田逸平に腕を絡めて抱きついた。まるで可愛らしく媚を売って、望むものを与えてもらえるよう、せがむように。

「私、もうだめなのぉ……。これがないと、生きていけないの……」
「そ、そんなっ。ダメよ、晴香! しっかりして!」
「ごめんね……せっかく助けにきてくれたのに……ダメな妹でごめんね……」
「ははっ。だってさ」

沼田逸平は愉快そうに笑い声を立てた。

「ってことで悪いな。晴香ちゃんは、お姉ちゃんよりおクスリの方が大事だそうだ」

楜沢晴香のおねだりに応えるように、沼田逸平は注射器の針を首筋に突き刺そうとする。

「やっ、やめなさい! 晴香にそんなもの──ッ」

楜沢清歌は目の前の凶行を止めようと、咄嗟に飛び出そうとした。

しかしその瞬間、膝から力が抜け、その場に座り込んでしまった。何が起きたのかわからない。混乱した様子で見上げる楜沢清歌の目の前で、楜沢晴香の首に注射針が刺される。

「はぁぁぁ♡ きたっ♡ おクスリきたっ♡ 沼田サマの洗脳汁の濃縮液きたぁ♡」

シリンダーの中の液体を首筋から注入されて、楜沢晴香はビクビクと体を痙攣させる。ガチガチと歯を鳴らして、股間から愛液をぴゅっぴゅと噴き出す。

そんな無残な光景を、楜沢晴香はただ見つめているしかない。

「けけけ。どうだ、動けねぇだろ。これがオレの固有能力
インヘレンス
だ」

沼田逸平は涎
よだれ
を垂らして昇天する楜沢晴香を無造作に放り捨てると、座り込んだ楜沢清歌の方へ歩み寄ってきた。

「気づかなかったかもしれないが、この部屋には霧のようなものが充満している。そいつを吸っちまうと、体が甘い痺
しび
れで動けなくなるんだ」

その手には再び、さきほど妹へ打ったのと同じような、液体の充填された注射器が握られている。

「そしてこの中身は、その〝霧〟を濃縮したものだ。ちょっと口から吸っただけで動けなくなるのに、その〝特濃液〟を注入されたらどうなると思う? 脳が快楽でイカれて、バカになっちまうのさ。お前の大事な妹ちゃんみたいにな」

沼田逸平は楜沢清歌の首筋に手を掛けた。

「ひっ」
「そう怯えんな。妹ちゃんを見ろよ。すっげぇ幸せそうだろ。お前も今から同じにしてやっから」
「やっ……やめてっ。そんなもの打たないでっ。やだっ、やだやだやだっ、いやあぁぁぁ」

柔らかな首の肉に、プツッと鋭い針が突き刺さる。

「あっ、ああぁっ」

シリンダーがグッと押し込まれ、中の液体が少しずつ体内に注入されていく。

「あっ、ああっ、いやっ、いやぁっ」
「おら、動くなッ。針が折れたら大変なことになんぞ。死にたくなけりゃ、大人しくしろっ」
「あ、あぁ……あぁ…………」

注射器から濃縮液が送り込まれてくるのを、楜沢清歌はなすすべもなく受け入れるしかなかった。肉体の抵抗を無理やり押し返して、ひんやりとした液体が、体内にチュゥゥと注入される。楜沢清歌の凛とした表情は絶望に染まり、目からは光が消えていく。

「あ……あぁ……あ……」
「よーし、一丁あがり。これでこいつも、オレたちの性奴隷だ。特濃液直打ちされて頭バカんなってるところマワしてやれば、もう二度と普通のセックスじゃ満足できない体になるからな。今日は誰からやる?」

沼田逸平が声を掛けると、ガスマスクの男たちはこぞって名乗りを上げた。

「あー、わかったわかった。あの〝マエストロ〟を犯

れるんだからな、そりゃ全員やる気がみなぎって当然だよな。じゃあもう全員でやっちまえよ。芸術科なんか通ってる清楚な高嶺の花を、思いっきり汚してやれ」

沼田逸平がそう告げた瞬間、教室に大柄の男が飛び込んできた。

入口からドアを開けて入ってきたのではない。窓ガラスを打ち破って、投げ込まれるようにして、体ごと文字通り飛び込んできた。

「なッ──」

沼田逸平が咄嗟に割れ窓に目を向けると、そこには一人の女子生徒が立っていた。普通科のブレザーを着て、口元は穏やかに閉じているが、目つきは今にも人を殺しそうなほど鋭く睨んでいる。

見覚えのある顔ではない。しかし沼田逸平はその制服の胸元を見て、この女子生徒が何者か、一瞬で悟った。

校章の下に輝く四つの星。沼田逸平が顔を知らないSランクと言えば、ただ一人。

〈こいつが転校生──爆谷
はぜたに
響子
きょうこ

「ここにいるのは、沼田ってやつの一味で間違いないか?」

爆谷響子が廊下から窓越しに尋ねた。

「普通科
うち
の生徒が世話んなってるらしいな。連れて帰らせてもらうぞ」

夜を貫くようなその一声に、男たちは背筋が凍るような思いがした。

〈な、なんでこんなやつが、ここに──〉

爆谷響子の噂は、すで農業林業科にも伝わっていた。転校してきていきなりSランクを与えられるという異例の扱いを受けた二年生。その扱いに相応しい実力を備えていることを証明するよう、転入して数日も経たないうちに、Aランクの号山
ごうやま
堅剛
けんご
を病院送りにし、彼の率いる号山組を壊滅状態に追い込んだという。

〈あの鉄壁バカの号山を倒すようなやつと、まともに戦っても勝ち目なんかねぇぞ──〉

沼田逸平は冷や汗を流しつつも、口元には笑みを残していた。

〈だが……まともに戦うだけが能じゃねぇ〉

幸いにも、ここは沼田逸平の根城だった。沼田逸平の固有能力
インヘレンス
は、一種のトラップ型の能力だ。教室内には沼田逸平の固有能力
インヘレンス
で発生させた、体を痺れさせる霧が充満している。そこまで誘き寄せることができれば、楜沢清歌と同じように自由を奪ってやって、濃縮液を直打ちしてやることができる。

〈それさえできりゃあ……こっちの勝ちだ〉

沼田逸平は頭をフル回転させながら、爆谷響子の出方を伺った。恐らく相手も、無警戒に教室に入ってくることはないだろう。なんとか、ここからのやりとりで、罠だとバレないように、うまく口車に乗せて、爆谷響子が教室に入ってくるように仕向けなけなければならない。

しかし沼田逸平がそんなことを必死で考えているのをよそに、爆谷響子は当たり前のように教室に入ってきた。

あまりに思いがけない行動に、男たちは思わず教室の奥に身を引いた。

爆谷響子は、床に座り込んでいる楜沢清歌の顔を覗き込んだ。

「アンタも助けにきたのか? もう大丈夫だ。あっちにいるのが、楜沢晴香だな」

そう言いながら、爆谷響子は教室の奥にへたりこんでいる、楜沢晴香の姿をあらためた。

「──ヒデェことしやがって。自分たちが何やってんのか、わかってんのか。テメェらみたいなクズどもは、ちょっと懲らしめてやるくらいじゃすまねーぞ」
「お、おいおい。何か勘違いしてるんじゃないのか、転校生」

沼田逸平は、爆谷響子の剣幕に押されながらも、何とか薄ら笑いを保っていた。

──この状況は好都合だ。こうやって話をして時間を稼げれば、こいつは直
じき
に、体の自由を奪われる。

「こいつらは決闘で負けたんだ。先験者
コンセプテッド
同士の固有能力
インヘレンス
を使った戦いは、この学校じゃ許容されてんだよ」
「フザケタこと言ってんじゃねえ。どんな固有能力
インヘレンス
の保有者でも、反社会的因子は矯正収容所送りになる決まりだろ。テメェらみてぇな集団暴行魔を許容する世界なんて現実のどこにもねぇよ。それがわかってるから、こんな隠れてコソコソやってるんだろうが」
「だ、だったら何だよ。生徒指導部でも呼ぶか? 言っとくが、うちの生徒指導部は、弱者には厳しいが、強者には甘いからな。『イジメッ子の固有能力
インヘレンス
に太刀打ちできないから助けて~』なんて泣きついても、相手になんかしてもらえねぇぞ」
「そんなことする必要はねぇよ。幸い、アタシは片付けが得意なんだ。お前らみたいなゴミクズは、アタシが綺麗に掃除してやるよ──」

爆谷響子は、拳を掲
かか
げた。ビキビキと開いた指をグッと握りしめ、教室の奥へと歩みを進めてくる。

〈ま、まだか──?〉

沼田逸平はこれ以上逃げ場のない教室の奥で、さらに半歩後ずさった。

〈まだオレの固有能力
インヘレンス
の効果は出ないのか──?〉

「あぁ、そういや聞き忘れてたな」

ゆっくりと近づいてきながら、爆谷響子が言った。

「この部屋に充満してる妙な物──これがお前の固有能力
インヘレンス
か?」

怒り顔に浮かんだその好戦的な笑みに、沼田逸平は言葉を返すことができない。

「吸った相手に干渉するタイプの固有能力
インヘレンス
か。悪いけど、そういうの、アタシには効かないんだ。相手がいくら強力な固有能力
インヘレンス
を持ってようが、アタシはそれより強くなっちまうからな──」

沼田逸平は、爆谷響子の言葉が一瞬理解できなかった。日本語の意味はわかっても、それを受け入れることを意識が拒む。

──相手がいくら強い固有能力
インヘレンス
を持っていても、それより強くなる固有能力
インヘレンス

「そ、そんな──そんなバカげた能力があってたまるか!」

沼田逸平は思わずそう叫んだ。

──そんな能力、存在そのものが最強を約束されたようなものじゃないか。

「は、ハッタリだ! 多少は《干渉系》に耐性があるのかもしれねぇが、まったく効かないなんて、あるはずがねぇ! ほ、本当は体を動かすのもやっとなんだろ! そうだろ!」

しかし現に、爆谷響子は彼の固有能力
インヘレンス
を物ともせず歩み寄ってくる。

「くっ、ち、ちくしょう! 近づくなぁ! オレに、近づいてんじゃねええぇぇ!!!!」

沼田逸平は、咄嗟に床にしゃがみこんだ。足元に横たわっていた、楜沢晴香に掴みかかる。人質だ。人質を取れば、たとえ固有能力
インヘレンス
が効かなくても、爆谷響子の動きを封じることが──。

そんなことを考えている間に、沼田逸平のアゴは天井に向かって跳ね上げられていた。

ボロ雑巾のように舞った体を、教室の壁にしたたかに打ち付け、沼田逸平は力なく床に崩れ落ちる。

周りにいるガスマスクの男たちは、呆気にとられたように、その様子を見ていた。自分たちのリーダー、Aランクの沼田逸平がこんなにあっさりと倒されてしまうなど、誰も予想していなかったのだろう。

その圧倒的な戦闘力に、男たちは動けない。これから自分たちも同じように制裁を受けるというのに、なにか崇高なものを見たような、ある種の感動を禁じ得なかった。

誰もが言葉を失う中、一人が震えるように声を絞り出した。

「こ、これが、Sランク……」

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