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Sランク落とし① 爆谷響子

先日の一件は、槍太のクラスでも話題になっていた。

農業林業科の一部の生徒が普通科の二年生を拉致していたという事件で、なんでもその連中はさらった女子を人質にして、芸術科きっての実力者〝マエストロ〟楜沢
くるみざわ
清歌
さやか
を、罠にかけようとしていたらしい。

実際に、その作戦は功を奏し、助けに行った楜沢清歌自身も、沼田
ぬまた
逸平
いっぺい
というAランクの生徒に敗れ、囚われの身になりかけた。

しかし、さらわれた女子の同級生から相談を受けていた爆谷響子が、その現場に乗り込んで、楜沢清歌を倒したAランク生ごと、農業林業科の悪党どもを一網打尽にしたのだという。

沼田の一味がやっていたことは、さすがに固有能力
インヘレンス
を使った先験者
コンセプテッド
同士の争いには寛容な天頂高校でも限度を超えたものとみなされ、首謀者である沼田逸平は固有能力
インヘレンス
を強制的にサスペンドされた上で、矯正収容所──つまり反社会的因子を教育するための施設へと送られた。

捕らわれていた楜沢姉妹は、《干渉系》固有能力
インヘレンス
の影響を受け、心神耗弱
こうじゃく
の状態にあったため、系列の附属病院で治療を受けているそうだ。

この事件で爆谷響子の名は学校中に知れ渡ることになった。

さすがの天頂高校といえども、生徒を拉致して薬漬けにしようとするほど逸脱した悪人はあまりいないが、強者が弱者を食い物にすること自体はそう珍しくはない。

たとえば、新ヶ浜
にいがはま
玲奈
れいな
率いるギャル軍団のように、グループ間の抗争に発展しないレベルで他の生徒に因縁をつけて、傍若無人に振る舞っている連中はいるし、号山
ごうやま
組での槍太のように、グループ内で弱い立場の者が虐
しいた
げられることもある。

そういう〝悪いやつ〟に絡まれて困っている生徒を見かけたとき、爆谷響子は無遠慮にその間に割って入って、〝弱い者イジメ〟を止めさせる。

それらの行動と、楜沢姉妹を助け出したことなどが重なって、一部の生徒は、爆谷響子をまるで悪を取り締まる正義のヒーローか何かのようにもてはやすようになった。

〈けっ、風紀委員にでもなったつもりかよ〉

そういった風評に、槍太は唾を吐きたい気分だった。

槍太は、爆谷響子に痛罵されたことを忘れていなかった。爆谷響子の評判が上がれば上がるほど、あのとき蔑んだような目で見下され、辛辣な人格批判を受けたことが許せなくなってくる。そんな憎き爆谷響子をもてはやす頭が空っぽの連中も腹立たしい。そういった負の感情を、怒りという形で爆谷響子に向けることで、槍太は自尊心を保っていた。

そんな槍太がいるのは、普通科の校舎の屋上だった。

空は晴れていて、まだ春が夏に代わる前の心地よい日差しが柔らかく降りそそいでいる。そこに穏やかな風が涼やかさを与え、槍太のドロドロとした内心とは裏腹に、青春の一幕を飾るにはもってこいの爽やかな天気だった。

普段、屋上への扉は施錠されていて、生徒が立ち入ることはできない。そこにこうして槍太が侵入できているのは、ルームメイトの従順な奴隷である早瀬
はやせ
真乃
まの
に鍵を手に入れさせたからだ。槍太のような落ちこぼれは職員室に近づくだけで教師から警戒されるが、教師から信頼のある早瀬真乃のようなクラス委員長にとっては、鍵を勝手に借りて合鍵を作ることも難しくはない。日頃の行いが大切だと痛感させられる。

その屋上に出るための唯一の扉が開いた。下階からの階段と直結しているシンプル出入口から姿を現したのは、爆谷響子だった。

「こいつは驚いた」

そう言いつつも、爆谷響子は少しも驚いた様子ではなかった。

「委員長に話があるって言われて来たんだけど、なんでお前がいるんだ?」
「オレが頼んだんだ。爆谷と話したいことがあるから、代わりに呼び出してくれって」
「そんな七面倒くせえことしないで、直接言えばいいだろ」
「オレが声をかけても、来てくれないと思ったから」
「おいおい。アタシがそんな器の小さい女に見えるか? ケンカの呼び出しだろうが、愛の告白だろうが、一応は話だけでも聞いてやることにしてんだ」

さきほどまで穏やかだった風が、 やや強さを増した。爆谷響子の少しごわついた質感の前髪を、バタバタとなびかせる。

「で、どっちだ? 決闘か? 愛の告白か?」

爆谷響子の尋ね方は冗談めかしていて、そのどちらでもない、もっと別の何かを期待しているに見えた。

「その前に一つ聞かせてくれ。爆谷はなんでこの学校に来たんだ?」
「あん?」
「前は極星にいたんだろ。あそこは、在校生の実力も、卒業生の実績も、天頂と比べてなんの遜色もない、西日本の最強校じゃないか。なんでそんなとこから、わざわざ転校してきたんだ?」
「アタシはただ、強いやつと戦いたいってだけだよ。極星のやつらは全員倒した。だったら次は、東日本で最強の天頂で一番になろうと思った。単純な話だろ」
「それで、わざわざ相手の本気を引き出すような戦い方をしてるのか?」
「……へぇ。ケンカなんてしたことなさそうなフリして、人の戦い方、結構ちゃんと見てるんだな」

爆谷響子は、愉快そうに口の端を持ち上げた。

「そうだ。お前の言う通りだよ。固有能力
インヘレンス
を使わせないで勝ったってつまらないからな。相手の〝最強〟をアタシの〝最強〟が上回って勝つ、そうじゃなきゃ本当に勝ったってことにはならないだろ?」
「それを聞いて安心した」

槍太は爆谷響子を真正面から見据えて言った。

「──だったらオレの固有能力
インヘレンス
も受けて立ってくれるよな?」

爆谷響子はそのセリフを聞いて、少し意外そうに目を大きくした。

「固有能力
インヘレンス
? Zランクっていうのは無能力なんじゃないのか?」
「無能力っていうのはウソだ。本当はオレは固有能力
インヘレンス
を保有している」
「そうか。まぁこの学校に在籍してるのに、固有能力
インヘレンス
がないなんて方が変だもんな。ただ、一つ確認していいか。雑崎
さいざき
、そいつをアタシに向けるってことはつまり──お前はアタシと敵対するってことでいいんだな?」

そう言って睨まれただけで、まるで槍太は胸を直接握りつぶされているかのような圧迫感を受けた。今までは無能力の〝弱者〟だからと歯牙にもかけられていなかった槍太に、初めてぶつけられた本物の敵意だ。机上の空論では決して感じることのない、本能的な恐怖に身がすくむ。

しかし槍太はそんな一時的な感情よりも自分の計画を信じた。

「あ……あぁ。そうだ。爆谷、オレはお前に、決闘を申し込む」

槍太がなんとか声を絞り出すと、爆谷響子はチッと舌打ちした。

「そうかよ。いつ詫びを入れにくるかって待ってたのにな……お前がそういうつもりなら、相手になってやる」

爆谷響子は入口の方から、屋上の中心──槍太のいるところへ向かって歩きはじめた。

「その代わり、手加減は一切ナシだ。相手がAランクだろうがZランクだろうが関係ねぇ。戦うからには全力でブッ倒す。アタシに固有能力
インヘレンス
を向けるってのは、そういう意味だ。お前に、その覚悟があるんだろうな」

すべてを迎え撃つように両手を拡げ、見開いた目に敵意の炎を揺らめかせ、にもかかわらず笑みを浮かべているその姿は、槍太の目にはまるで魔王かなにかのように映った。こんなやつの、どこが正義のヒーローだ。

「──さぁお前の固有能力
インヘレンス
を見せてみろ」

対峙するだけで生きた心地がしない。他の連中はこんな化け物と殴り合ったのか。あいつら頭がおかしいんじゃないかと本気で思った。

「わ、わかった。オレの固有能力
インヘレンス
を見せてやる」

槍太は半歩下がりながら、静止を促すように手の平を前に出した。

「けどオレの固有能力
インヘレンス
は少し特殊なんだ。口で説明してもちょっと信じてもらえないだろうから、とりあえずこれを見てくれ」
「は? 説明ってなんだよ」

槍太が携帯電話のような端末を放り投げる。怪訝そうな顔をしながらも、爆谷響子はそれをパシッと片手で受け取った。

「説明なんてどうでもいいだろ。実際に、使ってみせろよ」
「いや、オレの能力はその、ちょっと特別で……。事前に説明して、勝敗のつけ方をきちんと決めておきたいんだ」
「なんだよそれ、どういう意味だ?」
「それは、そいつを見てくれればわかるから」

槍太に促され、爆谷響子は受け取った携帯端末のディスプレイに目を向けた。画面は真っ黒だが、動画が再生されているらしく、シークバーが表示されている。

その最初の数秒の暗転が終わると、そこに映し出された映像に、爆谷響子はギョッと目を剥いた。

『おォんッ♡ イグッ♡ イグイグイグイッグゥゥゥーーー♡ やめっ、やめろぉ♡ その揉み方、マジでヤベェからッ♡ こ、これ以上オッパイ揉むなってぇえぇ♡ おっ、んおっ、おほぉん♡ んおおおおぉぉォ♡』

大音量で流れだす、気の強そうな女のあられもない声。

槍太の用意した罠。その最初の一噛みが、爆谷響子に激しく食らいついた。

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