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第1話 オタクに優しいギャル

「えーマジぃ!? ヤッバーイ! 超ウケるんですけどぉー!」

モンスターも出現するような森の中を探索している最中、楽しげに笑う甲高い声が聞こえてきた。

いやマジかよ。声に反応したモンスターに襲われちゃうかも、とか、考えないのかよ。
ていうか一歩間違えたら死にかねない探索の最中で、超ウケてる場合じゃねえだろうがよ。

と思いつつ、俺は声の聞こえてきた方を見やった。

そこにいたのは、どうやら6人組の冒険者パーティーのようである。
恐らくは彼らも街でクエストを受注して冒険に出てきているはずで、偶然その行き先がソロ探索者である俺と同じ、この森だったのだろう。

「いやマジマジ。コイツマジでキレるとヤベえからよ! この前なんかドワーフ相手に素手で喧嘩売りつけてよ!」
「ちょっ、お前マジ言うなって。いやでも、ドワーフくらいぶっちゃけワンパン余裕っしょ」
「それ。まあでも俺らマジ喧嘩強ええから。だからマジ、頼ってくれていいからさ」
「えーすごーい! かっこいーい!」
「パなーい! ヤバーい!」

……聞いてるだけで脳みそが拒否反応を起こすような、虚勢だけで中身の一切無い会話。

どうやら陽キャだけで構成されたパリピパーティーらしい。
せっかく異世界転生できたっていうのに、異世界
こっち
にも陽キャっているのかよ。
……いや、まあ、いるか。陽キャって、基本どこにでも湧

くもんな。

メンバーは男女ともに3人ずつ。
男の方は全員ガタイがよく、日に焼けていて、髪を金や茶色に染めていた。いや、ここは異世界だから元からああいう髪色なのかもしれないが。
全員が動きやすさ重視の軽装備で、ダルダルのTシャツとかを着ている。
耳や指には、バフ効果があるとも思えない、ジャラジャラしたアクセサリをつけまくり。腕には前衛的なタトゥーを入れまくり。唇や鼻にもピアスをつけまくり。あー嫌なもん見た。目が腐る。

そして女の方はというと、こちらも派手な髪色をした尻の軽そうなヤツばかりだ。
森の探索ナメてんのか? っていう感じの、防具らしい防具も一切つけずに、オシャレ重視のチューブトップやらホットパンツを穿いてるわ、なんなら足下がハイヒールだったりしてるわ。

……あ。いや。
ひとり、俺の方に背中を向けていて顔を見えない女がいるのだが、そいつだけはパーティーで唯一、ちゃんとした冒険者装備をつけているようだった。
といっても、ブラジャーとショーツのふたつに分かれた特殊な鎧……つまりはビキニアーマーだったりするのだけれど。
そいつだけは、ちゃんと街の外での冒険を意識した装備を身につけている……ように、俺には見えた。

足下は長距離の行軍でも耐えられそうなブーツだし、アイテムを持ち歩くためのウエストポーチも巻いている。
何よりも他の連中が手ぶらでウロウロしているのに反して、そいつだけはちゃんと武器であるレイピアを腰に提げていて、いつでも抜けるように右手を添えているのが分かった。
同じチームにいる他の5人のウェイが論外すぎるせいでもあるが、そいつひとりだけが一端の冒険者らしい格好をしているのが……なんだか妙に気になった。

「あん?」
「お? どした?」
「や。なんかあっこにいるヤツ、なんか俺たちのことチラチラ見てきてね?」

バッ。
光の速さで目を逸らした。

え? なんですか? 俺はあなたたちのことなんて、欠片も意識してませんけど? 自意識過剰がすぎるんじゃないですか? 俺はただこの森で、薬草探しのクエストを淡々とこなしているだけですけど?
と、自然を装って不自然に動き回っていたのが仇
あだ
となったか。

「痛

ぅ……っ!」

トゲトゲとした形状の葉っぱにうっかり手をぶつけてしまい、肌を切ってしまう。
見てみれば、手の甲にスッと一直線の切り傷ができていた。
じんわりと赤い血が滲み始める。
耐えられないほどの痛みというわけではないが、しかしテンションは下がる。萎え萎えだ。

手の甲を押さえつつ聞き耳を立てていると、パリピパーティーちゃんたちがひそひそと話す声が聞こえてくる。
多分アレ絶対俺のこと話してるだろ。

あーもう。今日はもうクエスト終了して、街に帰ろうかな。

なんてことを考えていた、その時だった。

「ねえ、ねえ! キミ、キミ!」

それまで目の敵にしていた当のパリピパーティーの方から、ひとりの女の子がこちらに駆け寄ってきた。

えっ? と思い、顔を上げてそちらを見やる。
どうやらあのパーティーの中で唯一まともな冒険者装備を身につけていた、ビキニアーマーの女の子のようだった。

……かわいいギャルだ。
初めて真正面から彼女の顔を見たとき、俺は自然とそう感じていた。

髪の色は眩いほどのプラチナブロンド。ウェーブがかった髪を背中まで伸ばしており、その毛先数センチだけがパープルに染められている。
睫毛はマッチ棒が乗せられそうなほどくるんと長く反り返り、その下のパッチリとした瞳は、まるで高級な宝石のようなキラキラと輝いて見えた。
薄い唇にはラメ入りのリップクリームを塗っているらしく、ツヤツヤキラキラとよく目を引く。
ギャル全開なメイクを施していながらも、年齢よりもさらに幼そうな印象を与えるのは、瞳が大きい童顔なせいだろう。

胸元と局部を覆い隠すビキニアーマーは、艶のある金属製で、色はシルバー。
右手首には、愛らしいピンクのシュシュを巻いている。

先ほど見たときは後ろからだったので気付かなかったが、その胸元はとんでもないほどのボリュームだった。
小玉メロンをふたつ並べたような大きなおっぱいは、ビキニアーマーに覆われた中でも、小走りしているせいでたっぷんたっぷんと揺れている。
透き通るように真っ白でやわらかそうなもち肌が、たゆんたゆんと揺れている様は、あまりにも男の子の下半身に悪い。

俺がビキニアーマーのおっぱいに見とれている間に、そいつは俺の元へと駆け寄り、こちらの手を取った。

「えっ……な、なに? なんだよ?」
「今の、見てたよー! 怪我したんっしょ!? 見してみー?」

保湿剤でも塗っているのかしっとりとやわらかい手のひらに触れられて、ものすごくドキドキしてしまう。
そんな俺の緊張を知るよしも無く、そいつは俺の手の甲の怪我を検分して言った。

「あちゃー! ぱっくり切れちゃってんねー! 待ってて。ウチ、治療キット持ってっから!」
「……べ、別に。このくらい、必要ない。この葉はただギザギザしてるだけで、別に毒がある種類とかでもないから」
「だーめだよ! 怪我したまんまじゃ、痛いじゃん!」
「別に、大して痛くもない」
「ウチが見てて痛いのー! 血ぃ出てんじゃん!」
「見なきゃいいだろ」
「血出てたら見るっしょ!」
「見るなよ……」
「ほい! バンソーコーあげる!」
「話聞けよ……いらないから……」

俺の言うことを完全に無視した彼女は、やたらめったらネイルアートの施された指先で、絆創膏を差し出してきた。

「ていうか、絆創膏かよ。冒険者ならこう、包帯とか、ポーションとか、エリクサーとか、マキシムカボチャとか、もっとなんかあるんじゃないの」
「マキシマムカボチャ? なんでカボチャが怪我にいいの? 栄養?」
「マキシマムじゃなくて、マキシムカボチャ。そういう回復アイテムが登場するゲームがあるんだ。『星のケービィ』っていう、とある小さな星の小さな国に住む警備員の主人公が冒険するゲームでな。マキシムカボチャはその主人公のケービィが大好きな食べ物という設定で、食べると減少していたヒットポイントが全回復する。一応設定として非常に栄養満点で、カボチャだけどデザートにもなるほど甘く美味しいらしい。シリーズを通して度々登場する重要なアイテムだから、ゲーム好きには常識だ。ていうかケービィ自体普通にめちゃくちゃ有名なゲームだし名作も多いシリーズだから、一般人
パンピー
でも押さえておいた方が良い」

と、そこまでまくし立てるように喋ったところで、目の前のギャルの彼女がぽかんとした表情を浮かべていることに気がつき、グッと口をつぐむ。

またやってしまった。
現代日本にいた頃から、ゲームオタクで、ゲームのこととなると夢中になって喋ってしまう。
俺の悪いクセだ。

俺が黙り込むと、しかしギャルはコテンとかわいらしく小首を傾げてみせる。

「どしたん? 続きは?」
「つ、続きは……無い。オタクの戯れ言なんて聞いてても、おもしろくないだろ。だいたいこっちの世界に、ゲームとか無いし……」
「えー? 確かにウチにはその、ケービィ? とか、ゲーム? のことは分かんないけどぉ……」

ギャルはそう言いながら、そのキラキラと粒子のように光り輝く髪をかき上げる。

「キミが好きなもののこと喋ってるときの、楽しそうな顔は、ウチ好きかなーって!」

……は、

マジで、心臓が止まるかと思った。
そのくらい、目の前のギャルの浮かべる笑顔は……殺人的なほどに愛らしかった。

思わず俺が見とれて黙り込むと、彼女はバッシバシと俺の背中を叩き始める。

「だから黙んないでいーってばー! ウチだって全然男の子はキョーミないだろーけど、ガンガンにネイルの話とかするかんねー!?」

バッシバッシバッシ!
痛った!? 力強っ!? 見た目がギャルでも、冒険者は冒険者ってことかよ!?

「い、痛いから……! 一応俺、怪我して手当てされるって立場なんじゃないのかよ……!?」
「あーそうだった! ごめんねーー!」

ギャルは言いながら、今度はよしよしと背中をなでさすり始めた。
そして、そのなでさする力も強い。俺の背中で火ぃおこそうとしてんのか?

このあまりに遠慮容赦の無いハイテンションスキンシップ……ついていくのがやっとだ。
やっぱり、ギャルって苦手だ……!

と、俺が二の句も継げずに硬直していると、向こうの方からパリピパーティーの仲間達がギャルのことを呼び戻す。

「おーい! いつまでそんなのに構ってんだよ! 行くぞ、アイリーン!」
「あ、ごめーん! 今行くわ-!」

ギャルの彼女……アイリーンというらしい……は、慌てた様子で応じると、また俺の手を取った。
今度は何かと思ったら、どうやら絆創膏を俺の手に握らせたらしい。

それから彼女はニコッとまた100点満点の笑顔を浮かべると、

「んじゃあー、またね! オタクくん
・・・・・
っ!」

そう言ってひらひらと手のひらを振り、アイリーンは去って行った。

「またね……って。そんな、また
・・
があるみたいな言い方。ていうか、オタクくんって……ああっ、もう」

感情が渋滞を起こして、俺はその場にしゃがみ込んでしまう。

後に残された俺は、まだぎゅっと握られた感触の残る、その手のひらをゆっくりと開く。
そこには、やたらハートマークやら、知らないキャラクターやらの絵柄のプリントされた、派手ッ派手な絆創膏が1枚、乗っていて。

「……いらないって、言ったのに」

ぎゅっと手のひらを握られた感触に上書きされて、手の甲の痛みはとっくに無くなってしまっていたのだった。

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